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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:2432件

プロフィール| 書評

No.232 6点 金庫と老婆
パトリック・クェンティン
(2010/04/29 16:55登録)
ミステリ短編集。
作風から推してホイーラー単独になってからの作品集かと思いますが、ブラックな味付けのサスペンスの傑作が含まれています。
老嬢の初恋がもたらす衝撃のエンディング「ルーシーの初恋」、過剰すぎる父親の愛情への対抗策「親殺しの肖像」、ある男に金庫に閉じ込められた夫人を描く傑作サスペンス「金庫と老婆」など。
テーマに重複がみられ、訳文も古いのが難点ですが、唯一の邦訳短編集ということで、読んで損はないでしょう。


No.231 6点 七番目の仮説
ポール・アルテ
(2010/04/29 16:27登録)
犯罪学者アラン・ツイスト博士シリーズ第6作。
発端の異様な衣装のペスト菌医師とかペスト患者の消失と死体出現などの怪奇と不可能趣向は、読者を物語に引き込む手法としてまずまず成功していると思います。
第2部の劇作家と俳優の殺人ゲームについても、ハースト警部が6つの仮説を上げるところから盛り上がってきます。しかし、複数犯による第1部の事件がミスリードになって、7番目の仮説が盲点になるという作者の意図はわかるんですが、あまり意外性のあるものとは思えませんでした。


No.230 6点 メグル
乾ルカ
(2010/04/29 15:55登録)
学生部から紹介されたちょっと変わったアルバイト先で大学生たちが遭遇する奇蹟の物語。
冒頭だけ読んで、軽いユーモアミステリかと思っていたら全然違った。収録作の多くは死や病いがテーマなので軽くはないし、ミステリとは言えない話もありました。
5つの物語は枠組みは同じですが、内容はホラー系、日常の謎、奇妙な味、ファンタジーなどテイストがそれぞれ異なるのに感心。奇妙な味風で最後に逆転がある「アタエル」が一番ミステリをしていますが、読み手によって好みが分かれそうです。


No.229 7点 顎十郎捕物帳
久生十蘭
(2010/04/29 15:36登録)
北町奉行所のもてあまし者・通称<顎十郎>こと仙波阿古十郎を主人公とした傑作捕物帳。全24編収録。
この捕物帳の特徴は、発端に提示される謎が奇天烈で魅力的なことでしょう。解決も戦前の作品とは思えないスマートなもので、これらは都筑道夫の「なめくじ長屋」シリーズを彷彿とさせます。
収録作でいうと、マリー・セレスト号の謎を思わせる乗船員消失トリック「遠島船」、見世物小屋の鯨が一瞬にして消える「両国の鯨」、密室からの大金奪取トリック「紙凧」など、不可能トリックものが多く含まれています。なーんだ、というオチもありますが、奇想にあふれた楽しい連作ミステリでした。


No.228 5点 失われた背景
陳舜臣
(2010/04/29 15:08登録)
香港の東方文明研究所から日本支部に派遣された2名の中国人青年が連続殺人に巻き込まれるというお話。
著者の本格ミステリでは珍しい文庫で600ページを超える大長編。序盤で語られる過去のエピソード(骨董贋作事件や中国大陸での将軍暗殺事件)が本筋の事件とどのように関わってくるかの興味で読み進めましたが、いつの間にか焦点が別の方向に向いてしまっています。新聞連載のためか、中盤は殺人容疑を受けた青年の逃亡サスペンスの様相で枚数を稼ぎ、結末のつけ方もあまり工夫が見られません。ファンであればある程度楽しめるかもしれませんが、平凡な出来という感想です。


No.227 5点 狂った信号
佐野洋
(2010/04/29 00:00登録)
自動車教習所教官殺しを始めとする連続殺人を描いた、著者にすれば比較的派手な作品です。
ミッシングリングがテーマですが、動機はある程度予想がつき易くなっていて、本格というより「黒衣の花嫁」タイプのサスペンスという感じです。
短めの長編なので、物語に厚みがなく物足りないです。


