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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2254件

プロフィール| 書評

No.1534 5点 消える「水晶特急」
島田荘司
(2023/09/22 12:52登録)
 この真相、“何かズルい” と感じてしまった。
 ハウダニットに見えて、実はホワイが問題で、そこを隠す為に視点を転換。と冷静にまとめればそこまで珍しくもないし、類例に対していちいちそう感じるわけでもない。
 結局、“島田荘司には物理的な大技をかまして欲しい” と言う私の願望に上手くフィットしていないせいだろうか。いや、本作も大技と言えば大技である。但し、“方法としては判るけど、普通そんなことするか!?” ってとこがポイントでしょ。この作者には、“トリック自体の驚きのメカニズム” を期待してしまうので……。

 弓芙子と夜片子。
 こういう頑張ってる感じのネーミングは好き。でも島田荘司の中では唐突。何か思うところがあったのか?

 どうでもいいことだが、島田荘司の登場人物はしょっちゅう狐につままれるなぁ。


No.1533 6点 鏡は横にひび割れて
アガサ・クリスティー
(2023/09/14 13:28登録)
 これはACの良くあるパターンじゃない? しかもタイトルが大胆に “ハイここ注目!” と告げていて、サーヴィスし過ぎ。
 私は推理などしていない。単に、AC作品を或る程度読んだ経験上、諸々の要素の配置が判っただけ。
 “あ、これが動機か” と気付いた時点で未だ半分以上ページが残っており、第二の殺人が起きるような話じゃないし、作者がそれをどのように埋めたのかと言う興味で読み進む。
 うーむ、成程そうやってカムフラージュするか。愛だなぁ。暴走だなぁ。どこまで結託していたのかは藪の中だけど、そんなグレーな結末もいいんじゃない。どっちにせよ一蓮托生なんだから。


No.1532 8点 名探偵も楽じゃない
西村京太郎
(2023/09/14 13:27登録)
 本格ミステリとか名探偵とかいった概念を対象化して、それ自体を枠組みごと仕掛けに使うような、新本格みたいなミステリ論ミステリが、1973年に既に書かれていた。
 しかもなかなか出来が良いじゃないか。徒にロジックを錯綜させることもなく、ポイントを巧みに突いてストンと落としている。“狙いが透けちゃう感” は確かに否定出来ないが……。

 瑕疵はT氏が部屋で怪我をさせられた事件。チェーンロックによって密室になっていた。
 この事件は、犯人がT氏を狙ったものの殺し切れずに逃げた、と思わせる為のT氏のマッチポンプである、と思わせる為に犯人はわざと殺さなかった、のである。
 さて、チェーンロックの為に “犯人はどうやって部屋から出たんだ、お前のマッチポンプだろう” とT氏は疑われた。仮にマッチポンプなら、わざわざ自分が疑われる状況をT氏が作るのはおかしい。と言うことは、T氏が作るのはおかしい状況を犯人が作るのもおかしい、よね。

 マニア達が “身の程を弁えた常識人” 過ぎで、トンデモ行動に(あまり)出なかったのは残念。

 メグレがO型、と言うのは原典に記述されている公式情報?


No.1531 6点 崩れる脳を抱きしめて
知念実希人
(2023/09/14 13:26登録)
 細かなエピソードにせよ、台詞回しにせよ、おいこりゃベタだな~と悶えつつ、いくら何でもこれで終わりじゃないだろう、わざとベタにしてまとめてひっくり返す大技か、と北叟笑みつつ、最後の真相は予想外だった。まぁ他に黒幕たる人物が残ってないか……。

 “遠縁の親戚が相続人”――現代日本の法定相続人の範囲は、配偶者・子・親・兄弟姉妹およびその代襲相続人まで。
 本書に登場する親戚がその範囲内なら、他に身寄りが無いとのことだから、遺言書が無くても遺産は回ってくる。なまじ遺言書があると、相続人以外に遺贈されて却って取り分の減る可能性がある。
 なのにわざわざ彼女を脅して遺言書を作らせたのだから、範囲外の親戚なのだろう。ならばそれは、通りすがりの人に “金をよこせ、さもなくば襲うぞ” と言うのと大して変わらない(“親戚” と言う要素はアドバンテージにならない)のである。雰囲気的にちょっと正当性がありそうな気がするだけで、実際には何の権利も無い。つまり雑な設定である。
 寧ろ結婚してしまえばいい。近々死ぬ相手なら、無断で届けを出しても異議申し立てする時間が無いだろうから。

