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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.1300 6点 探偵小説四十年
伝記・評伝
(2020/02/12 17:15登録)
商品説明より~『乱歩の探偵小説への関わりを幼年期から書き纏めた一つの半生記である。日本においてミステリ(探偵小説)がどのように受容され発展したか。歴史も学びながら、乱歩の探偵小説への情熱が伝わってくる。過去の全集にも含まれているものだが、写真を省略していないこと、乱歩の記述と事実との齟齬の明記などもあって資料としても充実している。』~
日頃、評価が低過ぎるのではないか、逆に高過ぎるのではないかなどと思う作品が何点かあります。それは個人の評価に対してではなく、あくまでも世間一般的にという意味ですので念のため。自分の考えをフォローしてくれるエピソードや文章がありましたので列挙してみます。
①「半七捕物帳」岡本綺堂(以下敬称略)は高評価過ぎ?
探偵小説がもてはやされたのは涙香全盛の明治時代で大正に入ってからは春浪にしろ春影にしろ子供向けの探偵小説を、それも翻訳または翻案しているばかりで大人の世界では人気がなかった。綺堂の捕物帳は出ていたが物足りない。もっとトリックと論理のある探偵小説が要望され愛読されなければつまらない。(同感、探偵小説としては弱いと思う次第です)
②「罪と罰」ドストエフスキーは探偵小説としても評価していいのでは? 
「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」「悪霊」などは一流の探偵小説である。探偵小説の中枢は、心理的追求にあるとすれば、偉大なるサイコロジストは、偉大なる探偵小説家であるのが当然。作家・加藤武雄(同感、純文学としてハードルが高すぎる?)
③「獄門島」横溝正史は高評価過ぎ?「不連続殺人事件」坂口安吾は低評価過ぎ?
1949年(昭和24年)第2回探偵作家クラブ賞 得票 マイ評価 東西ベスト 本サイト 
受賞「不連続殺人事件」坂口安吾         17票  9点  19位   6.94点 
「刺青殺人事件」高木彬光             10票  9点  32位   7.60点 
「獄門島」横溝正史                 6票  6点  1位  8.01点 
(マイ評価と一致して嬉しいのだが、自分の感覚が古いのか?(苦笑)「不連続」についてはトリックがクリスティの某作と同じという意見が多いのだが、ポイントはそこではないと思っている。乱歩は「トリック外のトリック」と大絶賛しているが、何を指すのか本書では明らかになっていないので「幻影城」を読むしかない)                     


No.1299 4点 こうして誰もいなくなった
有栖川有栖
(2020/02/08 21:02登録)
表題作のみの評価。オマージュ、本歌取りではなく、いわゆる「翻案」に近いのかも?。紹介では「再解釈」とありますが、どういう意味なのかよくわかりません。ラストは、それはちょっとねえ・・・というレベルでした。


No.1298 8点 二人のウィリング
ヘレン・マクロイ
(2020/02/07 11:16登録)
物語開始早々、殺人事件が起き展開はGood。しかし、その後登場人物の紹介となり冗長・・・。ところがどっこい、そこに本作の仕掛けがあったのです。真相が判明した時点で、通常は、ああ、あそこが伏線だったなどと思うわけですが、本作の場合、冗長と感じられる部分全体が伏線???!!!。動機も今のところ嚆矢(1951年)であり+2点。


No.1297 5点 遭難者
折原一
(2020/02/04 22:41登録)
本作(1997年)は松本清張氏の短篇「遭難」(黒い画集・1959年)の本歌取り、またはオマージュかと思って手にしたのですが違っていたようです。1982年に実際にあった山岳事故の追悼集にヒントを得たとのことでした。遭難事故からのミステリーなので、あらすじはどうしても似通ってしまいますね。比べながらの読書で楽しめました。あらためて清張氏の偉大さに感じ入っています。


