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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:2467件

プロフィール| 書評

No.187 4点 古墳殺人事件
島田一男
(2010/04/21 18:02登録)
多摩古墳盗掘口での撲殺殺人を扱った古典的本格ミステリで著者の長編デビュー作。
古墳近郊に建つ「船を模した館」が出てきた段階で、ちょっと前に読んだバカミスを想起し、いやな予感に襲われましたが、案の定、力技のトリックが炸裂。これは捨てトリックでしたが、真相にはそれ以上に脱力しました。
結局、「犯人」は何もしない方が目的達成できたのではと思いますが。
併録のパスティーシュ短編「ルパン就縛」がまだ、しゃれた出来な分だけ読めます。


No.186 7点 蛇の形
ミネット・ウォルターズ
(2010/04/20 21:29登録)
普通の主婦が過去の黒人女性の不審死の真相を追求していくだけのお話。
被害者は周りから疎外された変人だったため、主人公の行動に対して、近隣住民のいやがらせや家族からの非難を受ける。
作者の小説の中では、比較的地味なテーマで筆致も重厚。
何故20年経過して彼女はこの事件の真相究明にこだわるのか?事件の真相もさることながら、この「探偵の動機」が肝で、最後の1ページで明かされるその真相は実に鮮やかです。


No.185 7点 大魚の一撃
カール・ハイアセン
(2010/04/20 20:39登録)
マイアミの自然を舞台に、元フロリダ州知事スキンクなど個性的な面々が毎回珍騒動を起こす、奇才の看板シリーズ。
今作は釣り大会の不正を絡めた殺人事件が本筋かもしれませんが、事件より登場人物の奇想天外な行動や独特のユーモアが読みどころだと思います。この頃のハイアセンは本当に弾けていました。


No.184 7点 これよりさき怪物領域
マーガレット・ミラー
(2010/04/20 20:15登録)
メキシコ国境近郊の若い農場主の失踪で幕を開ける心理サスペンス。マーガレット・ミラー後期の傑作です。
まず、タイトルがすばらしい。まるでミラーのサスペンス小説全てを象徴するようなタイトルだと思います。
残された農場主の妻と母親の心理的葛藤が緩慢な筆致で語られていきますが、息子の生存を確信する母親の造形が出色です。そして、息子の部屋のドアへの貼紙・・・結末は途中である程度予測がつきますが、やはり最後の衝撃は強烈で、心理サスペンスの女王の名に恥じない出来だと思います。


No.183 6点 殺しのデュエット
エリオット・ウェスト
(2010/04/20 18:52登録)
ある翻訳ミステリサイトでハードボイルド小説の私的ベストテンに選ばれていた作品で、興味をひかれて読みました。
たまたま街中のギャングの銃撃戦に遭遇し英雄になってしまった私立探偵の皮肉な末路を描いている。
スピーディでアクション満載のミステリでしたが、人物造形に厚みが不足していて、どちらかと言うとB級ハードボイルドに近い内容。ただ、ラストシーンは祭りの後の寂しさに似た情景で印象に残りました。


No.182 7点 ゴールデン・フリース
ロバート・J・ソウヤー
(2010/04/20 18:30登録)
倒叙形式のSFミステリで、しかも犯人は人工知能搭載のコンピュータという異色作です。
探査宇宙船の制御を司るコンピュータ「彼」の視点で、女性乗組員の殺害が描かれる。非合理性を排するコンピュータが何故殺人を犯したのか、ミステリとしての趣向は動機の謎に尽きますが、なかなかよく出来ていると思いました。
一般的に倒叙ミステリの読み所は犯人発覚の契機だと思いますが、最新コンピュータが企てた犯罪の暴かれる糸口が、ある古い骨董品装置だったのは皮肉に満ちていました。


No.181 5点 明日に別れの接吻を
笹沢左保
(2010/04/19 21:02登録)
過去の事件で執行猶予中の主人公が、旧友からアリバイ工作を頼まれる話。
情感あふれるタイトルとは裏腹な、バカミス系のアリバイトリックが規格外でした。
A地点からB地点に移動するための予想外の移動手段・・・そのシーンを想像するだけで爆笑ものです。


