home

ミステリの祭典

login
HORNETさんの登録情報
平均点:6.34点 書評数:1234件

プロフィール| 書評

No.354 6点 その可能性はすでに考えた
井上真偽
(2015/12/31 18:40登録)
 「その他の可能性をすべて排除する」という逆説的な方法で「奇跡」を証明しようとする探偵の前に、考え得る現実的な(正確にはあまり現実的ではないので…「どんなに不自然でもロジック上可能な)解明を次々と突き付ける挑戦者(?)という体のお話し。探偵への各刺客をかわした後に、その反撃がもとになってつきつけられる課題、という全体を通す仕組みはうまいなぁと思った。
 作品の雰囲気として、円居挽の「ルヴォワールシリーズ」に近いものを感じたのは私だけ?絶世の美男美女が探偵や刺客を務める枠組みは、ラノベテイストな感じもなくはないが、仕組まれたロジックが決して「ライト」などとはいえないレヴェルにある。登場人物の格式の高さを描こうとしたためか、修辞がうるさすぎるきらいはあるが、深く考えられたプロットに舌を巻く面白さがあるのは間違いない。


No.353 5点 仮面病棟
知念実希人
(2015/12/17 21:32登録)
 古本で購入したので知らなかったが、メルカトルさん曰く帯に「怒涛のどんでん返し!一気読み注意!!」とあるそうだ。ただ、最近の「どんでん返し」を謳う作品全般に多いのだが、「この後、まだどんでん返しがあるよ!」ということが内容的にも雰囲気的にも「わかってしまう」のがどうも…。本作品もその一つ。だから帯で謳うような衝撃はない。
 さらに、そこで明らかになる真犯人も、ミステリを読み慣れている本サイトの読者なら半分以上予想通りだと思う。だから読後の印象は「そうだったのか!」よりも「やっぱりそうだったか」である。
 ピエロのマスクをかぶった男が登場する、といったC.Cらしい序盤は非常に良かったし、その後もスピード感のある展開だったことは間違いないのだが、予想を遙かに超える仕掛けだったとは言い難い、といったところ。
 よく考えられたプロットではあった。著者の今後に期待したい。


No.352 6点 書斎の死体
アガサ・クリスティー
(2015/12/17 21:19登録)
何をするにしても、「やってないこと」で「やりだすと かかりそうなもの」は二の足を踏み続けるもので…。いや何が言いたいかというと、クリスティ好きなんだけど、ずっとポアロに偏っててミス・マープルものは初めて読んだ。
 基本的に事実が順に示されて、途中の推理過程はほとんど抜きで探偵役の推理がズバッと入ってくる感じはやはり同じような感じ。ただ、それでもポアロは割と行ったり来たりするけど、マープルは事実が分かったら直線距離で真実が見えてくる感じで、こっちのほうが天才肌な感じがした。
 これはクリスティ作品に往々にして感じることだけど、仕掛けの一番の胆は「動機」。もう少し大きく言えば「事件の枠組み」ということで、それが後段に根本から大きく揺るがされるから、意外性が高まるのだと思う。そして「いかにもコイツが怪しい」という特定の人物を前半で作らないから、あざとさがなくてよい。
 とりあえず、クリスティ作品でマープルものにも手を広げた点で、個人的には意義があった(笑)


No.351 5点 テミスの剣
中山七里
(2015/12/12 21:06登録)
 「ミステリ」という観点から見ればそう評価は上がらないかも。基本的に「冤罪」を題材にした社会小説の色が濃いかな。それが一本太い幹としてあって、枝葉にミステリが数点添付されている、といった印象。
 しかも、その「枝」は根元から分かれている感じじゃなく、幹のかなり上の方で枝分かれして一本一本も短い。つまり、話のかなり後段になってこれまでなかった事実がでてきて、急展開する。それでも一番の黒幕はかなり前からなんとなく予想がついていて、急展開の部分が「答え合わせ」のような感じになってしまった。
 冤罪をテーマにおいた話自体は面白く、リーダビリティは高かったので非常に読み易かったし、先に述べた後半の急展開もなんだかんだいって「面白くなっってきたぞ」という印象はあったが、話全体の仕掛けに関してはやはり弱く、いわば「冤罪テーマの社会小説をなんとかミステリ要素も盛り込んで仕上げた」作品という感じ。
 警察小説の疾走感が好きな人には好まれそう。ここまで書いておいてなんだが、基本は面白いと思う。


