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ミステリの祭典

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大泉耕作さんの登録情報
平均点:6.26点 書評数:65件

プロフィール| 書評

No.25 6点 幽霊男
横溝正史
(2011/11/24 16:58登録)
 久しぶりの横溝長編。書評が悪いのでサスペンスとして読み進めて見ると、読んでいる途中はテンポの良く、ベタなサスペンスの感じもありましたがそれなりに楽しめました。最後の場面を除けばですが・・・。
 悪人だと思っていた集団が実はそうではなかった、関係のないような人物が実は鬼の様な人物であった、と言うなんともドンデン返しの連続的な小説、実写化されたことも頷けます。(ロクでもない映画に決まっている)
 被害者の不自然な行動、アリバイ・トリックなども短編ではまあまあと言ったところですが、これを長編に持って行くとなると難しいのですね。プロットに文句はありませんが、僕がいちゃもん付けたいのは真相のほうなのです。もう一捻り、もう一捻りほしかった。
 それに、人形の必然性がいまひとつしっくりこなかった感が強いです。幽霊男はなんだってそんな人形を作らせたのかがまだ不明のままで終らせてしまい、『犬神家』の例外ではありませんが、冒頭に描かれたあの生き生きとしたキャラクターの行末がどうにもハッキリしないまま終了しているのであともう一賞欲しかった。
マダムXについても、なんの知らせもないまま重要人物に祭り上げられ、犯人と一緒に乗車したときの運転手は本当に幽霊男だったのか、それとも芝居だったのかもハッキリせず、加納先生がいつ人形にすり替えられていたのかも解らず仕舞いのため、謎を多く残します。でもまあ、サスペンスであれば上質の方かな。謎を多く残したから、ある意味ではミステリ小説です。どっちでも良いンです。
金田一も幽霊男には怒りを露にして、等々力警部も奴をけだもの扱い。初頭では面白いキャラだと思っていたのですが、それだけに犯人は意外でした


No.24 8点 点と線
松本清張
(2011/11/24 16:49登録)
 松本清張氏はこの作品執筆の際に、かなり念入りに時刻表を読みこんでそこで十五番線が丸出しになるおよそ四分間から、この作品に着手をかけたのではないかと思います。
 社会派独特の雰囲気を強調するために困難な文章を飾るかと思いきやいたって簡潔で、またそのためにスピィーディーな読み応えがありす。
トリックがシンプルなのは否めませんが、ヘタな本格よりもこちらの方が比にならぬほどの出来栄えです。


No.23 8点 鋼鉄都市
アイザック・アシモフ
(2011/09/14 15:29登録)
展開される物語、会話に至るまでに解決へ向ける伏線が張り巡らされ、しかし筆者はただ単にそれを伏線のみに終わらすことを拒み、ボストン大学準教授の知識を豊富に取り入れ見事なSF古典に成り立たせ最後の二十ページに物語の必然性が終結する様な形で終えています。
 労働と宇宙国家による独自にすすめた見解で齎される社会の偏見の波にどっぷりと浸かり込んだ読者は、巧みな文章力で展開に目を奪われてぐいぐい引きこまれてゆきます。
 伏線の上で構成された物語、並びに宇宙人・サートン博士殺人事件の真相は割と地味な方ですが、一見して不可能な犯罪を一筋に織り上げて行く様は見事です。
 会話もこんなにユーモアのあるものは久しぶりだと思いました。それだけでも一読する価値は十分に備わっていると思うし、またSFと本格推理物を好む人であればこの古典を読まずして語れずです。


No.22 6点 バーにかかってきた電話
東直己
(2011/08/26 14:11登録)
 映画鑑賞の際にはとりあえず原作を読んで映画に臨もうと思い、予備知識もなく、ニックネームの通りただ大泉洋のファンだったというとで手にとってみました。
 五十ページほど捲るまでは主人公による一人称式の冗長でふざけた文が展開されますが、百ページも越すとむしろ一転二転する展開に物語は集中され、文章なんてどうでもよくなってきます。実際に、この小説の文章慣れしてゆくと『冗長』から『情緒』に姿は変貌して、息もつかせぬ展開に読者は吸い込まれます。
 ほんの些細なことから調査してそこから複雑な事実が浮かび上がって来るのは、パズルのようで斬新です。
 登場人物も魅力のひとつで主人公のハードボイルドらしい自説と彼を取り巻く友人や記者との奇妙なやり取りや、気の良いタクシー運転手に管理人の耳の聞こえないおじさん、犯罪を成した少年と少年の母親に、そんな息子を愛した父親と、主人公は様々な人間に出会い、人の苦境を見せつけられ勉強してゆきます(そんな真面目でもないか)。
 傑作と思いませんが、多々な部分を著者は鋭くえぐって見せている。それだけに小説全体が人間臭いし、面白い。
 味スッキリしないかもしれません。(切ないものが好きなら結構なのですが)
 ミステリのような探偵ものですが、読んでも損はないと思います。読んでいていとても楽しめます。しかし、読みたいとも思う方は映画を鑑賞してからをお勧めします。


