home

ミステリの祭典

login
虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2224件

プロフィール| 書評

No.844 6点 スイス時計の謎
有栖川有栖
(2020/11/29 15:01登録)
 二重基準を発見。「あるYの悲劇」で、“H○○○をY○○○と聞き違えた”との説を“イントネーションが別物”と退けている。一方「女彫刻家の首」では、“○○○○と×○○○を聞き違えたのでは”としているが、こちらだってイントネーションが違うじゃないの。小説であってもイントネーションをきちんと考慮に入れて欲しいと私は思う。しかしわざわざこの二つを同じ本にまとめなくとも……。


No.843 6点 櫻子さんの足下には死体が埋まっている 
太田紫織
(2020/11/29 15:00登録)
 事前になんとなく予想した範囲内、ではあるが興味深いネタだし楽しく読めた。
 この語り手には、書かれている以上の鬱屈がありそうに感じる。これは行間に豊かな背景を潜ませていると言うことか、作者が語るべきことを語りきれていないのか、迷うところだ。


No.842 5点 我々は、みな孤独である
貴志祐介
(2020/11/29 14:57登録)
 物語の描き方は巧みで吸引力がある。前世に対するスタンスがシームレスに変化するさまは可笑しいやらぎょっとするやら。
 しかし、辿り着くコトの真相がアレってのはどうなんだろう。特殊設定のミステリだと考えても大雑把過ぎだ。着地点がアレだからきちんと話を収斂させなくとも大丈夫、との前提で野放図に風呂敷を広げたのではないか、と言う疑惑が頭をもたげる。技巧的に見えて実は暴投?


No.841 6点 鏡の国のアリス
広瀬正
(2020/11/23 12:56登録)
 天藤真と広瀬正を並べた解説を読んだことがあって、それは確かに的を射た意見だと思う。穏やかな文体にユーモアを潜ませて、ドタバタ劇を品良く読ませる。ただ結果として、ミステリは経年劣化したのに対し、SFはレトロな雰囲気が作品コンセプトと合致し得る点で、差が出たかもしれない。
 表題作は、読んでいるうちに、主人公がふと発狂したのではないかとの疑惑を抑えきれなくなり、そうなるともうミステリなのである。他に短編三編を併録。


No.840 8点 人類最強のヴェネチア
西尾維新
(2020/11/23 12:54登録)
 物語としては単純だけど、殺し方はえぐいし、モノローグは気持悪いし、髪形は変だし、コレは決して水増しじゃないぞ。“コンコルド効果”なる言葉を西尾維新作品で学んだ身としては、プライベートジェットのコンコルドでヴェネチア入りなんて感無量。


No.839 9点 揺籠のアディポクル
市川憂人
(2020/11/23 12:46登録)
 ホームランを狙って打って狙い通りに場外。見事です。ここまでやるとは。
 アプローチは違うけど似たコンセプトの作品が乙一にあったかな。
 訴求力に富むとは言いがたい題名は損。鳥頭には『揺籠のなんとか』との認識しか出来ないよ。


No.838 6点 暗い宿
有栖川有栖
(2020/11/23 12:41登録)
 「異形の客」について。真意を伏せたまま他者をアリバイ工作に加担させるに当たり、どのような言い訳を使ったのか、設定しておいて欲しかった。力関係はその“他者”の方が上なんだよね。
 明確な理由付け無しで、無自覚の協力者に、不自然な行動をとらせることが出来る――それはつまるところ、作者は誰に何をさせてもいい、と言うことになってしまうじゃないか。
 ところで問題の行為が旅館側にバレたら、詐欺罪成立?