 また、遺言書には検認手続きが必要で、封がしてあれば家庭裁判所で相続人かその代理人の立会いの下に開封せねばならない。皆さんも遺言書を拾ったら、この主人公のように勝手に封を切らないよう気を付けましょう。


No.1530 5点 太鼓叩きはなぜ笑う
鮎川哲也
(2023/09/14 13:25登録)
 切れ味やや鈍い地味な本格、だと感じた。本格のとある方向性に邁進すると、外連味が薄れてそうなりがちなのはまぁ判る。
 語り手のキャラクターがあまり好きになれなかった。ユーモアも効きが悪い。これは “ユーモアのセンスが無い語り手” と言う設定を巧みに描いているのだろうか。
 この世界線にはゆすりが多いな。ゆすりとアリバイは食い合わせが悪いんだけどな。


No.1529 5点 私を猫と呼ばないで
山田正紀
(2023/09/14 13:25登録)
 ミステリは薫り付け程度。これは飛び道具無しで二十枚を如何に凌ぐかと言う挑戦なのだろうか。エンタテインしないことこそがエンタテインメントである、みたいな。私としては切り込む糸口が摑めない話が多く困惑したが、最も意味不明な「つけあわせ」が最も印象に残っているのはどうしたことか。
 ところで猫が登場すると無条件で好感度が上がるな~(と言うのは実物の猫のことであって表題作のことではない)。


No.1528 7点 梅雨物語
貴志祐介
(2023/09/07 13:14登録)
 「皐月闇」。前半は想定通りでつまらないが、展開を鑑みるとそれは必定。後半はスリリングで興奮した。この言霊ミステリを楽しめる自分を誇ろう。
 しかし、作品集の構成としては如何なものか。「皐月闇」と「ぼくとう奇譚」には、共通の要素として罪悪感と記憶が扱われている。そしてそれが「くさびら」に対するミス・ディレクションとして働いている。少なくとも私はそんな思い込みを抱いてしまった。作者の意図かどうかは判らないが、あまり良い組み合わせではないと思う。

 「くさびら」の、相続に関する説明は間違っており、それを修正すると動機が無くなってしまう。


No.1527 7点 覆面作家の夢の家
北村薫
(2023/09/07 13:13登録)
 レッド・へリングが殆ど無いんだ。再読なので良く判る。カードを伏せて一列に並べて、“こうですよ” と捲って見せるだけ。そのカードの並べ方が意外と真相そのまんまで、捻りや工夫が見られないかも……。
 「覆面作家と謎の写真」。一番不思議なのはどこでしょう、と言う切り口は上手い。
 「覆面作家、目白を呼ぶ」。この方法は殺人罪に問えるのだろうか。車の落ち方がじっくり描写されていて息が止まってしまいそう。
 「覆面作家の夢の家」。厳しく言えば、ゲームと言う形で逃げている。この格調高過ぎる暗号を、現実の事件として作品に出来る人がいるのではないか、そういう風に書かなきゃ、と思ってしまう。
 “東江戸川女子大” って『おじゃまんが山田くん』からの借用だよね。

 やはり、ミステリ要素以外の部分はとても好ましいんだけどな~。キャラクターは大好きなんだけどな~。


No.1526 6点 まだ、名もない悪夢。
山田正紀
(2023/09/07 13:12登録)
 “TVの深夜ドラマのシノプシス” なる設定はどの程度意味があるのだろうか。敢えてその趣向に乗っかるなら、映像化に向いていそうなのはせいぜい半分程度。モノローグが多過ぎると思う。御色気サーヴィス回もアリ?
 その設定は単なる体裁だから! と言う作者の開き直りが、完全にSFの「冷凍睡眠の悪夢」や不条理なオチの「訪問販売」の収録を許したのではなかろうか。でも無理のあるものほど、映像を脳内でイメージするのが面白かったりもする。
 中途半端な設定は気にせず、単なる奇妙な味の作品集として読んでも良し。


No.1525 6点 殺人ダイヤルを捜せ
島田荘司
(2023/09/07 13:10登録)
 最初から最後までズ~ンと沈んだ気分で、語り手にも共感しづらく、しかし話は割と最初から走り出すので、さほど楽しくはないのについ乗せられちゃった感じ。

