宮原龍雄探偵小説選 三原検事&満城警部補シリーズ(1作は満城警部補単独) |
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作家 | 宮原龍雄 |
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出版日 | 2011年01月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 7点 | 蟷螂の斧 | |
(2023/01/05 10:18登録) トリック主体の短篇集(1949~1960) ①三つの樽 7点 樽の運搬中に交通事故があり、石膏の裸像を入れたはずの樽からモデルの死体が出現・・・2分間の空白 ②新納の棺 8点 新納家の長男と次男が二日続けて脳溢血で死亡。その後長女が毒殺され・・・死亡診断書 ③不知火 6点 夫人がピアノを弾いている最中に隣室で殺人が起こり、その後夫人も刺される(密室)、海上の櫓での焼死事件、露天風呂での撲殺・・・虚像と実体 ④ニッポン・海鷹 7点 40m級の巨船の消失、2部屋で密室殺人事件、容疑者の地下道での首吊り自殺・・・思い込み ⑤南泉斬猫 7点 利権争いのある国宝の櫓が放火された。愛欲の争いとなっている芸者が殺され・・・動機 ⑥瓢と鯰 5点 洞窟内にある滝から女性が落下するのが目撃された。目撃者5人以外誰もいなかった・・・洞窟内の川 ⑦髭のある自画像 7点 偽物の画伯が殺された。本物の画伯にはアリバイがあるが・・・贋作 ⑧雪のなかの標的 6点 雪の降った畔道で銃殺事件。犯人は逃げ込んだ小屋で首吊り自殺・・・復讐 ⑨世木氏・最後の旅 6点 旅行中の夫婦が吊り橋から落下して死亡。しかし夫は別人であった。その後夫の死体が発見され・・・アリバイ ⑩ある密室の設定 5点 女性探偵小説家が密室を講義。彼女が怪しい・・・黒い手帳 |
No.2 | 7点 | nukkam | |
(2021/08/14 23:36登録) (ネタバレなしです) 宮原龍雄(1915-2008)は「三つの樽」(1949年)でデビュー、作風は本格派推理小説でアンチ本格派の主張に対して本格派擁護のエッセイを書いたりもしています(本格派至上主義ではなく、本格派と文学派の共存を目指していた模様です)。しかし長命に恵まれながら作家活動は1962年をもって打ち切りと短く(例外的に1976年に中編1作を唐突に発表しましたが)、長編作品は書かれず中短編30作少々が(ほとんどが三原検事と満城(みつき)警部補のコンビシリーズ)残されただけとあってほとんど忘れられた存在です。生前には短編集の単行本は出版されず、ようやく2011年出版の本書で「三つの樽」から「ある密室の設定」(1960年)までの10作をまとめて読めるようになりました。不可能犯罪トリックにこだわった作品が多く、しかもアイデアが実に豊富なのに驚かされます(後年の作家の有名作を先取りしていたトリックさえあります)。探偵役の個性はないに等しいし、謎解き議論の中で先人作品のトリックのネタバレが散見されるのは現代読者から見ればマナー違反に映るでしょうが中短編とは思えぬ濃厚な謎解きは、もしこの作者がもっと作品を残していたらエドワード・D・ホックに匹敵する存在になってたのではと思われます。トリックが強烈な印象を残す作品だけでも「三つの樽」、「新納(にいろ)の棺」(1951年)、「不知火」(1952年)、「ニッポン・海鷹」(1953年)、「瓢(ひさご)と鯰(なまず)」(1957年)と結構ありますが他の作品もそれぞれの持ち味があって実に充実した短編集です。残りの作品も読んでみたいと強く思いました。 |
No.1 | 7点 | kanamori | |
(2011/05/02 20:47登録) 主に’50年代に「宝石」誌上でトリッキィな本格短編を発表していた作者の初の作品集。鮎川氏や山口雅也編集のアンソロジーで既読の「三つの樽」「新納の棺」など、三原検事&満城警部補シリーズが10編収録されています。 上記の傑作2作を含め、不可能興味に拘った作品群がそろっていて楽しめましたが、短い枚数のなかに複数のトリックのみならず衒学趣向などいろんな要素を詰め込みすぎるきらいがあって、プロットがスッキリしない点が気になった。とくに「不知火」は、三つの不可能トリックを盛り込んでいるが、どうしても解決編が駆け足になってしまうのが惜しい。長編に仕上げれば傑作になっていたかもしれない。 そういう意味では、物語性豊かな伝奇風本格の中編「ニッポン・海鷹」が一番完成度が高いと思う。 ハウダニット作品が並ぶなか、「南泉斬猫」が異色で、唯一のホワイダニット。ユニークな動機に説得力を持たせる伏線が鮮やかで、初読の作品の中ではこれがベストかな。 |