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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:2501件

プロフィール| 書評

No.301 6点 遥かなりわが愛を
笹沢左保
(2010/05/14 20:24登録)
警視庁・伊勢波警部シリーズ第1作。
作者の作風の特徴は甘くて暗めのロマンと本格トリックを合わせ持つ所だと思いますが、当シリーズは歴史ミステリの趣向が加味されています。
高野長英の曾孫と称する男からの殺人予告によって幕を開ける正統派のアリバイ崩しで、トリックは単純ながらなかなかのもの。探偵自身がアリバイの証言者という趣向も面白かった。


No.300 6点 長安日記
陳舜臣
(2010/05/14 18:50登録)
玄宗皇帝治世の長安を時代背景に、謎の日本人・賀望東が探偵役を務める連作ミステリ短編集。
エキゾチックな国際都市・長安の雰囲気がいかにも風で興味深く読めるうえに、密室殺人などの不可能トリックが満載されています。各編あっさり解決するのが物足りないですが、まずまず面白く読めました。


No.299 4点 火の路
松本清張
(2010/05/14 18:33登録)
女性考古学研究者を主人公にした、奈良・飛鳥村の巨石遺跡の謎と隠退した考古学者の過去が交錯するミステリ巨編。
大学の派閥争いや遺跡盗掘など陰謀めいた話は面白いが、核となる事件そのものがあやふやなまま、ゾロアスター教と飛鳥の関連を延々と論考するプロットには正直参りました。
結局、作者はミステリではなく、考古学論文を書きたかったのでは。


No.298 6点 鋏の記憶
今邑彩
(2010/05/14 18:06登録)
サイコメトリー(残留物感知能力)をもつ女子高生を主人公にしたミステリ連作短編集。角川ホラー文庫から出ていて設定も超常能力ものなのでホラー小説と思わせますが、本格ミステリ寄りの4編が収録されています。
どの作品もサクサク読めてよかったですが、「猫の恩返し」の真相が一番意表を突く出来でした。


No.297 7点 牡牛の柔らかな肉
連城三紀彦
(2010/05/13 19:07登録)
いわゆる悪女ものの系統に入る長編ミステリですが、物語がいったいどういう方向に向かっているのか把握できないプロットに翻弄されました。
主人公の香順尼と取巻きのダメ男たちを中心にした新興宗教もの風のクライム小説でありながら、次々と小さなどんでん返しを繰り返し、物語の様相が変化していきます。
短編のように最後の反転で驚かすタイプのミステリではありませんが、犯罪者が探偵に、逆に探偵役が犯罪者に変化したりする物語途中の構図の逆転が読みどころだと思います。


No.296 6点 赫眼
三津田信三
(2010/05/13 18:36登録)
ホラー系の短編集。
アンソロジーなどで発表済みの作品を集めた感があるラインナップですが、刀城言耶シリーズに繋がる世界のものや、三津田信三シリーズ、死相学探偵ものなどが収録されていて、氏の長編をある程度読んだ読者の方が楽しめるかと思います。
なかでは、ミステリ寄りの「灰蛾男の恐怖」がトンデモ系で印象に残りました。
実話風のショート怪談も挿入されていますが、そちらはいずれも微妙です。


No.295 5点 紅い蛾は死の予告
梶龍雄
(2010/05/12 22:47登録)
過去に一家全員が失踪した村を舞台に、その事件をテーマにした映画の撮影に来た女優が、ある事件に巻き込まれ真相究明に乗り出す話。
映画の脚本と現在の事件が交互に描かれていますが、悪い意味で読み手を混乱させています。読後にストーリーを整理して、作者が何をやりたかったか分かった次第ですが、アイデアは非常に面白いのに(のちの新本格や三津田作品に似たアイデアあり)プレゼンテーションが稚拙なため、スッキリと騙された気にならなかったです。


No.294 6点 紙の孔雀
斎藤栄
(2010/05/12 22:29登録)
作者はストーリーそのものにトリックを仕掛ける「ストリック」を提唱したとされますが、さしずめ本書とか「紅の幻影」なんかがその実践作かもしれません。
学生運動闘争中に暴行を受けた女子大生が真相を追究する話と、その父親である刑事がある殺人事件を捜査する話が並行して描かれていますが、どうも焦点が定まらない感じを受けます。
終盤近くになって、殺人事件の容疑者が台風で交通が遮断された三宅島から如何にして脱出したのかというアリバイの謎が提示され、やっと本格ミステリの様相になったと思ったとたん、予想外の展開が待っていました。
父親の捜査状況の描写など微妙でアンフェアと言われかねないのと、時代性を感じる大学紛争の話が冗長に感じましたが、意外な結末については楽しめました。


No.293 7点 あやかし砂絵
都筑道夫
(2010/05/11 21:44登録)
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ第4弾。
発端の不可解な謎の提示は、過去のシリーズ同様に魅力的ですが、解釈にやや捻りが不足するものが目立つように思いました。
なかでは、絵に描いた虎が人を喰い殺す「人喰い屏風」が謎の突飛な所がずば抜けています。動機の隠蔽もなかなかでホワイダニットの秀作だと思います。


No.292 8点 からくり砂絵
都筑道夫
(2010/05/11 21:33登録)
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ第3弾。
解説によると、「むっつり右門」シリーズが元ネタになっている話が数編含まれているそうですが、不可解性を追求するテンションは落ちていません。
ベストは、座敷で隠居が大きな庭石によって圧死する不可解な謎が魅力的な「小梅富士」。からくり人形が竹光で斬殺する「血しぶき人形」が準ベストでしょうか。


