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ミステリの祭典

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HORNETさんの登録情報
平均点:6.34点 書評数:1211件

プロフィール| 書評

No.771 8点 病院坂の首縊りの家
横溝正史
(2021/01/03 21:00登録)
 なんだか本サイトではあまり評価が芳しくないが、私はかなり楽しめた。
 昭和28年に起きた生首風鈴殺人事件。真犯人と思われる小雪という女性の手記と失踪で、一応の解決を見たように感じられた事件が、20年の時を経て動き出す。生首風鈴事件の被害者「ビンちゃん」がリーダーを務めていたジャズコンボの同窓会中、生首写真を撮影した写真館の当主が目の前で墜落死。次いでジャズコンボの元メンバーの一人も殺害され、20年前の真相を金田一が暴いていく。

 生首が風鈴のごとく吊るされているという、正史らしい舞台演出もよかったし、愛憎交差する人間関係も各巻に付されている家系図でそれほど苦にならず理解でき、絶えず動的な展開に上下巻という厚みも苦にせず読み進められた。相似の人物の入れ替わりというトリックは確かにやりつくされた(特に横溝作品では)感はあるものの、婚礼写真撮影の謎や、胴体消失の謎など、そこには数々の謎が散りばめられており、それらを一つに結ぶ結末はなかなかに読み応えがあった。
 氏の有名作品は閉ざされたムラ社会での陰鬱な展開のものが多く、もちろんそれは大きな魅力だが、本作は20年という時期をまたいで(作者の事情で結果そうなったようではあるが)比較的近代的な舞台となっており面白かった。
 私としては金田一耕助シリーズの中でも決して見劣りする作品ではなかった。


No.770 6点 たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説
辻真先
(2021/01/03 20:37登録)
 終戦直後の昭和24年。進駐軍により急激な民主化が進められる中、カツ丼こと風早勝利は、名古屋市内に急遽設けられた新制高校3年生になった。それまで決然と分けられた男女が民主化の方針によって共学に。すぐに順応するカツ丼たちを「軟弱なヤツラ」とさげすむ一派もある中、推研と映研に所属するカツ丼たちは、顧問と男女生徒5名で湯谷温泉へ、修学旅行代わりの小旅行へ。そこで事件は起きた。

 各ランキングで1位をとっている本作だが、それは多分に昭和24年の世情を描いた物語全体の味と、ベテランの作者への畏敬によるところが大きいのでは。と記すように、私も十分楽しんだが、本格ミステリとして傑出した出来とはさほど思わない。序盤から最も怪しかった人物が、その通り真犯人だった。これが物語の中では好人物で、読者の心情的には裏切ってほしくないという思いもあるが、第一の殺人での不審な行動や、第二の殺人での状況からはストレートに怪しかった。それが裏切られる結末を期待していたのだが、その通りだったところがミステリとしては拍子抜けの感がある。
 ただ初めに書いたように、終戦後2年当時の世情・風俗事情をリアルに描き、その中で青春時代を過ごす若者たちの青春群像劇は、それはそれで非常に面白かった。


No.769 6点 ダブル・ダブル
エラリイ・クイーン
(2020/12/30 21:14登録)
 病死、自殺、失踪と、それぞれ自然死や事故に見える出来事。失踪者の娘がエラリイを頼ってきたことから、エラリイは事件の地ライツヴィルへ向かう。そこでそれぞれの被害者が、童謡の歌詞をなぞっていることに気づいたエラリイは、すべて仕組まれた殺人ではないかと疑い出すのだが・・・

 限られた登場人物でありながら、どの人物も様々な形で一連の被害者に関わっていて、それなりに誰もが疑わしい状況が上手く作り出されていた。童謡殺人とはこれまた今さらな感じはあるが、前作「十日間の不思議」の「十戒」よりは分かりやすく、入っていきやすかった。
 ただ、物語が進んでいく中で一向に推理が進まず、最後のどんでん返しに期待するしかなくなっていく感じはあった。真犯人は私としてはなかなかに予想外だった。


