まさむねさんの登録情報 | |
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平均点:5.86点 | 書評数:1195件 |
No.1055 | 5点 | いけないII 道尾秀介 |
(2023/02/04 19:13登録) 連作短編。「その写真を見たとき、物語は一変する」という謳い文句で、各短編終了後に写真が示される構成。直ぐには気付かなくても、その後の短編を読み進めていくうちに、真相に気付けるような配慮はなされています。 作品の趣旨はよくわかるし、嫌いではないのだけれども、正直、写真を見せられた時の驚きが希薄というか、個人的にはカタルシスが得られなかったです…。私の読み方が悪いのかもしれませんが…。 好き嫌いの評価は分かれるような気がします。あまりにも理不尽な哀しみを背負う方が多いのも、個人的には辛かった。 |
No.1054 | 7点 | 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件 白井智之 |
(2023/01/29 20:52登録) 作者のこれまでの特徴であるエログロは、ほぼ封印(でも、決して「嘔吐物」などとは表記せず、「げぼ」で通すところは作者の拘り?でしょうか)。封印しながらのこの展開&結末は、素直に素晴らしいと思います。カルト宗教を舞台とした効果が絶大、というか、だからこその舞台設定であって感心しました。そもそも、実際の事件をモチーフにしたこと自体が効果的。 無駄のない巧さに感心しつつ、一方で何だろう、ロジックとは違う面でもの悲しさを感じたりもしたので、7~8点の気持ちの中で、この採点とさせていただきます。 |
No.1053 | 7点 | 廃遊園地の殺人 斜線堂有紀 |
(2023/01/22 19:49登録) プレオープンの際の銃乱射事件により廃園に追い込まれた遊園地「イリュジオンランド」を舞台にした、ド直球の本格作品。廃園後20年を経て招待されたメンバーの顔触れからして、堪らない王道の薫り(?)が漂ってきます。終盤になって、自分の中で何やらごちゃごちゃしてしまった面はあるのですが(まぁ私のせいなのでしょうが)、よく考えられた作品だと思います。廃遊園地という舞台設定も好印象で、優等生な本格パズラー。 ちなみに、冒頭シーンの表記についてはsophiaさんと全く同じ意見です。その件に関する真相判明後、即「あれ?」と読み返し、「うーむ」と首を捻った次第であります。 |
No.1052 | 7点 | コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎 笛吹太郎 |
(2023/01/15 18:27登録) 荻窪のカフェ「アンブル」で月に一度開催される「コージーボーイズの集い」。それは、コージーミステリ好きな出版関係者が、お茶とケーキを囲んでゆるゆるとミステリ談義を行う催し。メンバーやゲストから謎が持ち込まれ、皆で推理合戦。メンバーの推理が行き詰まったところでカフェのマスターが…という展開の短編集。 「コージーミステリとは何か」と明確に説明できる知識は自分にはないものの、この作品がその範疇のど真ん中で、かつ良質であろうことは理解できます。ユーモアもあって極めて読みやすく、終盤にアッと言わせる手腕は素直に素晴らしい。重厚な本格作品や派手なエンタメ作品も好きなのだけれど、単品で唸らせるこういった作品集もやっぱりイイ。軽みの中の奥行きの妙。 マイベストは、昨夜自分が行った居酒屋(酔いすぎて覚えていない)を探す表題作か。アレルギーの謎も好きなタイプだけど、途中で気付いてしまう方もいらっしゃるかも。 |
No.1051 | 7点 | マスカレード・ゲーム 東野圭吾 |
(2023/01/10 21:19登録) ホテル・コルテシア東京を舞台としたシリーズ第4弾。警部となった新田浩介は、またまたホテルマンを装い、潜入捜査を開始します。ロサンゼルスから呼び寄せられた山岸尚美とのコンビも復活。 まぁ、巧い。論理的に犯人を突き止めるという構成ではないため、好き嫌いはあろうかと思うのですが、物語を紡ぐ作者の力量は流石で、次々にページをめくらされました。最後の最後まで楽しめましたね。 シリーズを通じての新田&山岸の人間的な成熟も好ましく読んだのですが、さてさてこのシリーズの今後は? |
No.1050 | 6点 | 探偵少女アリサの事件簿 さらば南武線 東川篤哉 |
