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ミステリの祭典

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ハンニバル
レクター博士

作家 トマス・ハリス
出版日2000年04月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 5点 レッドキング
(2020/06/01 18:42登録)
ドクターレクター・・・深夜の古城で、瞳に赤い妖光を光らせ、バッハ変奏曲を古楽器で演奏する、優雅で高貴で超俗の食人鬼。愛するものは高級酒と豪華な珍味、かぐわしき香りにFBI捜査官クラリス・スターリング・・・人間離れした悪魔レクターを主人公にしたサスペンスロマン。だが、その悪魔もまた、痛ましき幼少期トラウマを引きずった、文学=精神分析上の対象・・すなわちホワイダニットミステリの対象である「人間」だった。殴り殺したくなる位の憎まれ役のFBI幹部に対する、レクターとクラリスの「処刑」場面がすばら・・もとい、すさまじい。

No.1 9点 バード
(2019/09/01 20:59登録)
あのハンニバル・レクター博士の名前を冠した本作、胸糞悪い展開も多いし、グロ描写も容赦がないが、とても楽しめた。
本作の素晴らしさは二つあり、一つ目はメインキャラのキャラクター性の濃さ。二つ目は実在の舞台を活字から感じさせる情景描写だ。

特にキャラクターに惹かれたのでそこを中心に書評を書く。
レクター博士、クラリス、メイスンあたりのキャラクターは特に特徴があり、他に類をみない個性を感じた。
レクター博士は間違いなく極悪人なのだけど、嫌いになれない。というかあれだけの悪人なのに本書を読むと好感を抱くという絶妙な書かれ方で、作者の上手さが光る。
クラリスは一貫して誇り高いFBI捜査官なのだが心の奥底にレクター博士に共鳴するなにかを潜ませている。最終盤のクレンドラー殺害を見るに彼女の最後のストッパーは抜けてしまったのだろうか・・・。
メイスンはまず見た目を想像したらダメだった(笑)。悪趣味な悪役は世にたくさんいるが、ここまで本人の力がない悪役は珍しいだろう。よくもまああんな恐ろしい復讐思いつくわ。レクター博士への復讐方法はともかく、恨みはもっともだが。

自分なりにキャラクターを読み解いたつもりだが、おそらく本書で彼らの情報をいくら知っても、共感はできないのだろう。
最後の方の博士の
「自分がどんなにこの女に関する知識を深め、その内面に食い込もうとも、この女の気持ちを完全に読み取ったり、この女をわがものにしたりすることは到底不可能だろう」
という独白が本書の全てを表すのだと思う。

上記書評のように濃いキャラが織りなす緩急のきいた物語に大満足なのだが、本書にはミステリ要素が全くないので、このサイトで満点をつけるわけにはいかないだろう。ということで9点。

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