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ミステリの祭典

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神狩り
神シリーズ

作家 山田正紀
出版日1975年01月
平均点7.50点
書評数4人

No.4 6点 メルカトル
(2024/06/21 22:22登録)
情報工学の天才、島津圭助は花崗岩石室に刻まれた謎の《古代文字》を調査中に落盤事故にあう。古代文字の解明に没頭した圭助は、それが人間には理解不能な構造を持つことをつきとめた。この言語を操るもの──それは神なのか。では、その意志とは? やがて、人間の営為を覆う神の悪意に気づいた圭助は、人類の未来をかけた壮大な戦いの渦にまきこまれてゆくのだった。
Amazon内容紹介より。

実に繊細な筆致で描かれている、実質のデビュー作。
私は神など信じません、何故なら世の中理不尽な事が多すぎるから。何でこうなる?って事ばっかり見てきたから。しかし、進化論には疑問に思う部分があるし、本書で描かれる≪神≫が人間に敵対する存在であるならば逆に少しばかりリアリティを感じます。
これがSFとはあまり思えません。作者あとがきでもそれは書かれていますね。素材自体はSFそのものですが、例えば誰々が「かれ」と闘っているはずなのに、その事後報告だけで生々しいバトルシーンは描写されていません。そこを逃げと捉える訳では決してありませんが、やはり一握りの物足りなさを覚えます。

まあでも面白いですよ。魅力的な人物が目白押しだし、ワンアイディアからここまで話を広げる手腕は認めるべきだと思います。最初から続編を意識して描かれているかどうかは判断出来ませんが、実際『2』が出ている訳で、それを読んでから本当の評価を下すのが正しいのかも知れません。

No.3 9点 文生
(2021/08/24 18:14登録)
山田正紀が24歳の時に発表したデビュー作。
タイトル通りの内容ですが、特にスペクタルな展開があるわれでもなく、神自体も全く姿を現しません。それなのに、神の文字を解読しようとするエピソードだけで、これだけ面白い話を創り上げることができる事実に驚かされます。数ある著者の傑作群の中でも五指に入る名作です。

No.2 8点 虫暮部
(2019/12/05 12:50登録)
 いや~、スッキリした小説である。余計な重複が無いし、多面性に欠ける一本気キャラばかりだし。かと言って貧弱なわけではなく、頑健な骨格に引き締まった筋肉を具えたアスリートの力強さだ。
 一方で、“説明出来ないことは説明出来ないのだ”と言う説明で押し切ろうとしているのは、若書きと言うかまだ手持ちの駒が少なかったんだなぁと感じる。それを形にしようと徐々に饒舌になったのかもしれない。
 まぁ読書に関して一神教である必要など無いのだ。熱いデビュー作と厚い近作と、面白さの質は変わったが山田正紀はどちらも面白い。

No.1 7点 クリスティ再読
(2016/09/12 23:20登録)
山田正紀の出世作にして日本SFでは名作として知られる作品である。昔から好きな作品なんだが、今回これを書こうと思ったのは、評者も本作をなぜか「ハードボイルドっぽい」という印象をもち、どうもそう思う人が多いみたいだ...というあたりがずっと気になっていたからなんだよね。まあ直接には「背徳のメス」という社会派兼ハードボイルドの作品について「主人公のエゴイズム」というあたりをキーにできないか、とも思いついたこともある。
まあ本作の主人公、島津もあまり褒められた人物じゃないな。尊大・傲慢といったあたりはカワイイものだが、情報工学と言語学がクロスするあたりの天才科学者という設定で、「古代文字」の研究の行きがかりから「神を狩る」プロジェクトに巻き込まれ、周囲の人々が次々に犠牲になることを通じて、ドロップアウトしつつほぼ妄執に近い形で神と対決しようとする...学生運動をハメてまでしてコンピューターを使おうとするあたり、「俺的正義」な(それに少し今で言えばセカイ系な)クサさがある。まあここらへんのキャラ造形が結構斬新で、ハードボイルドっぽい印象が出ているわけだ(ちなみに続編の「神狩り2」だと老残の身をさらすことになる...)
実際読み直して、どうもネタはチョムスキーあたりだけみたいだ、と気が付いて、ちょっとびっくりしている。この人のネタの消化力は凄まじいものがあるのは重々承知だが、チョムスキーをネタにここまでのフィクションを書けるというのは本当にすごい構想力である。

であと本作って、滑り出しは国際謀略モノみたいに始まって、キャラ造形はハードボイルドっぽくて、オカルトネタの絡んだSF、というホィートリー⇒ブラックバーンみたいな流れのジャンルミックス小説なんだよね...ここらちょっと不利に働いたのかもしれないな、と今にしてはちょっと思うところもあるな。
最後に本サイトだとネタばれせずに面白みが分かって貰えると思うんだが、本作と「ホッグ連続殺人」を並べてみるといいと思うよ。どうかしら?

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