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ミステリの祭典

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少年検閲官
少年検閲官シリーズ

作家 北山猛邦
出版日2007年01月
平均点4.67点
書評数3人

No.3 1点 Akeru
(2017/11/16 13:00登録)
いわゆる「バカミス」の類であって、まともな動機や展開を期待していると愕然とさせられることだろう。 少なくともクリスティや横溝正史の間に挟んで読んだりすると、破り捨てたくなること請け合いだ。
とにかく、「こういうトリック/動機を思いついたからそれに都合よくキャラクターに動いてもらおう」と強い意志を前面に押し出してくるのには恐れ入る。

最大の難点である犯人の動機は噴飯ものだが、ネタバレなので割愛する。
もう一つ大きな突っ込みどころとして、探偵役はタイトルままの「検閲官」で、主人公は単なる一般人の旅行者である。 ところが物語の途中で主人公は「検閲対象の品物」を所有してることが発覚するのだが、「検閲官」は何故か「いや、それは別にいいよ。 それよりキミにこの事件の真相を見てもらいたいんだ…」と言いながら謎解きに入る。
「検閲官」が「検閲対象品」を見逃す理由も説明されなければ、そもそも捜査に一切関係のない一般人の主人公に謎解きを語る理由もさっぱり説明されない。ご都合主義だけがそこにある。

まあ、その辺りを一切合切、流して読み進められる人だけが読めばよい。
異邦調で、ディストピアで、少年が主人公で… というキーワードが揃ってればもうすでに匂いだけでご飯三杯いけるんですよ! という人向けだ。
少なくとも私はバカミスというものに詳しくないが、とにかく、この作品には人間がいない。 心のない駒だけがそこにあり、登場人物の心理など考察するとただ損をする。

No.2 6点 青い車
(2017/01/06 21:44登録)
 あらゆる書物が取り締まられる、架空のイギリスで繰り広げられるファンタジー・チックなミステリー。
 正直なところ、それまで北山猛邦という作家を失礼ながらナメている節があったのですが、『アリスミラー城』の頃より確実に文章が上手くなっているように感じ、認識を改めました。
 肝心の内容の方も充実しています。特殊設定をしっかりと絡めた事件とその解決の手際が見事でした。トリックそのものはバカミスにも分類できそうであるものの、そこも本がない世界ならではのものです。
 しかし唯一、犯人の人格及び動機がやっていることと釣り合っていないところだけが若干のマイナス要素です。動機の甘さは昔から変わってないように思えます。

No.1 7点 アイス・コーヒー
(2014/04/01 16:07登録)
書物が禁止された世界で、英国人少年クリスと「少年検閲官」エノが殺人犯『探偵』を追うシリーズ第一作。

北山猛邦独特の終末的世界観が存分に生かされた作品。非生産的で世界の終わりに向けてゆっくりと滅びていく世の中で、何のために生きるのか苦悩するクリスの描き方や、トリックと作品設定をコラボさせた終盤の演出は見事。
本格としてはさほど意外なトリックでも結末でもないが(その上バカミス)、ある工夫によって綺麗にまとめ、すがすがしい読後感を演出している。何より、読んでいて面白かった。「ミステリ」そのものをテーマにするところは、いささかご都合主義的でもあるが、そのメタ的な部分を肯定的にとらえることもできる。
いずれにせよ、北山作品の中でも指折りの名作であることは間違いなく、続編(出る出るといわれていながら7年が経過)に期待したい。果たしてこの世界観を何処まで広げられるか、今こそ作家の力が示される時だ。

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