No.350 6点 ゴースト・スナイパー
ジェフリー・ディーヴァー
(2015/12/07 21:02登録)
 楽しく読めたことは間違いないのだが、充足感という域にまでは至らず、それがなぜなのか模糊としていたが、ここまでのお二方の書評にそれを教えていただいた。
 1日ごとを追うお決まりの章立てで、スピード感、臨場感は変わらずあってよいのだが、そうか…なるほど…確かに「敵が小物」ね。それは当然組織の大きさとかそういうことじゃなくて、手ごわさとかそういうことね。
 あと、微細証拠物件を収集して緻密に論理的に詰めていくのがライムの手法だけど…ラストの展開などはちょっと神がかりに飛躍しすぎ。大味なハリウッド映画みたいな詰め方だったなぁ。
 個人的にうれしかったのは岐阜県関市のナイフ(要は包丁)が出てきたこと。まぁいい使われ方ではないけど。


No.349 7点 三幕の殺人
アガサ・クリスティー
(2015/11/25 22:03登録)
<ネタバレ要素有>
読んでから知ったのだが、この作品では創元版とハヤカワ版でなんと犯人の動機が全く違うそうな。私が読んだのはハヤカワ版で、ポアロが最後まで悩んでいたのはその動機の部分(悩んでいたのは第一の殺人だったようなので…確か。そこは両者同じらしいが)なので、結構評価に影響するのでは、と勝手に憶測した。提案だが、今後本作品の書評は創元版か、ハヤカワ版か明記してはどうか?
 真相は予想外で、読んだ甲斐があると思える面白さだった。読者の情をさんざん引き寄せておいて、あっさり(?)切り捨てるどんでん返しに感じる人もいるかもしれない。だからこその「やられた」感はある。さすがで、上手いと素直に思う。

 サタースウェイト氏は本作品の中心的人物だが、非常に良い意味で余分な温度がなくてよい。冷たい人間という意味では決してなく、客観的に事件を俯瞰する役割として非常に機能している。多くの読者が共感的感情を抱いて読む感じがする。ある意味読者視点の代替機能を担っていると思う。
 発想・着想としては「ABC」に類似したものを感じないこともないが、全て読後の概観である。高いリーダビリティに牽引され、一気読みしてしまったことは間違いない。


No.348 3点 !!
二宮敦人
(2015/11/08 21:12登録)
 ラノベテイストのホラーだが、特に「アナタライフ」は自己満足哲学を延々と読まされて苦痛だったうえに、たいしたオチでもなく、全体的にクオリティの低さを感じた。大して深みのない話なので、前作「!」ぐらいの1話のボリュームで十分。


No.347 7点 越境捜査
笹本稜平
(2015/11/08 21:05登録)
 14年前迷宮入りとなった、12億円を騙し取った男の殺人事件。捜査一課の鷺沼が捜査を進めるうちに、背後には暗躍する警察官僚の薄汚い実態が見えてきた。その真相を暴くことは巨大な警察組織に刃を向けることになる。青臭い正義感でも規範意識でもなく、かけがえのない尊敬する先輩刑事のために、あえて戦いを挑む鷺沼。組織から外れた不良刑事、ヤクザまでも仲間に取り込み、命がけの捜査が始まる。
 警察小説らしいスピード感のある展開や、武骨で小気味よい登場人物同士のやりとりに乗せられ、一気に読めてしまう。決して清廉潔白ではない主人公鷺沼をはじめとして、登場人物のキャラが立っていて物語に味を出している。尊敬する先輩刑事・韮沢の真意を、信頼と疑念がないまぜになりながら推し量り、その解明のために奔走する後半の展開は痛快。著者の作品は初めて読んだが、まずはこのシリーズは手を付けてみようと思える作品だった。
(前出の江守森江さんの書評が、言い得て妙で笑えます)


No.346 6点 嗤う淑女
中山七里
(2015/11/08 18:11登録)
 最近一番気に入っている作家、中山七里。
 類稀なる美貌と、卓越した人心掌握術で人の人生を狂わす希代の悪女、蒲生美智留を描いた連作短編集。
 蒲生美智留の知能的な悪女ぶりを効果的に描くことが主であるのはわかるが、ちょっとご都合主義が過ぎるきらいはある。昨今巷に蔓延っている各種詐欺もこんな感じなのかもしれないが、それにしてもこうも思い通りに人の心を操れるものか…疑問。結構衝動的な犯行なのに、こんなにバレないものか…?というところもある。
 最後の章は面白かった。一番作者らしさが表れていた。


No.345 6点 ペトロ
今野敏
(2015/11/08 17:28登録)
 妻と二番弟子が相次いで殺され、現場にはそれぞれ「ペトログリフ」が刻まれていた。ペトログリフとは古代の神代文字。犯人によって残されたと思われるこの記号の意味は?警視庁捜査一課の碓氷弘一は、その道の専門家であり論理的思考の持ち主、アルトマン教授に協力を仰いで捜査を進める。

