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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:2463件

プロフィール| 書評

No.1523 6点 科学捜査官
島田一男
(2011/05/22 12:15登録)
円城寺警部を中心とした科捜研のメンバーが取り組むのは、奥多摩の雑木林で発見された女の白骨死体の身元割り出し。

40年近く前に書かれた科学捜査だから、もう時代遅れの内容だろうと思っていましたが、いま読んでも充分面白い。
頭蓋骨に肉付けして復顔する名人の技官、陰毛分析にとことん執着する技官、嘘発見器のエキスパートの女性技官など、円城寺をとりまく科捜研の面々が個性的で、集団捜査小説のエキスを堪能できます。
真相はミエミエというところもありますが、そこに至るまでの捜査のプロセスを楽しむタイプのミステリで、本書を契機に当時人気シリーズになったのもよくわかる出来栄え。


No.1522 6点 作家の妻の死
ロバート・バーナード
(2011/05/20 22:33登録)
生前あまり評価されなかった作家が突如脚光を浴び始め、過去の作品の再販で膨大な版権料が見込まれることから、残された家族たちの間で思惑が入り乱れ緊張が高まるなか先妻が焼死体で発見される、というのがあらすじです。
一癖も二癖もある登場人物の書き分け、人間心理のシニカルな描写など、この単発作品もバーナードの持ち味がよく出ています。とくに、一つ屋根の下に住む先妻と後妻の二人の老未亡人の舌戦の章は絶妙。
大学講師の素人探偵が突き止めた物故作家に関する真相には既読感もありますが、細かく伏線が張られていて好印象の本格ミステリでした。


No.1521 5点 カササギたちの四季
道尾秀介
(2011/05/19 18:31登録)
このところ文芸寄りで暗欝な物語を続けて出してきた作者ですが、本書は一転して軽妙な連作ミステリでした。

小さなリサイクルショップを経営する男二人(ダミーの探偵役と影の探偵役)に女子中学生を加えた3人組が、商売がらみの”日常の謎”に遭遇するというのが共通のパターンで、いずれも親子の絆がテーマになっている。
各話ミステリ的な仕掛けは小粒で真相もサプライズ感がないですが、人の心を解き明かす手法自体は巧いと思う。


No.1520 6点 病める巨犬たちの夜
A.D.G
(2011/05/17 18:53登録)
フランスの片田舎の村を舞台にしたノワールなミステリ。
村の休閑地にヒッピー集団が住みついた事を契機に、老譲殺しや墓穴の死体の入れ替りと、次々と発生する事件に対し、酒場に屯する村人たちが喧々諤々と推理を戦わせる序盤の展開は、集団探偵ものの本格ミステリの様相でしたが、途中から変な方向に話がずれていき、非常に流れを把握しずらい小説でした。
語り手である村人の「おれ」の正体が終盤まで明示されないのもストレスがたまる構成でしたが・・・・結末でビックリ。
読みずらい文章が難点ながら、がまんして最後まで読めばちょっとしたサプライズを楽しめます。


No.1519 5点 獅子真鍮の虫
田中啓文
(2011/05/15 18:21登録)
ジャズ・ミステリ連作短編集の第3弾。
日常の謎を解くというより、ジャズ・ミュージシャン仲間のトラブル仲介のような話もあって、ミステリとしては物足りない内容のものが多かった。作者の書きたい事もどちらかというとジャズに関する蘊蓄にあるのでしょうが。
楽器など貴重品の盗難の意外な動機という、同じような趣向がつづくのも工夫がないように思える。


No.1518 6点 砂糖とダイヤモンド
コーネル・ウールリッチ
(2011/05/14 19:10登録)
生誕100周年を記念して数年前に白亜書房から出た短編集。1巻目の本書には、’34年から’37年に雑誌掲載されたミステリ作家に転身しての最初期の作品が収められています。

ミステリ作品の第1作「診察室の罠」など、親友や肉親を窮地から救うため主人公がニューヨークの街中を奔走するというような、アイリッシュ十八番のプロットが最初から確立されている。共通するのは軽妙なオチとハッピー・エンドで、いずれも後味がいい。
「夜はあばく」が編中では異色作。妻が連続放火魔だと気付いた消防士を主人公にしたサスペンスで、珍しく予定調和の物語に終わっていない。これが個人的ベスト。


