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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2254件

プロフィール| 書評

No.754 5点 ダブル・ダブル
エラリイ・クイーン
(2020/07/21 11:51登録)
 諸々の構成要素や明かされた真相を鑑みるともっと楽しめてもおかしくないのだが、実際にはいまひとつ話に乗れなかった。
 周りの登場人物達はリーマをとても魅力的な女性として扱っているけれど、彼女を直接描写した文章を読むとそうでもない。


No.753 8点 虎よ、虎よ!
アルフレッド・ベスター
(2020/07/21 11:49登録)
 もっとガチャガチャしたイメージがあったが、読み返してみると意外にシンプルな物語。第一部の末尾の逃走劇、ケンプシイから情報を引き出す為の無茶な手術、スコプツィ植民地に於ける間接的なコミュニケーション法、等が特に鮮やかな“絵”として胸に残っている。
 ところで私、いわゆるハードボイルドはあまり好まないけれど、SFに混ぜるとサラッと読めるな。


No.752 7点 都市と都市
チャイナ・ミエヴィル
(2020/07/21 11:49登録)
 筒井康隆の某短編を思い出した。基本設定がコレならああいうスラップスティックな喜劇になって当然なところ、真顔でリアルに書くのがこの作者の芸風か。
 実は最初のうち、二つの都市が異次元で一つに重なって二重写しのようになっている的な完全にSFの設定なのかと思った。あと、何を漂白するのかと思った(スペル書いてよ)。終盤での〈ブリーチ〉の使い方が面白く感じた、ってことはそれだけ作品世界に馴染めたのだろう。主犯との対決がだらだらした解説になってしまったのは残念。
 ところで私、いわゆる警察小説はあまり好まないけれど、SFに混ぜるとサラッと読めるな。


No.751 7点 ニンギョウがニンギョウ
西尾維新
(2020/07/21 11:48登録)
 意味不明、なのだが此の判らなさには覚えがあり、私には判る気がする。西岡兄妹の漫画の如きものを小説でやってみたかったのではないだろうか。然様な試みは試みられた時点で宙に浮かぶことを約束されており、成功失敗を問う地平とは遠く隔たった場に在るのは言うまでもないのでもう言わぬ。売れているからこそ許された実験。権力の使い方としてはまぁ正しい。
 とシニカルなことを嘯く私は気取り過ぎで、実は結構素直に面白い。


No.750 6点 犯罪ホロスコープⅠ 六人の女王の問題
法月綸太郎
(2020/07/17 15:14登録)
 作者がわざわざ“プロフェッショナルな仕事”“娯楽奉仕に徹したミステリー集”と謳っているのは、“議論を巻き起こす問題作”ではないことに対する引け目のようで痛々しい。それなりに出来の良い作品集だし堂々としていいのに。
 “双子ネタ”や“コラムで暗号を用いた理由付け”がナイス。
 揚げ足取りをすると、「ゼウスの息子たち」の犯人は、余計な偽装工作をしたせいで捕まってしまうけれど、警察ではなく綸太郎に対してその証言をしたのは何故? 恰も“探偵役はこの人”と言うメタ的な御約束に合わせたかのように。


No.749 8点 銀色の国
逸木裕
(2020/07/17 15:13登録)
 3分の1くらいで全体像はなんとなく読め、そして概ねその通りのところへ物語は巧みに着地した。これは褒め言葉。的確な伏線や安定した文章力があるからこそ、予想通りの成り行きでも心揺さぶられたのだ(“素人の調査が上手く行き過ぎ”なのは大目に見る)。但し、出来が良さが却って個性の弱さにつながっている感もある。
 人を死なせることでしか居場所を得られない者はどうしたらいいのか。実は私は割と肯定的で、人間社会はそういう諸々も呑み込んで成立しているのだから、そういう者がいるのも止むを得ないと思う(しかない)。
 他者の作品をネタバレ含めて取り込んでキャラクター設定の補強に使ったのは感心しない。