 リーダビリティの点では相変わらずの安定感。ただ今回は(もとが新聞連載のため?)やや冗長で無駄な展開があった感じもした。

 現場に残されたペトログリフという、意味深な始まりでつかみはOK。そこに考古学の学派の争いが絡んできて、「フムフム」と思いながらなかなか興味深く読み進められる。捜査一課の刑事と考古学教授という異色のコンビも面白みがあり、やや冗長な展開もあったがまぁさくさくと読めた。

 真相については、動機がミソかなと思う。「そういうことか」と肯定的に受け止める読者もいれば「なんだそりゃ」と感じる読者もいるだろう。肝心のペトログリフの意味についても同様。私は…うーん…微妙かな。


No.344 9点 ヒポクラテスの誓い
中山七里
(2015/10/12 08:32登録)
 法医学教室を舞台とした連作短編。
単位不足のため、法医学教室に入ることになった医大研修医の真琴。真琴を出迎えたのは法医学の権威・光崎藤次郎教授と「死体好き」な外国人准教授キャシー。傲岸不遜な光崎だが、解剖の腕と死因を突き止めることにかけては超一流。光崎は、懇意の古手川刑事に「管轄内で既往症のある遺体が出たら教えろ」という。警察が単純な事故で処理しようとする、何の事件性もない遺体を強引に司法解剖に回す光崎に、周りからの反発は強い。だが、解剖のたびに老法医学者は隠れた真実を導き出す。
 天才法医学者によって、事件の真相が明らかになっていくという設定は、横山秀夫の「臨場」を思い出させる(こちらは検視官だったが)。一匹狼的な雰囲気で他を寄せ付けないが、有無を言わせぬ実力で他を黙らせてしまう光崎のキャラクターが痛快。警察や検視官の誤った診断、そこにある不遜や怠慢を一刀両断する、勧善懲悪のような要素が読んでいて小気味よい。被害者、加害者が絡むヒューマニズム的要素も各話に感じられ、さすが中山七里、読ませる筆力である。


No.343 8点 葬儀を終えて
アガサ・クリスティー
(2015/10/12 08:22登録)
アバネシー家の当主リチャードの、病気療養中であったとはいえ、あっけない突然の死。その葬儀の席で、末の妹のコーラが無邪気に口にした一言―「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」・・・すると次はそのコーラが惨殺される。不信を抱いたリチャードの親友でもある弁護士は、ポアロに真相の究明を依頼する—

 物語が進むにつれて輪郭が明らかになっていくリチャードの親族の人物像が、さらに謎を深くしていくとともに、一方で次第に真相に近づいていく予感でゾクゾクする。ヘレンが葬儀の場で感じた「違和感」に気付いた場面は読んでいて背筋が寒くなった。

 見事にしてやられた。やはりクリスティは天才だ。


No.342 4点 道徳の時間
呉勝浩
(2015/09/27 17:35登録)
ビデオジャーナリストの伏見が住む鳴川市で、地元の名士である青柳家の陶芸家、青柳南房が不審な死を遂げた。自殺として淡々と処理されていくが、以前からよくない噂が絶えなかった南房の死にはさまざまな憶測が飛ぶ。そんな中、現場に異様なメッセージが残されていたことから事件の様相は急変する—「道徳の時間です。殺したのは誰?」
 一方、鳴川市で昔起きた殺人事件。既に逮捕され、犯行も認めて服役している向晴人。そのドキュメンタリー映画を作成するという越智冬菜という女性に、映画のカメラマンとして依頼を受ける伏見。有能なことは間違いないが、何か含むところがありそうな越智に疑念を抱きながらも、依頼を受ける伏見だったが―。

 意味ありげにさまざまな謎が提示される前半、その謎の立て方は確かに魅力的で、引き込まれるものがあった。だが、だからこそ高まった期待を受け止めるだけの結末を読者は求める。その点で完全に期待を裏切られた。「……なんだそりゃ」が正直な感想。
 巻末の、池井戸潤の選評が全て。まったくもってその通りだと非常にうなずける。


No.341 4点 謝罪代行社
ゾラン・ドヴェンカー
(2015/09/27 16:50登録)
 よくできているし、読み進めるのがそれなりに楽しいのは間違いないのだが、この手のサスペンスが昨今世にあふれている気がして、突出してよいとは感じない。
 何よりも、この「謝罪代行社」というタイトルに惹かれて手に取ったのに、結局その謝罪代行業は事件に巻き込まれるきっかけになっているだけで、本筋とはあまり関係がない。そこが一番期待外れだった。話の中で謝罪代行業が出てくるところなどほとんどないし、その業種や業務形態が本筋に関わってくることはほぼ皆無(ゼロではないけれど)。
 別のタイトルにしてほしかった。