No.1296 6点 松本清張あらかると
評論・エッセイ
(2020/02/03 22:32登録)
「松本清張小説セレクション」全36巻の各巻末に掲載されたエッセイ風の解説集。
清張氏は「私の一本の映画」として「眼には眼を」(日本公開昭和33年)を選んでいます。翌年「霧の旗」を発表。著者の阿刀田氏はこの映画からヒントを得たなと直感したといいます。このことは別に問題ではないのですが・・・。
別章でアイデアの類似性について語られています。作家のT氏がある作品で受賞。その作品とそっくりの映画が先に作られ上映されていた。アイデアの盗用で表彰は納得できないとの声が上がる。T氏は「映画は見ていない。盗用の疑いは許せない」という。結果はそのまま受賞。著者は、「もし、盗用で断罪されるなら、小説家はすべての小説、映画、芝居などのあらすじを知っていなければならない。そんなことは不可能」「道義的に問うことは何もありません。しかし、ことさらに賞を与えて表彰することも適当ではないでしょう」というスタンス。結局二番手のアイデアであり、作品の評価としてはマイナス点となるということでした。納得。
なお、それとは別にオリジナリティの件で気になっていることがあります。それは江戸川乱歩氏、横溝正史氏の御大が、いわゆる「翻案」といわれる作品をどういう気持ちで発表していたのかということです(現在ならパクリ?)。「翻案」でありながら、著者のオリジナルであるとされている中編、短編があるような気がしてなりません(苦笑)。まあ、その点が解消するかどうか分かりませんけれど、「横溝正史読本」「江戸川乱歩と横溝正史」などを読んでみるつもりです。


No.1295 5点 松本清張を推理する
評論・エッセイ
(2020/02/02 11:52登録)
著者の阿刀田高氏は「松本清張小説セレクション」全36巻を編集し、熱烈なファンであることを自認しています。本書は、著者が作者の視点から清張氏の小説作法を推理(想像)するというエッセイ集です。「よいしょ」だけではなく、批判もしていますね。その点は好感が持てます。
「点と線」に関し、「空白の4分間」は瑕疵とする説があり、本サイトでも同様の趣旨の投稿もあります。以前から、それが不思議でたまりませんでした。ちょこっと細工すれば済むことなので・・・。清張氏はそんなことは当たり前のことなので、あえて詳細を書くことはしなかったと、ずっと思っていました。本書でも、その点に触れており、まったく意見が一致し、ホッとしています(笑)。あとエピローグにおける「潜在光景」の評価が完璧に一致。やはり、著者と相性はいいのかなあ(笑)。


No.1294 6点 文豪たちの怪しい宴
鯨統一郎
(2020/02/01 08:05登録)
裏表紙より~『討論会の帰り、初めて立ち寄ったバー〈スリーバレー〉で、私は夏目漱石の『こころ』に関する女性バーテンダーの疑問点に答える羽目に。文学部教授である私が、まさかこんな場所で講義することになるとは。しかも、途中からやってきた宮田という男が、あろうことか『こころ』を百合小説と断言したことで、議論は白熱し……。文学談義四編で贈る、文庫創刊60周年記念書き下ろし。 』~
①夏目漱石「こころもよう」 8点 巷では私と先生が○○関係との説があるようですが、本作は百合小説であり、更にクライム小説だという。ではその犯人は?
②太宰治「なぜかメロス」 6点 殺戮を繰り返している王が、何故改心などしたのだろうか?。その理由は?
③宮沢賢治「銀河鉄道の国から」 5点 ジョバンニ(賢治)とカムパネルラ(賢治の亡くなった妹)との物語というのが定説であるが、実は○との物語でもある。○とは誰?
④芥川龍之介「藪の中へ」 7点 二人の証言・自白は嘘であり、一人だけ真実を告白している。その犯人は?
まあ、諸説ありますが、目くじら立てずに気楽に読みましょうというスタンスで。


No.1293 6点 魔性の殺人
ローレンス・サンダーズ
(2020/01/31 17:26登録)
「静かだった。彼は<悪魔の針>と呼ばれるそそり立つ岩峰の頂きにあおむけに横たわっていた。・・・」
『ミステリの名書き出し100選 』の一冊。サイコ系の嚆矢とのことで手に取りましたが、本作は1973年の作品で、1959年には既に「サイコ」(ロバート・ブロック氏)が発表されており、?マークでしたね。内容は七つの大罪の一つ「高慢の罪」を背景にした文学的匂いの強いものです。ジャンルはサイコ系連続殺人鬼を追う警察小説となるのでしょう。犯人側と警察側が交互に語られるのですが、犯人に魅力がなく、また追い詰め、追い詰められるというサスペンス感もいま一つでした。1000頁を超える力作ではあるのですが・・・。

(ネタバレありの追記・・・このプロットどこかで読んだ記憶。思い出した「マークスの山」(高村薫氏1993年)だ。山で始まり山で終わる。頭蓋骨に穴。凶器はアイスピック。主人公は精神が破綻。警察関係の人物が殺害される。女性が重要な役割。追う刑事に圧力がかかる。ホモ関係がある。ラストは凍死。まあ、作品から受ける印象は全く別物ですが。「魔性の殺人」もベストセラーだったらしいので、もし読んでいればヒントになったのかも?)


