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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.10点 書評数:1692件

プロフィール| 書評

No.1332 7点 モンゴルの残光
豊田有恒
(2020/05/21 18:21登録)
(再読)~モンゴル帝国が世界を制覇し、黄色人種が白人を支配している。主人公シグルト(白人の青年奴隷)はタイムマシンを盗み14世紀初頭にタイムスリップし歴史を変えようと企てる。~
SFはほとんど読みませんが、若しころ友人に勧められた一冊。壮大なスケールで歴史の勉強にもなった(笑)。かなり、メッセージ性の強い作品ですが、それを抜きにしても楽しめると思います。ちなみに著者はアニメーションの脚本家として「エイトマン」「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」などを手がけ、日本SF作家クラブ会長も務めたとのことです。


No.1331 7点 ポオ小説全集1
エドガー・アラン・ポー
(2020/05/19 22:12登録)
怪奇系やユーモア系が多く、中にはSFもどきもありバラエティに富んでいます。しかしオチがよくわからないものが何点かありました(苦笑)。7点以上のみ記載
「モレラ」7点 娘が死んだ母親そっくりになって・・・
「約束ごと」7点 夫人は「日の出1時間後に」と一言。「外科室」泉鏡花(1895)を思い浮かべます・・
「ペスト王」7点 ペストが蔓延。食い逃げの男が逃げ込んだ先に宴会を楽しむペスト王が・・・
「息の喪失」7点息を失った男は墓の中へ・・・
「使いきった男」8点 戦いで生き残った英雄。何を使い切ったのか?・・・
「アッシャー家の崩壊」」9点 別途書評済み
「ウィリアム・ウィルソン」9点 別途書評済み


No.1330 6点 悪の愉しさ
石川達三
(2020/05/17 22:07登録)
(再読)作品は戦争の爪痕がまだ残る1953年の発表で、翌年映画化されている。当時は倫理観も現在とは相当違っていた。そのような時代に新聞小説として発表されたことに驚きを感じる。内容的には現在ではどうということはないもので、身近な女性を征服し、最後は犯罪を犯すというもの。同僚が語る「結局彼は愛情に飢えていたんじゃないか」が印象的。


No.1329 6点 悪女の手記
石川達三
(2020/05/17 22:05登録)
(再読)~喬子は私生児。母親は男に弄ばれ喬子を産んだ。その彼女も母と同じように騙され子供を産む。終戦後の貧しい時代であった。やがて彼女の心に男社会への復讐心が芽生えてくる・・・。弁護士への書簡という形式で物語は進む。~現在ならば、どうということのないような物語である。彼女を悪女と呼べるかどうかもあやしいものである。まさに「純な時代」だった。(1961年作品)


No.1328 7点 懲役人の告発
椎名麟三
(2020/05/13 21:14登録)
(再読)最近、安部公房氏の作品が取り上げられましたので、その関連で・・・。公房氏は「日本で作家と言えるのは椎名だけではないか」と述べています。その椎名麟三を取り上げてみました。純文学ですけれど、題名がミステリーっぽい(笑)。
交通事故で少女を轢き殺し、懲役人となった過去のある青年の物語です。中盤以降に殺人事件が起き、その動機が不明という謎があることはあるのですが、それはミステリー的な謎ではありません。不条理とでもいうのでしょうか。久々の純文学でした。


No.1327 7点 ポオ小説全集3
エドガー・アラン・ポー
(2020/05/03 21:10登録)
 「モルグ街の殺人」6点 別途書評済み 
 「メエルシュトレエムに呑まれて」8点 別途書評済み 
 「悪魔に首を賭けるな」7点 悪魔に首を賭けてもいいが口癖の行く末。ユーモア系・怪奇系 
 「週に三度の日曜日」7点 週に三度、日曜が来たら結婚できる。さてどうする。ユーモア系 
 「楕円形の肖像」6点 画家の妻はモデルになるが・・・。怪奇系 
 「赤死病の仮面」7点 疫病が蔓延。仮装大会に死に装束の人物が現れる。怪奇系
 「マリー・ロジェの謎」6点 安楽椅子探偵系 
 「告げ口心臓」7点 死体を床下に埋めたが・・・。怪奇系 
 「眼鏡」6点 一目惚れして結婚するが・・・。 ユーモア系 
 「催眠術の啓示」7点 死にかけた人物に催眠術をかけると神について語り出す。怪奇系 
 「早まった埋葬」5点 生きたまま埋葬の例があるので脱出できるように手配。ユーモア系