No.768 6点 十日間の不思議
エラリイ・クイーン
(2020/12/30 20:59登録)
 それが却ってよい、という人もいるようだが、私は事件が起きるまでの前半は長く退屈だった。「十戒」という、宗教色の濃い(キリスト教)話は当然なじみがないから、そのつながりに気付いたエラリイの興奮もあまり共有できない。
 章立てとして「9日間」と「10日目」に分けられている時点で、最初の解決が真相ではないことは分かる。10日目で開陳された真相(真犯人)はそれほど意外性が高いわけではないが、内容的には面白かった。


No.767 5点 楽園とは探偵の不在なり
斜線堂有紀
(2020/12/30 20:40登録)
 ある日世界に「天使」が降臨した。顔のない頭部に長い手足、蝙蝠のような羽根と、見た目はグロテスクだが、彼らは2人以上の殺人を犯した者を地獄に落とす。それが逆に「一人までは殺せる」という不文律を生み、凶悪事件は却って増える傾向に。そんな社会状況の中、探偵・青岸焦は天使に異常な執着をする大富豪・常木王凱に誘われ、天使が集まる常世島を訪れることに―

 「1人までは殺せる、2人以上になると地獄行き」という特殊設定を生かしたミステリの仕組みは確かに面白かったが、主人公・青岸の芝居じみた心象描写はちょっとうるさく、なんだか「早く読み終えてしまいたい」という気持ちになってしまった。各ミステリランキングで高評価を得ているが、自分的にはそこまで特に秀でた印象はなかった。


No.766 7点 蟬かえる
櫻田智也
(2020/12/30 20:29登録)
 昆虫マニアのおとぼけ探偵・魞沢泉が活躍する、「サーチライトと誘蛾灯」に続く連作短編集第二弾。災害ボランティアの青年が16年前に体験した不思議な出来事の謎を解くタイトル作。交差点での交通事故と団地で起きた負傷事件のつながりを解き明かす、「コマチグモ」など五編。
 脱力系の筆致でありながら、ひとつひとつがミステリとしてしっかりとした構成。前作からの期待に十分応え得る出来。本シリーズはぜひ続けて欲しい。


No.765 8点 名探偵のはらわた
白井智之
(2020/12/13 18:19登録)
 原田亘、通称ハラワタは、幼い頃危機を救ってくれた名探偵・浦野灸の助手として働いていた。彼女のみよ子の父親がヤクザの組長という悩みを抱えつつ、今日も浦野について事件の捜査へ。事件は、みよ子の生まれ故郷・津ヶ山で起きた放火事件。そこでは77年前、向井鴇雄という青年が未明に30人の村人を殺して回ったという凄惨な事件があったところだった―

 作者と題名から、お得意のグロ路線が想像されたが、「はらわた」は主人公の通称というだけのことだった。とはいえ、日本犯罪史に残る数々の凶悪事件をモチーフにしながら、ゾンビめいた特殊設定も交えつつ、あくまでロジカルな謎解きにまとめあげている筆者の力量は圧巻。「津山30人殺し」「阿部定事件」「帝銀事件」などの昭和史に残る事件を写し取った設定自体が大いに興趣をそそるだけでなく、ユーモラスな雰囲気を交えつつもミステリの本筋は失わない内容に脱帽。
 面白かった!


No.764 7点 ジョン・ディクスン・カーの最終定理
柄刀一
(2020/12/13 17:59登録)
 大学生・深道恭介は、テイラー教授のゼミのメンバーで、夏期合宿と称して友坂夕也の別荘に集っていた。合宿のメインは、かのディクスン・カーの直筆の書き込みがある「カーの設問詩集」と呼ばれる本を見ること。そこには、実際にあった未解決事件の記録と、その真相を読み解いたらしいカーのメモがある。そのメモを手がかりに、皆で推理合戦を巡らすはずだったのだが…合宿中に、メンバーの友坂夕也がスピアガンで撃たれて殺された。