No.1292 6点 Y駅発深夜バス
青木知己
(2020/01/29 08:34登録)
①Y駅発深夜バス 7点 ホラー?といった不思議な雰囲気、テイストが良い。ラストは当然そうなるよね(笑)。
②猫矢来 6点 日常の謎+青春ミステリー。ほろ苦い。
③ミッシング・リング 5点 アリバイ崩し。 曖昧な10分間。うーんどうなんだろうといった感じ。
④九人病 6点 ホラーはあまり好きではない分野だが、ホラーのままの方がよかった。
⑤特急富士 8点 本人たちはいたって真面目。こういうユーモア作品は大好き。


No.1291 8点 黒い画集
松本清張
(2020/01/26 10:42登録)
①「遭難」10点 プロット、ロジック、心理描写、ラストと申し分なし。
②「証言」6点「嘘には嘘が復讐する」には思わずニヤリ。
③「天城越え」9点 30年前を思い起こすシーン。その余韻は味わい深い。
④「寒流」7点 上司に愛人を取られ、そのうえ左遷までさせられた男、さてどうする?。笑えます。
⑤「凶器」6点 ロアルド・ダール氏の「おとなしい凶器」のオマージュなんでしょう。
⑥「紐」9点 二転三転する真相。一捻りがにくい。
⑦「坂道の家」6点 キャバ嬢に貢いだ中年男の悲哀。ミステリー的には弱いが、男心はわかる、わかる(笑)。


No.1290 7点 八人の招待客
パトリック・クェンティン
(2020/01/21 14:16登録)
「八人の中の一人」(1936年)6点
大晦日の夜、高層ビルの40階に閉じ込められた7人の株主と秘書。持ち株の多い人物が狙われる。この非常時に秘書に求婚する者が二人も現れる?!・・・。その真相は?。おしゃれなクローズド・サークルものの中編。
「八人の招待客」(1937年)8点
吹雪の館に集められたのは、共通の脅迫者を殺害しようとする7人、および脅迫者本人。しかし、脅迫者に密告する裏切り者が出現、更に脅迫者は養女を連れており身の安全を図っている様子。さて、計画は実行できるのか?。サスペンスの盛り上げ方や、脇役の扱い方が巧いですね。ないものねだりですが長編で読みたいところ。
裏表紙に「そして誰もいなくなった」に先行する云々とありますが、アイデア・モチーフのヒントといった程度だと思います。


No.1289 8点 山猫の夏
船戸与一
(2020/01/19 21:51登録)
「東西ミステリーベスト100」第46位
「赤い収穫」(ダシール・ハメット)~「用心棒」「椿三十郎」(黒澤明監督)~「荒野の用心棒」(マカロニウェスタン)~「山猫の夏」というような系譜になるのでしょうか。山猫のキャラクターが際立っていますね。ニッと笑うというところなどは、用心棒のラストシーンの三船敏郎さんとダブってしまいました。「いつのまにか砲撃の音が消えている。聴こえるのはヴェトナム老人の槌の音とソフィア・ジェルミの足音だけであった。」何故か、この文章が気に入りました。音響効果?(笑) なお、ロミオとジュリエット張りの駆け落ちの結果は残念なところ。何とかならなかったのでしょうか?・・・。
余談。「東西ミステリーベスト100」の中でも、ハードボイルド系やスパイ冒険もの系が未読でかなり残っているのが現状です。本サイトで取り上げられると刺激を受け、読まねばという気持ちになるのでありがたいです。


No.1288 3点 女捜査官
島田一男
(2020/01/15 10:38登録)
裏表紙より~『東京湾から引き上げられたクルマの中に、東武大学の小田幸次郎教授の溺死体があった。彼は軽油の増力剤の発明で、業界の利権争いの渦中にいた。 晴海署の交通係、塩路勝子、大浜政子の二人は、女性特有のカンで犯罪の匂いをかぎ、小田の華やかな女性関係から捜査を開始した。』~
真相、犯人像ともいま一つ。当時(1981年)の世相を描いているようですが、女子大学生の性意識があまりにも短絡的に描かれ、現実味に乏しいもので白けてしまいました。