No.1326 7点 ジャッカルの日
フレデリック・フォーサイス
(2020/04/22 14:11登録)
(東西ミステリーベスト100の17位、米20位、英17位→日米英合算では第8位)
 暗殺者ジャッカルとフランスの敏腕刑事ルベルの攻防はスリルがあって楽しめました。まあ、一部にご都合主義的なところがあるのは致し方ないか?。

(参考)日米英のベスト10を読み終えて。
 本ランクは『東西ミステリーベスト100(2012年版)』と『史上最高の推理小説100冊』(1990年英国推理作家協会)と『史上最高のミステリー小説100冊』(1995年アメリカ探偵作家クラブ)の順位を単純に合算したもの。点数はマイ評価 ( )は(日)(米)(英)の順位 
1位 「アクロイド殺し」アガサ・クリスティー         10点( 5)(12)( 5)
2位 「シャーロック・ホームズ・シリーズ」コナン・ドイル    8点( 3)( 1)(21)
3位 「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティー     10点( 1)(10)(19) 
4位 「長いお別れ」レイモンド・チャンドラー          9点( 6)(13)(15)
5位 「薔薇の名前」ウンベルト・エーコ             6点( 7)(23)(13) 
6位 「時の娘」ジョセフィン・ティ               6点(39)( 4)( 1) 
7位 「マルタの鷹」ダシール・ハメット             7点(36)( 2)(10) 
8位 「ジャッカルの日」フレディック・フォーサイス       7点(17)(20)(17) 
9位 「ポー作品集」エドガー・アラン・ポー           8点(34)( 3)(23)
10位「月長石」ウィルキー・コリンズ              7点(67)( 7)( 8)


No.1325 7点 完全無罪
大門剛明
(2020/04/15 23:26登録)
~21年前の少女誘拐殺人事件の冤罪再審裁判に抜擢された女性弁護士の千紗。彼女はその事件があった当時、誘拐監禁された経験がある。もしかしたら、自分を誘拐した犯人を弁護することになってしまうのか?。~

スピード感があり二転三転する展開も楽しめました。ただの冤罪事件だけではなく、最後に一捻りあります。


No.1324 6点 偽画
松下麻理緒
(2020/04/13 20:53登録)
裏表紙より~『「知られざる傑作がある」と言い残し、世界的にも有名な画家・山岡がこの世を去った。さらに、傑作を預かっていた医師までも死亡する。両者とも、死の直前に会っていた人物は、山岡の妻である美弥子だった。学芸員の由紀は、山岡の回顧展を成功させるため、近づこうとするが、それは殺人事件の動機を解き明かし、山岡夫人の秘密を暴くことになる。1枚の絵を巡り、人々の思惑が複雑に絡み合うサペンス・ミステリ。』~

犯人は見え見えなので、動機は?ということになります。帯の「ラスト25ページの大どんでん返しに驚愕!!」とまではいかないけれど、まずまず面白かった。絵画の真贋については、もう少しページを割いて欲しい気がした。そうすれば絵画ミステリーとして、より一層面白くなったのでは?。


No.1323 6点 暗闇の終わり
キース・ピータースン
(2020/04/11 09:36登録)
裏表紙より~『晩秋のグランド郡で同じハイスクールの生徒が3人、相次いで自殺を遂げた。『ニューヨーク・スター』の記者ジョン・ウェルズは単身取材に赴くが、一人娘をやはり自殺という形で喪っている彼には、苦いインタヴューの連続となる。だがそんなウェルズの前に、事件はやがて、意外な真実を明らかにしていった…。敏腕記者の苦汁に満ちた闘いを描く、話題のハードボイルド第一弾。』