No.1517 6点 柳生十兵衛秘剣考
高井忍
(2011/05/12 17:32登録)
隻眼の剣豪・柳生十兵衛と男装の女武芸者のコンビが、達人達の剣術にまつわる謎を解く連作ミステリ。

本格パズラーとして面白かったのは、第2話の「深甚流”水鏡”」。遠隔殺人+足跡のない殺人ものだが、フーダニットとしても秀逸で編中ダントツのベスト。
最終話の「新陰流”月影”」は十兵衛自身の事件で、連作ミステリならではの騙りで構図の反転をみせてくれる。
他の作品はミステリ的な観点よりも、”武芸帖”風の面白さに重点が置かれているように思えるが、語られる史実がマニアック過ぎるためコアな時代小説ファンでないと楽しめないだろう。


No.1516 7点 リンカーン弁護士
マイクル・コナリー
(2011/05/11 18:31登録)
高級車リンカーンの後部座席を事務所代わりにロサンジェルスを駆け巡る刑事弁護士ミッキー・ハラー登場。

コナリーの新シリーズはハードボイルド警察小説ではなくリーガル・サスペンスで、暴行事件の弁護を請け負ったハラーが邪悪なある人物によって窮地に陥るという巻き込まれ型のサスペンスでもある。
冒頭の引用文「無実の人間ほど恐ろしい依頼人はいない」というのは、同じ弁護士だったハラーの父親の言葉で、これが本書のテーマだろう。物語前半は、ハラーを中心とした人間関係や仕事ぶりに筆を費やしていてやや冗長と感じたが、法廷場面から俄然面白くなった。やはり、コナリーは何を書かしても巧い。

シリーズ第2作は、”異母兄弟”であるハリー・ボッシュ刑事との共演らしい。今年中に読めるのだろうか?これも楽しみだ。


No.1515 6点 眠たい奴ら
大沢在昌
(2011/05/10 19:06登録)
地方の温泉街を舞台にしたクライム小説。
組織から逃れてきた経済ヤクザとハグレ刑事が、その町の新興宗教団体が絡む利権争いに巻き込まれる、というストーリー。
どことなく「赤い収穫」を思わせる設定や、登場人物たちの思惑が入り乱れプロットが錯綜する中盤までは面白いのだが、着地点が途中で見えて来る予定調和的なところがあった。もっと弾けた展開を期待していたので、その点がちょっと残念。


No.1514 7点 サトリ
ドン・ウィンズロウ
(2011/05/08 18:02登録)
日本のシブミの精神を会得した凄腕の暗殺者、ニコライ・ヘル26歳の最初の暗殺任務を描いた冒険活劇小説。

「二代目トレヴェニアンになる気はあるか」という出版エージェントからのEメールが本書執筆の契機のようですが、「仏陀の鏡への道」を書き、仏教徒でもあるウィンズロウにとっては、「シブミ」の前日譚であるこの「サトリ」を書くことは宿命のようなものでしょう。

物語は「シブミ」の設定を忠実に活かしトレヴェニアンにオマージュを捧げながらも、単なる模倣小説になっておらず、160以上の章割りでアップテンポで疾走する物語はウィンズロウ節が全開。
上巻の北京潜入と暗殺実行へのプロセス、下巻の雲南省からインドシナに至る筏での急流下りやサイゴンのナイトクラブでのポーカーゲームのシーンなど、懐かしの正統派冒険小説のあらゆる要素が詰め込まれています。
「シブミ」がある事情でニコライの実行シーンをあえて描写しなかったのとは対照的に、本書上巻終盤の殺戮シーンは読み応えがある。結末の処理にやや不満がありますが、続編への含みを持たせたと思えばまあ納得です。

ウィンズロウの諸作のなかで飛び抜けた傑作とはいえないけれど、話題性を考慮したら年末のベストテン入りは確実でしょう。ニール・ケアリーの決め台詞風にいえば、ベストテン上位ランク・インは「決まり金玉!」(笑)。


