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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:2516件

プロフィール| 書評

No.1256 7点 新 顎十郎捕物帳
都筑道夫
(2010/11/06 20:13登録)
久生十蘭の傑作捕物帖シリーズのパスティーシュ連作短編集。
もともと、発端の不可解な謎の提示など、氏の「なめくじ長屋」は本家「顎十郎」の影響を受けていると思うので、雰囲気創りは手慣れた感じです。脇役キャラのライバル藤波友衛とか全く違和感を感じません。
ロジカルさに関しては本家を上回っていて、「からくり土左衛門」や「幽霊旗本」などが作者らしい佳品。


No.1255 5点 パニック・パーティ
アントニイ・バークリー
(2010/11/05 22:45登録)
迷探偵シェリンガム、シリーズ最後の長編。
無人島に置き去りにされた15人の多彩な人々と、いきなり発生する殺人ということで、本書の数年後に出版された「そして誰も...」を連想しますが、まったく目指す方向がちがう異色作でした。
殺人犯と共に孤島でテント生活を余儀なくされたことによって、登場人物達が少しづつ壊れていき本性が露わになる様を描くのが作者の狙いでしょう。フーダニット志向は弱く、シェリンガムもほとんど調査に乗り出さないので、本格ミステリとはいえません。
シェリンガムがいやに常識人になっていて推理の暴走がないのも物足りない。


No.1254 6点 凶鳥の如き忌むもの
三津田信三
(2010/11/05 22:45登録)
怪奇小説作家・刀城言哉シリーズの2作目。
冒頭の、瀬戸内海の島に渡る探偵のシーンは「獄門島」を髣髴とさせ期待を持たせたのですが、今作の真相はわりと判りやすいものでした。島の宗教儀式の”鳥人の儀”や”大鳥様”という名称がミスディレクションかと思っていたらそのままでした。
密室状況からの人間消失に関して、あらゆる観点から可能性を検討していく過程は非常に面白かったのですが。


No.1253 5点 殺しはアブラカダブラ
ピーター・ラヴゼイ
(2010/11/04 18:00登録)
クリッブ巡査部長シリーズの3作目。
今回の英国ヴィクトリア朝時代の風俗はミュージック・ホール。芸人が次々と失踪する事件に犯行予告状を受け取ったクリップ&サッカレイ巡査のコンビが張り込みを始めると....というストーリー。
例によってミステリとしては薄味で面白味に欠けますね。どちらかというとドタバタ劇を楽しむ作品かもしれませんが、そちらの方もあまり機能していない感じがします。


No.1252 7点 ジークフリートの剣
深水黎一郎
(2010/11/03 20:49登録)
芸術探偵シリーズの4作目ですが、初めに不可解な事件が発生し探偵が推理していくというようなオーソドックスな本格ミステリではなく、今回は終盤まで犯罪が隠されている変化球。
オペラ「ニーベルングの指環」の大役を得た日本人テノール歌手の視点で物語が展開していく中、ドイツオペラの蘊蓄・新解釈と死んだ婚約者の”無償の愛”がリンクしていく構成や、占い師の老婆の「もう一つの予言」を主人公が体現するラストが秀逸です。


No.1251 6点 聖者ニューヨークに現わる
レスリイ・チャータリス
(2010/11/02 20:33登録)
頭のまわりに後光をもった人間の線画を残して犯行現場を去っていく、セイント(聖者)ことサイモン・テンプラーシリーズの異色作。
本書は、息子を殺された富豪の依頼でニューヨークの暗黒街のギャング達を抹殺していくというハードボイルド・タッチの物語で、義賊&怪盗ものとは趣を異にしています。結末に構図をひっくり返す本格ミステリ顔負けの仕掛けもあり、予想以上に楽しめた。
ジュヴナイル版もありますが、この殺戮の物語をどのように子供向けに仕上げているのか、ちょっと興味がわきます。


No.1250 6点 消える総生島
はやみねかおる
(2010/11/01 22:31登録)
夢水清志郎事件ノートの第3弾。
映画ロケで孤島に招待された三姉妹と清志郎が遭遇するのは、人、館、島までも消失するという不思議な事件。謎の突飛さ派手さではシリーズ随一で、ジュヴナイル・ミステリとしてはかなりの本格編です(真相はこれしかないというものですが)。
子供向けの青い鳥文庫から一般文庫化されたのも肯けます。小学生だけに読ませるのはもったいない(笑)。


