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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:2429件

プロフィール| 書評

No.1149 8点 伝説なき地
船戸与一
(2010/09/10 20:43登録)
いわゆる”南米三部作”の掉尾を飾るノワール系の冒険小説。
ベネズエラの涸れた油田地帯を舞台に、隠された大金と貴重資源を巡る闘争劇を描いています。
その地に住みつくコロンビア難民や助太刀する日本人テロリスト、利権のため殲滅を画策する資産家グループなど、登場人物たちの欲望、信仰、慈愛、暴力が交錯し、血とアドレナリンに溢れた物語は圧倒的な迫力に満ちていて、最後のカタストロフィに至るまで読み応え充分でした。
「このミス」創刊号の国内部門第1位作品ですが、最近あまり読まれないジャンルになっているのは残念です。


No.1148 6点 死体をどうぞ
ドロシー・L・セイヤーズ
(2010/09/10 18:38登録)
ピーター・ウィムジイ卿シリーズの第7作。
探偵作家ハリエットが旅行中の海岸で発見した死体を巡るオーソドックスな探偵小説で、長尺の割に女史の作品の中では読みやすいのが良。
警察とハリエットにピーター卿が参戦し、延々と推理合戦が繰り広げられるのが一応の読みどころですが、容疑者たちのアリバイに関する幾多の推論が、たった一つの事象によって崩壊する様は結構インパクトがありました。


No.1147 7点 誘拐
高木彬光
(2010/09/10 18:05登録)
弁護士・百谷泉一郎(夫婦)シリーズの3作目。
犯人を「彼」と表記した変則倒叙形式の第一部が効いています。別の誘拐事件の裁判を傍聴し、自身の犯罪の参考にする訳ですが、最後の最後に犯人が採った究極の自己防衛に繋がる伏線が張られていたりします。
第二部以降、誘拐が実行された後の警察の捜査状況は、再読ということもあり少々スリルに欠け、容疑者候補を多数登場させる点も意図が分かり易く感じました。二度目の東京駅での身代金受渡しのエピソードなどほとんど意味がないように思えます。また、百谷明子が採った傍聴人に対する思い切った手段はなんら根拠がないですね。発見されない罪体に関わる法的陥穽は、皮肉に満ちていて面白かったですが。


No.1146 6点 どもりの主教
E・S・ガードナー
(2010/09/09 18:31登録)
弁護士ペリイ・メイスン、シリーズの第9作。
作者の脂の乗り切っていた時期の作品で、テンポよく次々事件が発生し、謎も多く、なかなか複雑なプロットでした。秘書のデラ・ストリートや探偵のポール・ドレイクと、いつもの面々も大活躍します。
終盤、事件現場のヨットハーバーにて、メイスンの謎解きによって、登場人物たちの行動がパズルのピースが嵌る様にきれいに明らかになるのが圧巻です。


No.1145 6点 流れ星の冬
大沢在昌
(2010/09/09 18:04登録)
老齢の大学教授を主人公にしたハードボイルド。
人に言えない闇の稼業を過去に持つ大学教授・葉山の周辺に、何者かが迫ってくるというプロットで、65歳の熟年ハードボイルドという変化球ながら、いつもながらの大沢節でやはり読ませます。
主人公が40年前の拳銃を持っていた不自然さや、ややスピード感が欠ける展開に不満がありますが、男の行動原理はハードボイルドそのものです。


No.1144 7点 黒い薔薇
フィリップ・マーゴリン
(2010/09/08 21:56登録)
女性主人公、シリアル・キラー、リーガル・サスペンスと、90年代の売れ筋サスペンスの三大要素を全て兼ね備えた傑作サスペンスです。
”薔薇の殺人鬼”の重要容疑者となる人物が、あらかじめ主人公の女性弁護士に弁護を依頼しておくという捻った設定で、読者の予想を外して二転三転するプロットが非常にスリリングだった。
終盤の、息つく暇もない展開は、まさにジェットコースター・サスペンスの面目躍如といったところ。


No.1143 5点 雨降りだからミステリーでも勉強しよう
事典・ガイド
(2010/09/08 18:14登録)
主に’50~’60年代に英仏米で出版された未訳本を片っぱしから紹介した海外ミステリガイド。
これを持っていれば、海外ミステリ通を気取れるのではと思い大学時代に手にしましたが、いかんせんマニアック過ぎます。特に前半部に次々出て来る作家は、当時(今も?)聞いたことのない作家ばかりで、パトリック・クエンティンやビル・バリンジャーの名前が出てきてほっとしたことを憶えています。
著者の植草甚一氏は、クライム・クラブ叢書や創元推理文庫(ジャンル的に黒猫マークが多い)の出版選出を担当した人ですが、その殆どが今では絶版本というのも肯けます。