No.226 6点 おかしな死体(ホトケ)ども
海渡英祐
(2010/04/28 23:42登録)
吉田茂警部補苦虫捕物帳、ユーモア連作ミステリ第1弾。
かつてのワンマン宰相似の主人公が、部下の佐藤富作部長刑事や田中角兵衛刑事を引き連れて、奇妙な死体状況の事件ばかりを解決します。
随所に出て来るクスグリは時代を感じさせて笑えませんが、不可解な謎とその合理的解答は少しも古びていないと思います。


No.225 7点 傷痕の街
生島治郎
(2010/04/28 23:25登録)
国産ハードボイルドの路傍的作品、著者のデビュー作。
チャンドラーの影響を受けているといわれていますが、あまりそうは思わなかった。主人公が私立探偵でなく舞台が港湾近辺で終始しているという要因もあるかもしれませんが、、主人公の行動原理が、自身に降りかかった火の粉を払うというような、日本的な泥臭さがあります。
抒情性があって研ぎ澄まされた文体は、第1作にして既に完成されています。


No.224 6点 牙をむく都会
逢坂剛
(2010/04/27 20:54登録)
現代調査研究所・岡坂神策シリーズの長編サスペンス。
シリーズの愛読者でないと、この内容にとまどうか場合によっては怒る人もいるかもしれません。
いちおう陰謀めいた話もありますが、スペイン現代史や西部映画のウンチクが延々と語られ、主人公は御茶ノ水界隈をぶらぶらするだけ。でも、こういったまったりした雰囲気がたまらないんです。


No.223 6点 突然の明日
笹沢左保
(2010/04/27 20:36登録)
人間消失がメイントリックの本格ミステリ。
尾行していた主人公の目の前で対象人物が消える、いきなり提示される謎は強烈で魅力的ですが、終盤で明かされる解答には唖然というか脱力。読んですぐ「姑獲鳥」を連想しました。しかし、京極堂のほうは視点人物が精神不安定だとか、説得力を高めるため色々工夫されていたように思いましたが。


No.222 5点 ぼくらの気持
栗本薫
(2010/04/27 20:16登録)
学生ロックバンド<ポーの一族>のメンバー3人も卒業し、それぞれの道に・・・。青春ミステリ「ぼくら」シリーズ第2作は、漫画出版社勤務になったヤスヒコが女性漫画家殺しの容疑者にされ、薫と信が解決に奮闘するという話。
このシリーズに思い入れがないと、定番のミステリの構成に苦笑ものかもしれませんが、30年ぶりに続編を読む身にとっては、なかなか感慨深いものがありました。しかし、ヤスにとって、この苦い結末は重すぎる。


No.221 7点 影の地帯
松本清張
(2010/04/27 18:50登録)
著者が社会派ミステリの大家であることは間違いないでしょうが、本書や「黄色い風土」のような謎の集団が登場する陰謀ミステリのほうが、個人的には好きです。
個人カメラマンが好奇心から追求した謎が、信州山間部の村で終決するまでのサスペンスの盛り上げ方はさすがです。とくに石鹸工場の秘密にはゾッとします。
相変わらずご都合主義な点はありますが、理屈で読むのではなく、ダイナミックな物語性を楽しむタイプの小説です。


No.220 6点 キリオン・スレイの生活と推理
都筑道夫
(2010/04/27 18:22登録)
詩人の外国人を探偵役とした連作ミステリの第1弾。
各編の表題がすべて「なぜ・・」で始まる事から分かるように、不可能犯罪ものとして成立できる物語でも、あえて不可解犯罪もののミステリに仕上げていて、ホワイダニットにこだわっています。
作者の提唱する<論理のアクロバット>の実践として書かれたようなミステリで、探偵役を外国人にしたのも合理性を重んじる西洋人がふさわしいという考えからでしょうか。なかには、強引すぎる机上の空論めいた推理もありますが、まずまず楽しめました。