No.1249 7点 愛おしい骨
キャロル・オコンネル
(2010/10/31 16:32登録)
戯画化されたような奇人変人住民が多数出て来るうえに、主人公を始め登場人物だれもが秘密を抱えていて、物語の視点がそれらの人物で頻繁に入れ替り、意味深なエピソードをばらまいていく。
本筋である20年前の少年の失踪事件を追いかけながら、複雑な人間関係と凝った言い回しの文章を一行一行噛み砕いて読み進めなければならず、正直一気読みとはいかなかった。
ミステリとしては「クリスマスに少女は還る」ほどの結末のカタルシスは得られなかったが、一筋縄ではいかない人物造形の巧みさは健在。とくに家政婦のハンナがいい。


No.1248 6点 新本格もどき
霧舎巧
(2010/10/30 21:38登録)
都筑道夫の「名探偵もどき」もどきという全体の構成に、新本格第一世代を中心とした7作家の作品のパロデイを入れ込むという二重構造のパスティーシュ連作短編集の第1弾。
パロデイとしても面白いが、キッド・ピストルズものの「十三人目の看護師」などミステリの仕掛けも光っていました。記憶喪失の吉田さんの正体に関するオチは、7つの元ネタ作品ほどメジャーでないのが玉に瑕。


No.1247 6点 武器と女たち
レジナルド・ヒル
(2010/10/29 21:54登録)
ダルジール警視シリーズの第16作は、パスコー主任警部の妻エリーが主役を張る陰謀スリラー&冒険アクション風の物語。
ここ数冊ダルジールは脇役に回り、周辺のキャラにスポット・ライトを当てるような構成が続いていますが、本書はエリーを始めノヴェロ刑事など女性陣が大活躍します。シリーズ通読者でないと判りずらい回想が挿入され、謎解きミステリの妙味もあまりないので、これ単独で読むのはキツイかもしれません。


No.1246 6点 四月の橋
小島正樹
(2010/10/28 18:45登録)
これまでのようなトリック重視の作品を期待すると肩透かしと感じるかもしれませんが、シリーズ前作と比べて主人公の川路や先輩女性弁護士など、登場人物の造形が巧くなっています。作者の趣味を押し付けるようなリバーカヤック・ネタも今回は物語と有機的に絡んでおり許容の範囲内でしょう。
真相にミステリとしてのカタルシスを感じませんでしたが、ラストの多摩川のシーンが印象に残る及第作です。


No.1245 7点 幻の森
レジナルド・ヒル
(2010/10/27 21:35登録)
ダルジール警視シリーズの第14作は、ピーター・パスコーの死の謎を巡る物語。といっても、第一次大戦で亡くなったとされる同じ名前のパスコー主任警部の曾祖父の死の謎ですが。
パスコーが曾祖父の秘密を調査していくうちに、製薬会社の敷地で見つかった古い人骨事件を手がけるダルジールに徐々に接近していく構成が面白い。
単にシリーズキャラクターの魅力に寄りかかることなく、きっちり本格ミステリの骨格を備えている佳作だと思います。


No.1244 5点 君がいなくても平気
石持浅海
(2010/10/26 21:08登録)
ある会社の共同開発チームの研究員が一人また一人と毒殺されていくお話。主人公の男性には、恋人が犯人だと途中で判っている設定なので、ロジックを主眼としたものではないのでしょう。
たしかに、主人公の心の動きをつぶさに描写している所は面白いし、最後のシーンも緊迫感はあったのですが、作者に求めているようなミステリではなかった。


No.1243 6点 殺す手紙
ポール・アルテ
(2010/10/26 20:11登録)
終戦直後の英国を舞台背景にしたノンシリーズ長編。
戦時中に諜報部に勤務していた経歴をもつ主人公の一人称で、謎だらけのエピソードが語られ、序盤は巻き込まれ型サスペンス、中盤ある程度構図がみえたところで、館ものの殺人事件というフーダニットになるなど飽きさせないプロットでした。謎の核心をミスリードすることで、より大きな仕掛けを隠蔽していて、すっかり騙されてしまいました。
余談ながら、ポケミスの表紙絵が斬新なデザインに変わっていて驚きました。活字も大きくなり、本書は一段組なので以前と比べて非常に読みやすい。


