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ミステリの祭典

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お楽しみの埋葬
ジャーヴァス・フェンシリーズ

作家 エドマンド・クリスピン
出版日1959年01月
平均点7.00点
書評数6人

No.6 7点 クリスティ再読
(2023/04/22 03:40登録)
セイヤーズやり出したこともあって、イギリス新本格とかイギリス教養派とか呼ばれる作家たちの作品を改めて読むのもいいのでは...の狙い。

アマチュア探偵ジャーヴィス・フェン教授が縁もゆかりもない選挙区から無所属で選挙に立候補する話を軸に、恐喝事件に端を発しフェンの知人の警官が、フェンとニアミスみたいな状況で刺殺される事件を扱った本作、面白めの犯人とか、伏線が周到に張られていてミステリとしてナイスなんだけども、それ以上に諷刺的でコミカルな社会小説というか、ちょっとヘンでおいしい話が盛りだくさんな「小説」というあたりにいい部分があるわけだ。

・宿屋を改造することに憑りつかれた持主によって、フェンが泊る宿屋がどんどん破壊されていく
・宿屋で育てていた「ゴクツブシの豚」が売っても売っても戻ってくる
・ポルターガイストを同居人扱いにする牧師
....もちろん選挙戦と意外などんでん返しも笑える。だけども、こういうったヘンでオカシいイイ話が、ミステリとはまったく絡まない!

そうしてみると、ミステリを話の軸にはするけども、他の面白要素とは並列的なユーモア小説というあたりで楽しめばいいのかな~なんて思う。要するにミステリの風俗小説化といえばいいじゃないのかあ。小説として強くローカライズされているから、マニア主導の日本ではウケなかったんだろうなあ。

No.5 9点
(2020/02/22 09:38登録)
 終戦後の一九四七年九月、イギリス。オックスフォードの英文学教授ジャーヴァース・フェンは、気骨の折れた校訂作業後の気分転換に、突如下院議員選挙への立候補を思い立った。彼は選挙区の中心から十マイルほど離れた十八世紀風ののどかな村、サンフォード・モーヴェルに降り立つが、宿屋〈フィッシュ館〉へ向かう途中、黒髪のタクシー運転手ダイアナ・メリオンと共に藪に逃げ込むすっ裸の男を目撃する。それは精神病院に改装されたサンフォード屋敷から逃げ出した患者、エルフィンストンだった。
 〈フィッシュ館〉に本格的に腰を据え選挙戦に臨むつもりのフェンだったが、館は改築作業の途中な上、彼の前にはエルフィンストンを皮切りに一癖も二癖もありそうな人々が現れる。豚を飼う〈フィッシュ館〉の女主人マイラに加え、お伽噺のようなプラチナ・ブロンドのメイド・ジャックリーン、新作の構想を練る探偵小説家ジャッド、どこか見覚えのあるクローリーと称する男、それに汽車で同道したきちんとした服装の娘、ジェーン・パーシモンズ。
 男に見極めを付けたフェンは、正体を明かした大学時代の同級生、ブッシー警部に捜査の協力を頼まれる。彼はゆすり行為からチョコレートによる毒殺に発展したランバート夫人の事件を探るため、ロンドン警視庁から非公式に派遣されたのだった。ある程度の目星はついているが、さらに証拠固めをする必要があるのだという。翌日、二人は深夜十二時にゴルフコースで落ち合う約束をするが、満月に近い星空の下、グリーン脇の小屋でフェンの懐中電灯が照らし出したのは、喉にナイフをつきさされたばかりのブッシーの姿だった・・・
 1948年発表のシリーズ第6作目。同年には第5作『愛は血を流して横たわる』も上梓されています。英国コージーミステリの最高峰で、これまでの著作のように浮ついた所もなく、落ち着いた筆致でユーモアたっぷりに語られます。改築狂の宿屋の持主ビーヴァー、ゴクツブシの豚や狂人エルフィンストン、牧師館のお騒がせ妖精など魅力的なお笑い要素も多い。
 ほとんど注目されてなかった選挙戦もキチ○イの脱走劇や二重殺人に加え、素人探偵の立候補が話題となり一気に全国ニュースに。フェン教授の意外な演説ウケも手伝って、内心どうせダメだろうと思っていた選挙参謀キャプテン・ウォトキンも俄然熱が入ります。フェンに政治熱を掻き立てられた探偵作家アネット・デ・ラ・トゥアことジャッドに至っては、彼ら二人も引くのぼせっぷり。

 フランケンシュタインが自分の生んだ怪物に初めて直面したときの宿命的な恐怖、夢にも思わなかったジャッド氏の熱狂ぶりを見て、二人はそのような恐怖を抱いた。

 この選挙にかなり筆が割かれてるんですが、オチも含めて出来がいいんですよね。なおかつ本筋には微塵も関係しないという潔さ。ミステリとしても論理的な手掛かりで、犯人もよく考えられています。脇筋の纏まりも含め非常にバランスの良い作品に仕上がっており、おそらくクリスピンの最高傑作でしょう。未訳のシリーズ最終作『Grimpses of the Moon』はこれと張るそうですが。
 翻訳も深井淳の名訳。機会があれば入手するべき一冊です。

No.4 7点 nukkam
(2016/05/06 15:41登録)
(ネタバレなしです) 1948年発表のフェン教授シリーズ第6作となる本書では、クリスピンのユーモアぶりが最大限発揮されています。なぜか議員に立候補したフェンの選挙戦ぶりもユーモアに拍車をかけています。そして終盤の犯人追跡も、スリリングでありながらどこかユーモラス。犯人と警察&フェンだけでなく、人間、倒木、動物、妖精(?)などが入れ替わり立ち替わり追跡劇に巻き込まれて豪華絢爛!本格派推理小説としてもよく出来ていて、第22章の冒頭でフェンが語った解決への糸口が、からみ合った謎を一気に解きほぐしてくれます。

No.3 5点 蟷螂の斧
(2015/09/04 13:15登録)
裏表紙(あらすじ)の事件が起きるまでが長すぎる。スピード感でくじけ、ユーモア期待感でもくじけてしまいました(苦笑)。伏線回収に関しては楽しめました。題名は”読者にとって誰(犯人)が逮捕(埋葬)されるのか、お楽しみ”ということなのか???。

No.2 7点 ボナンザ
(2015/03/12 00:13登録)
ユーモアミステリの手本のような名作。
入手困難なのが玉に瑕。

No.1 7点 kanamori
(2010/04/12 18:37登録)
英国新本格の旗手の一人クリスピンの代表作ともいわれるジャーヴァス・フェン教授ものの第6作。
しかし、この作品はシリーズに精通しない読者が手にとってもあまり楽しめないかもしれません。
懸案の研究を終えたフェン教授が、なんと気晴らしに下院議員選挙に立候補。選挙区で精神病院患者の脱走や弁護士の妻の殺人事件が発生するんですが、選挙活動に飽きてやっと調査に乗り出します(笑)。
ディクソン・カーを敬愛した著者らしいファルス風のドタバタは真骨頂なんでしょうが、早くミステリせんかい!と言いたくなります。(実は伏線張りまくりなんですが)
着地点はさすがと思わせますが、どれだけの読者がついてこられるか心配ではあります。

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