(2024/02/27 19:17登録)
秋山の義理の姉が事故で入院した。義姉の夫である新川昭男は、出張中のことで連絡がつかない。出張先を知ろうと秋山は新川の勤務先を訪問するが、一切の情報提供は拒否された。なぜそこまで頑ななのか。その日はたまたま非番だったが、警視庁捜査一課の刑事である秋山は、新川の勤務先について調べ始めた。すると会社の創設者がかつて山賊であったことなど、怪しい情報がいくつも出てきた。という具合に、秋山が新川の行方についてあれこれ推理するのだが、それは本書で繰り広げられる推理のほんの一部に過ぎない。例えば、名探偵って一体何なんだ、という思考もあれば地下の巨大密閉空間の有無や、そこを訪れたとする胡散臭い手記の真贋も推理される。五人の社長候補と一人の名探偵による心理戦が火花を散らしたりもする。そのすべての局面において、登場人物たちは知恵を絞り続けるのである。目的を達成するために、生き延びるために、殺すために。それによって日本のオフィスから地下迷宮、さらにアメリカあるいはカナダ、そして政情不安な南の国へと引きずり回される。読書中は着地点が全く見えないのだが、作者は鮮やかに着地させた。脳が痺れるほどの濃密な刺激を満喫できた。
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