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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2204件

プロフィール| 書評

No.2184 8点 百年文通
伴名練
(2026/02/27 17:21登録)
 おいおい無茶するな。タイム・パラドックスを歯牙にもかけず驀進する少女達が痛快極まりない。ここまでやるか。勝てば官軍座れば牡丹恐れ入谷の鬼子母神。
 静が美頼に啖呵を切る場面は何度読んでも笑えて泣ける。静の背後にちょっと出て来るだけの大正時代の女学生達のイメージも生き生きと感じられた。
 語り手の素性をちょっと叙述トリック的に扱ってたり、“箱” の伏線が最初から張られていたりと、ミステリ的文法も嬉しい。


No.2183 8点 かめくん
北野勇作
(2026/02/27 17:21登録)
 “かめくんは自分がほんもののカメではないことを知っている。”

 この一文だけであまりに多くのことを想像させられて切なくなってしまう。そしてそれは一文だけでなく、物語全体に亘ってそんなエピソードが積み重なっているのである。
 かめくんの好きなことを並べるうちにいつの間にか世界のありようが語られている不思議。無口なかめくんを代弁しているような擬音語擬態語がラヴリー。かめくんの向こうに茫洋とした大海のような宇宙のような広がりが見える。


No.2182 7点 火蛾
古泉迦十
(2026/02/27 17:20登録)
 ここで語られる謎を享受するには頭の中の価値観を組み直す必要があり、導入部は立派にその役目を果たしている。しかし、読み進むにつれミステリである意義が解体されて、目的であった筈の “謎” よりも “価値観組み直し作業” の方が面白くなってしまった。それなら無理にミステリであり続ける必要は無いのである。
 と言う点で、あくまでミステリにしがみついたEQ『第八の日』に比べると、愛着を抱きづらい。“神秘小説だけど読み方によってはミステリとも取れる” くらいのワン・クッション挿んだスタンスで挑めば良かったかも。


No.2181 7点 教室が、ひとりになるまで
浅倉秋成
(2026/02/27 17:20登録)
 私はこの犯人サイドだ。気持は判る。でも学生時代は自覚無しに被害者側へ加担していた気もする。なので動機を巡る論争は辛辣に響いた。
 この展開の落としどころは難しい。殺した者が殺されても文句は言えない。しかし私刑も罪である。罪はシェアせずに、独りでやるべきだったと思う。だから止められちゃうんだよ。


No.2180 6点 密室蒐集家
大山誠一郎
(2026/02/27 17:19登録)
 そんなにあっさり解いちゃって良いの? 小説的な膨らみを出せない筆力を自ら見切って、途中経過を飛ばしちゃったんだろうか。
 トリック自体はどれも面白い。しかし偶然が多すぎる。もっとキチンと設定を詰めれば減らせる偶然もありそうで勿体無い。

 と言いつつ最も気になったのはソコではなく三話目、恐喝している側がされている側を何故殺す?


No.2179 7点 火星の女王
小川哲
(2026/02/20 15:58登録)
 火星‐地球間の政治的不均衡を背景にしたアレコレ。事態の大きな動きと個人の事情が普通に並んでいるところが良い。話が逸れているようでいつの間にか繫がっているこの作者独特の文脈作りも大きな推進力。タイトルからの連想ではないがハインライン『月は無慈悲な夜の女王』のアップデート版?
 一方で、誘拐のくだりとか、試料盗難事件の周辺とか、なかなかミステリしている。ロジックの種類がSF的な飛躍ではなく、舞台を未来にした “だけ” のミステリと言った感じで(所謂 “特殊設定” ですらない)、伏線もちゃんと示されている。
 但しそのせいで(?)、既成のスタイルに収束してしまい、オンリー・ワン感はやや弱い。


No.2178 6点 あなたが選ぶ結末は
水生大海
(2026/02/20 15:58登録)
 基本コンセプトは『最後のページをめくるまで』と同様。技術的には水準を維持しているが、インパクトは若干落ちる。
 まぁ二冊目だから、そういう心構えが出来ちゃってたから、読み方が厳しくなってるのはあるだろう。起承転の起伏も充分読ませる力があるので、結のどんでん返しばかりに注目すべきではないと思う(でも作者が “結末” に注目させたがっているんだよね……)。


