| kanamoriさんの登録情報 | |
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| 平均点:5.89点 | 書評数:2432件 |
| No.152 | 6点 | 戦慄のシャドウファイア ディーン・クーンツ |
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(2010/04/14 20:18登録) モダンホラーとは「怖くないホラー」とか何かで定義されていましたが、本書は怪物が出てくるからホラーなんでしょうけど、ほとんど全篇が追いかけっこの印象で、ホラーというより極上のサスペンス小説の味わいでした。 まあ、ジャンルはどうでもいいことで、読んで楽しかったのは間違いないです。 |
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| No.151 | 7点 | 魔術師が多すぎる ランドル・ギャレット |
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(2010/04/14 18:35登録) 科学の代わりに魔術が発達したパラレルワールドの欧州を舞台にした本格ミステリ。 魔術で封印した密室での殺人に主任捜査官ダーシー卿が挑みます。魔術師が多数登場するなか、トリックは極めて論理的でフェアなもの(ディクソン・カーの某作品の改良型と言えるかもしれません)。 ある意味スパイ小説でもあり、トリックだけでなく物語としても楽しめるSFミステリの逸品だと思います。 ダーシー卿ものの長編はこれだけですが、短編は短編集「魔術師を探せ!」やSFミステリのアンソロジーで読める。未訳の短編もいくつかあり、いつか読んでみたい。 |
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| No.150 | 7点 | 犬の力 ドン・ウィンズロウ |
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(2010/04/14 18:05登録) メキシコの組織と捜査官アート・ケラーとの30年に及ぶ麻薬戦争を描いた大作。 テイストは<ストリート・キッズ>ニール・ケアリーシリーズと随分違いますが、物語の疾走感はいつものウィンズロウ節です。 麻薬組織の兄弟、貧民街育ちの若い殺し屋、高級娼婦ノーラなど主要人物だけでも10人を超え、人物もそれぞれが魅力的で、衝撃的な一つ一つのエピソードは読ませますが、疾走しすぎの感じです。 これだけの人物を配した30年間の物語であれば、この分量では短すぎで、じっくりと全5巻ぐらいで書きこんでもらいたかった。 |
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| No.149 | 7点 | ベウラの頂 レジナルド・ヒル |
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(2010/04/13 23:59登録) ダルジール警視以下<聖三位一体>シリーズの大長編。 このシリーズは巻を重ねる毎に分厚くなっていく。「骨と沈黙」がポケミスで450ページを超える最長と話題になったのはいつのことだったか、なんと本書は550ページだ。しかも各ページぎっしり活字で埋まってる。 ヒルじゃなくてマウンテンだと揶揄されるのも分かります。 さらに、この「ベウラの頂」が頂ではなく「死の笑話集」は650ページだとか。もうヒルの愛読者はマゾ的書痴の集まりですね。 でも、ポケミスのこの重量感、好きです(笑)。 本書の肝は冒頭の山のイラストです。ずっと眺めていれば本文を読まなくても真相がわかる(かもしれません)。 |
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| No.148 | 9点 | 倒錯の舞踏 ローレンス・ブロック |
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(2010/04/13 22:07登録) 無免許の私立探偵・マット・スカダー、<倒錯3部作>の第2作。 スカダーの長いシリーズは3つのステージに分けられると思います。 第1ステージは、アルコール依存症に苦しむ内省的ハードボイルド編で、代表作は「八百万の死にざま」。 第2ステージが、倒錯3部作を含む暴力的ハードボイルド編で、多くは狂人的殺人者と対峙する。 現在は最終ステージで、「おいぼれ熊さん」と揶揄されるように枯れてしまったスカダー(いつまで読めるか心配)。 この作品は第2ステージの代表作のひとつで、前作を超える異常な敵がお目見えする。サイコ・サスペンス小説が溢れていた時代に触発されたごとくで、究極のエンタテイメントに仕上がっていると思います。 |
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| No.147 | 4点 | エアロビクス殺人事件 エドワード・D・ホック |
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(2010/04/13 20:14登録) 読者への挑戦付き犯人当てミステリ。 犯人を特定するためのいくつかのピースをばらまいて、消去法で犯人を当てるタイプのパズラーですが、あまりスマートな論証ではないですね。 共著のR・T・エドワーズはエドワード・D・ホックの別名義で、プロットの考案担当のようです。しかし、解説(訳者あとがき)には覆面作家というだけで、正体は明かされていません。 |
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| No.146 | 9点 | 千尋の闇 ロバート・ゴダード |
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(2010/04/13 19:03登録) 稀代の騙り部・ゴダードの処女作。 失業中の元歴史教師が、半世紀前のある政治家の謎の生涯を、残された回顧録を基に調査するが・・・。 過去と現在の謎と陰謀が重層的に交叉し、めくるめく物語世界に引き込まれる。 真相はある程度分かりやすくなっていますが、やはり圧倒的な物語性に酔わせてくれるのはいつも通りでさすがです。 |
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| No.145 | 9点 | 少年時代 ロバート・R・マキャモン |