No.21 6点 御手洗潔の挨拶
島田荘司
(2011/08/08 14:22登録)
このサイトで評判になっていた島田氏の作品を僕も読んでみたいと思い、『~挨拶』からはじめてみました。
ミステリとしては斬新なものも感じられませんでしたが、登場人物のひとりひとりに魅力があって、すっと作品に入り込めました。
全体がホームズの日本版のようですね。
面白いのでこれからも御手洗シリーズを読んでいこうと思います。


No.20 8点 夜歩く
横溝正史
(2011/07/22 14:08登録)
(察しの良い方ならネタバレの危険性もあります)
 横溝正史の作品で様々な人の評価を見たのですが「人間関係がドロドロしている」ということを予め知っていて読み進めていきましたが、ここまでドロドロしていると横溝慣れした僕でもなんだかたまらく憎悪を催します。
 物語中半まではいつもの横溝先生だったのだけれど最後のネタバレで横溝の作風が一風変わったンじゃないか・・・? と、物語のあちこちに証拠を提示してきた横溝の今までの本格探偵を踏まえたならある意味、この作品は横溝作品でも珍しくメタミステリ的なトリックを応用していたところが、そう錯覚させたのかも知れません。
 「物語自体」に奇怪なトリックは登場しますが、大した驚愕は受けません。しかし、最後のトリックは作品をひっくり返してしまうのです。そこでこの物語の本当の驚愕を読者は知ります。ただ、そのトリックのために読者は犯人を「読みちがえる」と同時に、その「読みちがい」が文章を僕らに提示させたためのものということになっているのですが、それがアンフェアだという方もいます。
 ぼくの場合は事前用意のこの作品のことを、評価を見て調べてみると「これはアンフェアじゃないか?」と多々耳にするのですが、たしかにフェアはフェアなのですが、そんなのアリか! って、横溝ファンの僕でも正直、作品を読み終わったあとにそう思わずにはいられないトリックです。ただ、そのトリックに向けて物語の終盤にしっかり伏線も張ってあり一応フェアなのです。だから、良い目線から見れば前例のない大規模なトリック。しかし、疑問を感じずにはいられない方にとってはアンフェアとなりうる、微妙なところにあります。
 この型破りでスッキリしないトリックは文中ではなく物語自体にも伏線が張ってあるので未読の方はよく読んでいただきたい。一度読んだ方ならご存知ですが、登場人物から物語も最後の唐突な展開も狂気じみています。そして、『文章』も引っ張られるように狂いだします。そのためだか、何やら金田一耕助という男もいつもと違う感じがしてならないのです。
 余談ですが、この作品を僕がまだ読んでいない時から調べているうちに金田一耕助があまり登場しない一人称型の小説だということがわかりました。「ええ、出ないの・・・?」僕もあの飄々とした金田一さんが出ないから、横溝正史の事件は全体的に暗いから金田一さんみたいな人がでないとなんだか不安でした。「八つ墓村」や「三つ首塔」も一人称形式で事件は進みましたが、金田一さんが時々現れるので何の不快もなく物語は決着しました。しかし、この物語は違うのでは・・・? と心配する方がいらっしゃいましたら、「大丈夫です」と一言。事件の中心となる探偵作家の男と古神家の男のキャラクターが色を出しているので、寂しい思いはしません。ただ・・・。読み返すときにはその安心も束の間かもしれません。
横溝作品の中でもあまりにトリッキーな作品です。
しかし、首斬るなら古谷のドラマのように腕も斬ったほうがと思うこともありますが、傑作です。


