星籠の海 御手洗潔シリーズ |
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作家 | 島田荘司 |
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出版日 | 2013年10月 |
平均点 | 5.69点 |
書評数 | 13人 |
No.13 | 6点 | zuso | |
(2020/07/09 20:21登録) 奔放な想像力で現在と過去を結びつける剛腕ぶりに唸るばかり。上下巻の大作だが読み始めたら止まらない。 |
No.12 | 4点 | エイス | |
(2019/01/05 17:28登録) 御手洗潔ってこんな人物だったか。。? もっとユーモアがあり親しみやすい人物だったような。。石岡に至っては空気にもほどがある。2人がゲイカップルに間違われるという場面があるが、今作の御手洗潔にはそう思わせる色気や隙が無い。せっかく石岡君と行動してるんだから2人が仲よさげに会話しているところをもっと見たかった。 警察が御手洗のいいなり過ぎてトントン拍子に捜査が進むのも物足りない。 ストーリーは読み手に推理させる要素はほとんどなく、こうなるんだろうなと思う方向に進む。黒幕のパク自身が全然出てこない一方で脇役の人物描写が長く、前置きが長い割に結末もあっけない。星籠の話とカルト教団をもっと関係あるものにしてそこに主軸を持ってきたらよかったのに。 昔の御手洗潔シリーズのようにまた心躍らす作品を読みたい。お願いします、島田先生。 |
No.11 | 5点 | E-BANKER | |
(2017/06/03 21:57登録) 単行本として2013年に発表された本作。文庫版上下分冊にて読了。 作品の時代設定としては、『ロシア幽霊軍艦事件』の後に位置するとのことで、御手洗が海外に旅立ってしまうちょっと前という記念碑的作品(らしい) ~瀬戸内海に浮かぶ小島に、死体がつぎつぎと流れ着く。奇怪な相談を受けた御手洗潔は石岡和己とともに現地・興居島へ赴き、事件の鍵がいにしえから栄えた港町・鞆の浦にあることを見抜く。その鞆では、運命の糸に操られるように一見無関係な複数の事件が同時進行で発生していた! 伝説の名探偵が複雑に絡み合った難事件に挑む~ 福山市かぁー 実際に数年間住んでいた街だけに思いもひとしお、っていう感覚。作中で福山の刑事たちがしゃべる方言も今では新鮮に感じる。(「・・・しちゃった」とか) 特に鞆の町は名所や建物(「鴎風亭」などなど)がそのまま登場していて、潮の香りまでも思い出してしまうようだった。 福山市が島田荘司の故郷ということは、「福山ばらの街ミステリー文学新人賞」を持ち出すまでもなく、いまや有名な話。 本作は「映画化」ありきで始まった企画のようで、それを意識したプロットなのだろう。 ただし、そのため何とも居心地が悪いというか、ムズムズしたような読後感になった。 それは多分に御手洗に対する違和感に違いない。 過去の著名作では、常に“人を喰ったような”、それでいて、底辺には博愛心を感じるような、最後には心が温かくなる・・・そんな存在だったはず。 対して本作の御手洗はどうだ? 冷徹な探偵ロボットのような存在として書かれているようにしか見えない。悪くいえば「血が通ってない」ように思える。 ミステリー書評としてこんなこと書くのもどうかとは思うけど、特別な存在であるだけにどうにも首肯できないというか、「昔がよかった!」という感覚になってしまう。 まぁ、私自身も島田氏も年を取ったということなのかな? とっくに円熟期に入った作者だし、今さら若き頃の作風にしろと言われても困るよねぇ・・・ 今回は脇筋の視点人物多すぎだし、御手洗・石岡の捜査行(?)的なシーンが少なすぎたのも原因なのだろう。 これだけの大作なのに心躍る読書には遠かったかな。 (まさか常石造船の会長がこんな大活躍をするとは・・・。当然本人も公認なんだろうな) |
No.10 | 4点 | 響の字改 | |
(2017/05/19 17:24登録) ・・・多分御大は「冒険小説にシフトした中後期ホームズ物」のバスティーシュをやろうとしてプロットを固め切れないまま書き出したんだ。 そう思う事にしよう(落胆) 上下巻で出して映画化までされたんだからさぞ!と思い読み進めたんだけど 完璧超人と化し「内調の友人が」とか言っちゃったり そのくせ変人色は殆ど出さず 中盤にお色直しの衒学のひとつも語ってくれず 冷静に考えれば後手で分析はすれど推理らしい推理はしない体たらく 昔のおもしろ御手洗さん帰ってきて(´;ω;`) 重要人物のキャラクターを掘り下げず割にどうでもいい人物のパートに尺を使う。○○艦の下りとかもっと初期長編ばりのオカルト奇想で盛り上げればもっと面白いのに、とか全編に漂うモヤモヤ感。 あとラノベばりの手を抜いた会話パートも気になりました。 ページ下部が白いよ御大。もっとワクワクさせて頂きたい(切実) |
