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ミステリの祭典

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ティンカー・ベル殺し
〈メルヘン殺し〉シリーズ

作家 小林泰三
出版日2020年06月
平均点5.50点
書評数4人

No.4 5点 ミステリ初心者
(2024/02/06 17:33登録)
ネタバレをしております。また、シリーズ通してのネタバレもしてしまっているかもしれません。

 だいぶ前にこの作品が発売されているのは知りました。文庫版を待っていたのと、作者が亡くなられていてティンカー・ベル殺しを読んでしまうとこのシリーズが終わってしまうのが寂しくて読むのを先延ばししていました。読み終わって悲しい気分です;;
 夢の中ではメルヘンの世界、またメルヘンの世界で眠ると現実の世界に帰るといったシリーズ恒例のギミックが健在です。また、誰がどのアーヴァタールなのかは嘘をついて申告している可能性があり、その予想を楽しむのも恒例です。
 非常に読みやすく、ほとんど漫画を読んでいる感覚で読了できるのもシリーズ恒例です。また、メルヘンの世界の住人はどこか倫理観が現実世界とは違い、結構鬼畜なやつがいて悲惨なことになるのも恒例ですw 中でも今回は、暴君じみたピーター・パンがやたらめったら人を殺すのでひときわ悲惨なことになっております。気分で人殺しをするわ、すぐに忘れるわの史上最低の探偵が誕生しましたw 探偵行為は放棄しておりますがw

 推理小説的要素について。
 ピーター・パンによるティンカー・ベルを殺す描写があり、すぐに忘れてしまっていて、探偵になるという通常の小説では考えられない探偵=犯人ものが見られます。ただ、ピーター・パンは本当に殺してはいなかったのですがw
 メイントリックの同名による犯人の認識をずらすトリックは、残念ながら現在では価値を感じられませんw 双子の片割れが焼死したさい、「ピーター愛してる」と言ったので嫌な予感がしましたがw 
 また、富久がウェンディだったのは意外ではあったのですが、シリーズでは必ずその要素があるため、これに関してはマンネリでした。富久の最期に関してはサスペンス性が高く、ホラー系SSのひとつを思い出しました。

 総じて、極めて読みやすい本ですが、推理小説としてはかなり薄味といった感じでした! あとがきによるといろいろな構想があったらしく、残念でなりません。

No.3 4点 HORNET
(2020/11/22 19:18登録)
 今回の舞台はピーター・パンのネヴァーランド。ピーター・パンは平気で(無邪気に)人殺しをする残虐な性格で、殺し合いそのものを楽しんでいる。一緒にいる子どもたちはそんなピーターにびくびくしながら、上手く機嫌を取りながら過ごしていた。そんな矢先、ティンカー・ベルが無残に殺される。ウェンディに「犯人を明らかにして」と頼まれたピーターは、この世界に迷い込んだ蜥蜴のビルと一緒に捜査を進める。

<ネタバレあり>
 シリーズも4作目。地球の現実世界と、夢の中の世界とで存在を共有する「アーヴァタール」の設定は変わらず。そして、夢の世界(今回はネヴァーランド)で起こっている出来事を、現実世界の井森たちが解き明かすという基本スタンスも変わらず。本シリーズ初読の人なら驚く結末だったかもしれないが、読み続けている人にとっては新鮮な驚きはない。しかも今回は、そっくりの名前(例:酢来酉男・すらいとりおがスライトリイ)という前振りをさんざんしておいて、ウェンディが予想外の人物だった、という仕組みも読めてしまって、興趣を削いだ。
 売れ筋なで出版社からの要請が強いのかもしれないが、このシリーズはもう畳んでもよいのではないかと思う。

No.2 8点 mimsk
(2020/08/01 18:33登録)
「メルヘン殺し」シリーズの4作目。アーヴァタールの関係を使ったトリックで、相変わらずだけれど、やはりおもしろい。今までで1番血みどろ…。そして、おバカなビルと子供のピーター・パンの会話がおもしろい、ビルはほんとにいいキャラだと思う。伏線回収がとても気持ちよかった。

No.1 5点 虫暮部
(2020/07/31 12:24登録)
 このシリーズがこんなに続くとは思わなかった。こうなると評価の仕方も微妙になって来る。つまり、設定を生かしたねじれたロジックやトリックの作り方がパターン化していないか、そして、土台にあるのは他人のネタじゃないか、と言うことである。しかし“アーヴァタール”の設定と既成のメルヘン世界の親和性は高いし、それ自体がコンセプトだし。うーむ。
 本作にはもう一つ問題があって、メインのトリックには先行例(結構知名度あると思う)があるのだ。私はそのへん比較的鷹揚なつもりだが今回はがっかりしてしまった。

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