No.291 8点 くらやみ砂絵
都筑道夫
(2010/05/11 21:16登録)
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズの第2弾。
準レギュラーである岡っ引きの下駄常への助太刀の体裁を取りながら、ダミーの解決を提示する多重解決がパターン化しています。
棺桶の中の死体の入れ替りトリック「天狗起し」と、死人が泥棒に入るという謎の「地口行灯」が不可解性で双璧の秀作だと思います。後者は江戸時代の文盲があたりまえという常識を活かしたダイイングメッセージも唸りました。


No.290 9点 血みどろ砂絵
都筑道夫
(2010/05/11 20:49登録)
砂絵のセンセーを中心に「なめくじ長屋」のアウトローたちが奇怪な事件を解決する捕物帳、シリーズ全11作中の第1弾。
軽妙洒脱な文体で江戸の風物を楽しめると共に、奇想天外な謎と論理のアクロバットが光る傑作パズラーでもあります。
渡し船からの人間消失トリック「よろいの渡し」、見立て連続殺人もの「本所七不思議」、密室の蔵からの人間消失「三番倉」、心中した女が一瞬にして老婆に変わる「心中不忍池」など、物のけや神隠しの存在が信じられていた時代だけに、それぞれの設定が効果的で動機にも説得力がある点が秀逸です。


No.289 6点 奥只見温泉郷殺人事件
中町信
(2010/05/11 20:15登録)
一人称の物語の合間に日記の抜粋が挟まれた構成で、すぐにアッチ系のミステリとわかります。
温泉宿泊客が多数登場して人物が書き別けられていないのは一種の叙述トリック(笑)と考えても、画家の絵によるある誤認トリックは推理クイズ本レベルです。
しかし、著者の作風を知らずにトラベルミステリだと思って手を出した人は、プロット上の仕掛けに驚くかもしれません。


No.288 7点 團十郎切腹事件
戸板康二
(2010/05/10 21:22登録)
歌舞伎の老俳優・中村雅楽を探偵役とした連作短編集。
当シリーズは後期の作品になると日常の謎系の軽めのミステリが主流になってしまいましたが、第1短編集の本書では、江川刑事の登場する事件ものが多く含まれていて本格度が高いと思います。
表題作以外では、「奈落殺人事件」「等々力座殺人事件」「松王丸変死事件」なんかがいいですね。


No.287 5点 古都に棲む鬼女
風見潤
(2010/05/10 21:10登録)
長野県での地方歌舞伎を巡る連続殺人を描いた本格ミステリ、シリーズ第3弾。
前2作と比べて、おおっというトリックは無く、絞り込みによる犯人当てとなっています。作者は他に出雲歌舞伎を背景にしたミステリも書いていて造詣が深い様で、この作品でも頻繁に歌舞伎用語に関する説明とウンチクが出てきますが、読者層が小中学生であることを考えると、この題材はどうかなと思いました。


No.286 6点 月下の蘭
小泉喜美子
(2010/05/10 20:55登録)
歌舞伎の演目をモチーフにした短編集で4編収録。
といっても物語の背景はどの作品も梨園とは無関係で、演目に詳しくない我が身にとっては元ネタとの比較もできませんが。
「月下の蘭」は華麗なタイトルとは裏腹の、洋蘭を愛する女性の復讐劇が凄まじい。女性の心情描写がほとんど無い分かえって恐ろしい。
「宵闇の彼方より」は幻想怪奇譚。山間の寂れた病院の情景描写と老いた女医の黒衣姿というのが何とも不気味。
読んでしばらくして4編とも女性の復讐が主題だということに気がついた。


No.285 6点 二人道成寺
近藤史恵
(2010/05/10 20:37登録)
歌舞伎界を背景に私立探偵の今泉と大部屋女形役者・小菊が探偵役を務めるシリーズ第4弾。
ライバル関係にある二人の女形役者と事故で昏睡状態の一方の妻を絡めた恋愛ものの様相で、歌舞伎の演目とシンクロさせたプロットがなかなか秀逸。
終盤、本格ミステリ風の謎解きがありますが、今泉の存在がこの物語なかで異質でマッチしていないように思いました。


No.284 6点 妖かし蔵殺人事件
皆川博子
(2010/05/10 20:21登録)
歌舞伎界を背景にした本格ミステリ。
歌舞伎とミステリは元々共通点があるので、梨園ものミステリは結構書かれてますね。ともに様式美を重んじる一方で先達をパロッたり、早変わりの一人二役やどんでん返しもあったりで。
本書は、舞台中の人間消失や消失した人物が密室の土蔵に死体で出現したりで結構派手なトリックが使われていますが、役者間のどろどろとした人間関係を描くことにも重点が置かれていてバランスがとれていると思います。


No.283 6点 バード・ウォーズ
多島斗志之
(2010/05/09 19:08登録)
初期の国際謀略小説。
ゴルバチョフ時代のソ連を舞台に、米国CIAによるペレストロイカ潰しの奇策を巡る謀略戦を描いています。
今回の大ボラ話のネタは、コウノトリによる細菌配布で、バカミスならぬバカ謀略ミステリと言えそうですが、KGBを始めソ連内部の抗争劇も絡んで、なかなか面白かった。物語が進展しても先が見えてこないプロットと最後のどんでん返しはいつもの通りです。


No.282 8点 砂のクロニクル
船戸与一
(2010/05/09 18:31登録)
クルド独立運動を舞台背景にした骨太の傑作冒険小説&壮大な抒情詩。
この時期の船戸の小説は、海外の紛争地域に日本人を投げ入れて引っ掻き回したり、緻密な現地取材に基づく歴史の証言者に設定したりがパターンで、本書はその決定版だと思います。
各章で銃撃戦の騒音が溢れ、幾多の血が流れます。単なる冒険小説としても怒涛のサスペンスに浸れますが、宗教と民族の紛争に対するメッセージ性が強いのが好みの分かれるところかもしれません。

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