 勢いで殺してしまい、即興的にあのトリックを思い付いたと言うことは、犯人達は事前に語り手の行為についての情報を共有してたんだろう。“こういうトリックを思い付いたんだけど、知り合いにイタズラ電話をしてる奴いない?” って順序ではないだろう。
 他人の秘密をペラペラ喋る慎みの欠けたパートナーは嫌だな~。犯人(女)はそういう品の無さを男に見せて平気だったんだろうか。犯人(男)は新旧どっちの女を選んでもガッカリなんじゃないだろうか?
 あまりナイスなペアには思えないんだよね。一時的な愛人関係ならともかく、捕まらずに一緒に暮らしたら、いずれ男が女を殺したのでは……?


No.1524 6点 怪盗グリフィン、絶体絶命
法月綸太郎
(2023/09/07 13:09登録)
 作品の基本設定として、国際的謀略がゲームのように冗談交じりで進行する、言ってみれば “楽しい騙し合い” の世界観が成立している。ナイス。
 それだけに渦中で人死にが発生したのは痛恨事である。バタバタ死ねばそういう作品なんだなと切り替えられるが、一人だけと言うのがまた辛い。あれさえなければなぁ(ジュヴナイルだからってわけではなく)。


No.1523 7点 月灯館殺人事件
北山猛邦
(2023/08/31 12:25登録)
 こんな風に自作のトリックをネタバレ&リユースしちゃうのはアリなの? あっちも既に読んでたから被害は無かったが、是非はともかく、そういうことをやっている、と言う事実のせいで以降ちょっと斜に構えた読み方になってしまった。それさえなければ。


No.1522 7点 高山殺人行1/2の女
島田荘司
(2023/08/31 12:24登録)
 自動車やファッションのネタはピンと来なかったが、次第に泥沼化して行くサスペンスには引き込まれた。愛らしくない間抜けな人物を一人称でこれだけ書けるのはなかなかなもの。
 細かいことだが、ミステリ界には強引な聞き間違いが多いけれど、靴屋の発言を取り違える部分は自然で上手いと思う。

 しかし真相は……そんなことで(別れるでなく)殺そうとするか? バイカーも何故ああまでしつこくした? 隠されたホワイがあれば良かったのだが。


No.1521 6点 覆面作家の愛の歌
北村薫
(2023/08/31 12:23登録)
 全体的に強引。謎の為の特殊な状況を作り出す為に犯人に特殊なメンタリティを付与した感じ。でもそもそも探偵役のそれが特殊だからねぇ。
 「お茶の会」のホワイは上手いところを突いていると思った。“どこかで聞いたような三人組” は横溝正史のアレだよね。

 ミステリ要素以外の部分はとても好ましい。
 因みに、ストーンズが a poison kiss と歌うのは「 I Go Wild 」と言う曲。


No.1520 6点 大金塊
江戸川乱歩
(2023/08/31 12:22登録)
 暗号文を奪い取ったものの解けない。そこで一旦返却し、明智小五郎に解かせて彼の探索の跡をつける。賊の作戦勝ちだ。最後に油断したのは惜しかったね。


No.1519 5点 ヒッコリー・ロードの殺人
アガサ・クリスティー
(2023/08/31 12:19登録)
 ネタバレするけれども、結局、盗難騒動って何?
 はっきり書かれていないが、リュックサック破壊事件と言う “木の葉” を隠す為の “森” を、無関係な者を唆して作り上げた、と言うことなのか。
 しかしあれは実行犯が露見して気を引くところまで計画に含まれていて、すると “リュック事件は別” と言うことも明らかになるわけで、最終的にあまり意味が無いと思う。
 それとも、裏で進行中の違法行為とは無関係に、あんな行動を唆したと言うこと? (それは何かズルい……)

 あと、最後に従犯者が色々話しているが、あれが全て正しい保証は無いよね。要約すると “主犯と或る程度の情報共有はしてたけど、私はそんなに悪くはありません” と言っている。
 自分の罪状を軽くする為に犯行の主導権を相手に押し付けようとしているのかも。そのへんの曖昧さ、私は面白く感じたので、作者にはもっと意図的に突っ込んで(主犯にも供述させて)欲しかった。