No.837 7点 漱石と倫敦ミイラ殺人事件
島田荘司
(2020/11/18 11:11登録)
 洒落のめしつつもなかなか巧みに模倣しており感心した。
 犯人が不可解な状況を演出した動機が明快なのも良し。
 但し、犯行全体の動機には法律上の疑問が残る。あの人とその人の続柄でそういう権利が成立する? 死んでいないのに財産の移動が発生する?
 寧ろ、あっちの彼こそ正当な地位を得る可能性があるのだから、退場させずに関係を維持するほうが得策では。でも正体がばれるリスクもあるか。うーむ。
 
 それはともかく、ミステリとして洗練されたストーリー(或る程度は後発組のアドヴァンテージ)に、強烈なキャラクター(やったもん勝ちなので先人の方が有利)をぶち込めるわけで、シャーロック・ホームズは原典よりパスティーシュのほうが面白いんじゃないの?


No.836 7点 蜜の味
H・F・ハード
(2020/11/18 11:09登録)
 表紙にせよ粗筋紹介にせよ“ホームズ・パスティーシュ”と言うことを前面に打ち出していて、そりゃあそういう本だから当然だよね。ところが本文にその姓名は出て来ないのだ。もし予断無しで読んだら“アッ、これってホームズか!”と驚けただろうか。せめてもの抵抗として、あとがきを先に読むのはやめたほうがいい。
 1941年発表だから、ミステリの文法はそれなりに発達していた筈だが、それよりも“ホームズであること”を優先しており、展開に捻りは無い。
 しかし、ワトソンは登場せず、当事者の一人称で事件の成り行きをじっくり語らせるあたり、単なるホームズ愛ではなく意外と冷静に原典の弱点を対象化していると思った。具体的描写は少なくても敵のキャラクターが浮かび上がって来るし、化学実験の使い方も面白いし、短めの長編を引っ張る強度としては充分だ。


No.835 6点 世紀末ロンドン・ラプソディ
水城嶺子
(2020/11/18 11:05登録)
 古いロックンロールを現代のスタジオでカヴァーすると音質が良過ぎて違和感がある、かと言ってわざと悪い音で録るのはあざとさが先に立つ、さてどうしたものか。アレンジに若干現代的な手を加えて、音響を鼻に付かない程度に懐古的なムードで処理して、少しずつ中道に寄せました。みたいな感じ。
 事件の単純さは原典に気を遣い過ぎでは。とは言え、このような原典への懸想文の如き作品でも、それなりに気持を共有可能なのはシャーロック・ホームズと言うキャラクターの特権か。作者が楽しんで書いているイメージによって読者が楽しくなる本もあるのだな~。


No.834 7点 恐怖の研究
エラリイ・クイーン
(2020/11/18 11:04登録)
 ホームズは殆ど偶然で犯人に辿り着いているように思える。もしかして、あの人がホームズを誘導した、と言う操りテーマなのか?
 “EQが描くホームズ”との前提で読むと、私は斯様にあちこちから批評性を勝手に読み取ってしまう。“容疑者が四人”なんて言うから、すわホームズが消去法推理を? と期待してしまったぜ。


No.833 7点 ホック氏の異郷の冒険
加納一朗
(2020/11/18 11:03登録)
 冒険活劇としては、複数の敵役それぞれの絡み方が中途半端に思えて、少々物足りない。しかし明治期東京の活写と、端役に至るまで血の通った人物造形の巧みさに引き込まれた。
 若干時代がかった語り口も語彙が増えて誠に重畳。①烏鷺を戦わす②靉靆として③肯綮にあたる――意味判る?
 それにしても、このサミュエル・ホック氏なる人物は一体何者なのだろうか。判りそうで判らないもどかしさに、頬がムズムズする。


No.832 3点 出雲伝説7/8の殺人
島田荘司
(2020/11/11 11:00登録)
 何か変だ。 
 そもそも被害者が身許不明なら犯人は疑われない。しかし一応アリバイ工作をしておく。するとアリバイ工作のせいで(大豆と麦)被害者の身許が割れた。
 恣意的に要約すればそういう話だ。非常に不自然な犯行計画だ。余計なことしなければ良かったんじゃない?
 動機が怨恨なので、“死体に穀物を添える” とか “路線図でヤマタノオロチを描く” とかはその恨みの象徴であり犯人はどうしてもそれをやりたかった、みたいな雰囲気だが、そんなことはどこにも書かれていない。これは重要なことなので “文脈から読み取れ” では通らない。ことミステリの場合、きちんと記述してあることが重要(な事柄もある)と私は思う。
 死体のばら撒きは身の安全の為の手段だった筈が、いつのまにか目的みたいになっていないか。
 犯人にたった一言 “それをやりたかったんです” と言わせてくれれば、強引にでも納得したのになぁ。


