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ミステリの祭典

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病院坂の首縊りの家
金田一耕助シリーズ

作家 横溝正史
出版日1978年02月
平均点4.75点
書評数8人

No.8 8点 HORNET
(2021/01/03 21:00登録)
 なんだか本サイトではあまり評価が芳しくないが、私はかなり楽しめた。
 昭和28年に起きた生首風鈴殺人事件。真犯人と思われる小雪という女性の手記と失踪で、一応の解決を見たように感じられた事件が、20年の時を経て動き出す。生首風鈴事件の被害者「ビンちゃん」がリーダーを務めていたジャズコンボの同窓会中、生首写真を撮影した写真館の当主が目の前で墜落死。次いでジャズコンボの元メンバーの一人も殺害され、20年前の真相を金田一が暴いていく。

 生首が風鈴のごとく吊るされているという、正史らしい舞台演出もよかったし、愛憎交差する人間関係も各巻に付されている家系図でそれほど苦にならず理解でき、絶えず動的な展開に上下巻という厚みも苦にせず読み進められた。相似の人物の入れ替わりというトリックは確かにやりつくされた(特に横溝作品では)感はあるものの、婚礼写真撮影の謎や、胴体消失の謎など、そこには数々の謎が散りばめられており、それらを一つに結ぶ結末はなかなかに読み応えがあった。
 氏の有名作品は閉ざされたムラ社会での陰鬱な展開のものが多く、もちろんそれは大きな魅力だが、本作は20年という時期をまたいで(作者の事情で結果そうなったようではあるが)比較的近代的な舞台となっており面白かった。
 私としては金田一耕助シリーズの中でも決して見劣りする作品ではなかった。

No.7 6点
(2020/06/04 23:09登録)
本サイトではあまり評判の良くない本作ですが、久しぶりに再読してみると、かなり楽しめました。確かに、心理的あるいは叙述系トリックならともかく、単純な物理的トリックの再使用には、がっかりさせられるだけかもしれません。それにしても、元の作品名までちゃんと明記した上で、その作品を読んだ犯人が、本当にうまくいくかどうか実験してみた上で実行しているというのが、苦笑させられます。横正先生自身も「序詞」の独白部分だけでなく、途中に一人称形式で登場して、しかも重要な証拠を見つけるというのも笑えます。
しかし。別にユーモアを重視した作品というわけではなく、全体の構成には重苦しい悲劇性があり、本作の読みどころはまさにそこでしょう。個人的には最後の金田一耕助と弥生との会見と、その後の「拾遺」での墓地での会話が、なかなか感動的だと思いました。

No.6 3点 文生
(2017/11/08 09:23登録)
上下巻の大作であり、20年間に及ぶ難事件を扱っているがこれがあまり面白くない。とにかく登場人物がやたら多くていたずらに混乱を招いている上に、事件もスケールが大きそうだった割に特に面白みを感じることもなく終焉をむかえていくので肩透かし感が半端ないのだ。何より自著の過去作で用いたトリックをそのまま使い回しているのがいただけない。これが金田一耕助最後の事件だというのは残念だが、思えば名探偵の最後の事件というのはどれもこんなもんだよなあという気もする。

No.5 4点 TON2
(2012/12/10 18:02登録)
角川文庫「金田一耕介ファイル20」
 以前市川昆監督・石坂浩二主演の映画を見ましたが、映画がこの作品の前半だけを扱っていたことを知りました。
 昭和28年に起きた事件が20年後に更なる悲劇をもたらすという内容で、金田一耕介最後の事件です。
 テーマは相変わらず「血の濃さ」ゆえの事件ですが、初期の作品のようなおどろおどろしさが薄く、悲惨で汚らしい感じがしました。
 また、戦争直後の昭和20年代の金田一はイメージできますが、昭和40年代後半にもよれよれのはかまに帽子姿というのは、自分もこの時代を生きてきただけに無理があると思いました。

No.4 5点 大泉耕作
(2011/04/10 00:34登録)
上巻までは違和感のない文章で物語を淡々と進めていったものの下巻までくるとどういったわけか冗長な文が目立っていた。物語の核が文章ではハッキリ言ってあまり描き切れてはいなかった。が、それでも事件の核は割としっかりしていたのでこの点数。
金田一耕助最後の事件であるから最後まで取っておくつもりであったが映画を見てしまったせいかつい、手に取ってしまった。
怨念の祟りもないが、『病院坂の首縊りの家』という物々しい名の家から舞台に始まるドロドロした人間関係のもとに二十年のも時を超えて暴かれる壮大なるスケールと人生というものを経験した名探偵が真相を掴む時、それを取り巻く人達と犯人との人生のすべてを文で綴った『金田一耕助最後の事件』にふさわしい事件でした。
最後にはやってくれるンだな横溝先生が。

No.3 4点 nukkam
(2010/12/06 11:18登録)
(ネタバレなしです) 1970年代、横溝正史のリバイバルブームが起き、映画にTVドラマ、書店の目立つ所にずらりと並ぶ作品群とまさに犬も歩けば横溝正史(笑)。それに刺激されて再び執筆意欲が湧いてきたのか、晩年を迎えた作者が金田一耕助シリーズの新作を発表したのはファンにとって何よりのプレゼントでしょう。その1つが1975年発表のシリーズ第29作の本書で、角川文庫版で上下巻合わせて750ページを超す大作です。内容的にはいまひとつで、複雑な人間関係を重厚に描いた作品と言えなくはありませんがサスペンスが犠牲になっているのは否めないし、魅力的なタイトルも十分には活かされていません。自白に頼る部分の多い謎解きも残念です。金田一耕助最後の作品という位置づけですが、まだまだ未発表の事件記録が存在することを示唆しており、今後に期待させてくれています。しかし本書以降は「悪霊島」(1978年)のみしか発表されず、作者が逝去したのは残念でした。

No.2 4点 江守森江
(2010/02/12 08:57登録)
当時の金田一ブームに大横溝をして踊らされ、晩年を自らの手で汚した感がある。
それでも、踊らせた張本人・角川春樹の再発掘とメディアミックスの功績は絶大。
作品レベルは、傑作は何度となく映像化されるが、この作品は埋もれている事にハッキリ表れている。
求められるレベルが並の作家と大横溝では違うのをつくづく感じる。

No.1 4点 白い風
(2008/03/12 00:44登録)
金田一耕助最後の事件だけども、ちょっと無駄に長過ぎる気がします。
金田一耕助最後の事件じゃなかったら印象にも残ってないかも。
私の中では残念ながら横溝作品の最低レベルの評価ですね。

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