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ミステリの祭典

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収穫祭

作家 西澤保彦
出版日2007年07月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 パメル
(2021/03/02 09:20登録)
ある地方の山間部の村で発生した大量殺人事件をめぐるミステリ。まずはその残虐性と死体の数の多さに驚かされる。
首尾木村の北西区には、9世帯の住民が住んでいた。一九八二年の夏の夜、その大半が殺されるという事件が起きた。しかも十四人中、十一人が鎌で喉をかき切られるという異常な殺人だった。それから九年後、再び同じ手口の殺人が起こっていた...。
本作は、まず中学生の男子生徒の視点で語られていく。冒頭では、田舎の少年の日常や親しい同級生たちとの交流が描かれている。その夜、まさかの猟奇的な殺人が待ち構えているとは予想もつかない。さらに事件から九年後、十三年後、そして二十五年後に起こる復讐劇のサスペンスと暴かれる真相の意外性に戦慄させられるばかり。
煽情的な大量殺人にとどまらず、事件の背後で複雑に絡み合う村人たちの人間関係、夫婦内や家庭内の倒錯した性愛、大量殺人の悪夢と抑圧された心理などが丹念に書き込まれており、ストーリーに厚みを与えている。関係者のねじれた暗い感情が強く迫ってくるのだ。
そして印象に残る奇怪な出来事、巧みな伏線、意外な事実の暴露といった展開が効果的に反復しているため、先を読まずにおれない大作に仕上がっている。しかし文庫版で、上下巻合わせて1000ページ超はあまりにも長すぎる。

No.2 7点 いけお
(2012/05/27 02:45登録)
特に前半のリーダビリティは凄い。
後半が丁寧で、ラストの部分の完成度がもう少し高かったらと思うともったいない。

No.1 5点 kanamori
(2010/09/12 12:24登録)
単行本二段組みで600ページを超える大作ですが、その分量に見合うほどの満足感は得られなかった。
30年近く前の台風の最中、ある村の一地区で起こった数家族の大量惨殺事件を、発見者である中学生少年の視点で描いた第1部まではよかった。ダークで性的雰囲気も漂うテイストで、作者のもう一つの持ち味が出ていると思う。
しかし、中盤以降失速してしまう。部分的記憶喪失というご都合主義の設定と”信頼のおけない語り手”の物語は、ミステリを読みなれていれば真相が透けて見えてきます。竜頭蛇尾に終わった惜しい作品。

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