| 虫暮部さんの登録情報 | |
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| 平均点:6.20点 | 書評数:2234件 |
| No.2214 | 7点 | くらのかみ 小野不由美 |
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(2026/04/10 13:10登録) かねがね気になっていたことがある。 ――座敷童子は、自らが座敷童子であることを認識しているのだろうか? 私は、どちらかと言えば “認識していない” と、つまりは “自分も普通の子供だと思っている → 意識的に子供達を騙しているわけではない” と思っていた。“思う” と言うより “期待” かな。 だから本作のあの会話にはカルチャー・ショックを覚えた。えっ、そんな考えがあったの? または、見破られた瞬間に認識と記憶が生じたのかも。うーむ、柳田先生にでも訊ねるべきか……。 もう一点。家系図を見ると三郎にいさんは子供達の従兄ではなく “おじ” なのである。まぁ年齢的なことは如何様にでも考えられる。遅くに出来た子なのだろう。 でも、あの位置付けのキャラクターを敢えて代の違う “おじさん” に設定して、作者はどういう効果を狙っていたのか。アレッ? と微妙な違和感が残るだけで、何の意味も無い気がするんだけど……。 人の動きがごちゃごちゃして判りにくいが、犯人当てのロジックにあの事象を絡ませるのは名案。 |
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| No.2213 | 5点 | ら抜き言葉殺人事件 島田荘司 |
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(2026/04/10 13:10登録) “ら抜き言葉とはなんですか?” なんて言っているが、1991年の発表時には、もっと認知されていたと記憶している。作中で説明する便宜として大袈裟に書いたのだろう。 そしてこの件は、未だ決着が付いているとは言いがたい。流石の先見の明(?)。 でも殺人事件の真相がアレなら捜査が杜撰じゃない? 死体に残る痕が違うんでしょ。 何より引っ掛かったのは、あの人が “ら抜き言葉肯定派” になりそうなものなのに “撲滅論者” に転向した、と言うくだり。 そんな気持の捩れを認めたら、何が何に転向してもアリになってしまうじゃないか。だったら何故、真犯人は一夫多妻論者に転向しなかったのか(笑)。 リアリティの有無ではなく、ミステリとしての美しさの問題である。自由が過ぎては却って白ける。しかも本作はその理由こそポイントなわけだから、心理の動きをあまりファジィに片付けるべきではなかったと思う。 |
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| No.2212 | 6点 | のぞきめ 三津田信三 |
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(2026/04/10 13:09登録) 普通に良く出来た、怖いホラー。しかし、私のホラー読者としての解像度は低いので、なかなかその先の機微が読み取れない。 ミステリはどんなパターンを使うにせよその真相がキモであるのに対して、ホラーは怖がらせる過程がメインだと思う。その観点で見ると怖さの為のガジェットはありがちで、更に刀城言耶シリーズを踏まえてしまうと “オリジナリティがある” と言う程ではない。やっぱり作者が同じなんだなぁ、と言っては酷か。 シマイは “仕舞い” である。“終” の字を宛てるのは違和感がある。 |
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| No.2211 | 7点 | からくり東海道 泡坂妻夫 |
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(2026/04/10 13:09登録) 大道芸の子供達から始まって、あっちへ飛びこっちへ飛び、一攫千金成るか成らぬか、なかなかにエンタテインしてくれる。それは、時代風俗や義理人情の描写より事件の展開を優先して書いてくれたおかげ。泡坂妻夫の時代物の中では一番面白いかも。 地理を知らないので、真相の一部が説明的に感じられてしまったのが惜しまれる。風景の類似を文章だけで実感するのは難しいよなぁ。 最後の場面には山田風太郎を思い出した。意図的なオマージュか否かはともかく。 |
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| No.2210 | 6点 | みんなの怪盗ルパン アンソロジー(国内編集者) |
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(2026/04/10 13:08登録) 怪盗ルパンの、日本語訳・ジュヴナイル版が元ネタだから、表題に “みんなの” と付けたのは全く以て正しい。参加者は企画に期待されるものを十全に理解して肯定性の強い世界観の作品を寄稿している。が、それ故に度肝を抜くような展開には欠けるか。 そんな中、小林泰三はあのロジカルかつ神経質な問答で自分流を貫いており偉い。と言うか、アレはアレで “(作家の個性に対して)期待されるもの” なんだよね。 |
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| No.2209 | 7点 | きつねのつき 北野勇作 |
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(2026/04/03 15:33登録) 本書を手に取ったのは一にも二にも『かめくん』の作者だと言う信頼感ゆえ。で、まぁ厳しく言えば不確定な世界を叙情的に綴った『かめくん』の焼き直し。と言うことは、期待通りではあるのだ。 ただ、あっちはメカなのでカクッとしてパキッとした或る種のドライさを含んでいたが、こっちは肉なのでぬらりとした肉々しさでちょっとホラー。これが更に進むと酉島伝法あたりになる。 しかし子役と動物には勝てぬ。コミュニケーションの不全を愛らしさに転化出来るから無敵だ。同じことを大人が言ってたら不気味だもんね。こんきゅらぽおん。 |