著者にはアンドリュー・クラヴァン、マーガレット・トレイシーという別名義があります。ジャンルはハードボイルド系のサスペンスになると思います。主人公の内面がかなり描かれています。上司との軋轢、女性の同僚ライシングと一線を画するところ、自殺した娘のこと、十数年ぶりに再会した女性のことなど読みごたえはありました。


No.1322 7点 金沢逢魔殺人事件
梶龍雄
(2020/04/07 18:52登録)
見え見えのミスリードと見え見えの犯人?。このあたりの見せ方と伏線は相変わらずうまいと思いました。但し、元となる事件の動機が犯人の口から語られていないので、推理だけでは腑に落ちないし、また納得もできません(苦笑)。


No.1321 5点 マスグレイヴ館の島
柄刀一
(2020/04/04 21:05登録)
裏表紙より~『内と外から施錠された「密室牢獄」の中で墜落死した男と、まわりを食べ物に囲まれたテーブルの上で餓死した男。現代に蘇った“マスグレイヴ館の島”は百年前の奇想のままに、不可思議な死で飾られた。また、島の対岸の岬でも、時を同じくして関係者の死。絶壁まで続いた足跡は飛び降り自殺としか思われなかったが…。符号のように繰り返される“墜落死”、海を隔てた島と岬で起こった連続怪死事件にはなにが秘められていたのか。奇想とロマンの横溢する本格長編ミステリ。』~

島田荘司氏張りのトリックが炸裂するのですが、全体的な構成がチグハグかな?といった感じ。よって盛り上がりに欠けます。内容はいいので、非常に勿体ない。


No.1320 6点 火曜クラブ
アガサ・クリスティー
(2020/04/01 20:38登録)
本作以降に長編にアレンジされたトリックが数点あり楽しめた。
①火曜クラブ~5点 ②アスタルテの祠~7点 ③金塊事件~4点 ④舗道の血痕~8点 ⑤動機対機会~5点 ⑥聖ペテロの指のあと~4点 ⑦青いゼラニウム~5点 ⑧二人の老嬢~8点 ⑨四人の容疑者~4点 ⑩クリスマスの悲劇~6点 ⑪毒草~6点 ⑫バンガロー事件~9点 ⑬溺死~6点 

自薦10冊を読み終えて      (当サイト)
①そして誰もいなくなった 10点 8.65点
②予告殺人         5点 5.74点
③アクロイド殺し     10点 7.83点
④オリエント急行の殺人  10点 7.70点
⑤火曜クラブ        6点 6.45点
⑥ゼロ時間へ        8点 6.38点
⑦終わりなき夜に生まれつく 8点 6.77点
⑧ねじれた家        6点 5.93点(著者が一番好きと言っている)
⑨無実はさいなむ      7点 6.23点
⑩動く指          7点 5.80点


No.1319 5点 死者が飲む水
島田荘司
(2020/03/27 16:28登録)
「樽」「蝶々殺人事件」「黒いトランク」の流れを汲む一冊。本作が一番わかりやすいトリックで、その点は高評価です。しかし犯人以外の容疑者については、もっと早めに開放して欲しかった(ページをカットして欲しかった)。謎の一時間で中盤まで引っ張られて、蓋を開けたら???。かなり萎えました(苦笑)。


No.1318 8点 medium 霊媒探偵城塚翡翠
相沢沙呼
(2020/03/24 10:32登録)
久しぶりに「どんでん返し」を食らいました(笑)。正直言って、途中まではつまらない期待外れの小説と思っての読書。何故って、犯人が霊媒能力で分かってしまうんですから。まあ、倒叙ものだと思って読めばいいか・・・。しかし、推理も甘いしなあ・・・・・・。ところが最終章で???!!!。


