| kanamoriさんの登録情報 | |
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| 平均点:5.89点 | 書評数:2432件 |
| No.292 | 8点 | からくり砂絵 都筑道夫 |
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(2010/05/11 21:33登録) なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ第3弾。 解説によると、「むっつり右門」シリーズが元ネタになっている話が数編含まれているそうですが、不可解性を追求するテンションは落ちていません。 ベストは、座敷で隠居が大きな庭石によって圧死する不可解な謎が魅力的な「小梅富士」。からくり人形が竹光で斬殺する「血しぶき人形」が準ベストでしょうか。 |
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| No.291 | 8点 | くらやみ砂絵 都筑道夫 |
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(2010/05/11 21:16登録) なめくじ長屋捕物さわぎシリーズの第2弾。 準レギュラーである岡っ引きの下駄常への助太刀の体裁を取りながら、ダミーの解決を提示する多重解決がパターン化しています。 棺桶の中の死体の入れ替りトリック「天狗起し」と、死人が泥棒に入るという謎の「地口行灯」が不可解性で双璧の秀作だと思います。後者は江戸時代の文盲があたりまえという常識を活かしたダイイングメッセージも唸りました。 |
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| No.290 | 9点 | 血みどろ砂絵 都筑道夫 |
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(2010/05/11 20:49登録) 砂絵のセンセーを中心に「なめくじ長屋」のアウトローたちが奇怪な事件を解決する捕物帳、シリーズ全11作中の第1弾。 軽妙洒脱な文体で江戸の風物を楽しめると共に、奇想天外な謎と論理のアクロバットが光る傑作パズラーでもあります。 渡し船からの人間消失トリック「よろいの渡し」、見立て連続殺人もの「本所七不思議」、密室の蔵からの人間消失「三番倉」、心中した女が一瞬にして老婆に変わる「心中不忍池」など、物のけや神隠しの存在が信じられていた時代だけに、それぞれの設定が効果的で動機にも説得力がある点が秀逸です。 |
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| No.289 | 6点 | 奥只見温泉郷殺人事件 中町信 |
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(2010/05/11 20:15登録) 一人称の物語の合間に日記の抜粋が挟まれた構成で、すぐにアッチ系のミステリとわかります。 温泉宿泊客が多数登場して人物が書き別けられていないのは一種の叙述トリック(笑)と考えても、画家の絵によるある誤認トリックは推理クイズ本レベルです。 しかし、著者の作風を知らずにトラベルミステリだと思って手を出した人は、プロット上の仕掛けに驚くかもしれません。 |
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| No.288 | 7点 | 團十郎切腹事件 戸板康二 |
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(2010/05/10 21:22登録) 歌舞伎の老俳優・中村雅楽を探偵役とした連作短編集。 当シリーズは後期の作品になると日常の謎系の軽めのミステリが主流になってしまいましたが、第1短編集の本書では、江川刑事の登場する事件ものが多く含まれていて本格度が高いと思います。 表題作以外では、「奈落殺人事件」「等々力座殺人事件」「松王丸変死事件」なんかがいいですね。 |
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| No.287 | 4点 | 古都に棲む鬼女 風見潤 |
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(2010/05/10 21:10登録) 長野県での地方歌舞伎を巡る連続殺人を描いた本格ミステリ、シリーズ第3弾。 前2作と比べて、おおっというトリックは無く、絞り込みによる犯人当てとなっています。作者は他に出雲歌舞伎を背景にしたミステリも書いていて造詣が深い様で、この作品でも頻繁に歌舞伎用語に関する説明とウンチクが出てきますが、読者層が小中学生であることを考えると、この題材はどうかなと思いました。 |
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| No.286 | 6点 | 月下の蘭 小泉喜美子 |
