蟷螂の斧さんの登録情報 | |
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平均点:6.10点 | 書評数:1692件 |
No.1192 | 6点 | 推理小説代表作選集1977年版 アンソロジー(国内編集者) |
(2019/03/26 18:08登録) 日本推理作家協会賞の短編受賞作と、その年1年間に発表された代表作選集(1977年版)。現在は、「ザ・ベストミステリーズ 推理小説年鑑」として発表されています。 心霊写真(佐野洋)塗りつぶした顔(戸板康二)視線(石沢英太郎)曲った部屋(泡坂妻夫)瀬戸の夕凪(山村正夫)相似の部屋(鮎川哲也)拳銃(笹沢左保)背負って走れ(陳舜臣)水子地蔵の樹影(夏樹静子)神風の殉愛(森村誠一)復讐は彼女に(小泉喜美子)海軍某重大事件(小林久三)みぞれ河岸(都筑道夫)汽笛が響く(南部樹未子) 6点以上の評価の作品。 心霊写真(佐野洋)・・・行方不明の夫の心霊写真を持っている妻。その写真の付近を掘ると夫の死体が発見された。心霊写真は妻の工作のようだが。7点 視線(石沢英太郎)・・・短編部門受賞作。銀行強盗にあった男性行員の視線があるところへ向けられた。6点 曲った部屋(泡坂妻夫)・・・「亜愛一郎の狼狽」に収録。傾いたマンションの部屋で死んでいた男。解決のヒントは傾きにあった。8点 相似の部屋(鮎川哲也)・・・「マーキュリーの靴」に収録。容疑者は犯行現場から遠方のマンションにいたというアリバイ証言がある。しかし現場近くのマンションを工作し、そこにいたようだが。7点 水子地蔵の樹影(夏樹静子)・・・「重婚」に収録。昔、関係のあった女性とそっくりな娘と出会う。もしかして自分の子供?。7点 |
No.1191 | 6点 | 影なき女 高木彬光 |
(2019/03/23 17:41登録) 1950~55年の短編集。いろいろなトリックの原形のような作品です。この時代に書かれたことを評価したいと思います。 ①影なき女・・・密室と意外な犯人像。7点 ②黄金の刃・・・○○殺人(アリバイ)4点 ③出獄・・・無実の罪で服役後、出獄したが。7点 ④天誅・・・予告殺人。4点 ⑤ヴィナスの棺・・・宝石探し。8点 ⑥薔薇の刺青・・・アリバイトリック。6点 ⑦死せる者よみがえれ・・・プラトニックラブの恋人に再会。その女性は?。5点。 |
No.1190 | 4点 | 真夏の日の夢 静月遠火 |
(2019/03/20 22:11登録) 演劇サークルの活動費を捻出するため、心理学部の教授が行う奇妙な実験に参加した大学サークルのメンバーたち。外界との接触を遮断されて、一ヶ月間、ひとつ屋根の下で過ごすことになった彼らは、文句を言いながらも、文化祭前夜のような日々を、それなりに楽しみながら過ごしていた。しかし実験開始から6日目、サークルのアイドル的存在の雪姫が、忽然と姿を消した。 ○○トリックのラノベということで手に取りました。著者のコメントにあるように、ミステリ「風味」ではありますが、公私ともに演技ばかりしている演劇研究会のお話を楽しんでいただけたらということでしょう。 |
No.1189 | 6点 | 人形パズル パトリック・クェンティン |
(2019/03/18 12:56登録) ピーター&アイリス・シリーズ8冊中、未読のラスト一冊でした。巻き込まれ型サスペンスの典型的な作品です。久しぶりのシリーズなので油断していたら、最後でやられました(笑)。犯人は舌足らずの人物で早めに判明します。よって、フーダニットではありません。しかし、これが伏線になっていたとは!・・・。 シリーズの評価は①迷走パズル(6点)②俳優パズル(8点)③人形パズル(6点)④悪女パズル(8点)⑤悪魔パズル(6点)⑥巡礼者パズル(7点)⑦死への疾走(7点)⑧女郎蜘蛛(8点)となり、十分堪能できました。 |