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(2010/04/13 18:42登録) 60年代の米国南部の田舎街を舞台にした12歳の少年の成長物語。 あえて要約するとその通りですが、ある殺人事件で始まり1年後の何ともいえない結末に至る枠組みの中に、様々なエピソードが詰め込まれています。 冒険、謎、ホラー、初恋、親子の絆、友情、そしてファンタジー。だれもが持つ少年時代へのノスタルジーを喚起させてくれる、ジャンルを超えた不朽の名作だと思います。 |
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| No.144 | 7点 | 黒い塔 P・D・ジェイムズ |
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(2010/04/13 18:04登録) アダム・ダルグリッシュ警視シリーズ。 ドーセットの障害者療養施設を舞台に、「いったい何が起こっているのか」を主眼とした、例によって重厚なタッチのミステリ。物語世界にすんなり入れたため、後期の作品ほど読むのに苦労しませんでした。 海岸べりに建つ黒い塔など、古いゴシック・ロマン風の雰囲気を創造しておいて、真相は極めて現代的なものとする、その対比の妙を狙ったような作品で、まあ著者の標準作じゃあないかと思います。 |
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| No.143 | 6点 | ロイストン事件 D・M・ディヴァイン |
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(2010/04/12 20:57登録) 第二次発掘ブーム中のディヴァインですが、本作は今は亡きミステリ・ボックスから15年前に出た第3作。 著者の作品の特徴は、 ①シリーズ探偵を置かない巻き込まれ型ミステリなのに本格。 ②密室殺人など派手なトリックがなく、伏線の張り方と回収で読ませるタイプの小説。 ③人物造形が丁寧で、それを逆手に取ったミスディレクションで意外な真相を設定する。 という所ですが、本作も例外ではありません。プロットは単純なのに、真犯人を読者から心理的に隠蔽させる手法が見事です。 なお、作中のロイストン事件は本筋から外れていて、タイトルとしてはそぐわない気がします。 |
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| No.142 | 5点 | 麻薬密売人殺し ヒラリー・ウォー |
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(2010/04/12 20:31登録) 警察小説の大家ヒラリー・ウォーは、80年代に入って私立探偵小説を書いています。それが本書を第1作とする私立探偵サイモン・ケイシリーズ全6作。うち4冊訳出されています。 内容は、なんと予想外のセックス&バイオレンスもので、ミッキー・スピレインを彷彿させます。88年にサスペンスの秀作「この町の誰かが」を書いてるぐらいですから、イッちゃってる訳でもないようなので、単に息抜きなんでしょうかね。 意外性もあるので、まあ楽しめましたが。 |
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| No.141 | 7点 | お楽しみの埋葬 エドマンド・クリスピン |
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(2010/04/12 18:37登録) 英国新本格の旗手の一人クリスピンの代表作ともいわれるジャーヴァス・フェン教授ものの第6作。 しかし、この作品はシリーズに精通しない読者が手にとってもあまり楽しめないかもしれません。 懸案の研究を終えたフェン教授が、なんと気晴らしに下院議員選挙に立候補。選挙区で精神病院患者の脱走や弁護士の妻の殺人事件が発生するんですが、選挙活動に飽きてやっと調査に乗り出します(笑)。 ディクソン・カーを敬愛した著者らしいファルス風のドタバタは真骨頂なんでしょうが、早くミステリせんかい!と言いたくなります。(実は伏線張りまくりなんですが) 着地点はさすがと思わせますが、どれだけの読者がついてこられるか心配ではあります。 |
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| No.140 | 6点 | 死の扉 レオ・ブルース |
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(2010/04/12 18:08登録) 歴史教師キャロラス・ディーンが探偵役を務めるシリーズ第1作。 デビュー作以降の探偵役ビーフ巡査部長シリーズは、本格ミステリ読みをおちょくったバークリーに通じるメタな作風が多いですが、ディーン教師ものはどちらかと言えばオーソドックスな本格編。 しかし、登場人物のとぼけたキャラは相通じるものがあり、本編でもミステリ好きの農場主がディーンにミステリ談義を吹っかける場面など笑える。こういったお遊び的な横道に逸れるプロットは英国新本格に共通するものと言えそうです。 |
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| No.139 | 8点 | ブルー・ベル アンドリュー・ヴァクス |
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(2010/04/11 22:02登録) 「このミス」91年度版の海外部門ベスト3には三つの花が咲いた。 「薔薇の名前」「ブラック・ダリア」に挟まれて第2位に入ったこの作品は、無免許の私立探偵バークとそのファミリーを主人公としたバイオレンス・ハードボイルドの第3作で、著者の代表作です。 シリーズいずれの作品も印象に残る女性が登場しますが、今回の依頼人はストリッパーのブルー・ベル。 少女売春婦を狙う幽霊ヴァンを追って壮絶な戦いが繰り広げられ、それも読みどころに間違いありませんが、悲惨な過去と無垢で純情なブルー・ベルの造形がすばらしく、それゆえにあまりにも哀切なラストシーンが感涙ものでした。まさに名作です。 |
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| No.138 | 8点 | 暗闇の囚人 フィリップ・マーゴリン |