 最後の事件のトリックは、単純だけど鮮やかで見事に引っ掛かった。


No.1518 7点 AIとSF
アンソロジー(国内編集者)
(2023/08/26 13:14登録)
 タイトル通りのSFアンソロジーだが、謎とその解明を軸にした作品やミステリ的な捻りを備えた作品も多い。人ならざるものの意思、と言うことで神仏ネタが重複しているのは、示し合わせたわけじゃなくて必然なのだろう。中には1編くらい、AIに書かせた作品が密かに混じっているかも。
 注目作を挙げます。『AIとミステリ』があったらそのまま収録されそうな高山羽根子「没友」と品田遊「ゴッド・ブレス・ユー」。喚起させられるイメージの倒錯具合が可笑しい十三不塔「チェインギャング」。野﨑まど「智慧練糸」は反則、だがテーマをもっとも体現している(かも)。


No.1517 6点 その謎を解いてはいけない
大滝瓶太
(2023/08/26 13:14登録)
 これは恐ろしい。キャラミス殺しの、しかも大量殺人鬼だ。今後アレもアレもメタ的ギャグとしてしか読めなくなったらどうしてくれる。迂闊に読んではいけないあがら。
 表紙イラストが遠田志帆、ってのもわざとだよね。同氏のイラストが飾った某作の中二病的探偵の真実をこっちでは始めからネタとしてバラしちゃってる。そこまでやるか……。


No.1516 6点 アリアドネの声
井上真偽
(2023/08/26 13:13登録)
 感動してしまったのは認めざるを得ないが、こんな捻りの無い話で手も無く感動しちゃっていいの? と突っ込む天邪鬼も私の中にいるわけでどうしたものか。
 ふと思ったのだが、もっとフィクション度の強い、宇宙時代だったり異世界だったりの話ならすんなり読めたような気もする。現実と地続きだとエンタテインメントとして受け止めづらい。
 しかしハンディキャップを持つ名探偵の話なら普通に読めるしなぁ。やはりハンディキャップ自体をテーマにしたストレートさ、クッションの無さ、に何かひるんでしまうところが私にあり、こういうのをもう一冊、とは思わない。


No.1515 8点 北の夕鶴2/3の殺人
島田荘司
(2023/08/26 13:12登録)
 まずツッコミ。妻二人の死体発見の状況がきちんと書かれていない。
 藤倉兄弟が、妻が一晩戻らないと言って警察に捜索願を出した。妻達は同じマンションの加納通子の部屋へ行くと言っていた。
 それだけの根拠で第三者の部屋に無断で踏み込むのは、正当性が弱いと思う。作者の書き忘れか。いや、これはわざとじゃないかな~? 具体的にどういう成り行きで錠を開けさせるか思い付かず、伝聞なのをいいことに曖昧に誤魔化した、とつい邪推してしまう。

 吉敷襲撃事件もやや不自然。
 彼の言動、そんなに脅威だろうか? 寧ろあのタイミングで襲撃したら自白みたいなものだ。証拠能力は無くても、当事者同士では通じ合っちゃったんじゃないだろうか。
 確かに、謎解きはともかく、通子を確保されるリスクはあった。但し、吉敷が牛越に期限付きで頼み込んだことを犯人は知らない筈。なのにまるで犯人が読者視点で吉敷の思考を読んで襲撃したようじゃないか。

 共犯者へのフォローが無さ過ぎ。被害者との関係性を鑑みれば当然疑われるポジションなのに。アリバイを偽証するくらい出来ると思う。

 現場で共犯者が悲鳴を上げた意味が判らない。“隣室の者が不審がってやってきたらどうするのか” と疑問を呈しておきながら(私もそう思う)、解答を示していない。

 “保険金の額の差” はあまりにわざとらしい。

 と色々思うところはある変な話だけれど、このトリックは馬鹿馬鹿しくて好き。また、再読で流れは知っていたのに、武者の写真のくだりはゾーッとした。
 島田荘司の文章を上手いと思ったことはあまり無いが、本作は全体的に迫力があり驚いた。

 加納通子のキャラクターは好きになれないな~。主体性の無さ。別れた相手に対する中途半端な期待感。自分にも相手にも無駄なコストを強いる感じが苦手。吉敷は重い鎖を背負ってしまった。公私混同も甚だしい。
 しかし、それ故に彼の無駄にエモーショナルな刑事としての生き方が推進されたような側面もあるし、そのストレスへの反発が熱い描写を生んだのかも知れない。だから一概に否定も出来ないのである。作者はどこまで意図してこの人をこの段階で投入したんだろうか。

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