home

ミステリの祭典

login
文生さんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:510件

プロフィール| 書評

No.230 6点 化身
宮ノ川顕
(2021/09/22 12:24登録)
全3話収録の中編集。

都会の喧騒の逃れて南の島を訪れた男が、密林で四方を崖に囲まれた池に落ちる表題作は抜群の面白さです。奇想に次ぐ奇想でぐいぐいと引き込まれていきました。さすがは日本ホラー小説大賞で大賞を受賞作しただけのことはあります。ただ、プロセスの面白さに対して、オチが少々凡庸なのが残念です。

他の2篇は表題作に比べると凡作に思えます。表題作8点、他2篇が5点で平均6点の評価です。


No.229 6点 見知らぬ人
エリー・グリフィス
(2021/09/18 19:21登録)
本作は本格というより、サスペンスに近い作品です。
したがって、「この犯人は絶対に見抜けない!」という帯の煽り文に釣られて読むと失望することなります。
犯人は意外といえば意外ですが、真相を隠蔽するような仕掛けやあっと驚くどんでん返しの要素は皆無です。
その代わり、古いゴシックホラー小説と現代の事件がリンクし、ヒロインの日記に犯人のものらしき書き込みが次々と見つかっていくといったサスペンス展開はよくできています。
MWA賞最優秀長編賞受賞もその辺が評価されてのことでしょう。
ただ、物語のスケール感に対していささか話が長いのが難といえば難。


No.228 7点 Butterfly World 最後の六日間
岡崎琢磨
(2021/09/12 09:09登録)
ハッカーからの攻撃を受けた結果、仮想空間内に存在する館及びその周辺エリアが封鎖(現実世界との行き来は可能)されたうえに連続殺人が起きるというクローズドサークル&特殊設定ミステリー。

まず、アバターが殺されるというとびきりの不可能状況が魅力的でぐいぐい引き込まれまれていきますし、そのトリックも盲点を突くもので秀逸。また、サブの仕掛けや犯人特定のロジックなども良く考えられています。

ただ、一連の事件がなぜ起きたのかというホワイダニットの部分に関しては、偶然に偶然が重なった結果であり、少々ご都合主義に感じました。


No.227 5点 透明な螺旋
東野圭吾
(2021/09/09 14:09登録)
今回は湯川自身が事件の関係者として警察にマークされ、その点も含めて事件の裏の人間関係が結構複雑なのが読みどころ。それが徐々に明らかになっていく展開には一応の面白さはあります。
しかし、警察の捜査が話の大半を占め、トリックや華麗な推理といった要素は皆無なので本格というより、警察小説を読んでいるような感じです。いつもの湯川シリーズを期待していた人は間違いなくガッカリするでしょう。


No.226 8点 花束は毒
織守きょうや
(2021/09/09 13:38登録)
「結婚をやめろ」と書かれた脅迫状に怯える元医学生の真壁。
後輩の木瀬は警察か興信所に相談することをすすめるが、なぜか彼は逡巡する。
見かねた木瀬は中学時代に従兄の窮地を救ってもらったことのある女探偵に独断で調査の依頼をする。
すると、思いがけない事実が明らかになり......。

脅迫者は誰なのかという謎で話をずっと引っ張っていき、犯人の目星がついたところで予想外の落とし穴に付き落とされます。
いやー、これは恐ろしい。
伏線がほとんどないので本格としては評価できませんが、どんでん返しが好きな人にはおすすめです。


No.225 6点 六人の嘘つきな大学生
浅倉秋成
(2021/09/02 19:40登録)
最終面接に残った学生たち6名の中で誰を採用するのが相応しいかを自分たちで決めろといわれ、しかも、彼らを貶める文書が出現したことで腹の探り合いが始まるという展開は非常にサスペンスフルで引き込まれました。なんといっても、就活の面接をミステリーにするという着想が斬新です。

