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ミステリの祭典

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HORNETさんの登録情報
平均点:6.34点 書評数:1234件

プロフィール| 書評

No.294 7点 龍臥亭事件
島田荘司
(2014/11/09 10:13登録)
 御手洗潔シリーズでありながら、探偵役は石岡がやり、御手洗はほとんど登場しない、というスタイルはファンとして面白いものだった。(京極夏彦「百鬼夜行シリーズ」で関口が探偵役になるような感じ?)
 「津山三十人殺し」を題材に扱った作品では横溝正史の「八つ墓村」が有名だが、あちらよりもこっちの方が事件そのものに色濃く関わってきている印象。読んでいくほどに不気味で陰惨な雰囲気が高まっていき、長い話だったが飽くことなく読み進められた。
(ネタバレ要素含む)
 トリック、真相についてはアクロバット的な印象だが、「斜め屋敷」でもそうだったので、こうした大胆な構えはミステリの世界ならではだと思い、私は嫌いではない。次々と人が死んでいき、長い話の中でどんどん謎が積み上げられていってしまうのだが、事もなく平坦に過ぎる部分はほとんどないという意味で楽しかった。石岡からの手紙だけで真相を看破する御手洗は、いくらなんでも天才すぎると思ったが。


No.293 5点 凶鳥の如き忌むもの
三津田信三
(2014/11/09 09:49登録)
他の刀城言耶シリーズを読み、シリーズとしては初期のこの作品を後に読むことになった。目が慣れてきたせいかもしれないが、初期の作品の割には読みやすく、読み進めるのが難解という印象はあまりなかった。
 戦後10年ほど(?)の時代の、瀬戸内海にある孤島を舞台とした「人間消失」を題材とした作品だが、格式と曰くのある神社、儀式を扱うところなど、氏の作風が色濃く表れていてその点では期待通り。
 また、物語の要所にちりばめられている伏線が、結末において見事に回収され、真相に一役買っているのもさすがといいたい。
(ここからネタバレあり)
 ただ、メイントリックに関しては、そこまできれいに痕跡を残さないものなのか?ある意味「大味」な真相という感じがして、少々肩透かしを食らうものだった。また、後半の人間消失は、事前準備はあったものの突発的なものだったわけだが、多少の偶然性も重なってうまくいってしまうのもちょっとご都合主義な感じがした。


No.292 6点 さよならドビュッシー
中山七里
(2014/09/14 14:14登録)
 物語冒頭の、真相に関わる登場人物の出し方がちょっと露骨で、分かりやすすぎるきらいがあり、ミステリとしてはやや大味な印象は否めない。が、クラシック音楽の世界を織り込んだ物語の雰囲気作りがそれを補っているかなと思う。ピアノ演奏に関する描写は正直読み飛ばしていたが、苦になったのではなく、「雰囲気」として楽しんだということ。
 どうやらこのピアニストを主人公としたシリーズになっているようなので、機会があればそれも読んでみたい。


No.291 3点 ブラックライダー
東山彰良
(2014/09/14 13:44登録)
 大きな事変だか天変地異だかが起こって、一度壊滅状態に陥った(?)のちの、架空の近未来を舞台にした話。ブーツをはいて馬を駆り、牛馬を食らって生活する、西部劇のような舞台設定の中で、保安官、ギャング団らがドンパチやる。読んでいる間、なんだか砂埃をずっと感じているような感覚だった。
 常に話が動き続け、確かに退屈はしないのだが、結局この話の何がミステリーなのかさっぱりわからなかった。私の理解力が足りないだけなのか?読むのに時間がかかった割には、見合うだけの満足感は得られず、辛口の評価となった。
 


No.290 6点 ビブリア古書堂の事件手帖5
三上延
(2014/09/14 13:34登録)
 ミステリ以外はそんなに本を読まないので、今回の話でも知っているのは「ブラック・ジャック」ぐらいだが、そういう自分の知らない本の薀蓄は普通に面白い。栞子さんの母親・家族の謎や、五浦君との恋の行方にどんどん傾倒していくのかと思っていたが、作者の言葉で「いよいよ後半」というぐらいだからゆっくり進んでいくようだ。そういうこともあって、最初のようなリドルストーリー集の色が戻った感じがした。
 一冊の構成の仕方も非常に上手い。作者の力量の高さを感じる。


