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ミステリの祭典

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忘却のレーテ

作家 法条遥
出版日2014年07月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 5点 人並由真
(2021/01/08 06:07登録)
(ネタバレなし)
 大手製薬会社「オリンポス」の役員の娘で、21歳の女子大生・笹木唯。彼女は暴走車のひきにげ犯人に、両親を殺された。そんな唯はオリンポスの新薬の被検体となるが、忘却剤「レーテ」を投与されて、目覚めた彼女は少し前の記憶を失っていた。そしてそんな彼女の手は血にまみれ、周辺では殺人が?

 うーん……着想は悪くないが、最後に明かされる真相については、あまりに一人の人物にあれこれ引き受けさせすぎだろ、という感じ。
 一方で、本編の主幹部分にからむ(中略)的なトリックというか大ネタには軽く驚かされたが、考えてみると、やはりこの時期の国産作品で同じアイデアが使われていたな。まあ偶然というか暗合だろうけれど。

 難しいところを狙った意欲は買うものの、細かい仕掛けが意外に底が浅かったりする面もあるし、最後のまとめ方もいまひとつこなれが悪い。結局、物語全般のいびつさを、実はこれは(中略)ジャンルの作品だったのです、と言ってイクスキューズしている姿勢だよね? 
(あ、昭和初期的な意味で「SFジャンルに逃げている」と言っているのではないですよ。)
 その辺の仕上げが、読み手の心情的に割り切れるかどうか、だな。

 自分の評価はこれくらいで。
 力作だとは思わないけれど、意欲作だとは思う。そんな一冊。

No.2 6点 虫暮部
(2020/08/12 13:10登録)
 冷徹な文体が“狙い過ぎ”な感じで多少鼻に付くきらいはあるものの、決して出来が悪いわけではない。
 ただ、こういうガジェットを組み合わせた話は幾つも読んだ。それらの類似性については大らかに受け入れているつもりだが、どうしても後出しの方が不利になってしまう。特に“天才”はパターン化しがちだ。

No.1 7点 パンやん
(2016/10/17 18:09登録)
『リライト』より断然解り易く、サクッと読める記憶リセットミステリー。ミステリーの手練れであれば気付くトリックなれど、あえて作者の術に嵌まっての種明かしを受けて、二度読みの恍惚に浸る作品であろうか。この軽い感覚の中に見え隠れするブラックな味わいが嬉しい。

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