ただ、面接の方法があまりにも説得力に欠けています。てっきり学生たちに採用を決めさせるのは表向きの話で、なにかウラがあるのかと思っていたら、なにもなかったのには唖然としました。誰を採用するかを学生に選ばせることの是非以前に、みな自分の内定を勝ち取るために面接に来ているのだから、自分以外の誰が相応しいか話し合えといわれても建設的な議論になるはずがありません(作中では意外に真剣に議論し合っていましたが)。そのくらいのことはたとえ人事担当者が無能であってもわかりそうなものですが。

また、登場人物の印象をミスリードさせるためにやたら激昂させたり、うろたえさせたりしたのも真相が明らかになってから振り返ると不自然に感じました。発想としてはなかなか面白いと思いますし、実際かなり楽しめたことも確かです。それだけに要所要所が説得力に欠いているのが惜しまれます。


No.224 5点 連続自殺事件
ジョン・ディクスン・カー
(2021/08/31 21:56登録)
SF作家のアシモフが実現不可能なトリックだと指摘したことで有名な作品です。しかし、カーの勘違いがあったのは確かですが、必ずしも実現しえないトリックだとは個人的には思っていません。ただ、それとは別にトリック+偶然で不可能状況が成立してしまう(完全な偶然ならいいのですが作為的なトリックと偶然が混じった結果の不可能状況はご都合主義に感じてしまう)作品はあまり好きではないので点数は低めです。

なお、もう一つ別の密室トリックもでてきますが、こちらは小粒で全体の評価を押し上げるほどではありません。


No.223 5点 帽子収集狂事件
ジョン・ディクスン・カー
(2021/08/31 21:18登録)
エドガー・アラン・ポーの未発表原稿の話が出たときはワクワクしましたし、帽子収集狂の存在はミステリアスで、霧のロンドン塔での殺人もそこはかとない不気味さがあっていい感じです。しかし、それらが一体となってどんどん面白くなっていくのを期待していたのに、それぞれの要素が大して交わることもなく、えらく地味なところに着地したのにはガッカリしました。

メインの事件のトリックもそれなりによくできてはいるものの、乱歩のいう「密室以上の不可能トリック」と呼べるようなものではありません。魅力的な要素は多々あるものの、全体としては凡作の域を出ない作品です。


No.222 6点 ジャッカルの日
フレデリック・フォーサイス
(2021/08/30 12:49登録)
まるで劇画に登場するような凄腕の殺し屋・ジャッカルが魅力的で読んでいてワクワクしたのですが、史実を舞台にしたためにあえなく暗殺失敗の憂き目にあってしまう点にアンバランスさを感じてしまいました。

傑作であることに間違いはないものの、個人的にはもやもやとした読後感を拭えません。できれば疑似ドキュメントではなく、完全フィクションでの活躍を見たかったところです。


No.221 6点 真珠郎
横溝正史
(2021/08/30 11:45登録)
顔のない死体ものの新機軸に挑戦した意欲作ですが、いまとなってはさほど驚くような仕掛けではありません。それでもよく考えられていることには違いありませんし、著者ならではのおどろおどろしい物語は読み応えありです。やはり、戦前の横溝正史を代表する作品というだけのことはあります。


No.220 8点 黒牢城
米澤穂信
(2021/08/29 18:50登録)
織田信長を裏切った荒木村重が立て籠る有岡城で次々起きる怪事件の謎を、幽閉中の黒田官兵衛が解き明かす連作ミステリー。

いわば戦国版日常の謎というべき作品ですが、ここで用いられている仕掛けは小粒なものばかりなので、もし現代を舞台にしたミステリーでそれらのトリックを採用していたとしたら凡作に終わっていたでしょう。しかし、そこに歴史的背景を重ね、なぜそのような謎が生じたのかを追求していくことで物語としての深みが加わり、非常に面白い作品に仕上がっています。

歴史小説としても良くできており、個人的には米澤穂信の最高傑作に推したいほどです。


No.219 7点 君が護りたい人は
石持浅海
(2021/08/29 11:03登録)
物語の語り手が、あらかじめ犯人からキャンプ中に人を殺すことを打ち明けられているという設定が秀逸。そのため、読者は語り手と一緒にこれから起こるであろう殺人の手段を推理することになるのですが、これがなかなか新鮮でした。