No.180 6点 脱サラリーマン殺人事件
藤村正太
(2010/04/19 20:52登録)
サラリーマンの出世競争の屈折をテーマにした社会派推理小説ですが、そんなテーマはどうでもよくて、奇抜なアリバイトリックを楽しむミステリです。
2番目のアリバイトリックが面白かった。こんな設定です。
北米大陸の氷河地帯での殺害事件で、被害者が持っていた写真に写った服装や景色から、被害者が冬頃まで生存していたことが確認できるが、容疑者は夏過ぎに一度渡米したきりで被害者と接蝕する機会がなかった。
冷凍死体ということで死亡時期が特定できないのがミソ。移動手段や写真の工作ではない予想外の仕掛けでした。
のちに、島荘と綾辻が同じネタを使っていますが、2冊とも同じ年に出版されて唖然としたことを覚えています。


No.179 6点 パーフェクト・マッチ
ジル・マゴーン
(2010/04/19 19:06登録)
ロイド警部&ジュディ・ヒル部長刑事シリーズ第1作。
真正面から本格ミステリに取り組む姿勢が明白で、非常に好感が持てるシリーズです。このところ邦訳がストップしているのはちょっと解せないです。
現代ミステリですから、探偵役二人のある関係のエピソードなどを挿入しなければならないのは許します。
本書は、事件は地味でトリックも使い古されたものかもしれませんが、騙されている人物の視点を多用することで、読者もミスリードする手法が巧いと思います。


No.178 7点 猿来たりなば
エリザベス・フェラーズ
(2010/04/19 18:37登録)
犯罪ジャーナリストのトビー&ジョージ・シリーズ第4作。
ホームズ&ワトソン風の探偵コンビのシステムに軽い遊びを入れていて、本書がシリーズの邦訳1作目ということで、それが効果を上げているかもしれません。
今回はトビーの一人称記述になっていて、読者は彼の思考を辿りながら猿の誘拐殺害事件を推理していく訳で、ミスディレクションの方策としてはどうかなあと思いながらも、巧妙なことは否定できません。
ユーモア風味ではありながら、殺猿事件の動機など意表を突くものがあり、本格ミステリとして充分合格点の出来だと思います。


No.177 6点 道化の死
ナイオ・マーシュ
(2010/04/19 18:01登録)
アラン警視シリーズ第19作。
作者は32作のミステリを書いていて、全てにこのシリーズ探偵が登場するようです。初登場時は警部でしたが、本書では警視となっています。一応、代表作のようです。
村の伝統ある豊穣祈念ダンス行事の真っただ中の、衆人環視状況の不可能殺人を描いていて、まずまず楽しめました。
探偵役の個性がやや乏しいのと、クリステイの様なハッタリに欠けるきらいはありますが、端正な本格ミステリと言っていいと思います。「ランプリイ家の殺人」で失望した人も、この作品にはある程度満足いく出来じゃないでしょうか。


No.176 7点 プラムアイランド
ネルソン・デミル
(2010/04/18 22:09登録)
ネルソン・デミルにエンタテイメントを求めるのなら、この作品から入るのがいいと思います。間違っても「誓約」や「将軍の娘」から入ってはいけません。これらは、シリアス系で題材もあまり日本人読者向きではないと思うから。
前半の細菌兵器がらみの話から、後半一転して財宝探しの冒険小説になって、個人的にはなかなか好みの物語でした。
主人公の造形も面白い。ウイット溢れる皮肉屋ぽいセリフがポンポン飛び出して、それだけでも楽しめました。


No.175 7点 ウォッチメイカー
ジェフリー・ディーヴァー
(2010/04/18 21:26登録)
このシリーズは、アルセーヌ・ルパンの時代から続く「怪人対名探偵」図式の古いタイプの通俗スリラーなんですが、科学捜査などの新しい装飾と過剰なほどのどんでん返しの連続が一般受けする理由だと思います。
読者が推理して楽しむような創りではないので、ロジックを重視する本格パズラー好きにとっては、あまり評価されないのではないでしょうか。
シリーズ第7作ともなるとマンネリ感は否めません。目先を変えるためライム・ファミリーに新しいキャラクターを次々と加えるため、無駄に物語が長大になっていく感じもします。「次作につづく」方式のエンディングも通俗スリラーそのものでしょう。
まあ、そうはいっても面白かったし、一級品のエンタテイメントには違いないですけど。


