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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.22点 書評数:1938件

プロフィール| 書評

No.1918 7点 花嫁は二度眠る
泡坂妻夫
(2025/02/28 12:39登録)
 泡坂妻夫っぽい遊び心は影を潜め、なかなか上手く “普通のミステリ” に擬態してみせた。首吊りのトリックはナイス(タイミングを図るのは難しそうだが)。読み返すと伏線も色々細かく張られていて楽しい。
 ただ、それよりも私が引き込まれたのは人物造形の妙。この人がこう思ってこう動く、それに反応してあの人がああ動く、と言う絡み合い方に非常に説得力を感じた。
 ラスト・シーンについて。犯人は二人殺して、死刑を回避出来るのだろうか。情状酌量の余地があまり無い気がするんだよね。つまるところ動機は保身と金だし。そして、出席者の顔ぶれ。事情は伏せたんだろうけど、いずれ知れるでしょう。残酷だよ……。


No.1917 7点 蜘蛛の糸は必ず切れる
諸星大二郎
(2025/02/28 12:38登録)
 怪奇小説第二弾。殺人事件が起きたり、記憶が曖昧だったり、叙述トリック(と言う程でもない)だったり、追う者追われる者だったりと、ミステリ的趣向……なのかと思わせておいて全然そうではない。黒々と墨でにゅるりと象ったような語りの密度は高く、中でも「船を待つ」の寂れた港の空気感とあやふやな結末が良かった。


No.1916 6点 北の椿は死を歌う
皆川博子
(2025/02/28 12:38登録)
 椿姉妹を始め事態の原因となったアレコレが面白いのに、最後に駆け足で説明されるだけ。裏側に引っ込め過ぎではないか。斎原家を訪ねるあたりまでは表側から描くのも仕方ないが、後半は倒叙っぽくして殺しの過程や心理をしっかり書いて欲しかった。暴走して殺しのハードルが下がるあの人と、“ついて行けん” と見切ってしまうあの人と。だいたいそっちの方が作者の得意技じゃないか。

 はっきり書かれてはいないが、万起子は “ずっと熱心に妹を探していた” と言うより、“ちょっとした偶然をきっかけに火が点いた” みたいに思える。その結果がアレでは非常に据わりが悪い。故に却って残酷なインパクトを感じた。
 新婦失踪の真相はかなりの綱渡り。ただの失踪で良いのにリスクを冒して成りすましをする必要は無いよね。


No.1915 6点 人形は遠足で推理する
我孫子武丸
(2025/02/28 12:37登録)
 激しく乱高下する語り手の気持の渦に巻き込まれて泣いた。
 しかしミステリ的にはフェザー級。偶然を何処まで許容するかと言う問題で、バスにその人が乗っていた件は蛇足だと思う。


No.1914 5点 訃報は午後二時に届く
夏樹静子
(2025/02/28 12:36登録)
 ツカミのエピソードの上手さに感心した。事件に巻き込まれる自然な流れで、更にオリジナリティもあると思う。
 それだけに真相には失望。作中で言及されているように却ってアリバイが保証されかねないし、もっと確実な口実が何かしらあるだろうに。
 “幻の女” 探しになるかと思ったがそっちへは進まず。決定的矛盾とまでは言わないが、事件関係者は皆多かれ少なかれテンパっていて不合理な行動を取っている。
 最後に明かされるトリックも “そこまでやるか?” と言う印象。例えば “不慮の事故で落ちてしまったものを、これ幸いと利用した” みたいな、心情的にもう少し説得力のある設定に出来なかったものか。


No.1913 8点 撮ってはいけない家
矢樹純
(2025/02/19 12:31登録)
 作者の筆力が十全に発揮されたホラー・ミステリ。新機軸に挑んだ為に想定外のポテンシャルが活性化したのか?
 伏線はそれなりに拾った心算だったが、それを超えて張り巡らされた蜘蛛の糸に翻弄された。オカルティックなのに合理的な語り口が怖さを増幅する。解決編で怒涛の情報量に溺れかけたので、そのへんもう少し余裕を持って整理されていたら、とは思う。


No.1912 5点 あらゆる薔薇のために
潮谷験
(2025/02/19 12:30登録)
 メインの謎は “昏睡病の真実”。それに対して、殺人事件の謎は見劣りする。病気の問題に的を絞って、もっと詳細に書き込んだ上で完全にSFにした方が、真相で驚けたんじゃないだろうか。
 最も魅力的な登場人物は、中盤に差し掛かってようやく前面に出て来るあのアスリートさん。せめて彼女が最初から活躍していれば……否、それはもう別の話になっちゃうか。