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| No.2208 | 6点 | 踊る男 望月諒子 |
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(2026/04/03 15:33登録) 関連する事件が偶然上手くピックアップされている……のは大目に見よう。犯人サイドの心情にせよ行動にせよ解像度は高く、文章からも良い意味で作者の力の入った充実ぶりが伝わって来る。 ただ “本作ならでは” の唯一性はあまり感じられなかった。“もう、そういう社会のあり方に疑問を持つというのは流行らない” って自分で言ってるよ(予防線、引いちゃってない?)。 |
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| No.2207 | 6点 | 難問の多い料理店 結城真一郎 |
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(2026/04/03 15:32登録) どの真相も、それなりなんだけど小粒と言うか、力をセーヴして短編サイズのネタに留めましたと言う感じ。犯罪と日常の謎っぽいものが混在するのは面白い。“住人不在の部屋に立て続けに置き配” の件は良かった。設定説明の繰り返しが多いのは単行本化の際に加筆(減筆?)訂正すべきだったのでは。 |
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| No.2206 | 6点 | ワトソン力 大山誠一郎 |
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(2026/04/03 15:32登録) 物語を膨らませる筆力が無いなら、推理合戦で膨らませれば良い。ミステリ愛好会でもないのに毎度毎度推理合戦をさせるには、ワトソン力なる触媒を導入すれば良い。 と、自らのスペックを冷静に見極めた設定(?)で、概ね意図通りの機能を果たしていると思う。 でも「雪の日の魔術」。トリックは面白いが、そこで力尽きたか、動機のみに頼って犯人特定しちゃっているのは残念。 |
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| No.2205 | 5点 | 失われた貌 櫻田智也 |
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(2026/04/03 15:31登録) うーむ。期待した感じとは違う。中盤までの展開は、良く出来てはいるが普通の警察小説。あの捻った真相は、“名探偵” 小説でこそ映えるんじゃないだろうか。ブールバードのマスターとのやりとりは良かった。 あいつが “自首する前に” 電話なんてかけなければ、余計なことを知らずに済んだ。そして、電話しなくても、多分あいつらは自首せずに同じような隠蔽をしただろう。 と考えると、毅然と対応しなかったのが悪いとは言え、ひどいトバッチリだ。 ツッコミ:新聞(しかも週刊)への読者投稿は、確実に掲載されると言うものでは全くない。ああいう目的で投書する発想も、狙い通り採用される成り行きも、頷けないなぁ。 |
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| No.2204 | 7点 | スノウマンの葬列 真々部律香の推理断章 麻根重次 |
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(2026/03/27 14:43登録) 表題作の真相はかねがね興味があった事柄なので、納得感が高くストンと腑に落ちた。 その他の話も、大ネタよりも関係者の気持の交差のようなもので成り立っている感じが良い。有栖川有栖の地味なタイプの短編に通ずる。 最後はあの後味の悪さのままでも良かった気がするけど……。 探偵のキャラクターはさほど好きでもないが、程好く引き延ばすには好都合かも。 ただ一点、気になるのが「セントラルドグマ」。 あの暗号はなかなかフェアな代物で、多少の知識と閃きがあれば部外者でも解ける。そしてそれをユーザー達も自覚していたと思うのだ。 つまり “もしメモが奴等の手に渡ったら、解かれてしまうかも知れない” ことも認識していた筈。その状況でメモを残すのは不自然。 |
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| No.2203 | 7点 | アラビアの夜の種族 古川日出男 |
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(2026/03/27 14:42登録) うーむ。正直、長くて疲れたとの思いは否めない。 壮大な謀略小説、ではあるがストーリーとしては割と大味。伏線が回収されても即座にそれ自体が長大な流れに呑み込まれてしまう。 “言葉の異才” 的スタンスでこの長尺に挑むには、文章力が未だ及ばなかったか。繰り返しが多く、“ポイントはそこじゃないだろ” と感じる部分もそれなりに散見される。 しかし、それこそがコンセプトでもあり、物量に圧倒されつつも、濃密で快い時間ではあった。読了を目的としない方が良いのかも。 巨竜の焼き肉が美味しそう。 日本推理作家協会賞受賞。同時受賞が山田正紀『ミステリ・オペラ』……疲れる年だったんだな~。 普段は聴きながら読んだりしないけど、BGM:キングレコードのワールド・ミュージック・ライブラリー『バグダッドのウード~琥珀色の夜』。 |
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| No.2202 | 6点 | お稲荷さまの謎解き帖 朝水想 |
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(2026/03/27 14:41登録) えっ、これを百人分やるの? デビュー作で随分ぶち上げるじゃないか(笑)。 本作は謎解きを通じての神様の成長譚になっていて、その設定がベタなメッセージを上手く成立させるエクスキューズとして機能している。特に餃子の件にはグッと来てしまったね。 ただ気になったのが、タイトルに反してファンタジー的豊饒さに乏しい文体。これでいいのか? 読み進むうちに、これは語り手が神様で人間の心の機微が判らない故のぶっきらぼうさなのかな、とも思えて来た。 でも、別の方向でも良いからもうちょっと何か味付けが欲しい。これではごく普通の、文体に無頓着なミステリみたいな文体じゃないか。 |