No.2177 6点 火葬国風景
海野十三
(2026/02/20 15:57登録)
 このトンデモっぽい科学ネタはアリ? でも、まぁアリかな~と思わせてしまう妙な愛嬌があって魅力的。と言う感想はSF系作品でも変わらない。「生きている腸」はグロテスクでラヴリー。「十八時の音楽浴」は奇妙な独裁国の話ながら話題があっちこっちに飛ぶ。自分で手術って……。天然物の脱力系の底力を見た。


No.2176 4点 愛しいチグサ
島田荘司
(2026/02/20 15:57登録)
 外見の良さで相手の全てを知った気になる俗物的な主人公。島田荘司が良くやる “ステレオタイプをデフォルメして笑いや文明批評に用いる” 手法か。私は否応無しに、主人公に寄り添うのではなくメタ的視点から見下ろすことになる。状況はかなり早いうちに見当が付くので、その上でどのような落としどころに導かれるのかが焦点。ところが真相はまるで一世紀前のSFである。これでいいのか?


No.2175 4点 消失村の殺戮理論
森晶麿
(2026/02/20 15:56登録)
 ネタバレあり。
 何しろシリーズ前作が前作だから、最早ミステリとしては読めないのである。今回はどういう反則をするのかと、そればかり気になって。
 それを踏まえた上で、ミステリ的緻密さは欠けるが反則ゆえの大技もあって楽しめた。プロローグはそういうことか。ほう。

 しかし設定の詰めが甘く、見過ごせない瑕疵もある。
 いくら七倍速と言っても、内面はそうは行かないだろう。どうしても成熟に必要な実時間と言うものがある。人格データをインストールするわけじゃないんだから。生まれて六年未満で人間的な社会性を学んで村を運営するのは流石に無理だ。
 脳の働きも物凄く速い? だったら部外者とコミュニケーションする場面で明確な差が見られる筈。
 猛スピードで老けるから、一般人と交流すれば数年でバレる。作中の説明に従うなら、アレは “内面がどうにか育った頃には身体にもうガタが来る使い勝手の悪い使い魔” である。それを、ストーリー上都合の良い部分だけピックアップして使っているように思う。


No.2174 8点 老ヴォールの惑星
小川一水
(2026/02/13 17:09登録)
 「ギャルナフカの迷宮」「幸せになる箱庭」は、或る種の社会実験の新たなシミュレーション、と言う感じ。
 対して、見たことのない景色を描こうとした二編。表題作は異質な知性体の構築度が見事。だが、厳しく言えばあれは “設定” を書いただけ。
 そこから一歩も二歩も進んだのが「漂った男」。深刻なのに笑ってしまう状況設定も秀逸だが、その上で “何も無さ” をあれだけ書けることに感服。
 でもまぁ収録作四編どれもスグレモノである。


No.2173 7点 最後のページをめくるまで
水生大海
(2026/02/13 17:09登録)
 粒揃いの短編集。ライトな作風より、こういう一般向けミステリ(と言う呼び方もナンだが)の方が明らかに上手いのではないだろうか。あっちの作品でイメージ的に損してないか。自己プロデュースに難アリ?
 うざったいキャラクターを見事にうざったく描くので読んでいてウガーッとなる。しかしそれはそう書くからこそ意義があるのである。グッジョブ。


No.2172 6点 獏鸚(ばくおう) 名探偵帆村荘六の事件簿
海野十三
(2026/02/13 17:09登録)
 作者は科学畑の出だそうだけど、このトンデモっぽいネタはアリ? でも、まぁアリかな~と思わせてしまう妙な愛嬌があって魅力的。
 てことで「振動魔」「爬虫館事件」「点眼器殺人事件」のトリックも捨てがたいが、小説全体で評価するなら他とは違う手法で書かれダークな色合いの「俘囚」が素晴らしい。


No.2171 5点 なぜ、そのウイスキーが死を招いたのか
三沢陽一
(2026/02/13 17:08登録)
 タイトル通りホワイにポイントを絞り、必要な情報だけ書いた態度は潔い(と言って良いのかどうか……)。
 ウイスキーの薀蓄は、特に興味は無いので、却って知らないフィールドが面白かった。そこまでマニアックなことはどうでもいいよ、と思わせる前にスッと引く塩梅が上手い?
 アナログ・レコードに関する記述は少々言葉が足りず不正確だと思う。