No.1188 | 6点 | 寝台特急(ブルートレイン)殺人事件 西村京太郎 |
(2019/03/14 15:36登録) 著者の自薦トラベルミステリーは、推理作家協会賞を受賞した「終着駅殺人事件」ではなく、本作「寝台特急殺人事件」となっています。プロットもいいしサスペンスフルで、うなずけるところです。トラベルミステリーは、時刻表とにらめっこのイメージが強く敬遠気味でしたけれど、今のところそのようなことはありません(まだ4冊目ですが・・・)。 |
No.1187 | 5点 | 終着駅殺人事件 西村京太郎 |
(2019/03/11 09:44登録) トラベル・ミステリー以前の作品から比べると、トリックはかなり落ちると思います。というより、警察の怠慢さが際立ってしまった作品ですね。動機の謎をメインにして、倒叙式にしたら大傑作になったかも。まあ、雰囲気は良かったです。なお、血液型の問題は1980年でもこれが常識だったのかなあ?。 |
No.1186 | 6点 | グリーンリバー・ライジング ティム・ウィロックス |
(2019/03/08 10:48登録) 「BOOK」データベースより~『あらゆる悪が正気を飲み込もうとするグリーンリバー刑務所。完全に秩序を失った囚人たちの暴動は、情夫をめぐる痴情のもつれから始まった。―本当に狂っているのは誰なのか―暴動で仮釈放が霧散した囚人医師は、ぎりぎりの理性をゆるがせながらも、巨漢の精神分裂症患者の「啓示」の声に導かれ、善悪の彼岸を彷徨する…。黙示録的プリズン・サスペンス。』~ 監獄の暴動を描いた作品です。バイオレンス&セックス描写は半端ない(笑)。筆力があります。エンタメ要素は8点から9点献上。その点から、映画化の企画があったようですが頓挫したみたいです。よほどオブラートに包まないと無理か?。ラストは意外と爽やかでした。 |
No.1185 | 5点 | 女相続人連続殺人事件 山村美紗 |
(2019/03/03 14:41登録) 会話主体の文章で読み易い。2回ほどTVドラマ化されているようです。ラスト近くで、サブストーリーが方向違いのようになってしまい、肩透かしを食らった感じ。メイントリック(真相)は、容疑者が少ないので分かり易いかも。動機はどう見てもご都合主義でしょう(苦笑)。 |
No.1184 | 5点 | 亜愛一郎の狼狽 泡坂妻夫 |
(2019/03/02 20:31登録) (東西ミステリーベストの16位) ①DL2号機事件(4点)・・・奇妙な論理 ②右腕山上空(5点)・・・マジックショー的 ③曲った部屋(8点)・・・本格的 ④掌上の黄金仮面(4点)・・・勘違いされた男 ⑤G線上の鼬(7点)・・・雪密室 ⑥掘り出された童話(4点)・・・暗号 ⑦ホロボの神(5点)・・・文明の差 ⑧黒い霧(5点)・・・アリバイ バラエティに富んでいますが、これは!というような突出したものはなかった。著者の作品では幻想的な長編の方が好みですね。 |
No.1183 | 7点 | ユリゴコロ 沼田まほかる |
(2019/02/27 18:39登録) サイコ系で恋愛ものという不思議な感覚の作品でした。ほとんど描かれていないのですが、妹さんが一番哀れで仕方ない。 |
No.1182 | 6点 | 真昼の悪魔 遠藤周作 |