No.9 | 7点 | 測量ボ-イ | |
(2016/07/23 20:17登録) 相変わらず、これいらないのでは?という話しもありましたが、 全体的には好印象。面白かったです。 一口でいうと、瀬戸内海って奥が深いんですね。あと鞆の町も。 基礎点6点に、映画化を記念して(?)プラス1点。 |
No.8 | 6点 | 鷹 | |
(2016/07/18 09:40登録) 御手洗シリーズ久しぶりに読みました。 歴史とトラベルミステリーを楽しめました。 |
No.7 | 5点 | ia | |
(2016/07/04 23:04登録) 3人のサブストーリーがあるが 彼らは宗教団体ボスを倒すきっかけになったからスポットが当たったんだろう。 でもボスはよくわからない奴で別に逃げられようとどうでもいい。 星籠というテーマと関係無いし。 海を守るため疾走し、トリを飾った人。彼にほとんどスポットを当てなかったせいで、全く感情移入できないラストになっている。 全体的に散漫なので他人に勧められる本じゃない。 御手洗が出ているシーンは面白い。推理も犯人を追いつめる手管も素晴らしい。 ただ妙にヘタレになっている箇所があって意図がわからない。 |
No.6 | 7点 | Tetchy | |
(2016/05/11 23:48登録) 本書は文庫で上下1,140ページ物大長編であるが、文字のフォントが大きいため(文庫版で読みました)、90年代に毎年のように記録を更新するが如く刊行された大長編ほどの大部では無いように感じられる。そして物語の枠組みはそれらの作品で見られた様々なエピソードをふんだんに盛り込んではいるものの、全てが御手洗の扱う事件も含めて広島県の鞆という町が舞台となっている。 御手洗が今回扱う事件は愛媛県の松山市の沖合にある島、興居島で頻繁に死体が流れ着く怪事から物語は幕を開け、やがてその源である福山市の鞆に行き着き、そこで新興宗教が起こした奇妙な征服計画に対峙する。 この物語を軸にして他に3つのエピソードが盛り込まれるのだが、特に小坂井茂という端正な容姿だけが取り柄の優柔不断な男が辿る、女性に翻弄される永遠のフォロワーの物語が後々事件の核心になってくる。一歩間違えば誰しもが陥るがために実に濃い内容となっていてついつい先が気になってしまうほどのリーダビリティーを持っている。 小坂井茂自身が事件を起こすわけではない。この主体性の無さゆえにその時に出遭った女性に魅かれ、云われるまま唯々諾々と従いながら人生を漂流する彼の生き方が自分を犯罪へと巻き込んでいく。つまり何もしない、何も考えないことが罪であると云えよう(ここで重箱の隅を1つ。小坂井の友人田中が経営する自動車整備工場でガソリンをポリタンクに入れているという件があるが法律では禁じられているのでこの辺は重版時に修正した方がいいかと)。 また今回御手洗が立ち向かう相手は日東第一教会というネルソン・パクなる朝鮮人によって起こされた新興宗教というのも珍しい。最終目標の敵が明らかになっていることも珍しく、いかに彼を捕えるかを地方の一刑事である黒田たちと共に広島と愛媛を行き来する。とにかく今回は御手洗が瀬戸内海を舞台に縦横無尽に動き回る。私は読んでいてクイーンの『エジプト十字架の謎』を想起した。 この日東第一教会、恐らくある実在する新興宗教をモデルにしているのだろうが、本書に書かれているようなことが実際に行われていると考えると実に恐ろしい。社会的弱者に対してこのような宗教は巧みに心に滑り込み、救済という名目で洗脳を行う。それは自分も含め、誰しも起こり得ることであるが故に縁がなくて本当によかったw そしてそれに加えて星籠なる兵器を巡る歴史ミステリ要素も含んで盛りだくさんの本書は比較的万人受けするミステリだろう。 ドイルが築いた本格ミステリに冒険的要素を加えた正統な御手洗ミステリの復活を素直に喜びたい。とにもかくにも故郷を舞台にした島田の筆が実に意欲的で、作者自身が渾身の力を込めて書き、また愉しんでいるのが行間から滲み出ている。本書は映画化が進行しているとのことでそちらも愉しみだが、それを足掛かりに国内のみならず世界を駆け巡る御手洗の活躍をスクリーンで今後も観られることを期待しよう。 |
No.5 | 7点 | HORNET | |