 四話目が良く判らない。被害者がコレクションを譲りたいだけなら、なぜ、わざわざそんな、不本意な結果に終わる可能性もある会を開いたのか。


No.2170 7点 ツミデミック
一穂ミチ
(2026/02/13 17:08登録)
 普通に良く出来たミステリ(風)作品集。この捻りはミステリ的反転に馴染みが薄い人にこそ刺さるのかも。このさりげなさは意外と貴重なものかも。
 表題の造語は少々子供っぽいし、全編がそこまでコロナ禍ならではのプロットではない。そのへんは “あの時期を背景にした作品” と言う看板で新規読者を上手く(あざとく?)誘導したんだな、と言った感じ。
 “ちょっといい話” に落ち着くものより、はっきり悪意が前面に出た「憐光」が良かった。


No.2169 7点 バットランド
山田正紀
(2026/02/07 15:41登録)
 世界を玩ぶような戦いを別の言葉に託して描く、読者のイメージ受容力を問う想像力の氾濫。都市の汚濁が世界を裏返し、中世の手作業のよって時を越える……読んだことのない景色が幾つも立ち現れた。ただ、物理学用語でスペース・オペラ的アクションをやった「雲のなかの悪魔」だけは少々疲れた。そっちの素養が無いのよ~。


No.2168 7点 犬はどこだ
米澤穂信
(2026/02/07 15:40登録)
 “犬はどこだ? 居ぬ!” と言う洒落?
 ブログやら郷土史やら、様々な形で情報が集まる過程が楽しい。それを集合知で解くくだりも良し。
 ネット越しに協力するチャット相手は冷静さが映えるナイスなキャラ。一方で、助手は第一印象に反して結構使える奴なのが却って物足りなかったりして。
 軽妙に描かれるけど怖い話。ラストの反転には息を呑んだ。


No.2167 6点 エレファントヘッド
白井智之
(2026/02/07 15:39登録)
 おいおい随分ややこしい話だ。寧ろ比較的シンプルな導入部の矢継ぎ早な推理+行動が痛快だったりする。
 本題に入ってからは、最後の人間爆発トリックは確かに見事。ただ、アレに驚嘆するには世界設定をしっかり把握する必要があり、多重解決はその為のレッスンみたい。同じ人間が何人もいて紛らわしいことこの上ない。二度読みしてどうにか理解した(と思う)。

 揚げ足を取って堅いこと言うならば――誰かが死ぬと連鎖する/怪我は連鎖しない。その線引きが恣意的である。
 胸を刺される/おえええっと吐き出す/股間を切り裂かれる。その時点ではまだ “怪我” だ。ところが、死にぞこないの怪我は連鎖せず、結果的に死んだ二人は怪我の時点で連鎖している。最後の例は途中で止めれば助かる可能性もあるのに。世界が未来を予知して連鎖を選択しているみたい。
 あと、最後の最後で作者は見落としをしている。アレは特攻ではなく、“○○さんはいち早く” 逃げおおせているわけで、脱出ルートはあるよね。


No.2166 6点 猫の時間
柄刀一
(2026/02/07 15:39登録)
 “猫縛り” なる魅力的な企画にしては時に妙な硬さが感じられる。それは作者の本分たる純ミステリ作にも共通する作風であり、私がこの人の欠点だと思う要素でもある。こういう作品でも逃れられなかったか。無邪気なだけの話にはしないぞと言うミステリ作家的な気概が妨げになっているのか。もっとデレていいのににゃあ。


No.2165 5点 狼少年ABC
梓崎優
(2026/02/07 15:38登録)
 “ちょっといい話” にしようとしたせいで、ミステリとしての切っ先が鈍ってしまった。
 その矛盾が如実に出たのが「スプリング・ハズ・カム」。この手の “害意に由来しない謎” の弱点は “そうは言っても、この中に嘘吐きが混ざってるんでしょ?”、故に “いい話” では完結し得ない、と言うこと。悪気は無いけど嘘を残したまま卒業してしまう話より、嫌な奴がはっきり害意を持った話の方がミステリ読みとして納得出来るなぁ。

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