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ミステリの祭典

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HORNETさんの登録情報
平均点:6.32点 書評数:1163件

プロフィール| 書評

No.643 5点 推理は一日二時間まで
霧舎巧
(2019/09/25 21:42登録)
 元カラオケボックスを改装して立ち上げたレンタルルーム「秘密基地」。美貴という女性が経営するそのレンタルルームには、戦隊ヒーローもの、アイドルなどさまざまなジャンルの「オタク」が日々集う。そんな一風変わった場所で、さまざまな謎の出来事が巻き起こるという日常の謎モノ。

 エンタメ読み物として割り切って読めば、そこそこ楽しい。ラストの話で最初からつながる謎の真相が解明される、という近ごろの連作短編のパターンも踏襲。軽~い感じに色づけられたキャラ性によりちりばめられるユーモアもまぁこういうタイプの作品では標準的。


No.642 4点 こうして誰もいなくなった
有栖川有栖
(2019/09/25 21:28登録)
「有栖川小説の見本市」と帯に謳われているが、これまで各所で書きながら、適当な収録のしどころがなかったものを集めて出版した印象だった。
 「見本市」とはうまい言い方をしたと思うが、見方を変えればジャンルもサイズも統一性のない作品の集まりとも言え、ミステリではないものも含まれる。私は氏のかなりのファンで、それは極めてオーソドックスなフーダニットの本格ミステリを提供してくれるところにあるので、本短編集はイマイチであった。
 表題作でもあるラストの中編が私が思うところの「有栖川有栖らしい」作品。


No.641 7点 だから殺せなかった
一本木透
(2019/09/25 21:21登録)
 第27回鮎川哲也賞最優秀賞受賞作。
 首都圏で殺人事件が連続して起こった。一見関連のないそれぞれ関係がないように見えた事件だったが、現場に残されたたばこの吸い殻から同一のDNAが検出され、同一犯による連続殺人事件とみなされる。そんな折、太陽新聞の記者・一本木透のもとに「ワクチン」と名乗る者から犯行声明と挑戦状が届く。「おれの殺人を言葉で止めて見ろ―」。一本木は、新聞紙面上で「ワクチン」とやりとりをしながら、独自で事件について調べ始める―

 主人公・一本木の秘めた過去、メディアを賑わす不倫教授、母親と死に別れた青年と、複数のストーリーが進行していく上で、最後にそれが絡み合って真相に。伏線の張り方が分かりやすいが、候補も多いという点で期待感は持続される。一つ一つのストーリーもそれぞれに読み応えがあり、だれることなくラストまで読み続けられた。
 やや行き過ぎな偶然性はあるものの、物語の楽しさを作るためと目をつむってもよいレベルだと自分は思えた。
 次作以降もとりあえずはチェックしたいと思えた。


No.640 5点 神の値段
一色さゆり
(2019/09/01 21:19登録)
 オークションで高値がいくらつこうが作家には全く利益はないこととか、「プライマリーギャラリー」とか、美術界の構造や仕組みを「へぇー」と思いながら読めて面白かった。オークションの様子も。

 そうした美術世界の設定に彩られていることがかなり後押ししていて、ミステリとしての内容は平均的では。真犯人よりも、無名の過去の作品が送られてきたことの真相の方が興味深かった。


No.639 8点 ロウフィールド館の惨劇
ルース・レンデル
(2019/09/01 21:02登録)
 最初の一行で事件の結末が示されて、そこにいたるまでの様相が描かれていく。
 パーチマンが文盲であることをひた隠しにし、そのために策を弄するさま、その中で垣間見える「サイコパス」ともいえるような人格に、ヒヤヒヤしたりゾッとしたりして興趣が絶えない。
 ラストの、殺人後に真相が発覚するまでの件もかなりよくて、テープレコーダーが再生されるくだりなどはゾクゾクした。