No.219 7点 偽りの街
フィリップ・カー
(2010/04/27 18:00登録)
ナチス独裁政権下のベルリンを舞台にしたハードボイルド、シリーズ第1作。
暗い政治の翳に包まれた卑しい街ベルリンに孤高の騎士を登場させる、これはもう設定の勝利でしょう。
私立探偵グンターの造形はマーロウを意識したものに間違いないと思います。当時の状況を考えれば失踪人探しは結構需要があったでしょうしね。最後が三部作を前提にしたような終りかたなのが少々不満ですが、かなり楽しめた私立探偵小説です。


No.218 6点 殺人者と恐喝者
カーター・ディクスン
(2010/04/25 21:30登録)
非常に大掛かりなトリックが仕込まれていますが、アイデア倒れという感じでしょうか。
チェスタトンは短編なので不自然さは目立たず、逆説的奇想と評価されるのかもしれませんが、長編で同じことをやるとアンフェアなどと言われかねません。
原書房から出た新訳では、表現方法など相当工夫されていますが、やはり無理があるような気がします。


No.217 6点 テキサスの懲りない面々
ジョー・R・ランズデール
(2010/04/25 20:55登録)
落ちこぼれ白人ハップとゲイの黒人レナードのコンビが騒動を起こすシリーズ第5作。これ以後シリーズ作品が出ていないので最終話になるかもしれません。
ランズデールは多才な作家で、「ボトムズ」などのモダン・ホラー系のサスペンスやスプラッタ・ホラーなども書いていますが、ハップ&レナードのシリーズは無条件で楽しめるユーモア風味のノアール小説という感じです。今作は過去に出てきた面々が再登場したり、既読感のあるやり取りがあったりで、シリーズの集大成の様相でした。


No.216 6点 殺人ファンタスティック
パトリシア・モイーズ
(2010/04/25 20:34登録)
スコットランド・ヤード犯罪捜査課ティベット警部シリーズ第7作。
このシリーズはティベット夫婦の観光地巡りミステリのスタイルが多いですが、今作は一応「館」ミステリ。田舎の名士一族の変人ぶりが笑えるファース風味の強い作品で、トリックも従来の作品とは趣が異なります。
本格度は高くはないですが、幻想的雰囲気が漂う佳作だと思います。


No.215 5点 陰の告発者
草野唯雄
(2010/04/25 17:58登録)
「主人公は、この物語の犯人であると同時に被害者であり探偵でもある。さらに・・・」
倒叙形式でミステリ作家の妻である主人公のある犯罪計画を描いたサスペンスミステリ。読者を煽る紹介文とは裏腹に、出来はいたって平凡なサスペンスといったところです。
むしろ、文庫解説で類似趣向作品として「シンデレラの罠」や「猫の舌に釘を打て」とか辻真先のポテト&スーパーものを取り上げているのが興味深かった。「虚無への供物」のネタバレをしているのは問題ですが。


No.214 5点 結婚って何さ
笹沢左保
(2010/04/25 17:33登録)
通俗ミステリの様なタイトルですが、キッチリ本格しています。
作者初期の本格ミステリ群は、乱歩の「類別トリック集成」の各トリック項目から順次消化しているような感じで、色々なトリックを駆使していますが、本書も密室トリックとある有名なプロット上のトリックを使用しています。
オリジナリティに欠けるかもしれませんが、本格に対する意欲は買えると思います。


No.213 4点 崖下の道
飛鳥高
(2010/04/25 17:22登録)
昭和の下町工場を舞台にした暗めのクライムミステリ。
兄の強盗殺人を疑う主人公の懊悩と、その親類で所轄の刑事の捜査を交互に描いていて文芸的な香りがします。が、本格ミステリの趣向がほとんど見られないのと、あまりにも救いようがない結末なので後味がよろしくないです。
古書的価値ほどの面白みは感じられませんでした。

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