No.1513 6点 龍の寺の晒し首
小島正樹
(2011/05/05 21:30登録)
”自称名探偵”海老原シリーズの最新作。
横溝の世界観に、島荘的奇想と物理トリックを幾つも詰め込んだ通称「やりすぎミステリ」ですが、今回も怪異な現象の真相が現実味に欠ける強引さで、トリックも乱歩が好んで使うような陳腐なものがあったり、読んでいてシラケる部分があった。

それでも、終盤の怒涛のどんでん返しの連続とエピローグの処理は面白いし、狂言回し役の若手刑事などの人物描写に進歩がみられるように感じたのでこの点数にした。


No.1512 7点 二流小説家
デイヴィッド・ゴードン
(2011/05/04 15:50登録)
冴えない中年作家の「ぼく」ことハリー・ブロックは、死刑囚として収監中の連続殺人鬼ダリアンから告白本の執筆依頼を受けるが、ダリアンの提示したある条件を履行するための取材中に、過去の連続殺人と同じ手口の惨殺死体に遭遇する----。

このように粗筋を書くと通常のサイコ・サスペンスのようですが、本書は、真の殺人鬼の正体は誰かという謎解き以外にも読みどころが多く、むしろ軽妙な文体で語られるプラスアルファのエピソード部分が楽しめる。
なによりも主人公ハリーを始め登場人物の造形が秀逸。複数のペンネームを使って、ハードボイルド、SF、ホラーからポルノ小説までのジャンル小説を書いて食いつなぐハリーの悲哀や、副業の家庭教師の生徒だった女子高生がいつのまにかハリーのビジネスパートナーになり尻を叩く役回りになる展開など、読んでいて思わず笑ってしまう。

ミステリの骨格としては弱いところもありますが、”ポケミスの新時代を担う技巧派作家”という紹介文に偽りなし。久しぶりに次作を期待したい新人作家の登場だ。


No.1511 7点 宮原龍雄探偵小説選
宮原龍雄
(2011/05/02 20:47登録)
主に’50年代に「宝石」誌上でトリッキィな本格短編を発表していた作者の初の作品集。鮎川氏や山口雅也編集のアンソロジーで既読の「三つの樽」「新納の棺」など、三原検事&満城警部補シリーズが10編収録されています。

上記の傑作2作を含め、不可能興味に拘った作品群がそろっていて楽しめましたが、短い枚数のなかに複数のトリックのみならず衒学趣向などいろんな要素を詰め込みすぎるきらいがあって、プロットがスッキリしない点が気になった。とくに「不知火」は、三つの不可能トリックを盛り込んでいるが、どうしても解決編が駆け足になってしまうのが惜しい。長編に仕上げれば傑作になっていたかもしれない。
そういう意味では、物語性豊かな伝奇風本格の中編「ニッポン・海鷹」が一番完成度が高いと思う。

ハウダニット作品が並ぶなか、「南泉斬猫」が異色で、唯一のホワイダニット。ユニークな動機に説得力を持たせる伏線が鮮やかで、初読の作品の中ではこれがベストかな。


No.1510 7点 暗い夜の記憶
ロバート・バーナード
(2011/04/29 19:12登録)
戦時下の学童疎開の一団の中に紛れ込んでいたサイモンと名乗る身元不明の子供。彼は村で養父母に育てられるが、20年以上経って偶然ロンドンの街中で記憶に残る家を見つける....というのがあらすじです。

作者中期の単発作品である本書は、幼い頃の記憶の断片の謎と同時に、主人公の自分探し(誰の子供か)の物語でもあります。
下宿者として潜り込む自身の親族一家の面々誰もが好きになれない人物造形で、このあたりはバーナードの持ち味が出ていて面白いし、伏線を回収した結末は皮肉が効いている。浅羽莢子氏の翻訳も読みやすくて良。