 40年以上前の作品なのに、今読んでもまったく色褪せないと感じる。これの前に「わが目の悪魔」も読んだが、犯罪者の昏い心情を描き出すのが非常に上手い作家だと思う。


No.638 7点 手斧が首を切りにきた
フレドリック・ブラウン
(2019/09/01 20:45登録)
 題名から、ホラー調な作品かと思っていたら、そうでもなかった。題名は幼少時代のトラウマから主人公が見る「夢」の話で、物語自体はギャングの一味に加わっている19歳の青年が、ギャングのボスの女であるセクシー美女と、同じアパートに越してきた地味で真面目な女の子との間で気持ちが揺れ動く話。
 もちろんそんな青春物語で終わるはずはなく、ラストにサスペンスが待っているのだが…

 それにしても最後は結局何が真相だったの?私の理解があっているのかどうか自信がない。


No.637 8点 ノースライト
横山秀夫
(2019/09/01 20:32登録)
 一級建築士の青瀬は、バブル全盛期こそ羽振りのいい事務所で稼いでいたが、バブル崩壊後は経営の傾いてきた事務所を辞め、個人的に拾ってくれた事務所で心を殺して仕事をしていた。そんなある日吉野という男から信濃追分に建てる家の設計を頼まれる。オーダーは「青瀬さんに任せる。青瀬さんの住みたい家を作ってください」という、全てを委ねる依頼だった。青瀬は建築家としての魂を揺さぶられ、渾身の思いで独創的な家を建てる。その家は「住みたい家200選」に選ばれ、青瀬の名を業界に知らしめるものとなった。
 ところが、そんな評判から吉野の家を見に行った別のクライアントから「誰も住んでいないみたいだった」との知らせが入る。実際、家はもぬけの殻で、建築後誰も住んでいる様子はなかった。なぜ?吉野はどこへ行ったのか?真相を知るべく、青瀬は個人的に調べを始める―

 警察小説の名手である著者の、「建築業界」というまた違った角度からの新作。もちろん私は全くの素人で、知識も何もないが、著者の持ち前の筆力・人物描写力で非常に興味深く、面白く読める。そうした建築業界のドラマに、離婚した妻と、離れて暮らす娘との家族ドラマも上手く絡め、さらに後半には、所属する事務所の所長・岡島の贈収賄疑惑というストーリーも加わって、非常に厚みのある話になっている。
 「人が住んでいなさそう」という展開から、そこに死体があって一気にミステリとなっていくのかと思っていたが、そうではなかった。そうではなかったが、期待外れにはならなかった。
 期待に違わない安定感。
 個人的には「短編を書かせたら日本一」と思っている作家さんなので、また警察もののシリーズ短編も書いて欲しいなぁ。


No.636 6点 凶犬の眼
柚月裕子
(2019/09/01 19:53登録)
 柚月裕子の出世作となった「孤狼の血」の続編。
 前作の事案による懲罰人事で、日岡秀一は広島県警呉原東署から僻地の駐在所勤務に左遷された。暴力団抗争に首を突っ込んでいた日々から一転して、村の平穏な生活だったが、そんな時指名手配中のヤクザ・国光寛郎が名を偽って村にやってきた。本来ならすぐに本署に連絡すべきだが、国光は身分を日岡に明かしたうえ、「まだやることが残っているので時間が欲しい、それが済んだら自分の逮捕を日岡の手柄にするから」と言う。 前作で下げた評価を挽回し、手柄を立てて本署への復帰を願う日岡は、「いつでも逮捕できる」と踏んでその申し出を聞き入れ、そのまま国光を泳がせるが……。

 ミステリと言うよりは極道小説。前作もそうだったが、「ヤクザの中にも真の任侠派がいる」というスタンスで、そのヤクザと一警察官との男同士のつながりのようなものが描かれる。当然社会通念上は許されることではないので、昨今の日本社会の潔癖主義に強く同調されている方は好ましく感じないかも。
 筆致の力強さは相変わらずで、読み手を惹きつけ続ける魅力はある。日岡が人質になって茶番劇の立てこもりをする後半あたりからはちょっとダレた感じもあるが、全体としてはこの評価。