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(2010/04/11 21:25登録) 10年ぐらい前までは、ジェットコースター・サスペンスと言えば、マーゴリンの代名詞だったように思いますが、最近はディーヴァーに取って代わられたようです。 この作品は第4作で、「黒い薔薇」と並ぶ著者の代表作のひとつ。 連戦連勝の弁護士が、判事で別居中の夫を殺した容疑の美貌の女性検事を弁護する。並みのリーガル・サスペンスとは一線を画する怒涛の展開、逆転に次ぐ逆転の連続の末、驚愕の真相が待っています。 リンカーン・ライムシリーズとの一番の相違は、結末が予定調和でないことでしょうか。 |
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| No.137 | 6点 | テンプラー家の惨劇 ハリントン・ヘクスト |
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(2010/04/11 19:15登録) 英国の名門テンプラー家一族の皆殺しを図る連続殺人を描いた本格ミステリ。 この作品には「赤毛のレドメイン家」と同じ要素の批判があると思います。物語が古臭い、トリックが陳腐、明らかにアンフェアな表現、警察が無能すぎる、犯人は残った人物だからミエミエなど。 しかし、真犯人の比類ないような特異な性格を描いた人物造形は一読の価値あり。作者の失敗は、これを本格ミステリとして書いたことだと思います。 |
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| No.136 | 6点 | 証拠は語る マイケル・イネス |
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(2010/04/11 18:54登録) 黄金時代後の英国新本格の旗手の一人マイケル・イネスの大学を舞台にした学園ミステリ。 癖のある作品が多くとっつきにくい印象がありますが、この作品は比較的読みやすいオーソドックスな本格編です。 いきなり隕石で圧死した死体が出てきてどうなることかと思いましたが、大学教授らの人を食ったようなキャラと推理で、本来退屈となりがちなアプルビイ警部の捜査や証人尋問も楽しく進行しています。 油断していたためか、クライマックスのどんでん返しの連続も意表をつかれました。 |
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| No.135 | 5点 | フレンチ警部と毒蛇の謎 F・W・クロフツ |
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(2010/04/11 18:13登録) クロフツ最後の未訳長編ということで、期待と不安感を持って読みました。 動物園園長の視点で語られる倒叙形式のミステリですが、実行犯(主犯)は別にいて、園長はある手助けをする人物な訳で、殺人行為自体にタッチしていない。そのため、倒叙なのにハウダニットというユニークな構成になっています。この園長が犯罪に関与しなければならなくなった経緯が物語の3分の2を占めていねいに描写されていますが、この部分を楽しめるかどうかで、読者のこの作品に対する評価が別れると思います。 ようやくフレンチ警部が登場し、いつものスタイルになる訳ですが、むしろ一貫して園長の視点で語られていたほうが、クライム・ミステリとして完成度の高いものになっていたような気がしました。 |
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| No.134 | 8点 | 殺す者と殺される者 ヘレン・マクロイ |
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(2010/04/10 18:15登録) 英国の某古典怪奇小説が元ネタと思われる騙しのテクニックが冴えたサスペンス・ミステリの傑作。 サスペンス小説といっても本格ミステリの趣向が存分に組み込まれていて、特に冒頭の一行から始まる数々の伏線の敷き具合と回収方法が抜群にうまいと思いました。 中心となる大ネタは、いかにもマクロイが使いそうなものですが、今では使い古されていて、新本格で鍛えられた現代の読者であれば物語中盤で仕掛けに気付くと思われます。しかし、本作の肝は最後の一行でしょう。 読み終えたあと、タイトルの秀逸さに誰もが感動するはずです。 (以下ネタバレ) 「水平線の男」のネタバレもしています。 主人公のハリーが二重人格で、しかも「副人格」の方だったというのがすごい。「ジキル博士(殺す者)とハイド氏(殺される者)」は、二重人格ものではなく薬による変身ものですが、タイトルもシンクロしているので元ネタに間違いないと思います。ハリーとヘンリーとか英米の人名呼称習慣を巧く使っていることにも感心します。 二重人格をトリックにしたミステリの先駆は、東京創元社絶版本の盟友「水平線の男」だと思います。マクロイの10年前に出版されています。 もうひとつの大仕掛けとして、時制の誤認があります。これは、副人格ということを隠蔽するために必要な叙述トリックで、その伏線が尋常でないくらい張られていたことに驚きます。 (2010年4月16日 ネタバレを追記) |
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| No.133 | 7点 | 俳優パズル パトリック・クェンティン |
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(2010/04/10 17:32登録) 「愚者パズル」に続くパズルシリーズ第2弾。 今回もレンズ博士が探偵役を務め、前作でアルコール依存症から脱却したダルースが語り手となって、初演直前の劇場を舞台に幽霊劇場の謎と連続する怪死事件を解決するという粗筋です。 本格ミステリとして見た場合、大掛かりなトリックはありませんが、怪しげな事情を抱えた俳優たち(飛行機事故で顔を大怪我した人物など)の読者に誤解を与えるような言動が効いていて、動機を上手くミスリードさせています。証拠が明確かはやや微妙ですが、演劇のフィナーレと並行して明かにされる最後のどんでん返しは実にスリリングで劇的です。 |
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