(2019/02/25 10:29登録) 裏表紙より~『患者の謎の失踪、寝たきり老人への劇薬入り点滴…大学生・難波が入院した関東女子医大附属病院では、奇怪な事件が続発した。背後には、無邪気な微笑の裏で陰湿な悪を求める女医の黒い影があった。めだたぬ埃のように忍び込んだ“悪魔”に憑かれ、どんな罪を犯しても痛みを覚えぬ虚ろな心を持ち、背徳的な恋愛に身を委ねる美貌の女―現代人の内面の深い闇を描く医療ミステリー。』~ ミステリー的には一応フーダニットの形式なのですが、あまり効果は出ていなかったような。ミステリー作家ではないので致し方ないところ。「罪と罰」のラスコリニコフと同じことを考えている女医が主人公です。寝たきりの老婆を人体実験にすれば、何人もの人が救えるというような・・・。倒叙式心理ミステリーとでもいうのかな?、楽しめました。 |
No.1181 | 6点 | 翼竜館の宝石商人 高野史緒 |
(2019/02/23 21:57登録) 1662年のアムステルダム。密かに葬られたペスト患者が、レンブラントの絵の中から復活?・・・。その真相とトリックは大満足です。しかし、アムステルダムの雰囲気の描写が、ややくどかったかなとの印象。トリックを欲張り過ぎたためか、その分だけ伏線の描写をしなければならず、その点が逆効果でかなり散漫に感じられてしまった。また、回収されない部分も・・・。非常に勿体ない。 |
No.1180 | 7点 | 恐怖小説キリカ 澤村伊智 |
(2019/02/20 20:06登録) 著者の「ぼぎわんが、来る」が日本ホラー小説大賞を受賞。彼の妻・霧香(キリカ)や仲間から祝福される様子などが描かれ、また、ゲラの校正から校了までの苦労話等々、私小説かのような展開です。出版社、選考委員も実名で登場しますし。そして第一部のラストで事件が起こります。この第一部ではある仕掛けが施してあるのですが、勘のいい読者は途中でわかってしまうかも。それはプチサプライズ。第二部では妻・霧香の視点で物語が進行します。ところがまさかのルメートル的展開に。さらに虚構か現実か?読者はけむに巻かれることに・・・。前作品のネタバレがあるので発表順に読んだ方がいいですね。そして、この作品の読者は上から目線で「時間の無駄」などと辛辣な投稿(批評)はできないようになってしまう?!(笑)。 |
No.1179 | 6点 | 重婚 夏樹静子 |
(2019/02/18 17:38登録) 裏表紙より~『清水市の三保の松原の砂地で船越広勝の死体が発見された。死因は一酸化炭素中毒。船越は旅行会社社長の四十二歳、二年前、バーに勤める玲美を入籍したが、実際は先妻の寿子の同意を得ないで離婚届を出しただけの重婚であった。玲美には恋人がおり、また寿子には船越の生命保険という動機があった。しかし、犯行時間のアリバイは二人ともに崩せない―(「重婚」)』~ 7作の短篇集。誘拐もののトリックの先例があるということで拝読。後発の作品はそのトリックを応用したのではなく、まったく本作があるのを知らなかったようです。まあ、いずれにせよ先例には敬意を表したいと思います。表題作他、意表を突くようなアリバイものの作品があり楽しめました。 |
No.1178 | 7点 | 嘘ですけど、なにか? 木内一裕 |
(2019/02/16 17:26登録) 「BOOK」データベースより~『水嶋亜希、三十二歳独身。文芸編集者としてトラブル処理に飛び回る日々。仕事を頑張ったご褒美のように、ある日高スペックのエリート官僚と偶然出会い恋が始まる予感が。だが新幹線爆破テロ事件が発生すると、明らかに彼の態度が怪しくなっていく―私、騙されてる?痛快でドラマティックな反撃が始まる!』~ トラブル回避のためなら平気で嘘をつく亜希。偶然出会ったエリート官僚は殺人者???。クライム・コメディというのかな?。スピーディーな展開、爆笑もありで飽きさせない。キャラクターがお気に入りなので甘めの採点。(*表紙は著者による鉛筆画) |
No.1177 | 5点 | RANK 真藤順丈 |