No.19 5点 ゲームの名は誘拐
東野圭吾
(2011/07/01 18:47登録)
むかし、伯父さんから頂いた本をそのままほっぽっておいたままにしておいた作品を手にして僕の読んだ初めての東野圭吾。
 わかりやすい心理と行動描写の間にとぎれとぎれの頭脳戦と鋭い台詞をつき着けます。そこで読者は台詞に注目し展開をスリリングにしてゆく、面白い文章を描く方でした。
 今度の作品は犯人側の身の視点でといっておいたので、手にした時は僕は少々不安でしたが読んでいる内にそういう心配事は無用です。犯人が警察のやっていることを予知して向こうの動きは大体読めるから、余計な描写がなく非常にスマートです。
 ただ、犯人の頭脳戦が行われた後の展開とそれ自体が・・・何だかあまり脳に刺激がなさすぎる。台詞の伏線は珍しく僕の察した通りの結末に繋がりましたが、その結末が「ああ、やっぱり・・・」と、謎を残しておき、どんでん返しの筈ではあるのだけれど騙された感覚が少ない。自分で解き明かしていたとしても、やっぱり「ああ・・・。こうなっちゃうの・・・」と。なんか個人的にしっくり来ませんでした。
著者の今後に期待します。


No.18 6点 シャッター・アイランド
デニス・ルヘイン
(2011/05/13 17:44登録)
(ネタバレも含みます)
 良い雰囲気にあったのに、最後の謎解きで全てがご破算です。失礼かもしれないが作者はこの作品を伏線によってそれによりラストで大きな衝撃を与えるためミステリな論理的な説明を求めたかったのでしょうが、大した伏線を映画で見たけれど、あんまり良いオチではないし、こんなことは出来ればしないでほしい。
この作品を全体的に行ってしまえば、作者よりも(レディス)の書いた脚本でやったほうが上手くいっていたかもしれないし、ラストはビニールとじにするほどのラストでもなかったので結果的にこの作品を駄作と言わざるを得ません。
ただ、登場人物の台詞や文章の巧みについては素晴らしく、なおかつ4の法則の謎解きは探偵小説とは違うものがありました。雰囲気もなじめるし、展開にも圧倒されます。駄作に近いですが、楽しめます。


No.17 6点 迷路荘の惨劇
横溝正史
(2011/04/29 21:02登録)
密室の殺人については単なるトリックのネタバレにしかならなかった。金田一が述べたようにトリックはいたってに単純なもの。
シリーズの集大成だと思います。
洞窟での描写は『八つ墓村』、フルートの描写は『悪魔が来りて笛を吹く』、存在感を放つ片腕の男は『犬神家の一族』のスケキヨ。
親と思っている人の家だけに、金田一さんもリラックスしたためかなんとなく普段の金田一さんのお里がよく出ていて、それが裏目に出たためか老刑事から後半で文句をブツクサ言われていました。
推理は不可能ですが、様々な角度から照らし合わせてみると本当に面白い小説です。横溝のおどろおどろしさ全開です。


No.16 6点 悪魔の百唇譜
横溝正史
(2011/04/13 15:27登録)
横溝ファンでありながら言うことだがあまり、面白いとは思えなかった。本格的なアリバイ崩しで、金田一も飄々としていて等々力警部の出て来るぼくにとっては初めて作品ではありましたが、なんだかトリックが複雑で途中で読んでいてもよく入らない。
その上犯人逮捕までの捜査過程が題材になっているような気がして、探偵小説的なものがないような・・・? 
しかし、一度だけトランプを刺しておいたナイフで殺人を起こした。という推理が当たったのはたまらなくうれしかった、単純ですよね。
アパートや、スパイ活動、竹やぶの怪しい自動車。しかし、この自動車の鍵の部分はとても気に入りました。


No.15 6点 サイコ
ロバート・ブロック
(2011/04/13 15:20登録)
この作品の主題は精神異常者・サイコテイック。
僕はこの作品をヒッチコック監督の『サイコ』に魅了されて読んだのですが、何だか映画をそのまんま丸映ししているようにも思えてなりませんでした。つまり監督がそれだけ忠実に映像化しているのですな。
この作品のほとんどが人間の思っていること。動く写生が少なく心理写生がほとんどであり、特にストーリー的にハラハラするようなところもありません。
(ネタバレ)
二重人格者どころの話ではなく三重人格者。かなりの精神異常におどろおどろしさを感じました。


