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ミステリの祭典

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錬金術師の密室
錬金術師テレサ・パラケルススと青年軍人エミリア

作家 紺野天龍
出版日2020年02月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 6点 ROM大臣
(2024/07/01 15:13登録)
秘術である錬金術と、よりポピュラーな変成術が存在する架空世界を舞台にしたファンタジーミステリ。
アスタルト王国の軍人エミリアは、軍務省錬金術対策室室長で自らも錬金術のテレサ・パラケルススに従って水上蒸気都市トリスメギストスへと赴いた。世界に七人しかいない錬金術師のうちの一人である。フェルディナント三世が、前人未到の不老不死を実現したというのだ。だが公開式の前夜、三重密室の中で惨劇が起き、テレサに嫌疑がかかってしまう。
傍若無人にもほどがあるテレサと生真面目なエミリアという互いに反りが合わない二人が、反感をぶつけ合いながらも、協力して事件解決に挑むプロセスがコミカルな風味を醸し出している。重要容疑者とされたテレサの処刑までのわずかな時間の間に真犯人を挙げなければならないというタイムリミット・サスペンスの要素あり、冒険小説テイストありで盛りだくさんな展開。肝心の密室トリックは、大体見当がつくものの、それだけにはとどまらないどんでん返しが用意されており、最後まで楽しませてくれる。

No.2 5点 虫暮部
(2022/01/30 12:04登録)
 この真相、某メフィスト賞作品そっくり。
 但しこれは、作者ゆえに自作品を上手く客観視出来なかっただけで、ネタをこっそりかっぱらって使いまわそうと言うズルではなかったと思う。軽いオマージュくらいのつもりが、実際にはがっつり換骨奪胎になってしまったぞ、と言ったところでは。スチームパンク要素の匙加減がいい感じで、そんな風に好意的に捉えたくなる。

No.1 6点 メルカトル
(2021/07/30 23:01登録)
舞台は架空の国のある都市、時代はおそらく近未来でしょう。世界に7人しかいない様々な神業としか思えない能力を持つ錬金術師の一人が、三重密室内で彼自身が創造したホムンクルスと共に殺害される事件の謎を、探偵役である別の錬金術師とその助手で軍務省情報局の少尉が追う物語。彼らに残された時間は僅かに一日だけ。

密室のトリックは所謂バカミスの様なものです。最近よくある特異設定での事件なので、現実的な常識は通用しません。しかし、探偵の推理は至極真っ当なもので、特に違和感は覚えません。驚愕度はそれ程ではありませんが、そんな馬鹿なというか、それじゃ何でもアリじゃないか的なアンフェアな感は否めません。其処で終わっていたらおそらく5点だったと思います。しかし、ラストは見事に・・・これ以上は書けません。

作者はもともとファンタジーなライトノベルでデビューしたそうですが、真面な本格ミステリも書けるという力量を見せつけてくれました。予想していたより文章も確りしていますし、シリーズ化もされて今後が楽しみな作家だと思います。

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