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ミステリの祭典

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からくり砂絵
なめくじ長屋捕物さわぎ

作家 都筑道夫
出版日1978年09月
平均点6.75点
書評数4人

No.4 7点 レッドキング
(2021/10/28 18:40登録)
砂絵師はじめ江戸の異形非人達が探偵役のミステリ短編集第三弾。
・「花見の仇討」 仇討の二重茶番劇に本物の人斬りが起きてしまうWhoHowそしてWhomダニット。6点
・「首つり五人男」 一本の木に二度つるされた五人の屍体・・驚きのWhatダニットが見事に解明。7点
・「小梅富士」 四畳半離れ寝たきり隠居の巨大庭石による圧死事件。隠し財宝奇譚をおまけに巻き込んで・・6点。
・「血しぶき人形」 からくり人形に刺殺された質屋旦那の事件。登場人物達の「役割」解明鮮やかに。5点。
・「水幽霊」 ロウソク屋大店の娘と大工の男を襲った水びたし幽霊事件のWhyダニット。6点
・「粗忽長屋」 砂絵師探偵と宿敵同心を巡る江戸町サスペンスツイスト。3点
・「らくだの馬」 グロテスクをぎりぎりにカスる屍体冒険爆笑ミステリ。4点
現代ならばチト失笑物であろう「不思議」絵図が、江戸が舞台だと彩り鮮やかに生きて、ロジカルな解決がストンと決まる。※採点は最後2作除いた5作平均プラスおまけ1点で。

No.3 6点
(2020/08/05 04:28登録)
 なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ第三集。現行の並びに比べて発表順はやや変則。「ミステリマガジン」の「粗忽長屋」を筆頭に、 花見の仇討/らくだの馬/小梅富士/血しぶき人形/首つり五人男/水幽霊 の順で、雑誌「推理界」「別冊小説現代」「別冊週刊大衆」各誌に、昭和四十四(1969)年十二月から昭和四十七(1972)年十月にかけ掲載された。
 古典落語を推理小説化した三篇と「むっつり右門」捕物帖のパロディ二篇で、「小梅富士」ほか二篇を挟む形である。「小梅~」も前集収録の「天狗起し」と同じく従兄との問答から生まれた作品なので、本書はいわば"本歌取り"作品集。抜きん出ているのは「小梅富士」だけだが、そのせいか取り巻きの出来は『くらやみ砂絵』よりも良い。「粗忽長屋」は本来、トリを務めるべき内容から巻末に回されたのだろう。
 なお「推理界」廃刊のせいか、「血しぶき人形」の発表までには一年近くの間が空いている。『あやかし砂絵』収録作品で隔月化するまでは、その後も断続的な掲載となっている。
 ベストはやはり「小梅富士」。離れ座敷に寝ていた隠居が、部屋いっぱいもあるような庭石で圧し潰されていた事件を扱ったもので、「さあ解決してください」と提出された謎に、都筑氏は鮮やかに応えている。切れ味では「天狗起し」だが、より理に適ったこちらを採る人もいるだろう。シリーズを代表する短編の一つである。
 次に来るのは一本の松の木に五人の首くくりがぶらさがる「首つり五人男」。強烈なシチュエーションだが、元ネタとは異なりこれにも一応合理的な結末が用意されている。ただ当事者心理で弾みが付いた結果なのを、プラスマイナスどちらに取るかが問題。
 落語関連の三篇は小味ながら纏まりがある。特に素人芝居のかたき討が人ごろしにまで発展する「花見の仇討」のロジックは目を引く。殺害方法はそこまででもないが、状況の推移から自然な形で、誰が怪しいのかを特定できる。各篇いずれもユーモラスだが、この手の作品の通例として解決や結末はブラック寄りである。全体としては『くらやみ~』より多少落ちて、6.5点。

No.2 6点 ボナンザ
(2014/04/08 01:07登録)
個人的にはここまでは本格好きなら必読だと思う。

No.1 8点 kanamori
(2010/05/11 21:33登録)
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ第3弾。
解説によると、「むっつり右門」シリーズが元ネタになっている話が数編含まれているそうですが、不可解性を追求するテンションは落ちていません。
ベストは、座敷で隠居が大きな庭石によって圧死する不可解な謎が魅力的な「小梅富士」。からくり人形が竹光で斬殺する「血しぶき人形」が準ベストでしょうか。

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