No.1142 6点 雨の国の王者
ニコラス・フリーリング
(2010/09/08 17:46登録)
オランダの警察小説・ファン・デル・ファルク警部シリーズの代表作。
雨のアムステルダムを舞台にメグレ風の警部が地道な捜査をし犯人を挙げる様なストーリーかと思いきやちょっと違った。
本書は、莫大な財産を持ちながら妻を残し失踪した中年男の行方を警部が追う私立探偵小説風のプロットで、ドイツ、オーストリア、南仏と舞台を移しながら、失踪した大会社の後継者の人物像を浮き彫りにしていく。
ボードレール詩集「悪の華」のなかの一編に出て来る「雨の国の王」が示唆するものが、この物語の全てといっていい意味合いを持ち、本書を印象に残る作品にしています。


No.1141 6点 雨に殺せば
黒川博行
(2010/09/08 17:17登録)
大阪府警捜査一課の刑事・黒マメコンビシリーズの第2弾。
銀行の現金輸送車強盗殺人から容疑者・関係者が次々と死体となっていく深刻な事件なのに、二人の刑事の軽妙な関西漫才風やりとりがアクセントになって絶妙の読み心地。しかも中身はなかなかの本格編ということで、これは初期の秀作です。
後のサントリーミステリ大賞「キャッツアイころがった」よりだいぶ出来がいいように思いました。タイトルがいまいち意味不明ですが。


No.1140 8点 わが心臓の痛み
マイクル・コナリー
(2010/09/07 20:28登録)
コナリーの単発作品では、これが個人的ベスト。
心筋症によりFBI捜査官を隠退したマッケイレブを主人公とする本書は、心臓移植の提供者である被害者女性のコンビニ強盗殺人事件を発端に、連続殺人の隠された構図を暴いていくというストーリーです。
FBI時代の回想や被害者女性の姉や遺児との交流を描くことによって浮き彫りになる主人公の造形は、ボッシュのようなエキセントリックさがない分、日本人読者に受け入れやすいように思います。このあたりストーリーテラーとして格段に巧くなっていると思いました。また、終盤のスリリングな展開とサプライズの設定も申し分なく、連続殺人の動機に工夫をこらしたミステリ色の濃い傑作だと思います。


No.1139 7点 原島弁護士の愛と悲しみ
小杉健治
(2010/09/07 18:01登録)
最初期のミステリ短編集。
表題作(原題「原島弁護士の処置」)は、一審で無期懲役になった母娘殺害容疑者の二審裁判に、人権派弁護士・原島が弁護に立つ。原島も同じ容疑者に妻娘を交通事故死させられた過去があるのに、何故無罪を勝ち取ろうとするのか?という内容。
真相は意外だが、改題でやや見え易くなっているかもしれません。最近でも話題になる”被害者側の人権”に踏み込んでいるところが興味深い。
「赤い記憶」は、警部補である「私」が放火殺人容疑者を取り調べているうちに、父親である元警部が扱った過去の迷宮事件の哀切な真相に辿りつく。長編で書いてもおかしくないほど中身の濃い力作で、クックの記憶シリーズを髣髴とさせます。また、ともに家族への至高の愛情が根底にある点は、作者らしさが出ていると思います。残る3編を含め逸品ぞろいの作品集でした。


No.1138 5点 エンジェル家の殺人
ロジャー・スカーレット
(2010/09/06 22:43登録)
ケイン警視シリーズの第4作。
乱歩の「三角館の恐怖」の元ネタとして有名な本書ですが、特異な遺言が原因となって残された家族内で惨劇が引き起こされるというプロットは、どちらかと言うと横溝正史の世界。
屋敷の変な構造やエレベータ内の密室殺人などそこそこ面白いが、訳文が悪いのかあまり楽しめず、乱歩のリライト版?のほうが図解つきで分かりやすく面白かった気がする。


No.1137 5点 波止場の捜査検事
高木彬光
(2010/09/06 22:08登録)
近松検事シリーズの第2短編集。
神戸地検に異動後の5編が収録されています。以後シリーズは全て神戸地検が舞台となっているようです。
内容的には、TVの二時間ものサスペンスの原作を読むようなものばかりで、ミステリ趣向に感心できるものがないが、「黒い波紋」には検事のプライベートの記述があり連作を意識しているのが分かります。


