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ミステリの祭典

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妖かし蔵殺人事件

作家 皆川博子
出版日1986年04月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 6点 虫暮部
(2022/12/01 12:22登録)
 手持ちのネタで手堅く書いた感じ。不可解な現象に比べてトリックはしょぼいが、それはそれで歌舞伎をリアルな商売として描いた作品世界と合致しているかも。
 興行の本番中はみんな視野狭窄に陥りがちだから、そこを狙うのは賢い。しかし公演を中断させることも辞さない、同業界人のくせに血も涙も無い計画だな……。入れ換わりが上手くいく保証は無いので、そこは賭けだね。
 特に後半、人間関係が込み入って来るので、もっと意識しながら読むべきだった。犯人のキャラクターが今一つ摑めず、真相を知っても “ふーん” と思うしかなく残念。

No.3 6点 nukkam
(2016/01/01 08:25登録)
(ネタバレなしです) 1986年発表の本書は芝居の世界で起きた事件を扱っていますので、同じ作者の「旅芝居殺人事件」(1984年)と比較するのも一興でしょう。作者の特徴である幻想性は後退していますが、本格派推理小説としての謎解きは本書の方が充実しているように思います。不可能犯罪を巡っての推理議論が謎解きを盛り上げます。人間消失トリックは一般読者にはちょっとなじみにくそうですが作品世界を活かしたものです。単なる謎解きに留まらず人間ドラマとしてもよくできていて、最後のモノローグの悲哀を含んだ余韻が何とも言えません。プロットも人間関係も大変複雑ですので登場人物リストを作成しながら読んだ方がいいと思います。

No.2 6点 蟷螂の斧
(2012/11/02 18:33登録)
過去、何代にも亘って起きている蔵からの人間消失事件という謎が、妖しく漂い、皆川ワールドの片鱗を醸し出しています。歌舞伎の舞台(大仕掛け)や小道具を使ったトリック自体は、それほどの驚きはありませんが、複雑な人間関係が解きほぐされてゆく過程は楽しめました。

No.1 7点 kanamori
(2010/05/10 20:21登録)
歌舞伎界を背景にした本格ミステリ。
歌舞伎とミステリは元々共通点があるので、梨園ものミステリは結構書かれてますね。ともに様式美を重んじる一方で先達をパロッたり、早変わりの一人二役やどんでん返しもあったりで。
本書は、舞台中の人間消失や消失した人物が密室の土蔵に死体で出現したりで結構派手なトリックが使われていますが、役者間のどろどろとした人間関係を描くことにも重点が置かれていてバランスがとれていると思います。

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