No.340 6点 化石少女
麻耶雄嵩
(2015/09/20 22:31登録)
 学内で次々と起こる殺人事件について、化石オタクの女子高生がそのお守り役の男子高生に自分の推理を開陳する。「あり得ない」とスルーされ、現実では別の解決がされていくのだか、どうやら主人公の推理の方があたりらしい…という、いかにも麻耶作品らしい短編集。
 そうした設定による面白さがむしろメインで、各章の事件でのトリックは小粒なカンジ。偶然要素により成り立ったトリックも多い。
 というわけで、麻耶作品としても小粒な出来という感じが強かった。


No.339 7点 三角館の恐怖
江戸川乱歩
(2015/09/20 22:24登録)
 お酒を飲みながらこのサイトをフラフラするのが至福の時なのだが、そんな中で書評が目に留まり、急に読みたくなって読んだ。
 子供のころ「少年探偵団シリーズ」のものを読んだ記憶があり(ということはそちらは明智小五郎だったか?)、エレベーター内の殺人だけ妙に記憶があった。
 創元推理文庫で読んだのだが、内容もさることながら、連載当時のそのままの体裁で、挿絵などが施されていることがすごくよかった。
 2015年の現代では昔以上に現実との隔たりが大きく、逆にそれがよくて妙に懐かしさを感じて読んだ。
 海外作品の翻案ということだが、その本家を知らないので単純に面白かった。トリックは今となってはチープだが、もともとそれよりも愛憎劇、動機の方が作品の魅力ということで納得。
 読んでよかった。


No.338 7点 致死量未満の殺人
三沢陽一
(2015/09/20 22:16登録)
 トリックは、「よくぞそこに着目した!」と思う秀逸な着眼点。その点では満足。過去の焼き増しや、諸要素の複合ではない、一点モノという感じがした。
 鼻についたのは、青臭い心理描写や人物描写。今後磨きをかけていただきたい。
 また、トリックが秀逸なだけに、下手な偶然要素でここまでかさを増す必要はなかったのではにかとも思う。「これが最終の真相ではなくて、実は…」の仕掛けは、やっても花帆まででよかった。最後は自分としてはくどかった。
 ミステリとしての出来はかなり上々だと思う。


No.337 8点 死のドレスを花婿に
ピエール・ルメートル
(2015/08/30 19:47登録)
 第2章の冒頭を読んだ時に、仕掛けはわかる。このサイトの投稿者ならおそらくみなそうだろう。
 しかし真相解明が主のストーリーではないのでそこからがむしろ面白い。終わり方はちょっとあっけなかったが、痛快な締め方なので〇。
 「アレックス」と似たような、物語全体に仕掛けられているスタイルだが、その発想や構成は斬新な感じがして、こういうネタがいくつもあるのならこの作家はすごいと思う。
 とても楽しめた。


No.336 6点 後妻業
黒川博行
(2015/08/30 19:32登録)
 老い先短い資産家の男を籠絡して財産をかすめ取る「後妻業」。稼業としてやっていないだけで、実情はそう、というケースは芸能界の年の差婚とかで実際あるんじゃない?(笑)
 裏稼業の世界で生きるギラギラした人間性、悪趣味なブランド志向、金への執着がよく描かれている(知ってるわけじゃないけど・笑)。後妻業者・小夜子と、仲介役の柏木の悪行が暴かれていくのが本筋だが、暴いて追及していく側もクリーンな人間ではなく、「らしい」感じがして作品に雰囲気をもたせている。
 ただ、ラストはえらく尻切れトンボな感じがしてしまったなぁ。もうちょっと丁寧に決着つけてほしかった。


No.335 5点 ナミヤ雑貨店の奇蹟
東野圭吾
(2015/08/20 17:20登録)
 「ナミヤ」という名前を「ナヤミ」とからかったことから始まった雑貨店の悩み相談所。店主もとうにこの世を去り、今や廃屋と化した雑貨店に逃げ込んだ空き巣3人組に起こる、不思議な出来事。ハートウォーミングなファンタジーもの。
 児童養護施設に纏わる人間関係で、全体を通して次々につながっていく構成はさすがだが、ちょっとミエミエ感があったかな。後半になると登場した瞬間、「きっとあのときのあの人だ」とわかる。
 第2章の「魚屋ミュージシャン」の話が一番よかった。父親の生き様にもグッと来た。

1234中の書評を表示しています 881 - 900