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(2010/05/10 20:55登録) 歌舞伎の演目をモチーフにした短編集で4編収録。 といっても物語の背景はどの作品も梨園とは無関係で、演目に詳しくない我が身にとっては元ネタとの比較もできませんが。 「月下の蘭」は華麗なタイトルとは裏腹の、洋蘭を愛する女性の復讐劇が凄まじい。女性の心情描写がほとんど無い分かえって恐ろしい。 「宵闇の彼方より」は幻想怪奇譚。山間の寂れた病院の情景描写と老いた女医の黒衣姿というのが何とも不気味。 読んでしばらくして4編とも女性の復讐が主題だということに気がついた。 |
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| No.285 | 6点 | 二人道成寺 近藤史恵 |
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(2010/05/10 20:37登録) 歌舞伎界を背景に私立探偵の今泉と大部屋女形役者・小菊が探偵役を務めるシリーズ第4弾。 ライバル関係にある二人の女形役者と事故で昏睡状態の一方の妻を絡めた恋愛ものの様相で、歌舞伎の演目とシンクロさせたプロットがなかなか秀逸。 終盤、本格ミステリ風の謎解きがありますが、今泉の存在がこの物語なかで異質でマッチしていないように思いました。 |
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| No.284 | 7点 | 妖かし蔵殺人事件 皆川博子 |
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(2010/05/10 20:21登録) 歌舞伎界を背景にした本格ミステリ。 歌舞伎とミステリは元々共通点があるので、梨園ものミステリは結構書かれてますね。ともに様式美を重んじる一方で先達をパロッたり、早変わりの一人二役やどんでん返しもあったりで。 本書は、舞台中の人間消失や消失した人物が密室の土蔵に死体で出現したりで結構派手なトリックが使われていますが、役者間のどろどろとした人間関係を描くことにも重点が置かれていてバランスがとれていると思います。 |
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| No.283 | 6点 | バード・ウォーズ 多島斗志之 |
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(2010/05/09 19:08登録) 初期の国際謀略小説。 ゴルバチョフ時代のソ連を舞台に、米国CIAによるペレストロイカ潰しの奇策を巡る謀略戦を描いています。 今回の大ボラ話のネタは、コウノトリによる細菌配布で、バカミスならぬバカ謀略ミステリと言えそうですが、KGBを始めソ連内部の抗争劇も絡んで、なかなか面白かった。物語が進展しても先が見えてこないプロットと最後のどんでん返しはいつもの通りです。 |
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| No.282 | 8点 | 砂のクロニクル 船戸与一 |
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(2010/05/09 18:31登録) クルド独立運動を舞台背景にした骨太の傑作冒険小説&壮大な抒情詩。 この時期の船戸の小説は、海外の紛争地域に日本人を投げ入れて引っ掻き回したり、緻密な現地取材に基づく歴史の証言者に設定したりがパターンで、本書はその決定版だと思います。 各章で銃撃戦の騒音が溢れ、幾多の血が流れます。単なる冒険小説としても怒涛のサスペンスに浸れますが、宗教と民族の紛争に対するメッセージ性が強いのが好みの分かれるところかもしれません。 |
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| No.281 | 6点 | 夏からの長い旅 大沢在昌 |
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(2010/05/09 17:54登録) 作者が永久初版作家と自認していた時代の作品にも、ハードボイルドの良作が結構ありますが、本書もその一冊だと思います。 元戦場カメラマンの木島がある女性と出会ったことから、何者かから家への放火などの脅迫的行為を受ける。 主人公を刑事や私立探偵とせず、活劇も控えめにしていますが、一人の女性を守るために、ごく普通の男がプロ相手に立ち向かう姿がいいですね。多少甘めのハードボイルドかもしれませんが完成度は高いと思います。 |
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| No.280 | 5点 | 透明受胎 佐野洋 |
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(2010/05/09 17:15登録) SF設定のミステリ。 処女受胎によるクローン人間、ナチス・ドイツが開発した不老長寿薬など、いくらでも面白くなるネタを使いながら、こじんまりしたいつも通りのミステリになっているのは、時代性だけでなく作者の創作姿勢なんでしょうね。ちょっともったいない作品。 |
