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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2254件

プロフィール| 書評

No.1094 6点 未来医師
フィリップ・K・ディック
(2021/12/03 11:54登録)
 前半の世界設定(これはこれで面白い)と時間SF化する後半が別物みたい。謎の殺人まで登場して、イマドキの特殊設定ミステリのような展開に頬が緩む。この“意外な犯人”の凄さ、当時の作者はきっと自覚出来なかっただろうな~。


No.1093 8点 四元館の殺人―探偵AIのリアル・ディープラーニング
早坂吝
(2021/12/02 11:16登録)
 意外と古式ゆかしい館モノ、と騙されかかったが、探偵AIなんて基本設定がそれで済ます筈は無い。まだあった“意外な犯人”! 竹筒を使ったトリックは改良の余地がありそう。


No.1092 7点 杉の柩
アガサ・クリスティー
(2021/12/02 11:13登録)
 第一部の終わりで、真相は読めた、と思った。
 だがそれは全くの間違いだった。
 私の迷推理を開陳します。
 ――M嬢の父が、アレは自分の娘ではない、と言っていた。実はM嬢とR氏は兄妹で、急激に惹かれたのも無意識のうちにそれに気付いていたせい。本人達も知らなかった事実にE嬢が気付き(“数々の手紙”に手掛かりが隠れており、看護婦からE嬢にそれが伝わった)、近親相姦を犯させない為に殺害。その内容ゆえに、動機については沈黙を守っている……。

 あと、薔薇の種類が何であれ、トリックの成否とは関係無いし、推理に必須の手掛かりでもない。アレは作者の余計なサーヴィスだと思うな。


No.1091 9点 七十四秒の旋律と孤独
久永実木彦
(2021/11/30 12:44登録)
 一話目の段階では、リリカルな世界を巧みに描いている、けどあくまで雰囲気モノかな~、と思っていたが、一話ごとに飛距離を伸ばしてとんでもないところへ。私のツボ(変な宗教の成立過程)を突かれて戦慄。均質から個性が生じる流れも面白い。
 余計な知識:“ソウビ”を漢字で書くと“薔薇”です。


No.1090 7点 楽園とは探偵の不在なり
斜線堂有紀
(2021/11/30 12:43登録)
 世界の変貌を描いたSF。ミステリ要素は物語を進める為の装飾に思える。何も悪いことではない。面白ければジャンル認定なんてどうでもいいのである。
 EQの名を出したのは“操りテーマ”を意識してのことだろうか。 


No.1089 7点 透明人間は密室に潜む
阿津川辰海
(2021/11/30 12:42登録)
 表題作に関する揚げ足取り。
 探偵:被害者は明らかに死んでいる、ならベストな対処は“部屋に入らず封印して警察に通報”では。ガラス片は、犯人に転ばされたら自分達が大怪我をする。身の危険を顧みず何が何でも捕まえる義務は、まぁ無い。
 犯人:あの隠れ方だと、隙が生じても咄嗟に動けない。“透明”のアドヴァンテージは大きいのだから、各個撃破を目指した方が逃走出来そう(事前に探偵側の人数を確認出来ないのがネックか)。
 総合して考えると、事態が肉弾戦ではなく高度な知恵比べになる前提で両者とも行動している。そこに至る設定をもう少し詰めるべきだった。
 更に。“現場にもう1人の透明人間=真犯人が潜んでいて、1人が捕まった隙を突いて逃げた”可能性を、客観的には否定出来ない(よね?)。裁判で有罪判決は出るか?