 2006年に、カーの生誕100周年を記念して刊行されたアンソロジーに収録された短編を、大幅に改稿して長編として出版された作品。アンソロジーが文庫化される際に、この作品だけが文庫収録から外され、あえて長編化したのだから、それだけのものだったのだろう。
 物語は、「カーの設問詩集」内の未解決事件を読み解く筋と、現実で起こった友坂夕也殺害事件を解く筋とで額縁構造になっている。どちらもロジック重視の本格ミステリで、一粒で何度もおいしい。本格ファンなら、好みの作品ではないかと思う。


No.763 6点 引き攣る肉
ルース・レンデル
(2020/12/13 17:37登録)
 連続強姦犯のヴィクター・ジェナーは、ある強姦未遂の時に、捕まることを恐れて逃げ込んだ家で、少女を人質に取るハメになってしまった。そして踏み込んだ刑事ディヴィット・フリートウッドを意図せずに撃ってしまう。服役したのちに出所したヴィクターは、フリートウッドが半身不随になりながらも、社会から英雄のように扱われ、美しい恋人クレアとともに過ごしていることを知る。「自分がこうなったのはフリートウッドのせいなのに」と昏い怒りをたぎらせるヴィクターだったが、ひょんなことからフリートウッドと和解することになり…

 病んだ犯罪青年の病的な心理を描く長編。レンデルのノンシリーズらしい作風だが、ヴィクターの一人称で延々と描かれる描写はやや退屈。フリートウッドと対面してから物語が一気に動き、目の離せない展開になった。
 精神的に病んでいるヴィクターだが、非常に内気で思索的な面があり、なんとなく共感的に読んでしまう。そういう匙加減は絶妙だな、と思った。


No.762 7点 その裁きは死
アンソニー・ホロヴィッツ
(2020/11/29 19:43登録)
 実直さが評判の弁護士が殺害された。裁判の相手方が口走った脅しに似た方法で。現場の壁にはペンキで乱暴に描かれた謎の数字“182”。被害者が殺される直前に残した奇妙な言葉。わたし、アンソニー・ホロヴィッツは、元刑事の探偵ホーソーンによって、奇妙な事件の捜査に引きずりこまれて―。絶賛を博した『メインテーマは殺人』に続く、驚嘆確実、完全無比の犯人当てミステリ。(「BOOK」データベースより)
 著者・ホロヴィッツ自身がワトソン役になり、ホーソーンが探偵役となるシリーズ第2弾。そうした設定の妙を別にすれば、いたって正当な本格ミステリ(良い意味)。謎解き嗜好の読者、昔ながらのフーダニット好きの読者なら、十分好まれる内容(私も)。
 あとがきによると、著者は本シリーズを10作シリーズと考えているらしく(!)、本作で端緒に触れたホーソーンの秘密が今後明らかになっていくらしい。うーん、釣られていると分かっていても、結局読んでしまいそうだ…


No.761 4点 ティンカー・ベル殺し
小林泰三
(2020/11/22 19:18登録)
 今回の舞台はピーター・パンのネヴァーランド。ピーター・パンは平気で(無邪気に)人殺しをする残虐な性格で、殺し合いそのものを楽しんでいる。一緒にいる子どもたちはそんなピーターにびくびくしながら、上手く機嫌を取りながら過ごしていた。そんな矢先、ティンカー・ベルが無残に殺される。ウェンディに「犯人を明らかにして」と頼まれたピーターは、この世界に迷い込んだ蜥蜴のビルと一緒に捜査を進める。

<ネタバレあり>
 シリーズも4作目。地球の現実世界と、夢の中の世界とで存在を共有する「アーヴァタール」の設定は変わらず。そして、夢の世界(今回はネヴァーランド)で起こっている出来事を、現実世界の井森たちが解き明かすという基本スタンスも変わらず。本シリーズ初読の人なら驚く結末だったかもしれないが、読み続けている人にとっては新鮮な驚きはない。しかも今回は、そっくりの名前(例:酢来酉男・すらいとりおがスライトリイ)という前振りをさんざんしておいて、ウェンディが予想外の人物だった、という仕組みも読めてしまって、興趣を削いだ。
 売れ筋なで出版社からの要請が強いのかもしれないが、このシリーズはもう畳んでもよいのではないかと思う。