No.831 6点 タイムマシンのつくり方
広瀬正
(2020/11/05 11:46登録)
 「つくり方」との表題は伊達ではない(そういう題の短編があるわけじゃないんだよ)。これだけタイムマシンものに傾注した作家がいた、と言う事実が怖い。
 と言いつつ特に印象的だったのは、異界訪問譚(?)「化石の街」。頭の体操(?)「記憶消失薬」。サイコ・スリラー(?)「鷹の子」。
 こういった品の良い文体のSFショート・ショートはどうしても星新一を連想してしまって、それは彼の存在感を思えば仕方ないけど不公平だな~。


No.830 8点 嘘でもいいから殺人事件
島田荘司
(2020/11/05 11:42登録)
 あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは。


No.829 5点 シャーロック・ホームズの冒険
アーサー・コナン・ドイル
(2020/11/05 11:41登録)
 収録作品のうち、有名作は、面白い、のだろうが、知名度と引き換えに其処彼処でネタバレしているわけで、私が、今、改めて読み返して、その面白さを享受出来るかと言うと難しい。
 有名でない作品は、それぞれに有名にならなかった理由があるのだなぁと言う感じ。概ね的確に淘汰されていると思った。それはつまり、隠れた逸品を見出すことは叶わなかった、と言うことだ。


No.828 5点 空想クラブ
逸木裕
(2020/11/03 11:46登録)
 どうも駿クンは、“自分がこうしたい”ってことばかりで、他者にもそれぞれ気持や事情があると言うことを判っていないようだ。それが判らないのが青春かもしれないしストーリーの原動力になってはいるしギリギリセーフだけど、あまり好感の持てる主人公ではない。まぁ思い返せば逸木裕の作品はそんなのばかりで今更文句を言うのも変か。今回は特に合わなかったってことで。
 “駿が郷原に弟のことを密告した”とレナが疑う論理が良く判らなかった。“警察に”ならともかく。


No.827 7点 未来からの脱出
小林泰三
(2020/11/03 11:42登録)
 枠組みとしてはSFだが、なかなかミステリ味も濃い一冊。嫌がらせのように使われるロジック、記憶の錯綜による混乱、グロテスクな変形と、正直いつものネタが満載ではある。ただそもそもが特殊な作風だから、それをマンネリズムだと批判するのは違う気がする。寧ろ作者はこのスタイルをどこまでも研ぎ澄ます職人の道を極めようとしているのだな。


No.826 5点 三角形の第四辺
エラリイ・クイーン
(2020/11/03 11:38登録)
 物語中盤の構成要素を思い返すと、もっと展開を楽しめそうな気がするが、何故か凡作。最後のどんでん返しは不要じゃないかなぁ。恋人を探す意外な手掛かりは面白いんだから、そこで止めておいたほうが良かったのでは。どっちにせよ凡作だけど。

 ところで、271ページの食品の名称は多分、ニッシュ → クニッシュ(knish、例外的に k も発音する)、トーチラ → トルティーヤ(tortilla)、ですね(修正されてる?)。


No.825 7点 寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁
島田荘司
(2020/11/03 11:34登録)
 母親はあれっぽっちの追加情報で事件の裏事情をどのように推察したのか。関係者を直接知っているが故の思い込みが、たまたま正解だった、って感じ。
 結末で吉敷が殺意の理由について語るが、“感情のもつれのケースAは納得出来ないがケースBなら判る”と言う言説は説得力に欠ける。

2224中の書評を表示しています 1381 - 1400