No.1088 6点 トマト・ゲーム
皆川博子
(2021/11/30 12:42登録)
 最初期の作品集、にしては随分手馴れた書きっぷりではないか(この時点で四十代だが、私は年齢はあまり関係ないと思うので)。
 時代風俗のせいもあり(頭脳警察がゲスト出演!)、あくまで“一世代前の物語”を遠くから眺める感覚だけれど、「アルカディアの夏」にはクラクラした。部屋の臭いまで感じられそう。


No.1087 5点 死刑囚最後の日
ヴィクトル・ユゴー
(2021/11/28 10:17登録)
 娘と面会する場面とか、面白い断片はあるけれど、全体としては真摯な分だけ興趣を遠ざけてしまっている。
 文学史上最初の“日記体小説”だそうな。この形のテキストだと、古典的な“結末で語り手が死ぬ話はどうやって書かれたのか?”問題が浮上する。これはブログで何でも晒す現代人に対する皮肉だね。死刑囚にブログが許可されたら、執行直前まで更新するんだろうか。彼は死んでもスマホを手放しませんでした。
 「序文」で死刑制度廃止を訴えているが、こういう論は長くなると説得力を失うと思った。


No.1086 5点 ソフトタッチ・オペレーション
西澤保彦
(2021/11/28 10:07登録)
 「捕食」のストーリー部分、「変奏曲〈白い密室〉」の超能力とはあまり関係ない部分の謎解き、は面白かった。
 しかしチョーモンインに“霊”は鬼門では。どこまでアリかと言う世界設定がぶれるでしょ。表題作、工夫は見られるが、こういう真相は嫌いだ。


No.1085 5点 絞首台の謎
ジョン・ディクスン・カー
(2021/11/27 13:15登録)
 “怪奇趣味”がまるで怖くない。ドタバタ騒いで回って、これはメタ的なユーモア小説? 率先して殺人現場を荒らすなよバンコラン。
 殺された人は巻き添えを食っただけ。特に運転手は端から“主人の添え物”扱いで、彼個人に対する動機など考慮されない。失礼な。

 ところで、本書には語られざる恐ろしいラスト・シーンがあることにお気付きだろうか?
 甲は首を拘束されたまま転落、首が折れてだらりとぶら下がる。その足の下では泥酔した乙がテーブルに突っ伏していびきをかいていた。
 縊死の場合、たいていは“漏らす”と言いますよね……。


No.1084 8点 八月のくず
平山夢明
(2021/11/27 13:06登録)
 相変わらず、予め一線を越えちゃったような短編集。
 揃いも揃って獣の王で比較しづらいが「箸魔」が最も高カロリーか。一方、蜘蛛の糸一本分だけは此岸とつながり理屈をギリギリ通すのがこの人のやり口であって、その点完全に不条理なところへ行ってしまう表題作はちょっと違和感があった。初出一覧(=各作品がどのへんから産み落とされたか)も興味深い。


No.1083 7点 invert 城塚翡翠倒叙集
相沢沙呼
(2021/11/23 12:45登録)
 個人的には、非待望の続編。
 あんな大ネタのキャラクターをシリーズ化するのはなんだかなぁ。“ノンシリーズのオンリーワンの強さ”とでも言うべきものが確かにあって、シリーズ化はせっかくのインパクトを水で薄めてしまうような行為だと私は思う。探偵役が必要ならまた作ればいいじゃないか。『 medium 』の孤高の存在感は失われてしまった。勿体無い。とは言ってもまぁ読むんだけど。

 しかし実は、私には倒叙ものの的確な評価が出来ない。
 犯人達は上手くやっているし、ミスもわざとらしくはない。とりあえず指摘すべきアラは見付からなかった。犯人側の心理描写は読ませるし、倒叙スタイルから更に捻った某作は見事。
 その上で、“良い倒叙もの”と“物凄く良い倒叙もの”との線の引き具合が判らない、と言うのが正直なところだ。この煮え切らない評価基準を超えて迫って来る傑作、とまでは行かなかった。