No.289 7点 満願
米澤穂信
(2014/09/14 13:17登録)
 近年めきめき頭角を表してきている著者だが、短編を書いても一流、と思える質の高さ。ハウダニット、ホワイダニットが主体の作品が揃っているが、どれも読者の感心を得るような仕掛けが巧みになされている。
 「夜警」は警察短編の名手・横山秀夫を彷彿とさせるような筆致で警察社会ならではの謎が描かれている。「柘榴」は正直大体の予想はついていたが、「やはり」と思っても怖さは半減しなかった。表題作「満願」は既読だったが、再読しても面白かった。


No.288 7点 アリス殺し
小林泰三
(2014/09/14 09:52登録)
 限られた何人もの人が共通の夢を見て、その夢に従って人が殺され死んでいくという、ある種のパラレル・ワールドもの。夢の中では「不思議の国のアリス」の世界で各人役が与えられ、現実世界とリンクしている。その夢と現実のそれぞれの認識の部分にトリックがあるわけだが、「へぇ、そういことだったのか。なるうほどね」とニヤリとしてしまう面白さがあった。
 残虐さをコミカルに描いてしまうダークな作風は好みが分かれるところかもしれない。私は嫌いじゃない。


No.287 7点 ソーンダイク博士の事件簿Ⅰ
R・オースティン・フリーマン
(2014/09/14 09:20登録)
 「ホームズのライヴァルたち」の一人、名探偵ソーンダイク博士の事件譚。倒叙推理小説の先駆者として名が知られるフリーマンだが、決してそれがメインではないことがこれを読むとよく分かる。かといって純粋なフーダニットでもなく、物語当初から登場する人物が最後に犯人として指摘されるというような形はまずない。メインは、(当時の)科学的な見識を駆使しながら、博士が「事件の在りよう」を解明していく過程にあるといってよい。そして、それが面白い。
 また、博士の人情味のある采配というか、作品として嫌な終わり方がなく、ハッピーエンド的な終末を迎えるスタイルも氏の作品の特徴のように感じる。よって総じて読後感がよい。
 さすが一時代を築いた作家という感じ。事件簿Ⅱも是非読みたい。


No.286 6点 The Best Mysteries 2012
アンソロジー(出版社編)
(2014/09/14 08:24登録)
 湊かなえ「望郷、海の星」、石持浅海「三階に止まる」、大門剛明「言うな地蔵」、三上延「足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』」、両角長彦「この手500万」、詠坂雄二「残響ばよえーん」近藤史恵「ダークルーム」、長岡弘樹「オンブタイ」、長江俊和「原罪SHOW」、高井忍「新陰流“月影"」、杉井光「超越数トッカータ」、深水黎一郎「現場の見取り図 大べし見警部の事件簿」、米澤穂信「死人宿」。
 今を時めく人気作家、気鋭の作家らの名が並んでいるだけあって、どれも短い話の中にうまく仕掛けがされている。クオリティの高いアンソロジー。


No.285 6点 The Best Mysteries 2011
アンソロジー(出版社編)
(2014/09/14 08:08登録)
 年ごとに優れたミステリ短編を集めて出版されているアンソロジー。深水黎一郎「人間の尊厳と八00メートル」、鳥飼否宇「天の狗」、辻村深月「原始人ランナウェイ」が面白かったが、全体的にクオリティーの高いアンソロジーだと思う。
 普段からミステリを読んでいる人には既読作品もあるかと思うが、短編のため再読しても苦にならず、空いた時間に読書を進めるにはこういう一冊はいい。


No.284 4点 ケルベロスの肖像
海堂尊
(2014/05/06 13:56登録)
 前作「アリアドネ」が久々にミステリ路線の色濃い作品で、自分としても非常に良かったので期待して読んだが、完全にエンタメ小説に戻ってしまった。
 これまで登場したキャラの立った登場人物を一挙に登場させ、最後をお祭り的に飾ろうという匂いを強く感じた。読んでいての一番の感想は、「めんどくさい」。劇場的なラストも予想の範疇。むしろこれのためにここまでを描いてきているのがよく分かる構成。
 完結と謳いながら、絶対また続きが出る気がするのだが……


