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ミステリの祭典

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文生さんの登録情報
平均点:5.86点 書評数:500件

プロフィール| 書評

No.220 8点 黒牢城
米澤穂信
(2021/08/29 18:50登録)
織田信長を裏切った荒木村重が立て籠る有岡城で次々起きる怪事件の謎を、幽閉中の黒田官兵衛が解き明かす連作ミステリー。

いわば戦国版日常の謎というべき作品ですが、ここで用いられている仕掛けは小粒なものばかりなので、もし現代を舞台にしたミステリーでそれらのトリックを採用していたとしたら凡作に終わっていたでしょう。しかし、そこに歴史的背景を重ね、なぜそのような謎が生じたのかを追求していくことで物語としての深みが加わり、非常に面白い作品に仕上がっています。

歴史小説としても良くできており、個人的には米澤穂信の最高傑作に推したいほどです。


No.219 7点 君が護りたい人は
石持浅海
(2021/08/29 11:03登録)
物語の語り手が、あらかじめ犯人からキャンプ中に人を殺すことを打ち明けられているという設定が秀逸。そのため、読者は語り手と一緒にこれから起こるであろう殺人の手段を推理することになるのですが、これがなかなか新鮮でした。

驚くようなトリックなどはないものの、シチュエーションの面白さとさまざまな仕掛け、テンポの良さでなどでかなり楽しめる作品に仕上がっています。


No.218 7点 i(アイ)―鏡に消えた殺人者
今邑彩
(2021/08/27 21:46登録)
女性の分身的存在をテーマにして怪奇ムードを盛り上げる手管はヘレン・マクロイの『暗い鏡の中に』を彷彿とさせますが、最後まで腰砕けになることなく着地を決めている分、本作の方が完成度が高いように思います。
また、密室などのトリックは古典的なものが多くて新味は感じられないものの、事件の異様さを際立たせるための小道具だと考えれば十分な出来だといえます。謎解きとホラー要素のバランスのとれた怪奇ミステリーの佳品です。


No.217 5点 壺中の天国
倉知淳
(2021/08/27 03:19登録)
何万人といる街の中から一人の犯人を特定するという趣向はユニークではあるのものの、実際のところあまり成功しているとは思えません。思わず唸らされるようなロジックがあるわけでもなく、何より犯人を指摘するシーンが全く盛り上がらないのが大きなマイナスです。いままで全く登場していない人物が犯人だといわれてもカタルシスに欠けます。

とはいえ、新しいことに果敢に挑む姿勢は嫌いではなく、そのチャレンジ精神を買って5点といったところでしょうか。


No.216 5点 四つの兇器
ジョン・ディクスン・カー
(2021/08/27 02:42登録)
1932年の『蝋人形館の殺人』以来、5年ぶりのバンコランものですが、なぜあえてバンコランなのか意図が図りかねる作品です。かつてのバンコランものにあった悪魔的な雰囲気も皆無ですし、これならフェル博士でもよかったのではないでしょうか。

また、四つの兇器を巡る謎はそれなりに興味をそそられたものの、ミステリーとして驚くような仕掛けがあるわけでもなく、終わってみれば可もなく不可もなくといったところです。


No.215 6点 作家の人たち
倉知淳
(2021/08/27 02:19登録)
ミステリー要素は皆無ですが、本好きの人間に刺さるブラックなコメディはそれなりに楽しく読むことができます。特に、新しい才能を発掘しようと原稿の持ち込み企画を開催したところ、誰ひとり原稿を持参しない『持ち込み歓迎』が秀逸。


No.214 5点 林の中の家
仁木悦子
(2021/08/25 21:09登録)
デビュー作である『猫は知っていた』よりこなれた感じで読みやすく、伏線の張り方にも進歩の跡がみられるものの、それ以上のプラスアルファの面白さが感じられず、全体としては凡作の域を出ていません。


No.213 4点 赤い館の秘密
A・A・ミルン
(2021/08/25 20:54登録)
ミステリー黄金期の幕開けを告げる作品の一つですが、今読むとさすがに牧歌的すぎていささか冗長です。開幕早々事件が起きるのはよいのですが、それ以降は素人探偵が同じような議論を繰り返すだけなので飽きてきます。事件は最初の1件だけなのでサスペンスは盛り上がりませんし、肝心のトリックもいまとなってはありきたりです。ウリであるはずのユーモアもいまひとつピンときませんて゜した。結局、古き良き時代の探偵小説の味わいを楽しむだけの作品だといえます。


No.212 5点 龍は眠る
宮部みゆき
(2021/08/25 08:30登録)
ストーリー自体はそれなりに読ませるものの、サイキック描写が凄いわけでも、謎解きで唸らせるわけでもないのでSFとしてもミステリーとしても中途半端に感じました。超能力者の悲哀が主題なのでしょうが、個人的に感情移入できる人物がいなかったのも痛いところ。


No.211 6点 名探偵の掟
東野圭吾
(2021/08/25 05:28登録)
本格ミステリあるあるネタを集めたパロディ作品で、過剰なまでのお約束展開にうんざりする主人公の姿は笑えます。ただ、話を重ねるごとにマンネリ化を感じ、終盤になると飽きがくるのが難。