No.1317 7点 黒蜥蜴
三島由紀夫
(2020/03/20 13:48登録)
黒蜥蜴は最初の誘拐に失敗した後、二回目のトリック(長椅子)に成功し「トリックは、大胆で子供らしくて馬鹿げていたほうがいい」と自画自賛。これは乱歩氏への皮肉を込めた賞讃か?、思わずニヤッとしてしまいました。乱歩氏は「三島由紀夫さんは、私の骨組みに、新しく織り出した立派な衣装を着せてくれた」と言っています。骨組みは借りていますが、実は内容は全く別物、つまり恋愛小説であるということです。三島氏は「美的恐怖恋愛劇」と表しています。よって翻案ではなく本歌取りということになりますか・・・。戯曲なので会話が中心となり、敵同士の二人の恋愛感情をどう表現するのかが気になっていたのですが・・・。「僕の惚れ方は相手の手も握らずに、相手を破局まで追い詰めることしかない。」(部下との会話)「あなたがこれ以上生きていたら、私が私でなくなるのが怖いの。そのためにあなたを殺すの。・・・好きだから殺すの」(独白)。なるほど、独白という手があったのか・・・。


No.1316 5点 黒蜥蜴
江戸川乱歩
(2020/03/20 13:45登録)
怪人二十面相や少年探偵団といった子供向けの筋に、大人用としてエログロをプラスしたような作品ですね。当時、通俗的と批判されても致し方なかったと思います。黒蜥蜴は、何故裸で女性美を見せびらかしたり、部下の前で裸になるのか?。そしてなぜ男装で、男言葉を話すのか?。イメージが湧いてきません。宝ジェンヌの男役がストリップをするようなもので、あまりイメージとしてはしっくりこなかったです。色々調べたら、露出狂と評した方がいました。あゝ納得(笑)。なお、「僕」「わたし」「わたくし」の使い分けは特に決まりはなく、連載ものなので前に書いたことを忘れたか、あるいは著者の気まぐれだったのかと思います。三島由紀夫氏がどう翻案したのか見ものですね。


No.1315 7点 鉄の門
マーガレット・ミラー
(2020/03/17 14:14登録)
裏表紙より~『十六年前に死亡した親友ミルドレッドの夫である医師アンドルー・モローと再婚したルシールは、一見平穏なその生活の裏側で継子や義妹との関係に悩み続けていた。ある冬の日、謎の小箱を受け取ったルシールは何も言い残さず姿を消した。日常の微かなひびの向こうに広がる荒涼とした心理の内奥を描いて、ミステリに新風を吹き込んだ巧手ミラーの初期を代表する傑作、新訳で復活。』~

しばらく入手困難でしたが復刊され喜ばしく思います。心理描写については、乱歩氏が「心理的純探偵小説の曙光」と感嘆しただけのことはあり巧いですね。第三部(最終章)の最初のページは予想外でかなりのインパクトがありました。本当のラストは、うーん証拠がないんだよねー。


No.1314 7点 動く指
アガサ・クリスティー
(2020/03/14 16:45登録)
(自薦の一冊)裏表紙より~『傷痍軍人のバートンが療養のために妹とその村に居を構えてまもなく、悪意と中傷に満ちた匿名の手紙が住民に無差別に届けられた。陰口、噂話、疑心暗鬼が村全体を覆い、やがて名士の夫人が服毒自殺を遂げた。不気味な匿名の手紙の背後に隠された事件の真相とは?ミス・マープルが若い二人の探偵指南役を務める。』~

なんとも言えないほのぼの感。サブストーリーですが、兄妹二人の恋の同時進行は初もので楽しめました。「冒頭に罠。殺人者の思惑通り読者が引っかかる」と著者の談。その通り!。今回もミスリードにしてやられました(笑)。


No.1313 8点 一九八四年
ジョージ・オーウェル
(2020/03/09 23:21登録)
裏表紙より~『“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…』~
1949年の作品。2002年「史上最高の文学100」に選出された。2017年には米国でベストセラーに。その理由は、トランプ大統領就任式の参加者数がオバマ前大統領のときより明らかに少ないにもかかわらず、報道官が過去最高と発言。この発言を大統領顧問が「オルタナティブ・ファクト」(もう1つの事実)と正当化。本書に似たようなことが現実に起こっているとして読まれたようです。
「権力を求めるのは権力のため」という言葉が恐ろしい。結局、権力があれば、共産、資本主義の体制に係わらず何でもできるということ。ミステリーではないのでジャンル分けは難しい。「洗脳」の物語であると思います。なお、「われら」(ザミャーチン.1921年)の影響は甚大。

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