No.760 7点 憎悪の化石
鮎川哲也
(2020/11/15 19:16登録)
 鮎川氏得意のアリバイもの。捜査を進めるうちに容疑者は12人にもなり、特に怪しい容疑者のアリバイ崩しがメインかな。
 昨今の無駄のない、シャープな展開に慣れてしまうと、地道に一人一人のアリバイをあたる捜査過程を描く(つまりムダ足が多い)この頃の作品は逆に新鮮で、たまに読みたくなる。ただそれも鮎川哲也という、その「ムダ足」の部分も読ませる筆力のなせる業だということは読むほどに実感する。
 真相に迫ったかと思われる最終版、再度の「ひっくり返し」も用意されていて、今読んでも十分欲求を満たしてくれる本格推理もの。


No.759 7点 コープス・ハント
下村敦史
(2020/11/15 19:07登録)
 婦女連続殺害事件の法廷。死刑判決が下された後に、取り調べ中も沈黙を続けていた被告が突如叫んだ。「最後の一件だけは俺の犯行じゃない。俺は真犯人たちを知っている。真犯人のうちの一人は―俺が殺した。俺は"思い出の場所"に真犯人の遺体を隠してきた。さあ、遺体探しの始まりだ!」―その捜査に関わった折笠望美は、当初から別の人間の犯行を疑っていた。捜査方針に異議を唱えたことで謹慎となっていたが望美だが、再び独自に捜査を始める。

 交互に章立てされているYoutuberたちの「遺体探し」の件が、後半に意味をもって意外な融合をするという上手い構成がとられている。昨今のミステリに慣れている人であればその仕掛けに気付く可能性も大だが、私も途中で気付きながらも興趣は削がれずに最後まで読み進められた。
 表題や冒頭の展開からは、世間が「遺体探し」に沸き立つ混乱ぶりが描かれるのかと想像していたが、そういう類ではなかった。
 面白かった。


No.758 7点 ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ扉子と空白の時
三上延
(2020/11/07 19:50登録)
 大輔と栞子が結婚し、二人の間に扉子という娘が生まれ、「Ⅱ」として再開した新シリーズ2作目、通算9作目。とはいえ今回は、扉子が両親の「事件手帖」を読み返すという体で、多くは栞子の代の話になっている。
 古書を取り巻く人たちの謎を解決していく本シリーズだが、その古書がミステリだとさらに興趣をそそる。今回はまさにそれで、題材は「横溝正史」。以前、乱歩が題材になった巻と同様、ミステリファンにはそれだけで評価が底上げされてしまう(笑)
 第1章と第3章が、「大輔と栞子」の過去の事件簿を読む内容で、第2章が現在の扉子を中心とした話なのだが、なんとなく2章が一番、本来のビブリオらしさが出ていたかな。全体的に、現在の女子高生・扉子と親友の圭の様子から始まり、過去にフィードバックする章が挟まれ、最後現在に戻るまで、ストーリーとしてきちんと紡がれている構成が非常にうまいと思う。作者の巧みさ、精緻さを実感する。
 ラストの感じでは、扉子がどちらかというと祖母・智恵子に近い資質に描かれている気がして、それが今後の展開で波を起こすのかもな…と思った。
 今後も続けて読みたいと思わせるには十分だった。


No.757 6点 とめどなく囁く
桐野夏生
(2020/11/03 17:27登録)
 塩崎早樹の夫は、ある日海へ釣りに出掛けたきり船だけを残して行方不明となった。遺体も上がらず、生死不明のまま7年、ついに死亡認定をして早樹は区切りをつけ、年の離れた裕福な老齢男性と再婚をした。若い頃のような情熱はないものの、穏やかな安定のある暮らしに満足していたある日、前夫の母から連絡が。それは、亡くなったとされていた前夫を見かけたという話だった―

 前夫は生きているのか?何かの間違いなのか?友人の協力を得ながら独自で探っていこうとする早樹、その過程で明らかになっていく知らなかった夫の過去に動揺する心。さすがのリーダビリティではあるが、なかなか進展しない展開にややじれてくるところもある。ラストはその段になって初めて出てくる人物もいる「真相の一気出し」の体で、面白い結末ではあったが丁寧ではなかったかな…