No.210 5点 蜃気楼・13の殺人
山田正紀
(2021/08/25 05:10登録)
村おこしのマラソン大会で13人が忽然と消えたり、そのうちの一人が大木の枝に串刺しになったりと事件の謎自体はド派手で魅力的です。しかし、それに対してトリックがパッとしないのはいつもの山田ミステリー。その分、ホワイダニットに力を入れているのもいつものことですが、今一つ鮮やかさに欠ける印象です。つまらなくはないものの、全体としては竜頭蛇尾を絵に描いたような作品になっています。


No.209 9点 神狩り
山田正紀
(2021/08/24 18:14登録)
山田正紀が24歳の時に発表したデビュー作。
タイトル通りの内容ですが、特にスペクタルな展開があるわれでもなく、神自体も全く姿を現しません。それなのに、神の文字を解読しようとするエピソードだけで、これだけ面白い話を創り上げることができる事実に驚かされます。数ある著者の傑作群の中でも五指に入る名作です。


No.208 5点 甲賀忍法帖
山田風太郎
(2021/08/24 13:31登録)
忍法帖といえばこれ!というべき名作ではあるものの、個人的にはイマイチ乗れない作品でした。それぞれ個性的な忍法を使うのは良いのですが、勝負は後だしジャンケンの要素が強く、相手の手の内を知っていれば勝ち、初見だとなすすべなくやられてしまうというパターンが多い点にあっけなさを感じました。忍者同士の戦いはそんなものといわれればそれまでですが、自分の好みとしては、冒頭の風待将監VS夜叉丸のような伯仲の対決をもっと見たかったところです。


No.207 5点 魔界転生
山田風太郎
(2021/08/24 13:11登録)
有名な作品ですが、個人的にはいまひとつでした。名だたる剣豪が蘇って柳生十兵衛と死闘を繰り広げるという展開はわくわくしたものの、その対決がどうにも盛り上がらないのです。

ほとんどの戦いが相手の弱点や隙をついての瞬殺という展開なので不完全燃焼感が半端ありません。特に、映画でラスボスだった天草四郎と柳生十兵衛の対決はがっかりにもほどがあります。対決にいたるまでのワクワク感で5点といったところでしょうか。


No.206 3点 くの一忍法帖
山田風太郎
(2021/08/24 12:52登録)
忍法帖シリーズの初期作品でくの一のエロティックな忍法が見せ場となっているわけですが、エロいとか奇想天外とかいう以前にどうにも間抜けっぽく感じてしまうのがつらいところです。特に、忍法天女貝のシーンは読んでいてドン引きしてしまいました。


No.205 6点 僕が死んだあの森
ピエール・ルメートル
(2021/08/24 12:29登録)
主人公が12歳のときに近所に住む男の子を突き飛ばしたら打ちどころが悪くて死んでしまったことから始まる倒叙ものですが、手の込んだ隠蔽工作をするわけでも、刑事や探偵との手に汗握る駆け引きがあるわけでもありません。主人公の心理を丹念に追っていくだけの普通小説に近い作品で、著者得意のエログロ描写も皆無です。

ミステリーらしさといえば、最後にちょっとしたサプライズがあることぐらい。それでも飽きずに読むことができたのは作品のクオリティがそれだけ高いということでしょう。自分の好みからは外れているものの、なかなかなの佳品だといえます。


No.204 5点 三毛猫ホームズの幽霊クラブ
赤川次郎
(2021/08/22 21:39登録)
シリーズの第11弾で、片山刑事以下お馴染みの一行がドイツの古城ホテルに泊まって事件に巻き込まれる話です。

ユーモア小説としては一定の面白さをキープしているものの、シリーズもこの辺りになると本格ミステリとしての魅力はほぼ皆無です。暇つぶしとしてなら楽しめないこともないといったところでしょうか。


No.203 6点 三毛猫ホームズの追跡
赤川次郎
(2021/08/22 21:11登録)
三毛猫ホームズシリーズの第2弾。
この回から片山兄妹やホームズの他にコミックリリーフの石津刑事が加わり、軽妙さに拍車がかかります。
ミステリーとしてもそれなりに仕掛けが用意されており、まだまだ楽しめるレベルですが、前作に比べるとかなり小粒になってしまったのは否めないところです。


No.202 6点 スペース
加納朋子
(2021/08/22 17:06登録)
駒子シリーズの完結編。
おなじみの登場人物の魅力によって楽しく読めたものの、ミステリー色はかなり薄くなっています。
謎解きそのものより、第三者から見た駒子のイメージが最大のサプライズでした。


No.201 8点 むかしむかしあるところに、死体がありました。
青柳碧人
(2021/08/22 16:15登録)
日本のおとぎ話を題材としたオムニバス形式の短編集です。作品によって出来不出来はありますが、おとぎ話とミステリーとの相性の良さに加えて発想の奇抜さが忘れ難い読後感をもたらしてくれます。

特に、どんでん返しがきれいに決まる『つるの倒叙がえし』と、元ネタの設定を活かして優れたホワイダニットものに仕上げた『絶海の鬼ヶ島』が秀逸。

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