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ミステリの祭典

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砂糖とダイヤモンド
ウールリッチ傑作短編集1

作家 コーネル・ウールリッチ
出版日2002年09月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2020/09/03 19:47登録)
(ネタバレなし)
 10年くらい前にどっかのブックオフで、状態の良い帯つきの本書を100円均一コーナーで購入。残りの5冊もないかと思ったが、そんなにうまい話がそうそうあるわけもない(笑)。

 これも蔵書の中から本が出てきたので、少し前からチビチビ読んでいた。
 旧訳ですでに一読しているのも読み返し、かなりバラエティに富んだ内容をしっかり楽しむ。

 以下、読書メモも兼ねての各編の寸評。

「診察室の罠」
……初のミステリ短編だそうである。21世紀現代の目で見ればいろいろツッコミどころも多いが、ストーリーテリングの妙は、すでにこの初弾の一編から冴え渡っている。

「死体をはこぶ若者」
……本書の中でもかなりドラマチックな状況で、袋小路に追い込まれていく主人公の焦燥が圧巻。それだけにラストに驚愕。

「踊りつづける死」
……ウールリッチらしい、謎解きの興味をくわえた都会派サスペンス。ちょっと破天荒な印象もあるが、そこもまた味。

「モントリオールの一夜」
……異郷もの。最後の反転は印象的だが、全体的にやや肉厚な感触の一編。本作を収録した原書「six Nights of Mystery」は同一テーマの連作編(主人公はバラバラらしいが)というので、一冊の書籍の形でどっかで邦訳してくれないものか。

「七人目のアリバイ」
……ノワール要素の強めな話。ラストの皮肉はオチは、まさにウールリッチの持ち味のひちつ。

「夜はあばく」
……インパクトの凄さでは、地味にこれが本書の中で随一かもしれない。この作品のある部分の逆位相的な短編を、ウールリッチ自身がのちに書いているよね?

「高架鉄道の殺人」
……創元の短編集に収録された時から大・大好きな作品。主人公の刑事もいいが、それ以上に大都会のど真ん中を貫いて疾走する高架鉄道のロケーションが最高にいい。当時の情景をCGで完全再現した、本編90分くらいの新作映画とか作られたら、サイコーだろうなあ……。

「砂糖とダイヤモンド」
……大事件に関わりあってしまった小悪党(小市民)の窮地譚。ラストのオチを勝負どころにしながら、物語全体を楽しんで書いている作者の顔が覗くようで、快い一編。

「深夜の約束」(初期ロマンス短篇)
……ボーナストラックの、初期作の非・ミステリ。短めなんであっという間に終わってしまうが、良くも悪くも人間のある種の面倒くささを感じさせる物語のまとめ方は、いかにもウールリッチ。

 読み終わって解説を読んでから、改めてこの短編集シリーズが編年順に編纂されており、それゆえ第一巻の本書がウールリッチのミステリ作品としてはかなり初期のものばかりになるのだと意識した。初期の頃からこれだけバラエティ感豊かに作品を連発できたんだんだから、作家としても大成する訳である。

 巻末の解説は丁寧で、資料も仔細。個人作家の短編傑作選の叢書としては、これ以上のものはないでしょう。

No.1 6点 kanamori
(2011/05/14 19:10登録)
生誕100周年を記念して数年前に白亜書房から出た短編集。1巻目の本書には、’34年から’37年に雑誌掲載されたミステリ作家に転身しての最初期の作品が収められています。

ミステリ作品の第1作「診察室の罠」など、親友や肉親を窮地から救うため主人公がニューヨークの街中を奔走するというような、アイリッシュ十八番のプロットが最初から確立されている。共通するのは軽妙なオチとハッピー・エンドで、いずれも後味がいい。
「夜はあばく」が編中では異色作。妻が連続放火魔だと気付いた消防士を主人公にしたサスペンスで、珍しく予定調和の物語に終わっていない。これが個人的ベスト。

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