No.1242 5点 こめぐら
倉知淳
(2010/10/25 18:41登録)
ミステリ短編集。
同時出版の「なぎなた」の姉妹編で、本書はどちらかというとバカミス系でユーモア風味の作品が多い。
バカミスの双璧は、「Aカップの男たち」と「さむらい探偵血風録」で、とくに後者の時代劇ドラマ・ネタには爆笑の連続。
毒殺トリックを扱った「毒と饗宴の殺人」は、猫丸先輩の”特異な論理”が泡坂氏の初期短編のコピーのようでイマイチでした。これを”亜流”というのでしょうか。


No.1241 9点 八百万の死にざま
ローレンス・ブロック
(2010/10/25 18:21登録)
30年間書き継がれているNYの私立探偵マット・スカダーシリーズの第5作。
実はシリーズ順に読んでいなくて、本書からスカダーを読み始めたのだけど、それは正解でもあり失敗でもあったと思っています。
第1作以降の初期数作は、主人公が魅力的なものの、他のネオ・ハードボイルド小説と比べてプロットにとりわけ面白味があるように思えなかった。おそらく1作目から読んでいたら本書まで辿りつかなかった。それが「正解」の理由。
本書は娼婦殺害事件というミステリの体裁はあるものの、アルコール依存症に対するスカダーの葛藤と彷徨を中心に描いている。ある意味、傍観者リュー・アーチャーとは対極的な私立探偵自身の物語で、アル中である事を認めなかった主人公が最後の最後に叫ぶ、そのシーンに感銘を受けます。しかし、第1作から読んでいたなら、感動はより深いものになっていただろうと思わずにはいられない。それが「失敗」の理由。


No.1240 6点 なぎなた
倉知淳
(2010/10/24 17:18登録)
ノン・シリーズの短編集。
アンソロジーで既読の「闇ニ笑フ」が編中の個人的ベスト。道尾の某有名短編とネタが被ってますが、こちらが先。
ほかに、刑事コロンボ第1作へのオマージュだという倒叙ミステリ「運命の銀輪」、完成度の高い非ミステリ「眠り猫、眠れ」、長文の「あとがき」(笑)が印象に残りました。


No.1239 7点 暗闇にひと突き
ローレンス・ブロック
(2010/10/24 16:52登録)
無免許のアル中探偵マット・スカダーシリーズの第4作。
アイスピックで殺害された娘の真犯人探しを父親から依頼されることで物語が動き始めます。しかし、その本筋の謎解きはオマケのように思えてしまうほど、刑事を辞職することとなった過去の事件を悔い、飲酒に逃避する中年探偵スカダーの心情描写に重点が置かれ、陰影のあるマンハッタンの情景とともに印象に残る作品。
シリーズ初期の重要な役割を担う女性彫刻家ジャニスや、AA(アルコール中毒者の自主治療協会)との出会いなど、代表傑作といわれる次作「八百万の死にざま」のための前奏曲となっているように感じました。
田口俊樹氏の翻訳は素晴らしいのですが、このタイトルは軽すぎて泥棒バーニィシリーズを思わせます。


No.1238 6点 月と蟹
道尾秀介
(2010/10/23 21:43登録)
例によって暗いトーンの物語。なにせ、二人の小学生が神様に見立てたヤドカリを火で炙って、願い事をするという話だから。
中傷の手紙の犯人特定のロジックとか、”操り”の構図などにミステリの要素がないこともないですが、純文学寄りの傾向がより強くなっていると感じました。
少年視点で語られる物語ながら、とても小学4年生の思考とは思えない大人っぽい心情描写が、時々出て来るのが多少気になりました。


No.1237 6点 カーデュラ探偵社
ジャック・リッチー
(2010/10/22 23:29登録)
欧州某国の伯爵だったという謎の私立探偵カーデュラが登場する8編ほか全13編収録の短編集。
やはり、私立探偵のカーデュラ(Cardula)シリーズが面白い。探偵活動は夜間のみ、日光が嫌いで十字架も苦手、昼間は棺桶で眠るという変わり者。作者は、最後まで正体を明かしてくれず非常に気になった(笑)。
当シリーズは既刊の単行本3冊に分散収録されていながら、今回文庫で1冊にまとめられた。河出書房さん、ほんとに商売上手。

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