No.1287 6点 法月綸太郎の功績
法月綸太郎
(2020/01/12 16:57登録)
「イコールYの悲劇」「ABCD包囲網」はオマージュという縛りのある中で、よく考えられた作品であると思います。本サイトで高評価の「都市伝説パズル」は疑問点があり、評価としてはまあ普通といったところ。
①「イコールYの悲劇」 ダイイングメッセージものは、こじつけが多い中、本作は十分納得できます。D・Mものの新機軸で今のところNo.1です。蛇足ですけれど、YはRの小文字「r」が「Y」にも見えると考えれば、不自然ではないと考えます。7点
②「中国蝸牛の謎」 これもオマージュですが、やや無理があるような。5点
③「都市伝説パズル」 第二の容疑者に関し、「もっとほかにやり方があるのに、どうしてそんな回りくどい、手の込んだ計画をたてなきゃならんのだ?」と、あっさり容疑者から排除されます。「えっ!?」と思う次第です。犯人があえてそのように仕組んでいるという可能性が排除できないからですね。本作の他の作品にも回りくどい手の込んだトリックが多々あるわけですから・・・(笑)。ロジックが評価されているようですが、その点どうなんでしょう?。6点
④「ABCD包囲網」犯人の隠匿方法として、非常によく考えられた作品。7点
⑤「縊心伝心」無理やりロジックを構築したような感じを受けるのですが。6点


No.1286 6点 金庫と老婆
パトリック・クェンティン
(2020/01/09 13:01登録)
著者らしい作品は表題作の「金庫と老婆」、その他はブラックユーモア系と○○コンプレックス系。ベストは、乞食の美少年を養子にしてみたら・・・の「少年の意志」

①「ルーシーの初恋」マザコン 7点
②「汝は見たもう神なり」ロリコン 7点
③「不運な男」ブラックユーモア 5点
④「ミセス・アプルビーの熊」ブラックユーモア 5点
⑤「親殺しの肖像」ファザコン 6点
⑥「少年の意志」ブラックユーモア 7点
⑦「母親っ子」マザコン 5点
⑧「姿を消した少年」マザコン 6点
⑨「金庫と老婆」サスペンス 7点


No.1285 7点 マルタの鷹
ダシール・ハメット
(2020/01/01 13:12登録)
(再読)「東西ミステリーベスト100」第36位。<英10位、米2位>

(ネタバレあり)「赤い収穫」より本作の方が全体的にスマートな感じを受けました。この作品でハードボイルド系の探偵役の姿が確立したように思います。更にその後に続く○○○○が犯人という基本形も・・・。 「うまくいけば終身刑。二十年たてば出られるということだ。きみは天使だよ。ずっと待っていよう」「もしきみが首を吊られたら、忘れずにいつまでも憶えていてやる」「愛していると思うよ。だからどうだというんだ」ハードボイルド系愛の言葉集です(笑)。

これで以下(参考)の英米人気作品の上位10冊を読み終えることになりました。
(参考)本ランクは『史上最高の推理小説100冊』(1990年英国推理作家協会)と『史上最高のミステリー小説100冊』(1995年アメリカ探偵作家クラブ)の順位を単純に合算したもの。()は(英)(米)の順位。≪≫<>「東西ミステリーベスト100」《2012年》〈1985年〉の順位。点数はマイ評価と本サイト平均点(本日現在)
1位 『時の娘』ジョセフィン・テイ(1)(4)《39》〈44〉6点 6.23点
2位 『寒い国から帰ってきたスパイ』ジョン・ル・カレ(3)(6)《-》〈33〉8点 7.29点
3位 『大いなる眠り』レイモンド・チャンドラー (2)(8)《-》〈43〉5点 6.15点
4位 『マルタの鷹』ダシール・ハメット(10)(2)《36》〈19〉7点 6.09点
5位 『レベッカ』ダフネ・デュ・モーリア(6)(9)《—》〈68〉9点 6.40点
6位 『月長石』ウィルキー・コリンズ(8)(7)《67》〈51〉7点 7.43点
7位 『アクロイド殺し』アガサ・クリスティー(5)(12)《5》〈8〉10点 7.91点
8位 『ホームズ・シリーズ』アーサー・コナン・ドイル (21)(1)《3》〈10〉8点 8.17点
9位 『学寮祭の夜』ドロシー・L・セイヤーズ(4)(18)《—》〈—〉6点 7.38点
10位 『ポー作品集』エドガー・アラン・ポー(23)(3)《34》〈36〉6点 6.14点                                     (*)「ホームズ・シリーズ」は「シャーロックホームズの冒険」「ポー作品集」は「モルグ街の殺人」を代用 


No.1284 6点 赤い収穫
ダシール・ハメット
(2019/12/31 21:01登録)
東西ミステリーベスト100の第38位。まず、マカロニウェスタンを思い起こしました。「荒野の用心棒」は「用心棒」(黒澤明監督)のパクリであり、その「用心棒」は本作からインスパイアされているので、当然と言えば当然ですね。007などへの影響も多大であると思います。ただ筋としてはそれほど面白くなかった。あと気になったのは、なぜ名無しの権兵衛なのか?。ホテルにいる「おれ」を第三者が訪ねてくるのですが、名前はどうなっているの???(偽名を使うのはわかっているのですが・・・)。ハードボイルドの嚆矢である点を加味しこの評価です。