(2014/04/27 07:38登録) 御手洗潔シリーズがちゃんと新しく刊行されることにまず感激。ただ、これが最後のなのか…? 初めの登場から30年(?)を経過し、御手洗も次第に時代に順応し、「変人」感が和らいできているような印象を受ける。が、常人には理解できない、一足飛びに結論にたどり着く推理は健在で、往年のファンにとっては「待ってました」という感じだろう。 瀬戸内海の小島に次々と漂着する全裸死体の謎から、カルト宗教団体の陰謀に迫るというストーリーだが、複線的な物語が最後に一つに結び付いていく展開の妙はさすが。歴史ミステリも絡めながら、壮大な構想をここまで形にできることも、やはりさすが。 事件に関わる謎が最後に解き明かされるという形ではないので、ミステリとしての魅力よりも、複雑に絡み合う諸要素が一つの筋につながっていく面白さの方が強い。上下に分かれた厚みのある作品だが、リーダビリティは高く、飽くことなく一気に読み進めることができる。 |
No.4 | 5点 | 虫暮部 | |
(2014/01/16 13:21登録) 御手洗潔シリーズで上下巻、となるとそれだけでもう驚天動地の大トリックを期待してしまうものだが、本作はそういうものではなく、寧ろ人の世の諸々が絡み合って生み出す不可解なタペストリー、といった類の作品。“難病の子供”というベタな要素を持ち込むのはズルい、とはいえ面白かった。 しかし先入観ゆえの物足りなさも否めない。これ、御手洗モノである必然性は希薄なんじゃないの?ノンシリーズにしてニュートラルな気持ちで読ませたほうが楽しめたんじゃないの?という気もする。 |
No.3 | 6点 | アイス・コーヒー | |
(2014/01/06 16:32登録) 御手洗潔国内編最終章―瀬戸内海を舞台にして、御手洗達が凶悪犯を相手に行ったり来たりする大長編なのだが、トラベルミステリーっぽさが多くてそれ故ミステリーとかエンターテイメントとしては並。 事件にかかわってくるのはかつて瀬戸内海を支配した村上海賊の秘密兵器「星籠」。それをめぐって海辺の町・鞆で事件は進み、歴史ミステリー的要素もある。もともと映画化を前提に作った話であるためスケールが大きく、そこそこの面白さがあるのだが御手洗シリーズをついに映像化するなら、もっと謎解きを多用した方が良かったように思う。しかし、犯人の自白を引き出すためにあんなことをするとは…驚き。 発想や展開はさすがで、長いながらも飽きずに読めたので、島田先生には今後も頑張って執筆して欲しい。 |
No.2 | 6点 | kanamori | |
(2013/11/14 18:50登録) 四国松山沖の島湾に複数の死体が流れ着く謎めいた事件の依頼を受けた御手洗と石岡は、古来からの瀬戸内海航路の要衝である福山・鞆の浦に事件の核心があることを突き止める--------。 ”時計仕掛けの海”こと瀬戸内海を舞台にした、歴史ロマンと冒険スリラーを併せたような大作です。全盛期の完成度には遠く及ばないですが、謎の水死体から始まり、信長の鉄板船や黒船対策にも関係したとみられる村上水軍の秘密兵器「星籠」の謎、新興宗教団体の暗躍、赤子誘拐事件など、ネタが次々繰り出される島荘節が楽しめた。ただ、地元青年を巡る男女のサブストーリー的な物語が長々と語られることでリーダビリティを損なう構成上のバランスの悪さが気になりました。 御手洗シリーズ国内編の最終章ということもあってか、主舞台が作者の出身地福山に近い港町・鞆に設定されていますが、個人的にも思い出のある地なので、風景描写に懐かしさを覚え読後感は良好。(よって+1点加算しましたw) |
No.1 | 6点 | mozart | |
(2013/10/20 13:57登録) 図書館に予約注文してからそれほど待たされずに上下巻ともゲット。同じく発売日当日に予約注文した東野圭吾の「祈りの幕が下りる時」は、未だに9人待ち(全体では既に170人待ち)でゲットできずにいることに比べると・・・。それでも読み始めたらそのまま止まらなくなって、ほぼ数時間で一気に読了しました。御手洗がほぼ全編にわたって登場していますが、「変人ぶり」は影を潜めていて、胸のすくような謎解きをするわけでもなく、ミステリーというよりエンターテインメントに軸足が置かれた作品だと思います。ちなみに、石岡に至っては早い段階で存在感がほぼゼロになっているようです。で、率直な感想を述べると、例えば同じく御手洗の「ヒューマン」モノと言える「異邦の騎士」とか、吉敷モノではあるものの、心の中を「抉られる」ような重い読後感だった「涙流れるままに」なんかと比べると、ページ数のわりには中身が軽めで、途中のエピソード群もやや扱いが中途半端で、伏線としてカチッと回収できていないような印象も残りました。まぁ、久々に「御手洗モノ」の長編を読めた、ということで少し得点も甘めになったかも。 |