No.174 7点 不屈
ディック・フランシス
(2010/04/18 19:20登録)
近年の競馬シリーズでは一番好きな作品です。
伯爵家の血を継ぐ孤独感のある若い画家が主人公で、義父の会社の横領事件と財宝探しに巻き込まれる話。
競馬シリーズとする必要がないほど、殺人や派手な陰謀は出てこないし、競馬は全然本筋と関係がない。
初期作に比べるとどちらかと言うと地味な作風ですが、登場人物はいつも以上に魅力的ですし、主人公が徐々に不屈の精神を発揮してくる所は、いつものフランシス節です。
特に、おしゃれで余韻が残るエンディングがよく出来ていると思いました。


No.173 6点 風が吹く時
シリル・ヘアー
(2010/04/18 18:45登録)
ペティグルー弁護士シリーズ第3作。
前作では「法の悲劇」のマレット警部と共演していますが、今回は単独で、地元の管弦楽団コンサート中の殺人事件に関わります。事件の解決そのものより、登場人物とのユーモラスな掛け合いを楽しむ典型的な英国新本格ミステリですが、その言動の中に伏線が張られていたり、動機が法律がらみである点など、いかにもヘアーらしい佳作でした。


No.172 7点 虎よ、虎よ!
アルフレッド・ベスター
(2010/04/18 18:19登録)
テレポーテーションが発達した25世紀が舞台のSF復讐劇。
「モンテ・クリスト伯」を下敷きにしているが、力感と疾走感にあふれたノアール小説の印象があります。
哲学的な命題を提示して終えるエンディングがSFの名作と言われる所以でしょうが、謎と伏線の妙味もあり、「分解された男」ともどもミステリ読みにも魅力ある小説だと思いました。


No.171 6点 ガラス箱の蟻
ピーター・ディキンスン
(2010/04/18 14:20登録)
ロンドン警視庁のピブル警視シリーズの第1作。
「毒の神託」や「キングとジョーカー」などディキンスンの小説は、独特で異様なシチュエーションを設定しておいて、その中で本格ミステリを行うというのが定番のようです。
シリーズものの警察小説である本作も例外ではなく、20年前にニューギニアからロンドンに移ってきた部族の中で酋長が殺害された事件を扱っています。この部族はアパートの一室から出ようとせず一日中テレビの画面を見つめているなど、非現実的な生態なのに、いやにリアリテイがあって印象的に描かれています。
そういった世界だから、この殺害動機なわけで、本格ミステリとしても及第点。万人向けの小説ではないですが、ツボに嵌る人には楽しめると思います。


No.170 7点 密偵ファルコ/鋼鉄の軍神
リンゼイ・デイヴィス
(2010/04/18 13:45登録)
ローマ帝国を時代背景にした密偵ファルコ・シリーズ第4弾。
今作がシリーズで一番おもしろい。ライン河を越えてゲルマニアで冒険を繰り広げる、本格的な冒険小説に徹しています。
基本は歴史冒険ミステリではあるんだけど、巻によって恋愛もの、家族小説、本格ミステリなど色々な要素を取り入れています。
登場人物の会話は、歴史ものなのに現代口調なのが新鮮で、そういった点も受け入れやすい一因だと思います。


No.169 5点 カッコウの卵は誰のもの
東野圭吾
(2010/04/17 17:45登録)
翻訳ミステリや昭和の推理小説を読んでいると、女性の会話口調の不自然さが気になってしょうがない時がある。「~ですわ」などが出てくるとムズムズしてきて物語に集中できません。
その点、この小説に出てくるアルペンスキーの女性選手の会話口調は非常に自然体で、「父親」との会話などは、いかにも今時の19歳の女性という感じがして好感が持てました。以上感想おわり。


No.168 6点 鎌倉XYZの悲劇
梶龍雄
(2010/04/17 17:12登録)
鎌倉の旧家を舞台にした遺産相続が絡む本格ミステリ。
情けないほどベタなタイトルの真意は不明ですが、クイーン某作の趣向を取り入れているのは確か。
天国の局長が地上の私立探偵に指示して解決にあたらせるというとんでもないプロットは面白いが、前半の物語がギクシャクしていて、文章の拙さと相まって読みずらいのが欠点ですね。
前例はあるものの非常に意外な真犯人を設定していて、犯人当て小説としては満点に近い裏ベストといっていい出来だと思いますが、上に書いた点がちょっと惜しい気がします。

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