(2023/01/08 21:22登録) 名探偵として世界に名をはせる母と、国内では有名な探偵らしい父を持つ、10歳の美少女・有紗(アリサ)。多忙な両親不在の際に、アリサの子守役を依頼される便利屋、31歳の橘良太。この2人のコンビで溝の口周辺の事件を解決していく連作短編集の第3弾。そしてシリーズ完結編。 4短編を収録。いずれも本格ミステリとしての根幹は守っています。でも出来栄えはマチマチ。個人的には、2話目の「名探偵、金庫破りの謎に挑む」に好感。 アリサの両親も含めて拡張させやすい設定だろうなぁと思っていたし、読み心地もよかったので、この作品がシリーズ最終巻となったことは正直残念。このシリーズは「10歳のアリサの1年間」を描いたともいえるので、何らかの形で「その後」を読んでみたいものですが、無理なのかなぁ。 |
No.1049 | 6点 | 断罪のネバーモア 市川憂人 |
(2023/01/02 21:55登録) 時間軸を現在(または近未来)に置きつつ、「民営化された警察」を描くあたりが、まずはこの作家さんらしいところ。最終話までの各短編パートも悪くはないのだけれども、やっぱり最終話の展開が面白かったですね(3年ほど前の某ベストセラーを思い出したりもしましたけど)。ロジカルな面と警察小説的な面が上手く融合していると思いますね。 一方で、最終盤で周りが皆で「主人公推し」になる展開って、昔の少年漫画を無理やり読まされたような印象もあって、その分採点はちょっとマイナスしておきます。 |
No.1048 | 6点 | 完全恋愛 牧薩次 |
(2022/12/29 23:17登録) 戦中から平成に至る洋画家の一代記として見れば、その時代の出来事とも相まって、なかなか読み応えがあると思います。 3つの事件も悪くはないのだけれど、2つ目の事件の凶器はどこに消えた?とか、3つ目のアレはどうなの…とか、突っ込みたくなる点も。何より、1話目終了時点で、大ネタが比較的容易に想定できてしまう(むしろ、ミスリードなのかと逆に怪しんでしまったくらい)点が惜しい。力作ではあります。 |
No.1047 | 5点 | 放送禁止 長江俊和 |
(2022/12/24 08:39登録) 2003年からフジテレビ系列で不定期放送されたテレビドラマを元に書かれたルポルタージュ風の小説。テレビドラマは「ある事情で放送禁止となったVTRを再編集し放送する」という設定で放映されたようですね。「あなたには隠された真実が見えるか?」が読みどころ(なのでしょう)。 3短編が収録されているのですが、判りやすいものもあれば、ちょっと文章のみでは辛い(伏線が見えにくい)作品もありました。結局はドラマ版のネタバレサイトで確認しちゃったりして…。ルポルタージュ風でスイスイ読めたのは良いのだけれど、映像の方がきっと楽しめたのだろうなぁ…というのが率直な感想です。 |
No.1046 | 5点 | やっぱりミステリなふたり 太田忠司 |
(2022/12/19 21:58登録) 京堂夫妻シリーズの短編集。各作品がコンパクトでスキマ読書には悪くないのだけれど、コンパクトな分、結末は見えやすいかも。登場人物も限られてきますしね。それを避けようとすればするほど、無理のある流れになってしまう。致し方ないのだけれども、何か勿体ないような気がします。 |
No.1045 | 7点 | invert II 覗き窓の死角 相沢沙呼 |
(2022/12/12 23:22登録) 中編(生者の言伝)と長編(覗き窓の死角)の2作品で構成されています。 「生者の言伝」は、終盤の展開がいかにも作者らしい。「覗き窓の死角」は、むむむ、そう来たかといったところ(巧いことしてやられた感もある)。両作品とも倒叙ミステリとして良質、とは言えると思います。 一方で、これはシリーズ一作目の展開からやむを得ないのでしょうが、衝撃度という点ではシリーズを追うごとに減少しています。シリーズはまだ続きそうですし、自分としては、期待のステージを過度に上げず、質が確保された倒叙ミステリとして、ついでに城塚翡翠の過去の開陳も少しだけ期待しながら、次作を待つことにします。(ちなみに、個人的には城塚翡翠、あまり好きになれない…) |
No.1044 | 6点 | 密室から黒猫を取り出す方法 北山猛邦 |
(2022/12/08 21:49登録) 気弱で引きこもりがちな名探偵シリーズ第2弾。5つの短編が収録されていますが、出来栄えはマチマチか。 マイベストは「停電から夜明けまで」。暗闇の使い方が秀逸ですし、色々な意味で最も「音野」の名探偵ぶりを感じることができます。最終話「クローズド・キャンドル」のトリックも何気に好きなのですが、犯人の特定にもうひと捻り欲しかったところ。(でもこの分量の短編では求めすぎかな?) |
No.1043 | 7点 | ぼぎわんが、来る 澤村伊智 |
