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ミステリの祭典

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透明受胎

作家 佐野洋
出版日1965年01月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 5点 クリスティ再読
(2022/02/23 11:34登録)
中学生の評者にとって、「日本ミステリで何を読むか?」の指針になったのが、中島河太郎の「日本作品ベスト30」(昭和42年まで)だった。戦後で20作挙げていて、たとえば本陣高木家不連続刺青というあたりから始まって、「異郷の帆」や「大いなる幻影」や「炎に絵を」「伯林―1888年」あたりで終わる。穏当なベストだったわけだが、これに本作が含まれていた。
当時角川文庫で出てたから、小遣いで購入...でもね、当時は本を親と共有していたから、本作を親に見つかって、叱られて没収、になりました。河太郎先生、恨むよ~~

皆さんの書評では触れてないけど、濡れ場が連続する、結構エッチな作品だからね(苦笑)。いつまでたっても加齢をみせない女性と、それにそっくりな娘は、同じ指紋を共有している...主人公は危機一髪の事態から不思議にも逃れると、総白髪で老人のような姿に、しかし、30時間寝たら元に戻った。などなどの「ありえない」現象を、SF的アイデアを挿入することで、さらっと解いてみせるような話。
SFミステリ、というよりも、「プロレス的要素ありのミステリ」というくらいの捉え方が有益だと思う。

まあ、今読んでみると、さくっと軽い艶笑SFみたいなもので、あくどくはないから、「オトナの修行」をしたんだったな、と思っておこうか(苦)

No.2 5点 人並由真
(2021/12/02 06:47登録)
(ネタバレなし)
 昭和40年4月19日。ノンフイクション・ライターで42歳の津島亮は、気が付くと病院のベッドの中にいた。室内にいた若い女性、田部佳代そして警官の説明によると、津島は佳代の運転する車に撥ねられたらしいが、警察の現場検証によるとそんな事故の痕跡はなく、かたや津島の容貌は、まるでいっきに20歳も老化したように髪が真っ白になり、皺だらけになっていた。佳代はとにもかくにも誠意を見せて対応するが、津島は見た目は20代半ばの彼女が実際には40歳だと聞かされて驚く。そして翌日、津島の顔は元の若さを取り戻していた。狐につままれたような思いの津島は、成り行きから佳代と男女の関係になっていくが、そんな彼の前にまた別の刑事が出現。佳代と津島が情事を行なっている時間に、佳代が別の場で傷害事件を起こした嫌疑がある、決め手は現場に残された佳代の指紋だ、と説明した。

 角川文庫版で読了。
 デズモンド・バグリイの『タイトロープ・マン』まんまの導入部で開幕するが、物語の興味はすぐにメインヒロイン、佳代の老けない女性の謎、そしてふたたび若返った津島の謎、さらにはアリバイが確実にあるはずなのに、別の場の犯罪現場に残された当人と同じ指紋の謎、などの方へとどんどん移行してゆく。

 話はハイテンポで、たぶんこれまでに読んだ作者の著作の中でも最高クラスのリーダビリティだとは思うが、SFミステリとしてはいろいろな意味で仕上げが雑。
 本作の題名にからむ、女性の特異な受胎に関する着想だけは、当時としてはちょっと新鮮だったかもしれないが、SF=良い意味でのホラ話にならず、かなり空想的な艶笑譚になってしまった感じ。あと<老けて、そして若返った津島の謎>と<年をとっても、なぜか老けない佳代の謎>、この二つの真相の相関があまりにも……(後略)。

 作者なりにマジメにエスエフを書こうとしてるのか、アホで気宇雄大な冗談ストーリーを綴ろうとしてるのか、最後の方は判断に困った。もしかしたら、作者自身も、よくわかってなかったのかも知れない?

 最後に、誠に恐縮ながら、先行のkanamoriさんのレビューでは、ネタバレ的なキーワードが2つも明かされてしまっているので、本作を未読でこれから読む可能性のある方は、注意された方がよいです。

No.1 5点 kanamori
(2010/05/09 17:15登録)
SF設定のミステリ。
処女受胎によるクローン人間、ナチス・ドイツが開発した不老長寿薬など、いくらでも面白くなるネタを使いながら、こじんまりしたいつも通りのミステリになっているのは、時代性だけでなく作者の創作姿勢なんでしょうね。ちょっともったいない作品。

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