No.1911 5点 アラビアンナイトの殺人
ジョン・ディクスン・カー
(2025/02/19 12:30登録)
 こんなに紙幅を費やすサイズの事件ではない。そもそもこの人、語り手三人を書き分けるなんて器用なことが出来る作家じゃないよね。コンセプト先行で頑張り過ぎたか、長く延びた割に効果は上がらなかった。
 フェル博士の推理の筋道は “搦め手” って感じで邪道? だけど出入り口のトリックや台詞の手掛かりは面白い。せめて3分の2に収めれば疲れる前に読み終われただろうに。


No.1910 5点 東京ー神戸2時間50分 そして誰もいなくなる
西村京太郎
(2025/02/19 12:29登録)
 変な話。やんちゃな権力者が無茶苦茶やって、しかし十津川警部も負けていない。最終ターゲットは勘で判ってしまったが、その手を使うなら、途中経過はもっと真面目にやったほうが良いだろう。
 クイズ付き。イマイチ厳密でない問題文や解答が含まれる気はするが、それはともかく難しい。あんな知識全然持ち合わせが無いよ……。


No.1909 4点 君のクイズ
小川哲
(2025/02/19 12:28登録)
 いやはやクイズを題材にしてここまで人生に切り込む内省的な小説が成立するなんて。
 と言う点では高く評価したいのだが、具体的な事例、と言うか種明かしに関してはイマイチ辻褄が合わない気がするのだ。
 十五問目(仏教において~)の段階でスコアは6-5、コレで勝負が決まる可能性もあった。そして良く見ると、この問題文は疑惑の十六問目(ビューティフル~)と条件が同じなのである。
 “優勝がかかった問題で『ゼロ文字押し』をする” のが狙いなら、何故十五問目で実行しなかったのか。
 因みに十一問目(モンスター~)も同様。要は作者の詰めが甘かったってことだよね。物語の本質に関わることではないが、よりによってそんな問題を採用するなんて……。
 あまりに出来過ぎなポカなので、寧ろ “本庄絆は予知能力者で、全て踏まえた上でこの終わり方を演出した” と言う裏設定を作者が用意しているんじゃないか、と勘繰ってしまう。だって本庄が二問誤答したからこそ十六問目まで縺れ込んだのである。


No.1908 7点 大樹館の幻想
乙一
(2025/02/14 14:45登録)
 いやしくも本格ミステリを謳いながら、こんなに舞台の構造が曖昧なのも珍しゅうございます。
 常に靄がかかったように、ふわふわと無効化される境界条件。一つの館に “無数の部屋” が存在するパラドックス。発想もさることながら、それを成立させてしまう乙一先生の筆致は見事と言う他ございません。

 しかしながら、犯行の骨格だけ抜き出せば、ツボを押さえているとは言え、良くある本格のプロットだと言わざるを得ないのではないでしょうか。
 更に話が進むと存外に俗っぽい事情も顔を見せ、あまりと言えばあまりの落差に眩暈を覚えました。

 それこそが狙いなのやも知れませんが、私は幻想のまま、天上界のまま押し通しても宜しかったかと思惟致します。ミステリの枠など突き抜けて戴きたかった! 御主人様の至高の世界の終焉には、もっと高尚で形而上的な動機を期待していたのでございます。


No.1907 7点 動くはずのない死体
森川智喜
(2025/02/14 14:44登録)
 表題作は素晴らしい。物語としての展開も、明かされた仕掛けも面白い。こういうの大好き。
 「フーダニット・リセプション 名探偵粍島桁郎、虫に食われる」。作中作を読み解く類の話も好きなんだけど、今回改めて気付いた、こういうのは普通のミステリ以上に一字一句にこだわって読まないと楽しみ切れない。おかげで消耗した。
 「幸せという小鳥たち、希望という鳴き声」は何が狙いなのか良く判らなかった。たいしたことない “事件” で目を晦ませておいて(こちらもたいしたことない)叙述が本命、ってこと?


No.1906 6点 スリーピング・マーダー
アガサ・クリスティー
(2025/02/14 14:43登録)
 てっきり “彼女自身が下手人だった” と言う真相かと思った。意図的な殺人かはともかく、子供の体重でも紐を伝わって首の一ヶ所にかかれば死ぬことはあり得る(そもそも死因は未確認だ)。記憶が曖昧なのはショックのせいだし、父の行動はそれを庇おうとした故である。調べが進むうちにそれに気付いた夫あたりが、調査を中止するにも遅過ぎてやむなく証人の口を封じた、と。
 うーむ、そんな話、読んだ記憶があるような……その作者も本作を読んで私と同じことを思ったんじゃないかなぁ。

 “猿の前肢” がどうもイメージ出来ない。画像検索して、結末で明かされる小道具を考慮すれば納得。“前肢” と言うか、腕は含まない手首から先、毛が生えていない掌の部分のことだよね。毛むくじゃらの腕をイメージしてたけどそこではない。作中の言い方でちゃんと通じてたんだろうか?