No.756 6点 私の中にいる
黒澤いづみ
(2020/11/03 16:43登録)
 10歳の少女、羽山萌果は、自分を疎んじる母親からの虐待を受ける中、自己防衛のために殺してしまった。児童自立支援施設に入所させられた萌果は、指導員たちに更生に向けた指導を受けることになるが、学校在学中は「無口で内気な子」だったはずの萌果が大人びた理屈で反抗ばかりする問題児に。萌果の内面で何が起こっているのか…別の施設に移り、少しずつ心を開いていった萌果が語った驚きの内容。

 このテの題材を扱ったものはこれまでにもごまんとあるが、今までにない切り口で仕掛けられている面白さがあった。ただ、萌果の内実が明らかになってからの後半はある意味順調な展開で、間延びした感もあった。実吉野学園の指導員、齋藤の価値観・考え方が興味深く、物語に深みを与えている。


No.755 5点 天使に見捨てられた夜
桐野夏生
(2020/10/27 20:27登録)
 作者としてはかなり心を砕いて何気ない登場のさせ方をしたのだろうが、タイトルからしても、何気なさを意識しすぎて却って際立ってしまっている運びからしても、落ちぶれミュージシャンが事件の核に絡んでくることはあまりにも明白。まぁ「どうつながるのか」は確かになかなか見えなかったからそれだけで興趣を削ぐことはなかったけど。
 ミロのフットワークがいい割には、展開に時間がかかりすぎな気もする。物語を厚いものにしようと無理に右往左往して引っ張っている感もある。尽きない臨場感とスピード感で飽くことなく読めはしたが、必要以上に寄り道をさせられた感じもある。
 真相は予想外で、いい裏切り方ではあったが、長い引っ張りを経て最後に「一気に」ひっくり返したような感じも受けた。


No.754 6点 ノワールをまとう女
神護かずみ
(2020/10/27 20:17登録)
 前評、人並由真さんの「21世紀のフツーのノワール、フツーの事件屋稼業ではないか」という評価に全く同意。リーダビリティも高いし、読み進めるのは楽しい。だが、「今年の乱歩賞受賞作は…!?」という高い期待があるのなら、それに応え得るのは難しい。
 もちろん、面白い。私も満足している。ただ他と比して突出した、印象的な作品ではなかったということ。組み立ての精緻さは素晴らしいと思う。


No.753 7点 死のカルテット
ルース・レンデル
(2020/10/27 19:56登録)
 「悪い」めぐりあわせが連鎖する、レンデルのノンシリーズらしい物語。
 ただ、主人公のグルームブリッジにとっては悪いめぐりあわせばかりではなかった、というかむしろ悪に踏み出してしまったからこそめぐりあえた喜びがあったということなのだが。まぁ、そういった幸と不幸との板挟みというか、両極端というか、そういった込み入った展開もやはりレンデルらしい。
 彼女のノンシリーズのサスペンスが好きな人は、概ね好む話ではないだろうか。


No.752 5点 黙示
今野敏
(2020/10/04 12:27登録)
 古物収集家の家から、ある指輪が盗まれたという。持ち主の館脇友久は、その指輪を手に入れるのに4億を使った。しかし、指輪は鉄と真鍮でできたものとのことで、なぜそんなに価値があるのかと萩尾警部補は疑問に思う。すると館脇は、それは考古学界で伝説の「ソロモンの指輪」だからだ、と答えた。
 何かを隠しているような館脇。途中から捜査に加わった捜査一課からの横槍。事態が混迷を深める中、萩尾と、コンビの秋穂の、盗犯刑事としての嗅覚が働く。

 このシリーズの面白さは、萩尾の三課刑事としてのプロフェッショナルぶりにあるのだが、本作はなんとなくその魅力が薄かった。同じところをずーっとめぐっているような展開で、物語に深まりがなく、短編でよかったのではないかと感じた。

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