驚くようなトリックなどはないものの、シチュエーションの面白さとさまざまな仕掛け、テンポの良さでなどでかなり楽しめる作品に仕上がっています。


No.218 7点 i(アイ)―鏡に消えた殺人者
今邑彩
(2021/08/27 21:46登録)
女性の分身的存在をテーマにして怪奇ムードを盛り上げる手管はヘレン・マクロイの『暗い鏡の中に』を彷彿とさせますが、最後まで腰砕けになることなく着地を決めている分、本作の方が完成度が高いように思います。
また、密室などのトリックは古典的なものが多くて新味は感じられないものの、事件の異様さを際立たせるための小道具だと考えれば十分な出来だといえます。謎解きとホラー要素のバランスのとれた怪奇ミステリーの佳品です。


No.217 5点 壺中の天国
倉知淳
(2021/08/27 03:19登録)
何万人といる街の中から一人の犯人を特定するという趣向はユニークではあるのものの、実際のところあまり成功しているとは思えません。思わず唸らされるようなロジックがあるわけでもなく、何より犯人を指摘するシーンが全く盛り上がらないのが大きなマイナスです。いままで全く登場していない人物が犯人だといわれてもカタルシスに欠けます。

とはいえ、新しいことに果敢に挑む姿勢は嫌いではなく、そのチャレンジ精神を買って5点といったところでしょうか。


No.216 5点 四つの兇器
ジョン・ディクスン・カー
(2021/08/27 02:42登録)
1932年の『蝋人形館の殺人』以来、5年ぶりのバンコランものですが、なぜあえてバンコランなのか意図が図りかねる作品です。かつてのバンコランものにあった悪魔的な雰囲気も皆無ですし、これならフェル博士でもよかったのではないでしょうか。

また、四つの兇器を巡る謎はそれなりに興味をそそられたものの、ミステリーとして驚くような仕掛けがあるわけでもなく、終わってみれば可もなく不可もなくといったところです。


No.215 6点 作家の人たち
倉知淳
(2021/08/27 02:19登録)
ミステリー要素は皆無ですが、本好きの人間に刺さるブラックなコメディはそれなりに楽しく読むことができます。特に、新しい才能を発掘しようと原稿の持ち込み企画を開催したところ、誰ひとり原稿を持参しない『持ち込み歓迎』が秀逸。


No.214 5点 林の中の家
仁木悦子
(2021/08/25 21:09登録)
デビュー作である『猫は知っていた』よりこなれた感じで読みやすく、伏線の張り方にも進歩の跡がみられるものの、それ以上のプラスアルファの面白さが感じられず、全体としては凡作の域を出ていません。


No.213 4点 赤い館の秘密
A・A・ミルン
(2021/08/25 20:54登録)
ミステリー黄金期の幕開けを告げる作品の一つですが、今読むとさすがに牧歌的すぎていささか冗長です。開幕早々事件が起きるのはよいのですが、それ以降は素人探偵が同じような議論を繰り返すだけなので飽きてきます。事件は最初の1件だけなのでサスペンスは盛り上がりませんし、肝心のトリックもいまとなってはありきたりです。ウリであるはずのユーモアもいまひとつピンときませんて゜した。結局、古き良き時代の探偵小説の味わいを楽しむだけの作品だといえます。


No.212 5点 龍は眠る
宮部みゆき
(2021/08/25 08:30登録)
ストーリー自体はそれなりに読ませるものの、サイキック描写が凄いわけでも、謎解きで唸らせるわけでもないのでSFとしてもミステリーとしても中途半端に感じました。超能力者の悲哀が主題なのでしょうが、個人的に感情移入できる人物がいなかったのも痛いところ。


No.211 6点 名探偵の掟
東野圭吾
(2021/08/25 05:28登録)
本格ミステリあるあるネタを集めたパロディ作品で、過剰なまでのお約束展開にうんざりする主人公の姿は笑えます。ただ、話を重ねるごとにマンネリ化を感じ、終盤になると飽きがくるのが難。

510中の書評を表示しています 281 - 300