No.1283 6点 ミステリの名書き出し100選
事典・ガイド
(2019/12/25 21:00登録)
35人の評者(評論家や翻訳家)による選出。まず海外作家100人を選出し、その著作の中から名書き出しを選ぶという方法です。よって純粋な意味での百選ということにはならないような気がします。全体的にハードボイルド系、冒険ものが多い?。未読のものが多いのでそんな気がするだけかも・・・。マイベスト10は下記の通りとなりました。( )内はマイ評価点

①夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。
②パリは4月である。雨もひと月前ほど冷たくはない。といって、たかがファッション・ショーを見るために濡れて行くのには寒すぎる。 
③バーボンをダブルで二杯ひっかけたジェイムズ・ボンドは、マイアミ空港の搭乗ラウンジにおさまって、生と死について考えていた。 
④外は、あったかい、なやましい夜だ。そして、アパートの部屋では、あったかい、なやましい金髪女がまっているのに―。
⑤彼女がはいってくるのが見えた。それに気づかずにいるほうが難しかった。 
⑥「フェルナン、おねがいだから、すこしじっとしていてちょうだい」
⑦午前二時五十分、ウェルズの町はグッタリと暑気の中に沈潜していた。 
⑧その声はしずかで、微笑みを帯びていた。
⑨わたしは一人の男を殺そうとしている。
⑩計画はまことにうまく進捗していた。おそろしく見事に運んでいた。

①「幻の女」ウィリアム・アイリッシュ(8点)
②「深夜プラス1」ギャビン・ライアル(8点)
③「007・ゴールドフィンガー」イアンフレミング(8点)
④「死体置場は花ざかり」カーター・ブラウン(未読)
⑤「八百万の死に ざま」ローレンス・ブロック(未読)
⑥「悪魔のような女」ボアロー&ナルスジャック(6点) 
⑦「夜の熱気の中で」ジョン・ボール(6点) 
⑧「狙った獣」マーガレット・ミラー(8点) 
⑨「野獣死すべし」ニコラス・ブレイク(8点)
⑩「死の接吻」アイラ・レビン(7点) 
評論の中で面白そうな作品が10冊程度見つかりましたので、順次手にしてみたいと思います。


No.1282 5点 大いなる眠り
レイモンド・チャンドラー
(2019/12/25 20:48登録)
東西ミステリーベスト100(1986年版)第43位。一言でいえば、「筋はごちゃごちゃしているが、主人公のキャラは際立っている」ということでしょうか。本作は「長いお別れ」を抑え、英では2位、米では8位と断トツに人気のある作品ですね。追い込まれても、へらず口を叩くタフな探偵・フィリップ・マーロウの初登場ということが理由でしょうか?。私的には「長いお別れ」の方が数段上位にあると思いますが・・・。さて、次はハードボイルドの原形となったと言われるダシール・ハメット氏の「血の収穫」「マルタの鷹」に取り掛かってみようかな。


No.1281 6点 邪悪の家
アガサ・クリスティー
(2019/12/19 17:54登録)
現在のミステリーファンには犯人を”推測し易い”作品であり、けして犯人が真の意味で”判る”などとは言えない作品だと思います。また、著者のポアロに関する意向とまったく違う評価となってしまった作品でもあると思います。本作は、ポアロもの6作目で、ポアロという探偵が世間的に確立した作品です。著者は本作にある通り、実はポアロを引退させたかったのですね。しかし、諸事情でその後30作品近くポアロものを書かざるを得なくなった。更にいえば、例の作品(1975年発表)の内容、書かれた時期、経緯を斟酌してみれば、この点は明らかでしょう。そういう意味ではエポックメーキング的な作品といえるのかもしれません。内容は実にクリスティー氏らしいミスディレクションをふんだんに使用した良作だと思います。惜しい点は怪しい人物を創造しなかったことと、ポアロの登場が早すぎるため、読者は余裕を持って犯人の推測が可能であったということですかね。


(ネタバレあり)法月綸太郎氏の「1932年の傑作群をめぐって」の~「災厄の町」(1943年エラリー・クイーン)はクリスティの「邪悪の家」と類似~に関して。手元にメモがあるのみで詳細は忘却しましが、類似点は手紙を悪用し、毒殺されそうになる被害者を装うというプロットが共通ということでした。


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