No.283 9点 ポッターマック氏の失策
R・オースティン・フリーマン
(2014/05/06 13:46登録)
 アントニイ・ヴァウチャーが、クイーンの「(なんとかかんとか)重要な10の作品」に物申した際に、自分が10作品に入れるならと本作品を推した論評を目にして、興味がわいて手に取った。
 いや、これはすごくいいですよ!!どうやらフリーマンは倒叙型の作品を確立した功績が大きいとされているようだが、本作はその代表作。犯人が犯行を犯す様が先に描かれ、その後捜査の手が次第に及んでくるのを回避しようとする様子がリアルに描かれている、典型的な形ではあるが、展開がシンプルであるがゆえに無駄がなく、非常に読みやすい。かといって底が浅いわけはなく、主人公ポッターマック氏にかかわる伏線的な謎がうまく組み込まれ、それが物語の魅力をさらに高めている。
 フーダニットの海外古典は、フーダニットであるがゆえに容疑者を少なくすることができず、覚えにくい登場人物名にアレルギー反応を示してしまう人もいると思うが、このような倒叙型の小説はそもそも犯人がはじめから明らかになっているのだからその心配はなく、そういう点でも読みやすいと感じるだろう。
 なんといっても、人情的な最後のソーンダイク博士の采配には多くの読者が「ほっと」するのではないだろうか。それほど犯人であるポッターマック氏に、読者は感情移入してしまう。捜査を間違った方向へ導くために、周囲の目を気にしながら危険な画策をする物語途中のくだりは、こちらも氏と一緒になってドキドキハラハラしてしまう。うまくやりおおせた時には一緒になって「ほっ」とする。
 今読んでもまったく色褪せない、文字通り「不朽」の名作ではないか。はずかしながらフリーマンは初読なので、まずはソーンダイク博士の事件簿から読んでいきたい。


No.282 4点 料理長が多すぎる
レックス・スタウト
(2014/05/06 13:15登録)
 話は面白かった。真犯人も、出所があまりフェアな感じはしないが、まぁ意外な犯人という線ではよくできていると思う。しかし、最後のネロの采配が気に入らない。よって読後感がいまひとつ。
 ただ、ああいうスタンスをとること自体がネロのキャラクターともいえることはわかるのだが。
 海外の高級料理になどまったく縁がないので、料理の話はちんぷんかんぷんだったが、なんだがすごそうで面白さはある。芦原すなおの「ミミズクとオリーブ」シリーズでも似たようなことを感じた。美食家探偵、面白い設定だ。


No.281 8点 白い僧院の殺人
カーター・ディクスン
(2014/05/06 13:02登録)
<ネタバレの要素もあり?>
「雪の密室」で歴史的に有名な作品。本作品の様に偶然が多分に絡んだトリックは、精緻で巧妙に計画された密室トリックが好きな人には賛否両論かも。ちなみに私は賛の方。
 偶然要素がご都合主義のように感じる人はいるかもしれないが、私は逆に現実的な感じというか、要は「別に犯人も密室などつくるつもりはなかったが、結果的に密室状況になった」のを、推理する側が勝手に「巧妙に、知恵を巡らして密室をつくった」と考えて右往左往するのは図式としてはありそうな感じがするからだ。
 もちろんカーはこの密室「トリック」を知恵を絞って考案したのだろうが、作品中で「一部の隙も無く組み立てられたトリック」になっているわけではなく、あくまで作者のカーの精緻さで描かれているところがむしろ好ましい。
 さすが不可能犯罪の巨匠、である。


No.280 7点 星籠の海
島田荘司
(2014/04/27 07:38登録)
 御手洗潔シリーズがちゃんと新しく刊行されることにまず感激。ただ、これが最後のなのか…?
 初めの登場から30年(?)を経過し、御手洗も次第に時代に順応し、「変人」感が和らいできているような印象を受ける。が、常人には理解できない、一足飛びに結論にたどり着く推理は健在で、往年のファンにとっては「待ってました」という感じだろう。
 瀬戸内海の小島に次々と漂着する全裸死体の謎から、カルト宗教団体の陰謀に迫るというストーリーだが、複線的な物語が最後に一つに結び付いていく展開の妙はさすが。歴史ミステリも絡めながら、壮大な構想をここまで形にできることも、やはりさすが。
 事件に関わる謎が最後に解き明かされるという形ではないので、ミステリとしての魅力よりも、複雑に絡み合う諸要素が一つの筋につながっていく面白さの方が強い。上下に分かれた厚みのある作品だが、リーダビリティは高く、飽くことなく一気に読み進めることができる。