No.14 5点 サーカス殺人事件
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2011/04/13 15:07登録)
やはり、高名な旧シリーズ・刑事コロンボのラストエピソードの脚本を手掛けたハワード・バーグだけあって見事です。このシナリオが採用されなかった理由は分からないが映像化したらシリーズ中、最も幻想的な作品になっていた筈だ。最後の謎解きの場面では心にグッとくるものがありまして、解説のとおり、コロンボのサーカスに対してのミスマッチは見どころ。


No.13 6点 歌う死体
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2011/04/13 15:05登録)
コロンボ警部のいつもながらの推理力は抜群である。映像化にしたら新シリーズのトップのなっていたはずなのが残念であるが、小説であればドラマで監督の想像するような映像ではなく自分で想像する楽しみが出来るので、それはそれなりで良い。ミステリ的にもすごく面白くてコロンボと犯人の対決はまさに必見! 見たかったなあ・・・。


No.12 7点 そして誰もいなくなった
アガサ・クリスティー
(2011/04/13 14:59登録)
(ネタバレ注意)
最初に読んだころは、まだミステリ慣れしていなかったために衝撃も何もありません。犯人は必ずいるンだから死んだ奴だろう? って考えていたがためです。そのために、最後に自殺心理に追い込まれるのも都合がよすぎ、マイナス。
ただ、次に再読するときはこの書評の更新しようかとおもいます。
あの頃に読んだことを後悔しました。


No.11 10点 オリエント急行の殺人
アガサ・クリスティー
(2011/04/13 14:55登録)
アガサ・クリスティーは『そして誰もいなくなった』でお世話になりまして、今回はBSで放送される映画版に乗じてこの本を手にとってみました。
登場人物が人間とは思えないほど感情がない! 一人一人にキャラクターの個性が全くと言ってないほどで、時々、誰が話しているのか分からなくなってしまう、。でも・・・、真相を考えればそれが意図だったのかもしれません。
ミステリ的にはものすごく構成されていて、今までに読んだ推理物で最も探偵小説的な作品である。また、最後の謎解きで、この本を読み返す人はニヤニヤせずにはいられないだろうなあ。ん・・・?
アイデアも才能もつぎ込まれていて、もういうことないです。個人的には十五点ぐらいの値はあると思います。


No.10 6点 古畑任三郎―殺人事件ファイル
三谷幸喜
(2011/04/13 14:42登録)
読んでいるとスラスラ読め、なおかつ小説はドラマとはいくらか違っているのでオリジナルのようにも思える。
「殺しのファックス」では今泉のコートではなくハエがヒントになっており、『殺人公開放送』だと黒田青年の相手の博士が古畑と電話で話して行く。
どの回も約五十ページで終るので毎晩、一話ずつ、最後の二話は一晩で読み終わった。
ドラマを見ても良いが、最後の余韻を楽しみたいのならこちらをお勧めする。しかし、今泉が出てこないのと、古畑の影が薄くて、しかも、犯人に不利になるようなことしか言わないので、ミステリを見たいのならドラマで。あくまでもこれは犯人側の視点で古畑という刑事が犯人のちょっとしたヘマや知らなかったことを指摘して大いに焦りを感じるというのが主題のようなものであった。
しかし・・・、やっぱり読んでいると刑事コロンボかな。


No.9 7点 人面瘡
横溝正史
(2011/04/13 14:28登録)
「蝙蝠と蛞蝓」
まさか、金田一が容疑者にされるところだったとは・・・、読んでいてとても楽しめた。
主人公の湯浅は隣の嫌な男(金田一)のうっぷんを晴らすために、隣にいる蝙蝠みたいな男の金田一と前のマンションに住んでいる自殺願望の女を登場人物にして自分があの女を殺してその罪を金田一に着せると言う話を書くと、次の日に本当に女が殺されていた。どこかヒッチコックのようなサスペンスが漂い、それが最後にミステリとなるような快感。最後の犯人暴きのところはあっぱれ! さすが金田一さん。だと思ったがが、読者にも推理させて欲しいものでした。
人間のなれの果てですね。