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| No.279 | 6点 | 贋作ゲーム 山田正紀 |
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(2010/05/09 12:47登録) 犯罪をゲーム感覚で読める襲撃小説の短編集。 悪党パーカーシリーズにコンゲーム風のテイストを加味したような、アクションと頭脳戦を両方楽しめる逸品。 コンピュータ管理の列車からの絵画の強奪作戦「贋作ゲーム」、絶対に排除不可能と思われる機雷の除去作戦「スエズに死す」など、いずれも最後のオチが効いています。 |
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| No.278 | 5点 | 光媒の花 道尾秀介 |
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(2010/05/09 12:13登録) ロンド形式の連作短編集。 第1話の脇役格の登場人物が第2話の視点人物となるような形で6つの物語が語られます(トラックの運転手はちょっと苦しいですが)。テイストは「龍神の雨」風ですが、親子間の暗い関係とか昭和の清貧な家族小説を読んでいる気分になりました。 ラストで救われる話もありますが、全体的に暗いトーンの話が多いので読後感はあまりいいものではありません。 |
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| No.277 | 2点 | 神秘の扉 高木彬光 |
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(2010/05/09 00:03登録) 通俗怪奇スリラー。 一種の復讐譚ですが、同時期に「白昼の死角」とか「誘拐」などを出していながら、このような戦前の作家が書くような古臭い物語を書く事情がよくわからないですね。 |
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| No.276 | 5点 | 雪のマズルカ 芦原すなお |
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(2010/05/08 23:55登録) 女性私立探偵ものはちょっと相性が悪い。 私立探偵の夫が銀座のホステスと交通事故死し、後を継いだ里子という女性を主人公とするハードボイルド連作短編集。 あまりぱっとしない設定で、作者が書くほどの物語とは思えない。脇役で「月夜の晩に・・」のふーちゃんが出てきたのが救いかな。 |
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| No.275 | 7点 | 蒼い描点 松本清張 |
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(2010/05/08 17:27登録) 箱根・宮の下の旅館に逗留する女性作家のある秘密と周辺で発生した殺人事件を描いた本格風ミステリで、社会派的要素が希薄な作品です。 探偵役は女性編集部員と同僚男性で、事件に直接関係しない男女が好奇心から積極的に絡んでゆくプロットは「二人で探偵を」風で、筆致は重厚ではあるものの、これまでの清張作品のイメージと異なる作風といえそうです。 余談ながら、この時期のミステリのタイトル付けの流行として「空白の起点」「白昼の死角」「憎悪の化石」「影の告発」とか思わせぶりで抽象的なものが多いのは清張の影響なんでしょうか。 |
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| No.274 | 7点 | 幻の女 香納諒一 |
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(2010/05/08 16:31登録) 数年前に不倫関係にあった女性と再開した直後その女性が殺される。主人公の弁護士が彼女の生い立ちを調べると全く別人の過去が立ち現われ、謎の集団が動き出す。彼女はいったい何者だったのか? ストーリーを要約してみてあまりのベタな展開に萎えそうになりましたが、おじさん世代のハードボイルド読みにとっては結構おもしろく読めました。最後の彼女からの手紙の文面がよかったですね、余韻の残る終わり方です。 |
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| No.273 | 6点 | 金塊船消ゆ 多島斗志之 |
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(2010/05/08 15:56登録) 初期の謀略系冒険サスペンス。 戦後40年たって届いた手紙は、フィリピンの海岸で焚かれた4つの火に関するものだった。 今作は、米ソ謀略戦などの国際的スケールの物語ではなく、戦争中に沈められた金塊を探す話ですが、多島作品らしくミステリ趣向が施されていて最後はどんでん返しが待っています。 現在この手の主題で書けばもっと長大なストーリーになると思いますが、後半コンパクトにまとまってしまったのは惜しい。 |
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