No.279 6点 ノックス・マシン
法月綸太郎
(2014/04/27 07:17登録)
 本格黄金期の作家や、作品に出てくる人物が多く登場し、ミステリとしての楽しみよりも、ミステリファンとして面白さを感じられるSF作品。特に海外古典ミステリについての知識があるかどうかで、面白さを感じるかどうかが分かれてくるので、万人受けする作品ではなく、むしろ内輪ネタのような感じ。
 アーサー・ヘイスティングズ大尉ら、往年の名探偵の助手として名を馳せた面々が登場する「引き立て役倶楽部」は面白かった。「バベルの牢獄」は仕掛けのみにこだわった短編で、書かれているSF的論理を理解しようなどとは思わず読み流していかないと苦痛なだけ。それは「ノックス・マシン」「論理蒸発」にも同じことが言えて、とにかくよく分からない架空の科学の話は読み飛ばしていくことが作品を楽しむコツ。


No.278 4点 闇の喇叭
有栖川有栖
(2014/02/16 18:01登録)
 探偵行為が罪になるという仮想設定のために、日本が北海道と分裂するという政治的な設定は必要か……?とも思うが……
 主人公=探偵役が女子高生ということで、学生アリスシリーズよりぐっと青春ミステリ的な雰囲気が強いと感じる。「氏らしい」という評価もここでの書評で多く見られるが、私としては新境地の開拓という印象の方が強い。で、結果として…今までの作風の方が好き。
 もともとあまりミステリに青臭い青春要素は求めない。それでも謎解きの方が濃ければまぁ気にしないのだが、肝心のそちらがこの作品ではちょっと消化不良。というか、面白いんだけど、このぐらいのトリックは短編向きではないか。
 「論理爆弾」を先に読んでいて、そっちの方が面白かった。


No.277 7点 暗黒女子
秋吉理香子
(2014/02/16 17:50登録)
 聖母女子高等学院のカリスマ女子高生、白石いつみの主宰する文学サークルは、お眼鏡にかかって彼女に声をかけられた子のみが所属する、女生徒たちの憧れのサークル。その白石いつみが謎の死を遂げる。
 物語は、その文学サークルの定例会、「闇鍋」で幕を開ける。残されたメンバーが自作の小説を一人一人暗闇の中朗読していくのだが、その内容は全て、それぞれがサークルメンバーをいつみ殺しの犯人として名指しする内容。会は「告発」の場となり、メンバー=容疑者たちの知られざる姿が次々暴かれていく。
 いわゆるダーク系女子のお話。これがなかなか面白い。まぁ物語ならではの非現実的なお話なわけだが、それはそれで。文学サークルメンバーの各キャラ立てがしっかりしていて、一つ一つの章=物語による告発がそれぞれ読ませる内容。最後に暴かれる真相も予想を上回っており、結構どんでん返しな感じがした。ライトなタッチで読みやすく、ミステリとしてもなかなかのもので、オススメ。


No.276 5点 厭な小説
京極夏彦
(2014/02/16 17:30登録)
 読みやすいホラー系(かな?)の連作短編集。「死ねばいいのに」と同じような感じだね。読ませる筆力はさすが。
 最初の「厭な子供」と、最後の「厭な小説」が自分としてはよかった。すぐに読めるし、ちゃんと楽しめる。
 それっぽい装丁も味があっていい。


No.275 6点 五匹の赤い鰊
ドロシー・L・セイヤーズ
(2014/02/16 17:25登録)
レッド・へリングというんですか、こういうの。ある容疑者がさも怪しいように描かれながら、真相は別のところにあるという。完全に推理・謎解き主体で物語が進むので、好みではある。が、「5匹」は多いかな・・・。
 結局、それぞれが「均等に」怪しく描かれなければレッド・へリングにならないから、複数の容疑者それぞれについてそれらしい推理が組み立てられる分、物語が冗長になる。その上、本作品ではその推理に「アリバイ」が深く関わってきて、さらにその解明に電車の時刻や地理的な要素などが関係してくるので、非常に複雑だった。それぞれの関係性が一目でわかるよう表にまとめられているページとかがあるとよかったのだが……
 「ナイン・テイラーズ」で教会の鳴鐘術の知識が下敷きになるのと同様、この作品でも絵画美術に関する知識が真相に関わってくる部分があるが、それについてはそれほど苦にならずに受け入れられた。お酒を嗜みながら、気ままにキャンバスに絵を描き、日がな一日釣り糸を垂らすなんていう悠々とした雰囲気、ミステリ的な部分以外のそういう楽しさが、セイヤーズ作品にはあると思った。

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