「睡れる花嫁」
短編としては、かなり良い方だと思う。
最後の金田一の冴えた推理は格段に良かった。ああ、なるほど、と今までの伏線を見たら納得できる点が多い。よく練られた短編です。しかし、あくまでも推理だけで真実は定かではないにもかかわらず、核心に迫らないと自分の考えを述べない金田一も最後に警告を出しただけあって、かなり自信がありそう人格が変わったのか?
「湖泥」
金田一の最後の引っ掛けなどが、まるでコロンボのよう。意外性にかけてはこの作品が「人面瘡」と同じぐらい強かった。

「蜃気楼島の情熱」
事件解明に関してはさほど凄い! といったものはなかったけれど、情景描写が本当に美しかったと思います。やはり、文学です。

「人面瘡」
『犬神家の一族連続殺人事件』の次の事件。『講談倶楽部』昭和二十四年十二月号(原形)を昭和三十五年七月に金田一ものに改良したらしいです。
思うに、これまでの金田一シリーズで一番アッサリした作品であったと思います。
松代の腋に人面瘡が出てきたときにはこれまでの金田一史上「うげえ」と事実思ってしまいましたが。それをやってしまうと、本当にこの人面瘡に悩んでいる方たちの気を察すると、そうも思ってはいけないと、自分に一喝。同じ思いをしている方や自分のためにも、横溝先生も、書いておくべきだと思いました。
 人間関係も長編ほど難解ではないし、金田一と証人のやりとりも面白い。夢遊病を扱った作品は他にもあるそうですが、そのことにも、本作は触れていましたっけ。それに、戦争の跡もついていて、『犬神家の一族』や『獄門島』の戦争のためにできた事件に似ています。
 長編を短編に変えたような様々な要素が詰まりに詰まった作品でした。


No.8 5点 三つ首塔
横溝正史
(2011/04/10 12:10登録)
台詞やプロットにはうならせてくれました。
ただ、最後の最後に幽霊を出すのはあまりに合理的な説明とはとても、とても言い難いですな。
でも、当初横溝正史は合理的解決法を既に出していたのだが、それが出版社の事情でやむを得ず怪談にしてしまったというのだそうです。情けない話だよ編集者・・・。
 それがあればもう少し良い作品に出来上がっていたかもしれない。これなら旧古谷金田一の『三つ首塔』の出来が良かったンじゃないかな? あのドラマに出てきた”三つ首”と、”塔”は安っぽかったけれど。
『幽霊男』のようなサスペンス物です。


No.7 6点 悪魔の降誕祭
横溝正史
(2011/04/10 10:11登録)
「悪魔の降誕祭」
最初はダラダラであったが解決編で全てがスッキリする。まさにこれぞ横溝ミステリ。
金田一シリーズでも頭のキレは最高峰に上るかと思われる犯人。そんなところに入れたら十点なのだが、警部補が多かったことがマイナスであった。犯人は冷酷だが、その犯人を支える人の気持ちがまた暖かい「あぁ、またやってくれましたね!」とまた、横溝作品が好きになった。
ただ、カレンダーを気分高まってちぎっていったのはよくわからんからマイナス。
そして金田一さんのヒューマニズム。犯人に自殺をさせる偶然か意図的かチャンスを与えてしまった。市川崑の映画にも共通します。
「女怪」
数ある横溝作品の短編でもマイベストです。
この物悲しい結末と、ひとりの男に翻弄される女、しかもその女に思いを寄せてしまう金田一。
被害者にしても、加害者にしても名探偵にしても悲しい。悲壮美なのです。
「霧の山荘」
どうした、一体!? まるでシャーロック・ホームズのようなオチじゃないか。
真相にはいくぶん首をかしげました。でも、この短編集の中では最も奇怪に溢れています。


No.6 10点 獄門島
横溝正史
(2011/04/10 10:00登録)
日本推理小説最高峰と言われるだけの価値はあります。
本格ミステリとしては金田一シリーズトップの出来です。
魅力的な謎を提示しておきながら、おどろおどろしい雰囲気に圧倒するばかりです。
見立ての必然性においては、何だか・・・。まぁ、文章だけ読んだら説得力に欠けていると思われますが、殺してやりたい! って奴には何度も会いましたし、意味合いは違うと思いますが自分の夢の中でも大概、そいつらは酷い目に遭っているので真犯人の気持ちはよくわかります。探偵小説としては満足の至りです。

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