(2022/12/03 21:56登録) 家族に強く勧められて読んでみたのですが、大正解でした。ズバリ面白い。他の方も述べられていますが、まずは章立てが絶妙です。「ぼぎわん」の怖さもさることながら、次第に真相(?)に迫っていく過程が良かった。深みもあります。 日本ホラー小説大賞受賞作で、選考委員(綾辻行人・宮部みゆき・貴志祐介)全員が絶賛したとのこと。デビュー作でこのレベルは、素晴らしいと思いますね。家族の評によれば、シリーズ続編はさらに良作とのこと。続編も読むことになりそうです。 |
No.1042 | 6点 | スケルトン・キー 道尾秀介 |
(2022/11/26 22:00登録) サイコパスのお話。作者らしい仕掛けはあるのだけれど、サイコパス多すぎだし、死にすぎだし、ちょっと自分には合わない面も。ラストに少しだけ救われたかな。 |
No.1041 | 7点 | #真相をお話しします 結城真一郎 |
(2022/11/26 21:58登録) マイベストは、日本推理作家協会賞短編部門を受賞した「#拡散希望」。読後、とある米映画を思い出しましたね。世相を表してもいます。 次点が「パンドラ」。5つの収録短編中、展開的には最も落ち着いている(地味?)と言えますが、深く考えさせられる作品でした。 他の3作品「惨者面談」、「ヤリモク」、「三角奸計」は、水準級といったところ。結末が想定しやすい面もあったかな。 |
No.1040 | 6点 | モップの魔女は呪文を知ってる 近藤史恵 |
(2022/11/20 22:23登録) 清掃人探偵・キリコシリーズ第3弾。このシリーズは安心して読めるので、個人的にはスキマ読書としても重宝しています。 相変わらず読み味がよく、人の弱さと優しさの組み合わせ具合が絶妙です。ベストは「第二病棟の魔女」。中編といってもよい長さの中で、うまく転がされました。切ない話ではあるものの、キリコと少女とのラストの交流は印象に残りそう。 |
No.1039 | 7点 | 記憶の中の誘拐 赤い博物館 大山誠一郎 |
(2022/11/19 22:57登録) 未解決事件などの捜査書類を保管する、警視庁付属犯罪資料館(通称「赤い博物館」)を舞台としたシリーズ続編。館長である変わり者キャリア・緋色冴子と、凡ミスから捜査一課を追い出された寺田聡のコンピはそのままです。でも、前作と異なり、今回は緋色が博物館の外にも足を運ぶようになっていて、そのことが作品に奥行きを与えているような気がします。 どの短編も、謎自体はシンプルで、入り込みやすいもの。短編によっては、ネタの一部が想定しやすそうではあるものの、着地点はそれを完全に超えてきます。短編集としての質は高いのではないでしょうか。第一話「夕暮れの屋上で」と、最終話の表題作が良かった。 個人的には、「アリバイ崩し承ります」シリーズよりも、このシリーズの方が好み。続編を期待したいところです。 |
No.1038 | 5点 | 名探偵は誰だ 芦辺拓 |
(2022/11/15 22:10登録) 「変則フーダニットの見本市」という触れ込みに惹かれたのですが…。うーむ。確かに狙いは分かるし、短編ごとの工夫も伝わってくるのだけれども、短編集全体の面白みに繋がっているのかというと、そうでもない気がします。虫暮部さんと同様、私も一話目の「犯人でないのは誰だ」が、フーダニットとして最もシンプルかつロジカルで最もフィットしましたね。 |
No.1037 | 6点 | 秘境駅のクローズド・サークル 鵜林伸也 |
(2022/11/13 20:59登録) 作者の名は、2010年刊行の学園ミステリのアンソロジー「放課後探偵団」への収録短編(ボールがない)で存じ上げておりました。この短編集を手に取ったのは、既読の当該短編が含まれていたこともあるのですが、何より短編集のタイトルに惹かれちゃいました。秘境駅もクローズド・サークルも大好物なものですから。 いずれの短編も小粒でしたが、皆でわちゃわちゃ推理する過程は楽しかったかな。 ①ボールがない:青春ミステリとして佳作。 ②夢も死体も湧き出る温泉:犯人の心理としてちょっと無理がないか。 ③宇宙倶楽部へようこそ:これも青春ミステリとして好印象。 ④ベッドの下でタップダンスを:コメディとして悪くないが、強引すぎないかな。 ⑤秘境駅のクローズド・サークル:これも無理がある真相なのだけれど、その筋には有名な駅や実際のダイヤを用いている時点で、個人的には興味深く読ませていただきました。 |
No.1036 | 5点 | カミサマはそういない 深緑野分 |
(2022/11/10 22:21登録) 短編集。「カミサマはそういない」というタイトルどおり、救いようのないダークな短編がほとんど。でもこのタイトルは「カミサマがいないわけではない」とも読めるわけで、最終話の「新しい音楽、海賊ラジオ」だけは爽やかな気持ちになれましたね。 |