No.748 6点 奇想天外殺人事件
横田順彌
(2020/07/10 14:27登録)
 旗本退屈男そして007の血を引く私立探偵・早乙女ボンド之介。今日も今日とて、真暮警部が持ち込む難事件を見事解決! 内容は無いよー。全編、無意味さを競う展開。『六枚のとんかつ』より非道い。


No.747 8点 九尾の猫
エラリイ・クイーン
(2020/07/10 14:23登録)
 残念なのは、題名の Many Tails を“九尾”と訳したこと、及び登場人物表。そして冒頭の一文(“九幕の悲劇”)。
 9人死んだところでついホッと一息ついてしまった。本来そう思う根拠は何も無い筈なのに。

 電話の加入者が3~4人に1人って、私もちょっとびっくり。


No.746 8点 ABC殺人事件
アガサ・クリスティー
(2020/07/05 11:26登録)
 ABCパターンは(少なくともそれ単体では)机上の空論に思える。従って、メインのネタはどうしたって忘れようがないけれど、詳細についての記憶は曖昧、と言う状況で再読するにあたり、正直期待薄だったが――いやいやとんでもない。
 作者は私のツッコミなど予め呑み込んでその先を書いていたのだ。『ABC殺人事件』を名乗りつつ、実は重要なのはABCではなく裏テーマじゃないか。思い返せば全編を通じて退屈な場面が皆無だったのも凄い。でも髪に関するいじりは御手柔らかに!
 “ABCパターン”なる呼称を生み出す程に本作があのプロットの代表例として評価されている事実こそ、此度の私にとって最大のミス・ディレクション。


No.745 8点 人間に向いてない
黒澤いづみ
(2020/07/02 11:07登録)
 これは力作。アイデア一本勝負ではなく、その表現の為の諸々の要素を(ちょっとステレオタイプではあるが)一つ一つ積み上げ、愚直に説得力を生み出している。私は必要以上に警戒してしまったが、書き方自体は直球なので、もっと素直に読んで嫌悪感を楽しめば良かったと反省。
 それだけに、三章の長い夢の場面は不要だと強く思う。“物語全体が壮大な妄想オチ”と言う情ない可能性を読者の頭に植え付ける以外の働きはしていないんじゃないか。


No.744 6点 ジャン=ジャックの自意識の場合
樺山三英
(2020/06/30 11:46登録)
 なんとも読み辛い文章の連続。しかしこの手の、文体によって世界を成立させる類の小説は、斜め読みでは意味が無いのだ。悪く言えばインテリ気取りな筆致で描かれるイメージはそこまで斬新と言うわけでもなく、また最終的に平仄が合っているとも言い難く、止めるきっかけが無いので読み続けたとの感がなくもないが、差し挟まれる手紙を息抜きにして辿り着いた最後の行には若干の感動らしきものも確かにあった。嗚呼疲れた。


No.743 5点 長い家の殺人
歌野晶午
(2020/06/30 11:44登録)
 小説に登場するバンドマンに説得力を感じたことはあまり無い。作者は音楽に詳しくない読者も想定して書くから、CDのライナー・ノーツや音楽雑誌の記事とは拠って立つところが違うのは止むを得ない。私の得意分野である故に却って相性が悪い、と言う皮肉だ。そんなわけで本作もキャラクター的な部分でいまひとつ乗れず。
 第二章で引用される“If I'm not back again...”はクイーン「Bohemian Rhapsody」。“Mama, just killed a man...”てな歌だからミステリに相応しいかも。
 
 揚げ足取り。最初の殺人で、'54年のストラトキャスターを納めたギターケースの行方が判らなくなり、死体のある部屋で発見された。ところが中身を確認する描写が一切無いまま、いつの間にか“ギターは無傷で戻ってきた”と周知の事実のように地の文でサラッと語られている。ケースそのものの状態は? ピック等の小物類は取られていない? 作者はそういう確認が不要だと知っていたので、ついそこを疎かにしちゃった。だってそのケースは実はおっとネタバレ。