No.635 4点 いつかの人質
芦沢央
(2019/09/01 19:29登録)
 幼少時代に間違ってデパートから連れ去られ、失明してしまった愛子。時を経て再び、今度は本当に誘拐される。一方同じ時期に、過去の誘拐(連れ去り)班の娘である優奈が借金を残して失踪、夫である漫画家の礼遠は警察に捜索を依頼する。誘拐犯は優奈なのか?警察の捜査と礼遠の捜索で、次第に真相が見えてくる―

 真犯人とセットになっている「誘拐の動機」が本作のメインだが、むしろそのアアイデアを書きたかったから、無理やり肉付けをして一編に仕上げた、という印象。特に誘拐されている間の愛子への暴力は不要なはずで、ミスリードと物語をもたせるために無理な色付けをしたとしか思えない。
 無理に長編にせずに、「ネタもの」として短編ぐらいにすれば十分だった。


No.634 5点 貌のない貌
松嶋智左
(2019/08/06 18:04登録)
 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞した、「虚の聖域」の主人公、梓凪子の新人刑事時代の物語。
 梓凪子は、刑事課強行・盗犯係所属の新人刑事。なのに今回命じられた職務は畑違いの人探し、中国人・宋鈴玉の、日本に旅行に来ていた両親。なぜか鈴玉の同行者は中国領事館職員・王天佑。
 国際政治と人情入り交じる不可解な人探しを続けるうちに、管内では連続殺人事件の別事案が勃発。田舎県警にはまたとない重大犯罪の捜査に心沸き立つ凪子だったが、上の命は中国人探しの捜査を続けることで、捜査本部には入れなかった。悔しさを噛み殺しながら中国人捜査を続ける凪子だったが、次第に領事館の天佑への疑いを深め、尾行を試みる。が、それが天佑にバレてしまい、上席からは大目玉を食う。
 落ち込んでいた凪子だったが、ところが今度は連続殺人の捜査にも加わることになり―

 題名と表紙からもっと陰惨な事件を想像していたのだが、「貌のない貌」はあくまで比喩だった。主人公が二つの事件捜査に関わる中、それが実は一つにつながっていくというストーリーで、そういう意味ではありがち。真相は予想外の部分もあったが、なにせそれぞれの話が散逸している印象で、全体像を整理しながら読むのがちょっと疲れた。
 仕組みに凝り過ぎたのではないか、というのが率直な感想。


No.633 7点 わらの女
カトリーヌ・アルレー
(2019/07/27 20:44登録)
 結婚相手を求める大富豪の新聞広告に応募し、幸せをつかもうとする女。その物語設定と始まりが面白く、すぐに話に入ることができた。
 広告を出したのは実は大富豪当人ではなく、その男性秘書、アントン・コルフ。それも勝手にやったことで、真実は一人の女性に大富豪に取り入って妻になってもらい、財産のおこぼれをもらおうという周到な計画だった。計画を打ち明けられた女性、ヒルデガルデは、自身の幸せのためにその計画に乗る。かくして、気難しい大富豪に気に入られ、結婚へともちこむ二人の計略が始まった―。

 後半のどんでん返しは確かに面白い仕掛けだった。が、仕掛けがそれで終わりで、そのあとはそれまでの「復習」のようにアントンの巧妙な計画が描かれ、その思惑通りにことが進んで終わっていたことが拍子抜けだった。そこからのヒルデガルデの大逆転があるかと期待して読んだのだが、結局そのままのダークなエンディングだったのがちょっと残念。


No.632 6点 まっ白な嘘
フレドリック・ブラウン
(2019/07/27 20:26登録)
 無駄なく短い話の中にパンチの利いたネタが仕込んである、短編集の見本のような一冊。その仕掛け方もバラエティに富んでいて、作者ブラウンが「アイディアとプロットに苦労したことはない」と豪語したというのもうなずける。
 「笑う肉屋」「四人の盲人」「闇の女」のような、オーソドックスな謎解きミステリが私はやはり好き。「闇の女」の真相は予想できたが、落としどころが絶妙だと思った。
 含みを持たせる終わり方の「叫べ、沈黙よ」「自分の声」も秀逸。ショートストーリーを活かした、後を引く不気味さの演出がよかった。「後ろで声が」も。
 当代随一の短編の名手という触れ込みを裏切らない、古典の名作。