No.1905 6点 エンドロール
潮谷験
(2025/02/14 14:43登録)
 “自殺討論会” までは素直に楽しめた。
 しかしそれ以降、話が今一つ広がらず。社会への影響を視野に含めている一方、事件はクローズドな人間関係の範囲内に留まってしまった。かと言って単なる殺人事件としてはミステリ的にさほど面白いものではない。革命と言うよりは内ゲバの話か。


No.1904 4点 メグレとマジェスティック・ホテルの地階
ジョルジュ・シムノン
(2025/02/14 14:42登録)
 動機が腑に落ちないなぁ。彼女と彼を会わせたくなかったから。でも、会ったって不都合はまぁ無いのだ。
 勿論、二人が話し合えば、脅迫の件と両者間の齟齬は明らかになる。しかし第一に、メグレが言う通り、犯人は巧妙に自分の存在を隠している。メグレが事の次第を把握出来たのは、警察にタレコミがあったからである。一般人の二人が真の脅迫者を見付けるのは困難だろう。
 第二に、万一正体がバレたとしても、脅迫ネタを握っている犯人の立場が強いのは変わらない。何故、強請る側が強請られる側を殺すのか。

 それに関連して:当時の銀行は、手紙一通で、入金はともかく小切手発行まで可能だったの? ザルじゃない?


No.1903 5点 そして誰かがいなくなる
下村敦史
(2025/02/07 12:37登録)
 “ミステリなら殺人が起きそうな館ですね” みたいな台詞はもう百万回読んだぞ。その手の “登場人物がミステリ愛好家でミステリっぽい事件のミステリっぽさを意識している物語” としては、ごくパターン通りでしかも地味。今時のキャラは “ミステリなら殺人が起きそうな館ですね、とミステリに登場する招待客なら言うところですね” と言わなきゃ。
 せめてこれ、“御津島磨朱李” 名義で出せなかったんだろうか。

 “ソレってアレのパクりじゃん” とか我々はフツーに言うし、余程のケースでないとそんな騒ぎにはならないよね。作家はナーヴァスなのだろうか。盗作云々については、あまり具体的に記述していないせいもあるが、そこまでの大問題だとは思えない。故にホワイについての違和感が残った。

 本棚の写真が興味深い。ぼやけているが、何となく判別可能な題名やレーベルもあり。どの程度意図的なんだろうか。


No.1902 6点 そして誰かいなくなった
夏樹静子
(2025/02/07 12:36登録)
 本歌取りはネタバレを内包するので、ことミステリに於いては如何なものか。
 とは言うものの、固いこと言わずにファンの為のお楽しみ企画ってことで良いんじゃないの、なんて気持になる程度には、上手く描かれていて面白かった。まぁ元ネタはミステリ界の課題図書みたいなものだし。

 犯人の心情として、動機の切実さの割りに、犯行の演出で結構楽しんでない? (架空の)罪状がワルの悪行自慢みたいだったり、死に方が限界にチャレンジするみたいだったり。TVに出ていた有名人の設定とか、必要?
 しかしこれは同時に、心情として、そうして無理にでも気持を揚げておかないと二進も三進も行かない程、しんどかったんだろうなぁ、とも解釈出来る。作者はどういう心算だったんだろうか。


No.1901 8点 そして二人だけになった
森博嗣
(2025/02/07 12:36登録)
 本作は、講談社ノベルスの一連の森ミステリィの上位数作に匹敵する傑作。ラストを除けば。
 矛盾する二つの真相を無理矢理重ね合わせた、量子論的結末? 勅使河原潤と言うキャラクターに関する二つの行く末を、どちらも捨てられなかったか。物語作家としては明らかに甘えだが、エピローグで言い切っているように “そうしたかったからそうした” のであり、その結果射殺されても否やは無かったのだろう。まぁ死んで償う程ではない。
 JDCのアレ、それとも麻耶雄嵩『夏と冬の奏鳴曲』と比較すべきか。ただ、その問題点を除くとミステリとして非常に魅力的であるだけに、無理が痛々しい。
 盲目のフリをする描写には、教えられること多し。


No.1900 7点 そして誰もいなくなるのか
小松立人
(2025/02/07 12:35登録)
 良い意味で食べ易い一品。一つのアイデアを誠実に展開して、掌に収まる範囲で綺麗に纏めていると思う。犯人の失言にはすぐ気付いたが、成程そこで振り返ると幾つも伏線が見えて来る。私にはちょうど良い難易度で気持良く頷けた。終わらせ方も良い。


No.1899 6点 そして犯人(ホシ)もいなくなった
司城志朗
(2025/02/07 12:34登録)
 “他殺競走” と言うアイデアが、概ね台詞で説明されるだけなのがあまりにも勿体無い。もっと作品の中心に据えて、一喜一憂する賭博者を直接描写する場面を増やせばいいのに。叙述トリックを上手く使えば、あの事後従犯が本当に配当金稼ぎの為に殺したかのようにミスリード出来たのでは。

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