むかしむかしあるところに、死体がありました。 昔話ミステリ |
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作家 | 青柳碧人 |
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出版日 | 2019年04月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 7人 |
No.7 | 6点 | E-BANKER | |
(2025/01/26 13:35登録) 作者の「洋の東西昔ばなしパロディシリーズ」(と勝手に名付けてみました)の第一弾。 本作の好評を受けて、次作以降の発表、シリーズ化につながったものと推察します。本当? 単行本は2019年の発表。 ①「一寸法師の不在証明」=これは目の付け所が見事。「一寸」しかない男の不在証明なんてできるのか?と思ってましたが、そうきたか・・・。犯行の手口はかなり複雑で強引。そこまでの計画を短時間で思いつくとは、一寸法師、おぬし、やるな! ②「花咲か死者伝言」=これもなかなかのトリッキーぶり。真犯人についても「おぬし、ワルよのおー」とでも言いたくなる。テーマであろう“ダイイング・メッセージ”については、やや中途半端な出来かな。 ③「つるの倒叙がえし」=なるほど。これは評価が高いのも頷ける一編。終章を読むと、殆どの読者は「えっ!?」となるのではないか。それでもって、リドルストーリーをも思わせる構成。こりゃ、いっぽん取られたな・・・ ④「密室竜宮城」=まさか、この年になって、竜宮城内の見取り図を知ることになるとは・・・(二階建だったのね)。まあ「ヒラメ」の件は捨て筋感満載だったけれど、真相はなあー。「トトキ貝」の意味に気づけば分かるかもしれんが、まあ無理だよね。それでもってラストには③の設定までが生きてくるなんて。 ⑤「絶海の鬼ケ島」=確かに。これは「そして誰もいなくなった」のパロディになってるねぇ。よくもまあ、これは考え付いたな。これを思いついたときの作者のニヤケ顔が思い浮かぶようだ。ただまあ、冷静にみれば、めちゃめちゃ強引なプロットではある。(ところで、「鬼」を一頭、二頭と数えるのと、一匹、二匹と数えるのが混在している・・・誤植?) 以上5編。 これはもう、アイデアの勝利だろう。 当然強引なものもあるにはあるけれど、原作の設定や制限を生かそうとすれば、ある程度強引になるのはやむなしだろう。 ゼロから物語をひねり出すよりは、下敷きとなる物語からアイデアを膨らませるほうが楽といえば楽なのかも・・・ (それに誰でも知ってるむかしばなしだからね。そういう利点もありそう) アリバイ、ダイイング・メッセージ、倒叙、密室、そしてCCか・・・ ミステリーの「あるある」をうまく当てはめたものだね。 これはこれで「あり」だろう。 ただ、読了後の満足感は今ひとつではあったな。(個人的ベストは、やっぱり③かな。) |
No.6 | 5点 | 三枝 | |
(2024/03/29 17:55登録) 昔話の二次創作としてはおもしろいのですが、ミステリーとしてはやや難ありです。 『一寸法師の不在証明』密室トリックがやたらと手順が多く、鮮やかさに欠けます。 『花咲か死者伝言』個人的ワースト。おじいさんのある動作が不自然極まりなく、犯人にいたるための手がかりがかなり目立っています。あまりにわかりやすいので犯人を読ませたうえでダイイングメッセージを楽しんでという趣向かと思えば、あの答えでは…。 『つるの倒叙がえし』鶴を助けた男が奥の間に隠し事をしているという、鶴と男で隠しごとの逆転が起きているアイディアはおもしろかったです。ただラストのオチは強引としか思えません。さすがに名前をあれにはしないでしょう 『密室竜宮城』伏線の張り方は見事でしたが、密室トリックは読者が推理するの無理ではないでしょうか。 『絶海の鬼ヶ島』鬼13頭きちんと識別して読めた読者がどのぐらいいるのか疑問です。トリックはおもしろかったですが、登場人物を把握しきれなくして騙している感が否めません。 |