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| No.2201 | 6点 | 家族解散まで千キロメートル 浅倉秋成 |
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(2026/03/27 14:41登録) 単純に見えた案件にこんな裏が潜んでいたとは驚きだ。 一方で、家族観云々について、共感出来る部分は多いが、この物語の後半にあんなのを付け足さなくても良いのにと思った。 “自分で気付かないと意味が無い” と言うのは多分に上からの意見で、自分も当事者なのに説明を拒むのは傲慢ではないか。 |
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| No.2200 | 6点 | 廃集落のY家 遠坂八重 |
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(2026/03/27 14:39登録) キャラクター良しガジェット良し。普通に良く出来た、気持悪いホラー。 ××市、N集落、大内村など、 固有名詞の表記の基準が謎。 ××は、作中の世界では普通に名前があり、我々読者に対してのみ伏字になっているのだろう。 ではN集落は。これも読者のみに対する伏字か。それとも、PCモニター上に “N集落” と表示されたり、発言者が “えぬしゅうらく” と発音したりしているのだろうか。当地に実際に赴く場面でも、一人称の地の文で “N集落” と書かれている。 かと言って、“O村” とはなっておらず、固有名詞を一律で伏せているわけでもないようだ。 タイトルもああだし。とても気になった。叙述トリックかと思った。 |
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| No.2199 | 9点 | シュレディンガーの殺人者 市川哲也 |
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(2026/03/19 15:20登録) 成程そんな手で来るか、一回毎に事件の解像度が上がってこちらの理解も深まるので妙な効果があるぞ、と感心している隙を突いて反転に次ぐ反転、しかもこれだけやっておいて毎度毎度前回を凌ぎ、もういいよと思う余地が無かったのが何より凄い。 部分的に似た旧作は幾つか思い付かぬことも無いが、仮に作者がそこから拝借したのだとしても、これだけ上手く組み合わせて新たな効果を生み出していれば立派なオリジナル設計に認定して良いだろう。大ネタは好きじゃないタイプのトリックなのにスンナリ吞み込めた自分にもビックリ。 だが一点、大きな問題に気付いてしまった: 西連寺は、何故自分が “覆面探偵” だと名乗ったのか? 相手はアレなのに。なにがしかの解釈は可能だが弱い。するとつまりは “覆面探偵なる存在を読者にプレゼンする為” というメタな理由にしか見えないのである。 |
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| No.2198 | 7点 | 毒殺倶楽部 松下麻理緒 |
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(2026/03/19 15:20登録) 若干ややこしいものの、然るべき範囲内に上手く収めている。会社の描写とかが紋切型だとは思ったが、そこには伏線と言う側面もあったか。最後に明らかになるアレには納得出来たのでまぁ良かった。 ただ、ペンネームが作中とリンクしていて、新人故に可能な遊び心でいいねと嬉しくなったけれど、それが本当にちょっとした遊びに留まっているのが腑に落ちない。それをやるなら、作者名は “山下香織” であるべきでは?(逆か。視点人物の名を作者名に合わせるべきでは?) |
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| No.2197 | 6点 | この罪を消し去ってください 高谷再 |
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(2026/03/19 15:19登録) 名門女学園で姉の死の謎を追う話……かと思ったら甘かったそんなもんじゃなかった。雪玉式に事態は膨らみ何がどうなればこうまで踏み外すか、しかし妙にメロウな情感をあくまで保っているあたりタチが悪い。 “荒くなる鼻息をどうにか押し殺す。それが、……報いになると信じて。” 嗚呼グッと来ちゃうね。バランスは悪いが爪痕は鋭い。 |
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| No.2196 | 5点 | 凶笑面 北森鴻 |
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(2026/03/19 15:19登録) この手の、御約束として特定のジャンルの薀蓄が事件と絡む短編シリーズ、例えば『喰いタン』(寺沢大介)なんかは “良くこれだけネタが続いたものだ” と感心するのだが――本書は蘊蓄のサイズに比べて小説自体が短過ぎる。駆け足でつまみ食いしている印象を受けた。何が違うんだろう。“論争はあっても結論がない” 民俗学の特性か。 |
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| No.2195 | 5点 | たったひとつの 浦川氏の事件簿 斎藤肇 |
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(2026/03/19 15:18登録) 一話目の “文章を深読みして裏の出来事を探し出す” 理屈の立て方がなかなか好みなので期待したんだけど、それ以降は……総体としてやりたいことは判らなくもないが、小説作品として面白いかと言うとあまり頷けない。凝った仕掛けを施すに当たっては、他方で伝わり易さにしっかり目配りする必要があったのではないか。 |
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