英国戦時下の世相が描かれていますが、国粋主義的な親独ファシスト組織の存在というのがちょっと意外だった。


No.1509 5点 モップの精と二匹のアルマジロ
近藤史恵
(2011/04/28 17:54登録)
女性清掃員キリコ&大介シリーズの4作目で初の長編。
タイトルや表紙絵から、コージー系の軽ミステリと思われがちですが、毎回シリアスなテーマでけっこう重たいのがこのシリーズの特徴。
平凡な女性と結婚したイケメン男性の隠された秘密が謎の中核で、途中でなんとなく真相に近いものが見えてきた。こういった心の歪みのようなテーマは、同じ作者の整体師探偵シリーズと共通するものを感じる。


No.1508 7点 ファイアフォックス
クレイグ・トーマス
(2011/04/27 18:17登録)
航空冒険小説の傑作。
ソ連の最新鋭ミグ戦闘機の強奪作戦というシンプルなプロットながら、スリル満点のシーンの連続で一気読みの面白さだった。
前半のミッチェル・ガントのモスクワ潜入とKGBの追跡、後半のソ連将軍との頭脳戦とミグ2号機との空中戦など、これぞ懐かしの正統派冒険小説という感じです。
名作の続編には失望させられることも多いが、本書の続編「ファイアフォックス・ダウン」は緊張感を持続しており共にお薦め。

ちなみに、航空冒険小説の私的ベスト5は、
本書と「シャドー81」「ちがった空」「双生の荒鷲」「超音速漂流」といったラインナップ。


No.1507 6点 七人の鬼ごっこ
三津田信三
(2011/04/26 18:01登録)
主人公であるホラーミステリ作家の幼馴染6人組が、30年前の小学生時代のある出来事の絡みで、次々と不審死していくというホラー風味の本格ミステリ。
ほとんど本筋に絡まない強烈キャラの大学教授を登場させ、その言動でギャグを連発させたり、主人公の終盤の謎解きが迷走し”一人多重解決”になっているのを揶揄されると、「刀城言耶先生の愛読者ですので」と言ってみたりで、ホラー一辺倒でないのはとっつきやすいかもしれません。
ネタバレになるけれど、引っかかるのは、7番目の電話の相手をあやふやなまま処理しているところ。ホラーならいいけど、本格ミステリとしてはアンフェアじゃないかな。


No.1506 5点 金色のでかい夢
チェスター・ハイムズ
(2011/04/25 12:59登録)
ハーレムの黒人刑事コンビ、棺桶エド&墓堀りジョーンズのシリーズ4作目。
黒人料理女がナンバーズ賭博で得た大金を巡って、元亭主、情夫、ユダヤ人故買屋らが争奪戦を繰り拡げるというストーリーで、以前読んだ「ロールスロイスに銀の銃」に似たプロットでした(本書のほうが先行作品ですが)。
警察小説ではなくクライム・ストーリーなのはいいですが、墓堀り&棺桶の出番がつけたしなのは物足りないですね。


No.1505 6点 縛り首の塔の館
加賀美雅之
(2011/04/24 20:37登録)
パリの予審判事ベルトランものの連作短編集で、不可能トリックが5連発。
中編なみの表題作が不可能興味抜群の力作で一番出来がいい。心霊術師の霊体による予告殺人の欺瞞を暴くという設定なので、奇術的トリックに不自然さを感じさせない。
2話目の「人狼の影」までは楽しめたが、徐々にトリックの必然性のなさと強引さが気になってきた。たしかに、なんでこんな面倒くさいことを...と思ったら、このタイプの探偵小説を楽しめないのでしょうが。


No.1504 4点 殺人にいたる病
アーナス・ボーデルセン
(2011/04/20 18:20登録)
名前から想像がつく通り、著者はデンマークの作家。作者の「轢き逃げ人生」という作品はどこかで聞いたような気もしますが、どういう作家かよく判りません。本書はタイトルに惹かれて読んでみました。
内容はちょっと難解。小説家である主人公が日記形式で、「デンマーク推理文壇№2の作家が殺人を犯す」という小説を執筆しているという入れ子構造のクライム小説ですが、作中作の場面と執筆中の現実の場面の境界線があやふやな描写がつづき、今どっちの小説家の話なのか、虚と実が分からなくなってくる。
解説にある”合わせ鏡の世界”という表現がピッタリな前衛的ミステリですが、最後まで読んでも、はたして真相を正しく理解できたのか判断がつかないのが困る。

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