(2019/02/14 23:02登録) 裏表紙より~『監視カメラのネットワークによって国民に絶えず順位を付ける制度―『RANK』によって管理された近未来・日本。『RANK』の圏外に落ちた人間は抹殺される。国家が企む本当の目的、そして隠された真相は!? 社会の崩壊を前にして、人間の未来と希望を描く物語。』~ 祝!直木賞受賞、驚愕の真相が待ち受ける、新感覚ミステリーとの帯に釣られました(苦笑)。2009年の発表で2019年を描いている作品です。監視システムにリアリティが感じられないのが惜しいところ。 |
No.1176 | 6点 | 作家刑事毒島 中山七里 |
(2019/02/11 09:34登録) (ネタバレあり) 5篇の短篇集。ミステリー的には、完全なアリバイものと意外な犯人ものが楽しめた。共犯は好みではないが、共犯を逆説的な観点から捕らえた物語は新鮮に感じられた。また、サイン本の仕組みや、初版、第2刷版が作家にとってどういう意味を持っているのか等の専門的なディテールから真相を導き出す作品もあり、勉強になりました。なお、本作は「毒島」の名の通り、全篇ブラックユーモアに満ち溢れています。ある女性書評家が登場。彼女は書評なるものを始めたが至極簡単で、自己顕示欲を満足させられる。現実の世界では自分の意見を聞いてくれる者など誰もいない。しかしネット書評でベストセラーをこきおろす時だけは世界の女王になったような優越感を味わうことができる。点数をつけるのは裁判官になったような陶酔を覚える。しかも図書館から借りているので投資額はゼロだ。耳が痛い(爆笑もの)。 |
No.1175 | 8点 | あした天気にしておくれ 岡嶋二人 |
(2019/02/09 14:21登録) 身代金受け渡しのトリックに前例があり、江戸川乱歩賞を逃したとのこと。惜しいですね。本作の肝は、倒叙形式からフーダニットへの展開にあると思うのですが・・・。”私が誘拐計画を立てた二日前に、第三者がその計画を予知することができるのか?”という謎は秀逸です。「前例」はリスペクトしますので、早速読まなければ(笑)。 |
No.1174 | 6点 | チャーリー・チャンの追跡 E・D・ビガーズ |
(2019/02/03 23:54登録) エラリー・クインの探偵小説批判法で評価された作品ということで拝読。その評価は~プロット8、サスペンス9、意外な解決7、解決の分析6、文体8、性格8、舞台7、殺人方法6、手掛り7、フェアプレイ6、計72。 佳作。普通の水準は遥かに突破している。ビガース氏はすべての点で平均のとれたストーリイを書いた傑れた作家であった。(50平均、60やや佳作、70佳作、80秀逸、90クラシック)~ 1928年の作品なので、やむを得ないのかもしれませんが、やや中だるみでスピード感に乏しいような・・・。中国のことわざ(論語など?)が結構出てきます。そのたび意味を斟酌するので、一時的に立ち止まってしまうのが難(苦笑)。ずっと、モヤモヤしていたものが、ラストで晴れるといった感じですかね。 |
No.1173 | 6点 | 能面検事 中山七里 |
(2019/01/31 16:44登録) 新しいキャラクター「不破検事」の誕生。彼は何事にも表情を変えない能面検事と言われている。他シリーズの「御子柴弁護士」(沈着・冷静)を更にバージョンアップしたような感じですね。こちらもシリーズ化されることが決定しているようです。本作は不破検事のキャラクターを前面に押し出している点や、検察官補佐の惣領美晴の成長物語でもあるので、お得意のどんでん返し度は「まあ、まあ」といったところです。ファンとしては被告人「有働さゆり」(カエル男に登場)、弁護士「御子柴礼司」、検事「不破俊太郎」の物語を読みたい!!!(笑)。 |