No.742 5点 雲をつかむ死
アガサ・クリスティー
(2020/06/26 12:03登録)
 21章で自作品のネタバレを。駄目だポアロ、その真相は内緒でしょ。
 “あの連中(考古学者)ときたら、ほら吹きばかりですよ” にもニヤリ。
 探偵作家クランシイ氏が考えた解決も捨てがたい。


No.741 5点 三幕の殺人
アガサ・クリスティー
(2020/06/26 12:01登録)
 ハヤカワ版です。
 動機の有無について、心の奥の奥まで他者が証明することはどだい無理なのである。“犯人にはパーティ出席者の大多数に対する秘かな殺意があって、誰でもいいから殺したかった”という推測を否定することは出来ない。それ故に、最初の殺人の動機は是が非でも本人の口から語って欲しかった。
 ところで第一幕の3。ポアロ曰く“ウィスキーはめったに飲みませんので。砂糖水を少々いただければ”――これはジョーク? 砂糖水を飲む習慣が本当にある?


No.740 8点 十日間の不思議
エラリイ・クイーン
(2020/06/26 12:00登録)
 前半はちと冗長。
 第一部末尾のエラリイの推理から俄然面白くなる。
 総合的には、後半がもたらす読後のインパクトを重視して高評価していいかと思う。

 “自分の行動が信用出来ずに怯える依頼者”は前作長編『フォックス家の殺人』でも使った要素で、二度ネタ厳禁! と言う程ではないが、2作続けてそれってのはどうなんだろう。間に3年ブランクがあるにしても、自己プロデュースと言う点で甘かったのではないか。


No.739 7点 フォックス家の殺人
エラリイ・クイーン
(2020/06/26 12:00登録)
 後出しの情報が色々出て来たりして、パズラーとしてはいまひとつ。“調べる過程”の物語としては面白い。しかしこの設定なら“いつ毒が混入したか”と言う不可能性をもっと強調したほうが良かったんじゃないの。それでは謎が簡単過ぎる?

 ACのアレに、アニマルつながりで元ネタを示して挑戦している?


No.738 8点 紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人
歌田年
(2020/06/18 12:28登録)
 人はしばしば自分の興味の対象ばかり見る。場面の端々で紙の種類を気にするマニアックな主人公は“特殊な人のリアリティ”を上手く表現していると思う。敢えてさらりと描くことで可笑しみを醸し出す文体をものにしているのも心強い。
 調査が色々都合良く進み過ぎだろと言う部分はあるが、或る種の予定調和がアリになる作品世界がそれなりに成立しているのであまり気にならず、事件を手繰り寄せる手捌きの爽快感のほうが胸に残った。


No.737 7点 50億ドルの遺産
山田正紀
(2020/06/18 12:26登録)
 あれっ?――“この島に隠されている五十億ドルの兵器のことでも、あちこちで、いいふらすことにしますかね”
 第三章で主人公がこんな風に駆け引きを試みるが、それはプロジェクトにとっても望ましいことである。どこまで事情を知っているか不明、と言う不安材料はあるが、内幕を打ち明ける程のことではない。相手が冷静なら、勝手にし給え、で放り出されるところ。

 寄せ集め集団によるハンド・メイドの戦術は山田正紀の十八番。毎度気持が昂る。


No.736 6点 眠りの神
犬塚理人
(2020/06/18 12:22登録)
 しっかり書かれてはいる。それが仇になって少々優等生的? 安楽死については調べたものを出しただけと言う感じ。こういうテーマ故に思い切った暴論を示すことに二の足を踏んだ感がなくもない。ベーシックな筆力はある人だと思うので、もっとぶっ飛んでもいいのではないか(個人的には、死を美化するキャラクターをもっと前面に出しても良かったかと)。


No.735 7点 死者が飲む水
島田荘司
(2020/06/18 12:20登録)
 この動機は単なる八つ当たりでしょう。但し、それゆえの“殺人者になどなりたくはなかった、運命にあやつられているような気がした”と言う心情は、さほど緻密ではない計画をその場の流れで決行したような犯人に見合っている気がした。
 “実の子だから”との理由で容疑者から外すのは作者の手抜きだな~。きちんとロジックを考えるのが面倒だった?

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