No.5 | 4点 | いいちこ | |
(2023/09/24 09:00登録) 本作のコンセプトを着想した発想力・構成力、論理性・整合性等は、それなりに評価できるのだが、緻密である反面、冗長という印象が拭えないうえ、ここまで改編してしまうなら、著名な昔話を題材にとった意味がほとんど感じられない。 また、重要な設定の後出しが散見される点で、読者の納得感が得られにくい。 発想の奇抜さは買うものの、それが読み物としての面白さにつながっておらず、4点の下位 |
No.4 | 8点 | 文生 | |
(2021/08/22 16:15登録) 日本のおとぎ話を題材としたオムニバス形式の短編集です。作品によって出来不出来はありますが、おとぎ話とミステリーとの相性の良さに加えて発想の奇抜さが忘れ難い読後感をもたらしてくれます。 特に、どんでん返しがきれいに決まる『つるの倒叙がえし』と、元ネタの設定を活かして優れたホワイダニットものに仕上げた『絶海の鬼ヶ島』が秀逸。 |
No.3 | 7点 | まさむね | |
(2020/02/27 23:10登録) 一寸法師、花咲か爺さん、鶴の恩返し、浦島太郎、桃太郎と、皆様ご存じの昔話をモチーフにした短編集。結構売れているようですね。昔話の舞台設定と本格要素とが、ほどよく融合していて、楽しく読ませていただきました。 昔話の設定を最も忠実に再現(?)しているのが、浦島太郎をモチーフにした「密室龍宮城」か。「つるの倒叙がえし」の仕掛けも嫌いじゃない(蟷螂の斧さんの書評のとおり、私もタイトルには疑問を感じるけど)。 昔話の舞台設定と本格要素との融合という観点では、「そして誰も~」を彷彿とさせる最終話「絶海の鬼ケ島」がベストか。それまでの短編における「アイテム」を登場させたりする辺りも心憎い。楽しかったな。 |
No.2 | 6点 | 蟷螂の斧 | |
(2019/09/19 15:36登録) 「一寸法師の不在証明」 5点 アリバイ崩しだが、あまり感心しない落ち。トリックを成功させるために考え付いた設定といって良いでしょう。 「花咲か死者伝言」 5点 ダイイングメッセージを中心に物語は進むが、コロンボ張りの非常に細かいところから犯人が判明。うーん細かすぎる(笑)。 「つるの倒叙がえし」 6点 「○○メーター」では一番人気。構成が面白いということらしい。題名の倒叙の意味(作者の意図)がよくわからん。倒叙形式になっているとは思えないので「意趣がえし」がベター。そうなると見え見えか?。 「密室龍宮城」 7点 原作・浦島太郎の落ちを有効に使ったトリック。昔話のパロディとしてはNo.1でしょう。 「絶海の鬼ヶ島」 8点 「そして誰も・・・」のパロディ。動機がGood(感心感心)。 |
No.1 | 6点 | パメル | |
(2019/09/13 02:40登録) タイトルや表紙のイラストから見れば分かるように、昔話をミステリに書き換えた挑戦作で、何とも緻密に作られている。 「一寸法師」、「花咲か爺さん」、「鶴の恩返し」、「浦島太郎」、「桃太郎」と誰もが知っている昔話を、少しだけ捻りを加えただけの軽いミステリに終わらせるのではなく、本格的に仕上げているから驚く。「一寸法師の不在証明」は、殺人が行われた時に鬼の腹の中にいた一寸法師のアリバイを崩す話だし、「花咲か死者伝言」は、殺された花咲か爺さんのダイイングメッセージを犬が推理する話、「つるの倒叙がえし」は、鶴が巻き込まれた殺人事件を犯人側から書いていく倒叙スタイルで、「密室竜宮城」では浦島太郎が竜宮城で起きた密室殺人を解き明かし、「絶海の鬼ケ島」では桃太郎伝説とクリスティの「そして誰もいなくなった」を融合させているからたまらない。 昔話を徹底的に戯画化していてブラックユーモアが効いている。また、昔話ならではの小道具がトリックに使われたり、巧緻な仕掛けに意表をつく展開と楽しい作品が多い。その中でも、犯人と動機の解明が鍵となるフーダニット&ホワイダニットとして面白い「花咲か死者伝言」がベスト。 |