No.1082 6点 雷神
道尾秀介
(2021/11/23 12:44登録)
 作者が仕掛けたトリックよりも、それを通じて描かれた“心の絆”みたいなものがキモなのだろう。しかしそう読むには“動機付けの軽さ”が仇になった。
 つまり、本気で正体を隠すつもりなら、人目が無い場所でも偽名で呼び合うべき。語り手達がその点を全然配慮していないので、軽い好奇心から過去をほじくり返しているように見えてしまうのだ。安易な行動のせいで人死にまで出た話に思えてしまうのだ。
 どうも最近は“昔のことはそっと葬ったままにしておきたい事件関係者”に共感しがちな私である。


No.1081 4点 生贄を抱く夜
西澤保彦
(2021/11/23 12:42登録)
 これぞと言う名品が見当たらない短編集。パターンとは違うことをしてみようとの心意気は評価したいが、これではあまり意味が無い。


No.1080 8点 警視庁草紙
山田風太郎
(2021/11/21 12:43登録)
 ミステリ的な捻りは乏しく、物凄く面白い話と言うわけではない。結構悲惨なエピソードも含む。
 しかしそれでも尚、行間のそこここに“碌でもないことばかりでも、どうにかやって行くしかないのヨ”と嘯いているような、浮世に対する清濁併呑の肯定性が感じられて、それがとても良い。出しゃばり過ぎないユーモアも効いている。
 個人的偏見だが、それは横溝正史『悪魔の手毬唄』で感じたムードに似ている。
 
 ただ、俄に納得しがたい結末には暫し呆然……。


No.1079 5点 N・Aの扉
飛鳥部勝則
(2021/11/18 10:30登録)
 “言葉”とは要するに記号である。人間の頭から生じるが、外へ出た途端にその発信元からは切り離される。故に、コレは本心、コレは嘘、と他者が言葉の内容から判定することは、突き詰めれば、不可能と言うことになる。
 本書は“どのように書けば、その言葉が筆者の本心のように感じられるか”の実験(練習?)のように思えた。まぁ少なくとも前半は。


No.1078 8点 安達ヶ原の鬼密室
歌野晶午
(2021/11/18 10:25登録)
 再読なり。ストーリー、何となく覚えていた。トリック、それなりに覚えていた。欠点、はっきり覚えていた!
 と言うわけで「こうへいくんとナノレンジャーきゅうしゅつだいさくせん」「 The Ripper with Edouard 」は飛ばして読んだ。エクセレント! これでいいのだ。個人的にこの密室トリックは五指に入る。


No.1077 5点 密会
安部公房
(2021/11/16 12:37登録)
 突然やって来た救急車が妻を連れ去った……ミステリとして書かれたわけではないが、私には本作、江戸川乱歩のエロティックで奇妙な話(「人間椅子」「パノラマ島奇談」等)のアップデート版のように思えた。
 そして幾つかの叙述上の企み。考えてみれば“作者が読者に言葉を使って仕掛けるトリック”と言うのは必ずしもミステリの専売特許じゃないわな。


No.1076 5点 神と野獣の日
松本清張
(2021/11/11 10:25登録)
 評価に迷う。しっかり書かれた作品ではある。しかし主題がアレならこの内容はありきたりだ。
 “みんなできるだけ生きていてくれ”と言う課長の叫びはストレートで印象的。刑務所に着目したのは上手い。或る意味最も残酷な結末で、その点は唸らされた。
 (ラスト数行のアレは無しにして、そこからの“復興”を描くのはどうかな? と思った)


No.1075 5点 人形幻戯
西澤保彦
(2021/11/10 12:01登録)
 このシリーズに対して“ミステリと言うよりキャラクター小説だ”との感想は当然あっただろうが、だからと言ってキャラ味を減退させては意味が無いのである。作者が萎縮してシリーズ・キャラクターの活躍を手控えている感じ。
 その上で色々工夫しているのは判るが、それがなんだかチマチマした印象につながってしまう。特に、ホワイダニットについて、物理トリック解明と同じような理詰めの文法で語ってしまうのはちょっと勿体無いのでは?

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