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ミステリの祭典

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影の地帯

作家 松本清張
出版日1961年01月
平均点5.75点
書評数4人

No.4 6点 斎藤警部
(2024/01/20 20:40登録)
“その目撃者が宿に訪ねてきました。その興奮で、この手紙をあなたに書きました。”

本作の中心にある『屍体隠蔽』については、猟奇的トリック自体もさる事ながら、その二重底構造になっている点を推したい。

「お願いです。これ以上深入りしないでください。」
「あなたは、なんのために、ぼくにそういう注意をするのです。」

写真家である主人公馴染みの ”銀座ママ” が失踪。 前後して与党保守党の領袖が失踪。 事件の周囲に見え隠れする魅力的な若い女性と小太りの中年男は、主人公が以前に航空機内で偶然出遭った二人連れだった・・・ 幾手にも分かれつつ親密なる協調の探偵群は、その構成にちょっとした捻りあり。 決してありきたりでない主要登場人物群の有り様に変容めいた彩りもあったりして、盤石の推進力あるストーリー展開。 後半風情からあまりに痛く怪しい魍魎どもの蠢きと、そこへ被せてまた更なるうねり。 飽くまでも爽やかに。 いやァ愉しいっす。 昭和30年代中盤。

「おれは、もうやめたよ。妻子のあるからだだから、いま死ぬのはいやだからな。」

ごく淡い水彩画からのテイクオフが心地よい恋愛要素、そして、まさかの(?)◯◯物語という熱い側面。 清張らしい冷徹な規律は認められるが、やはり甘々の通俗長篇。 もはや量産期京太郎ぽい旅情サスペンス。 匂わせとご都合の激しさが逆に愛おしい。 だが社会派要素なるものは、果たしてどうかな。。 最後のそれらしき考察も、却って安心しちゃってるみたいで、”もどき” 感が強い。

さて主人公の名前は田代利介(たしろ・りすけ)。 今だったら「ロリスケ」って呼ばれるかも?

No.3 5点 了然和尚
(2015/05/22 12:37登録)
いつものようなパターンで楽しく読めたのですが、なんか少し他の力作より落ちるような気がしました。地方が舞台であっても作者の特徴である旅情感が無かったかと思います。

No.2 5点
(2014/02/23 18:53登録)
『霧の旗』『黒い福音』『砂の器』等と同じ1961年に発表されたかなりの大作です。ともかく膨大な量のミステリを書きまくっていた時期で、それぞれ強烈な個性を感じさせるそれらの有名作と比べると、本作は大作感はありますし、死体処理トリックが工夫されているものの、特に際立った印象は残りませんでした。全体的には、社会派冒険スリラーとでも呼びたいような、リアリズムの中にご都合主義的な荒唐無稽さをミックスしたタイプと言えそうです。
フリーのカメラマンが主役ですが、途中で視点が新聞記者に替わり、探偵役交代かと思っていたら、70ページぐらいしてまた元に戻るという構成になっています。しかし、この新聞記者の部分は手紙だけで済ませた方がよかったように思えました。ラストの決着のつけ方も、唐突かつ安易な感じがぬぐい切れません。それに松本清張にしては、文章が多少雑な感じがするのも気になります。

No.1 7点 kanamori
(2010/04/27 18:50登録)
著者が社会派ミステリの大家であることは間違いないでしょうが、本書や「黄色い風土」のような謎の集団が登場する陰謀ミステリのほうが、個人的には好きです。
個人カメラマンが好奇心から追求した謎が、信州山間部の村で終決するまでのサスペンスの盛り上げ方はさすがです。とくに石鹸工場の秘密にはゾッとします。
相変わらずご都合主義な点はありますが、理屈で読むのではなく、ダイナミックな物語性を楽しむタイプの小説です。

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