No.1136 5点 ハーレー街の死
ジョン・ロード
(2010/09/06 21:46登録)
プリーストリー博士シリーズ中期の本格編。
このシリーズ、中期以降は毎週土曜日に警察関係者らを招いた定例会での安楽椅子探偵風になりますが、本作もある医師の毒死事件を巡って推理を凝らしています。
毒死の原因に関して、博士が事故、自殺、他殺以外の”第4の可能性”を示唆しますが、真相はちょっと微妙でした、それは第4の可能性とは言わないでしょう。


No.1135 6点 捜査検事
高木彬光
(2010/09/06 21:31登録)
近松検事シリーズの第1短編集。
名古屋地検時代の作品が5編収録されています。
まずまずだと思ったのは「灰色に見える猫」。トリックは有名海外作品のヴァリエーションで、犯行が暴かれるキッカケがタイトルとなっているのも似てはいますが。
その他「黒と白の罠」「身元不明」など、いずれも慎重居士のグズ茂の異名どおりのキャラクター設定が活きている作品集。


No.1134 6点 隅の老人の事件簿
バロネス・オルツィ
(2010/09/05 17:36登録)
いつもABCショップの片隅に座り、女性記者ポリーに事件の謎解きを披露する正体不明の老人。早川ミステリ文庫「隅の老人」の方を読みました。
この連作ミステリは、本国では2冊の短編集に分かれていて、創元、早川版ともにそれぞれから数冊セレクトしているため、両社の収録作は微妙に違います(重複は6作品)。収録最終話がともに同一作品になるのは必然ですが。
老人の奇妙な癖が最終話の伏線になるなど構成は巧妙で、このタイプの連作ミステリの先駆として、いまでも充分評価できるのではと思います。


No.1133 7点 若さま侍捕物手帖
城昌幸
(2010/09/05 17:09登録)
国内ミステリで正体不明の名無しのオプの先駆といえば、なんといっても「若さま」です(笑)。
いつも船宿・喜仙の二階座敷で、片膝たてて酒を飲みながら、御用聞きの遠州屋が持ち込む事件を謎解きます。構成からは「隅の老人」の影響があるように思います。
長編では伝奇小説風になりますが、昨年ランダムハウス講談社から出た短編集全6巻には、発端の謎に魅力を持たせた本格ミステリ寄りの好編が多く含まれていて楽しめました。まあ、肩透かしの真相もありますが、書かれた時代を考えればそれも止むを得ないでしょう。(採点は編集に対して+1点加算)


No.1132 5点 誘拐
ビル・プロンジーニ
(2010/09/05 16:20登録)
パルプ・マガジンの蒐集が趣味で、肺がんを恐れながらも禁煙出来ない私立探偵・名無しのオプ登場のネオ・ハードボイルド、シリーズ第1作。
当シリーズは、本書の誘拐事件の身代金受け渡しとか次作の「失踪」など、当初は正統ハードボイルドのプロットを踏襲したような作風でしたが、徐々に密室殺人など本格ミステリに変貌していくちょっと変わった私立探偵小説です。
主人公の名前は一切表記されませんが、番外編の共作「依頼人は三度襲われる」では、「ビル」と呼ばれています。


No.1131 7点 破戒裁判
高木彬光
(2010/09/05 15:50登録)
弁護士・百谷泉一郎シリーズの2作目。
国内初の本格的な法廷ミステリといわれる本書は、ほとんど全編にわたって、法廷記者の視点による法廷場面のみで構成された異色作です。
真相の意外性を追求したものではなく、二重殺人事件の被告人・村田和彦の出生の秘密に関わるテーマ性の強い作品で、一種の社会派ミステリといえると思います。著者自身の出生事情を重ね合せると、なかなかの感動ものではあります。
なお、光文社文庫版にはシリーズ唯一の短編「遺言書」が併録されています。


No.1130 6点 死の配当
ブレット・ハリデイ
(2010/09/05 15:35登録)
赤毛の私立探偵・マイケル・シェーン初登場作品。
舞台がマイアミということもあるかと思いますが、私立探偵が主人公であってもあまりハードボイルドという感じはしなくて、ラファエル絵画を巡るクライム・ストーリーの趣がありました。解決後にシェーンが、事件の収支計算をするところなどもそう思わせます。
依頼人の娘の母親が殺される理由とか、絵画に施された仕掛けなど、謎解きの部分は結構しっかりしていると思いました。

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