No.631 5点 どこかでベートーヴェン
中山七里
(2019/07/21 16:12登録)
 ミステリよりも、若者の「夢と才能」談義に多くが割かれており、青春群像ものの色が強い。ただその内容はありがちな甘ったるいモノではなく、中山氏らしい骨太の表現と内容なので、読み応えはあった。一方で、音楽・曲に関する描写も非常に多く、こういう部分をうるさく感じる人もいるだろう。ただそういう場合はその部分を読み飛ばしてしまっても、ストーリー理解には全く影響がないのでそうしてよいと思う。
 ミステリとしては、謎も推理も割と単純。真犯人は意外だったが。
 御子柴シリーズとはだいぶ色が違う。色が違うものを書けることこそ作者の力量だが、その分読者のシリーズの好みも分かれるということ。


No.630 7点 わが目の悪魔
ルース・レンデル
(2019/07/21 16:00登録)
 やや内向的でありながらも平凡に暮らす一住民のようでいて、実は内に狂気を宿し、昏い感情を燃やしている隣人―こうしたテーマの作品は後年、また最近になっても多くみられるようになったが、1970年代という時代に書かれた本作品はその嚆矢とも言えるだろうし、今読んでも十分に面白かった。
 異常者アーサーの、保身のための小手先の悪事がどんどん泥沼にはまっていく様子、それにより人生が狂わされていながらそのことを知らないアントニー、このストーリーがどこに向かいどう着地するのか、ハラハラしながら展開を追うことができた。
 結末はややあっけなく、氏の他作品も知っている方々には物足りなさもあったようだが、初めて氏の作品を読む私には期待以上の面白さだった。


No.629 5点 予告殺人
アガサ・クリスティー
(2019/07/21 15:21登録)
 初めの事件のシーンと、そのあとの刑事の聞き込みでの一人一人の証言を見比べた段階で、犯人の予想はつく。割と平板な展開が長く続いたのち、やはり犯人はその人だったという感じで、クリスティ作品の中では際立つものではなかった。犯人の正体を含む、事件の背後関係の構築とその解明過程はクリスティらしい面白い内容だった。
 タイトルからも「新聞紙上に殺人の予告広告を出す」ということに対する意味や仕掛けに期待をしていたのだが、それとは別の部分でのトリック解明が主になるため、何となく思っていたのと違うように感じてしまうこともあった。人を集める必要はあったと思うが、新聞広告などする必要があったのかと考えだすと、「予告殺人」と冠された作品への期待に応えるものにはなっていないような気がした。


No.628 5点 絶対正義
秋吉理香子
(2019/07/21 15:00登録)
 絶対正義、ってそういうことか。なるほどね。
 こういうのを読むと、確かに正論かもしれないけど、それを突き詰めていくことで不寛容で生きにくくなる様相は最近の社会にもあるような気がする。〇〇ハラの問題とか、不祥事の問題とか・・・もちろん内容や程度によるけど。

 正義が全て、間違ったことは一切許さない。そんな高規範子の勧善懲悪ぶりに始めは感心し、尊敬していた女友達たちだが、その度を越えたふるまいや、私生活にまで立ち入ってくる無神経さに次第についていけなくなり、やがては強い憎しみを抱くようになる。読んでいるこちらも、正義を標榜しながらも、あまりにも一般の感覚や常識からかけ離れている範子に怒りがこみあげてきてしまう。そんな感じでページを繰るうちに、あっという間に読み終えてしまう。
 非常に読みやすい、イヤミスの典型。

 


No.627 8点 殺人交叉点
フレッド・カサック
(2019/07/07 20:48登録)
 表題作と、「連鎖反応」という中編との2編が収録されている。

 表題作については…やられましたね。読み進める中で自分の内に、作品の年代から「ちょっと形を工夫した、通り一遍の倒叙モノかな」と高を括っていたところがあった。見事にやられた。
 読者へのミスリードが非常に巧み。そっち方面の仕掛けとは露ほども疑わず読み進めていたから、衝撃はなおさらだった。それほど自然に仕掛けに引き込んでいるのは、作者の腕だと思う。

