人面瘡 金田一耕助シリーズ |
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作家 | 横溝正史 |
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出版日 | 1996年10月 |
平均点 | 6.33点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 6点 | メルカトル | |
(2024/05/06 22:20登録) 「わたしは、妹を二度殺しました」。金田一耕助が夜半遭遇した夢遊病の女性が、奇怪な遺書を残して自殺を企てた。妹の呪いによって、彼女の腋の下には人面瘡が現れたというのだが……表題他、四編収録。 Amazon内容紹介より。 一、二作目はらしい作品で、横溝の得意分野で筆がノッている感じがしました。三作目は集中力の欠如で何だか分からないうちに終わっていました。四作目が最も異色で、こういった視点でも書けるんだという新しい驚きでとても新鮮でした。そして最後の表題作が物語としては一番秀逸だと思います。トリックとかはまあどうでも良くて、いかにも横溝が描きそうな作品であり、特にエンディングが素晴らしいと思いました。うん、この時代からアッと言わせるような医学的見地からのアプローチを持って来るとは、さすがです。 全般的に陰惨な雰囲気はキープしたまま、どこか剽軽な金田一耕助というキャラを生かして上手く中和し、バランスを取る手法は名作長編を彷彿とさせます。しかし、作者レベルとしては佳作の域を出ていないと感じました。 |
No.5 | 5点 | ボナンザ | |
(2018/05/05 11:19登録) 猟奇色の強い短編集で、本格要素は蜃気楼島が一番だろうが、ネクロ要素の多い最初の二作も中々。 |
No.4 | 6点 | kanamori | |
(2015/05/21 18:37登録) 金田一耕助シリーズの短編集。出来不出来の差が目立った短編集『首』と比べると、本書収録作には捨て作品がなく、横溝ファンなら5編ともそれなりに楽しめる出来栄えという評価。 個人的な好みでいえば、やはり岡山を舞台にした3編が良い。 湖畔の山村で結婚まじかの女性が殺される「湖泥」と、山峡の湯治宿で姉妹の過去の確執から事件が起こる表題作は、ともに戦争の傷跡が事件の遠因という点で「獄門島」などの初期長編に通じるところがあるように思います。作品の舞台背景の書き込みが緻密で力作感のある中編「湖泥」を一等に推しますが、殺害トリックと犯人の意外性という点で見れば表題作も捨てがたいです。 「蜃気楼島の情熱」は、アリバイトリックや犯人側の異常な造形もさることながら、金田一のパトロンである久保銀造の「耕さんはわたしの情人ですからな」という一言に衝撃をうけましたw 残りの「睡れる花嫁」は、いかにも東京編らしい猟奇的でエログロ志向の作品で、複雑な人物関係のなかに作者十八番のトリックを仕込んでサプライズを演出している。「蝙蝠と蛞蝓」は、金田一が住込んだアパートの隣人”おれ”の一人称で語られる異色作。倒叙モノのような発端から意外な方向に展開していくストーリーが楽しめます。 |
No.3 | 7点 | 大泉耕作 | |
(2011/04/13 14:28登録) 「蝙蝠と蛞蝓」 まさか、金田一が容疑者にされるところだったとは・・・、読んでいてとても楽しめた。 主人公の湯浅は隣の嫌な男(金田一)のうっぷんを晴らすために、隣にいる蝙蝠みたいな男の金田一と前のマンションに住んでいる自殺願望の女を登場人物にして自分があの女を殺してその罪を金田一に着せると言う話を書くと、次の日に本当に女が殺されていた。どこかヒッチコックのようなサスペンスが漂い、それが最後にミステリとなるような快感。最後の犯人暴きのところはあっぱれ! さすが金田一さん。だと思ったがが、読者にも推理させて欲しいものでした。 人間のなれの果てですね。 「睡れる花嫁」 短編としては、かなり良い方だと思う。 最後の金田一の冴えた推理は格段に良かった。ああ、なるほど、と今までの伏線を見たら納得できる点が多い。よく練られた短編です。しかし、あくまでも推理だけで真実は定かではないにもかかわらず、核心に迫らないと自分の考えを述べない金田一も最後に警告を出しただけあって、かなり自信がありそう人格が変わったのか? 「湖泥」 金田一の最後の引っ掛けなどが、まるでコロンボのよう。意外性にかけてはこの作品が「人面瘡」と同じぐらい強かった。 「蜃気楼島の情熱」 事件解明に関してはさほど凄い! といったものはなかったけれど、情景描写が本当に美しかったと思います。やはり、文学です。 「人面瘡」 『犬神家の一族連続殺人事件』の次の事件。『講談倶楽部』昭和二十四年十二月号(原形)を昭和三十五年七月に金田一ものに改良したらしいです。 思うに、これまでの金田一シリーズで一番アッサリした作品であったと思います。 松代の腋に人面瘡が出てきたときにはこれまでの金田一史上「うげえ」と事実思ってしまいましたが。それをやってしまうと、本当にこの人面瘡に悩んでいる方たちの気を察すると、そうも思ってはいけないと、自分に一喝。同じ思いをしている方や自分のためにも、横溝先生も、書いておくべきだと思いました。 人間関係も長編ほど難解ではないし、金田一と証人のやりとりも面白い。夢遊病を扱った作品は他にもあるそうですが、そのことにも、本作は触れていましたっけ。それに、戦争の跡もついていて、『犬神家の一族』や『獄門島』の戦争のためにできた事件に似ています。 長編を短編に変えたような様々な要素が詰まりに詰まった作品でした。 |
No.2 | 7点 | シュウ | |
(2008/09/28 21:13登録) 横溝正史は長編は面白いんだけど短編はあまり面白くないものが多いと思ってるんですが、この短編集はかなり面白いです。 それは5作中3作が岡山ものだからなのでしょう。磯川警部が出てくると話が引き締まります。 特に表題作の人面瘡が面白かったです。そういえば姉のものをなんでも取ってしまう妹って殺戮にいたる病にもいたなあ。 |
No.1 | 7点 | マニア | |
(2008/08/04 02:03登録) 短編でも、おぞましい横溝ワールド全開! 各短編に共通するテーマはズバリ「狂気」。人間の内に秘められたどす黒い狂気にとり憑かれた犯人たちが「狂人の理論」により恐ろしい犯罪を犯していく。個人的にはいきなり一発目の「睡れる花嫁」で背筋を凍らせられた・・・。怪異的雰囲気を持つ他作と比べると異色だが、「蛞蝓と蝙蝠」の切れ味鋭いロジックも好き。 「狂気」をテーマにしているため、謎解きに多少強引なところも見受けられるが、ご愛敬か。 |