 2作目の「連鎖反応」は、計画する殺人計画が行ったり来たりして、だんだん読むのに倦んできていたが、ラストで目が覚めた。
 海外古典は名作の宝庫だな…と思ってしまった。


No.626 10点 エラリー・クイーンの冒険
エラリイ・クイーン
(2019/07/07 20:33登録)
 ロジカル・ミステリの「うまみ」を短編として凝縮したような作品集。
 意味深な伏線を仕込みながらじわじわと結末に向かう長編もそれはそれで楽しい。短編はロジックに特化して、削ぎ落された純粋なパズラーぶりがたのしい。堪らない。
 短い尺でありながらも、現場の状況や情報から考えられる可能性を挙げ、不可のものを一つずつ潰していく丁寧さには揺るぎがない。他の人は気にならない犯行の瑕疵に気を留め、そこから真相にたどり着く様は期待通り。私としては「三人の足の悪い男の冒険」「見えない恋人の冒険」「チーク煙草入れの冒険」「七匹の黒猫の冒険」が、エラリーが何をどう切り崩すのか見当がつかなくて、その分後半を嘆息しながら読んだ。
 新本格の作家たちがこぞって崇拝するクイーンの魅力が凝縮された贅沢な一冊だと言いたい。


No.625 5点 任務の終わり
スティーヴン・キング
(2019/07/06 22:08登録)
 「ミスター・メルセデス」にはじまる3部作の完結編。
 6年前にメルセデスで群衆に突っ込み大量殺人を犯した男、ブレイディ・ハーツフィールド。退職刑事ビル・ホッジズとの戦いの末、第2の事件を起こす直前で捕らえられたブレイディは、その際に脳に負った重傷による後遺症で、意思疎通も困難な状態で入院していた。だが、その周囲で超自然的な怪事が頻々と発生する。

一方、相棒のホリーとともに探偵社を営むホッジズのもとに、現役時代にコンビを組んでいたハントリー刑事から、ある事件の現場に来てほしいという連絡が入った。母娘が自宅で死んでいた事件なのだがその2人はなんと、6年前のメルセデス事件の被害者母娘だった。無理心中として片付けようとする警察だが、ホッジズとホリーは現場に残された「Z」の文字に違和感を感じる。母娘がメルセデス事件の被害者ということから、嫌な予感を抱く2人だったが―
1作目の「メルセデス・キラー」、ブレイディ・ハーツフィールドが再登場。因縁の対決についに決着がつく。

 完全に超常現象の世界に行ってしまった。ホラーが真骨頂のキングだから、まぁらしいといえばらしい。登場人物のキャラ付けやその描写はさすがに上手くて、上・下巻も止まらず読めてしまうリーダビリティはさすが。ただミステリを期待している人は、「うーん…これはちょっとなぁ…」と思ってしまうと思う。


No.624 5点 仮面幻双曲
大山誠一郎
(2019/06/30 19:28登録)
<ネタバレ>


 「整形した武彦は誰なのか?」がメインの謎と思わせておいて、実はそこからひっくり返される・・・やられました。しかも、いかにも「こいつが武彦なんでしょ?」と思わせる、ミステリファンを誘導するミスリードがなかなかうまくて、途中まで「丸わかりじゃん」と思っていた自分を恥じた。考えてみたらそんな単純なオワリなわけないよね(笑)
 ただこれまでの方が述べられているように、第2の事件に関してはかなり強引。理屈としては分かるんだけど、犯人であったら一番緊張し、神経が張り詰めるであろう犯行の行程が「~こうしたのです」とアッサリ説明される(切断した頭部と両腕を棺に戻すとか……それを誰にも悟られずにやることこぞ、至難の業なのでは?)。
 「なぜ崖下に死体を遺棄したのか?」とか「現場に残された針と糸は何なのか?」とか、考えがいのある謎でありながら、答えを聞くと「全部究極の綱渡りじゃん」という思いが拭えず、その点で第2の犯行はイマイチだったなぁ。

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