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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.86点 書評数:1195件

プロフィール| 書評

No.1075 7点 富豪刑事
筒井康隆
(2023/05/07 23:04登録)
 ミステリの側面は別として、純粋に面白かったですねぇ。良質なエンタメ小説。登場人物が突然回転椅子をくるりと回して「読者の皆さん…」と語りかける辺りが特に好き。収録4作品ごとにパターンが異なっているので、飽きずに読み進めることができます。「富豪刑事」こと神戸大助も印象的ではありますが、何といってもその父である喜久右衛門氏が個人的なツボ。笑わせていただきました。


No.1074 7点 掲載禁止
長江俊和
(2023/05/02 23:45登録)
 何かが起こりそうな不穏な展開の中での反転を味わえる短編集。次々とページをめくらされましたね。
①原罪SHOW:死の瞬間を目撃できるツアーを潜入取材するジャーナリスト。グイグイ引っ張られる展開で最後の捻りに感心。
②マンションサイコ:元恋人のマンションの天井裏で暮らす女。本質の一部が①と被っている点で割り損か。
③杜の囚人:ある別荘に引っ越してきた兄妹。途中までは「ありがち」と思っていたが…。
④斯くして、完全犯罪は遂行された:大学時代の恋人と15年ぶりに同棲することとなった男。本質が③と被っていて、想定の範囲内かも。
⑤掲載禁止:二転三転。少しわかりにくい面も。


No.1073 6点 雷祭殺人事件
天樹征丸
(2023/04/29 20:09登録)
 中編+短編2本で構成。斬新なトリックが…という訳ではないけれど、クイズ本として読む分には悪くないかな。「漫画だったら、このシーンはこんな感じで描かれるだろうなぁ」などと想像しながら読むのも一興。


No.1072 6点 赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う。
青柳碧人
(2023/04/24 21:06登録)
 昔話シリーズ全体では4作目であり、赤ずきんシリーズ(童話シリーズ)としては2作目となります。
 ある日、偶然ピノキオの腕を拾った赤ずきん。その後ピノキオに会えたものの、彼は手足をバラバラにされてしまいます。ピノキオ(の一部)とともに、各パーツを探す旅に出かけますが、道中様々な死体と出会うことになって…あ、タイトルどおりか。果たしてピノキオはすべてのパーツを見つけ出して、めでたく人間になれるのかしら、というお話。白雪姫、ハーメルンの笛吹き男、三匹の子豚が元ネタ。ブレーメンの音楽隊とかも加えるべきか。
 赤ずきんとピノキオという、連作短編を通した魅力的なメインキャラが存在している分、日本昔話シリーズよりも読み進めやすいかも。驚愕の展開が…という訳ではないけれども、面白く読ませていただきました。


No.1071 6点 風が吹いたら桶屋がもうかる
井上夢人
(2023/04/20 23:25登録)
 同居する三人組(シュンペイ・ヨーノスケ・イッカク)それぞれのキャラが立っていて、楽しい雰囲気で読ませてくれます。
 何より、ヨーノスケの超能力が微笑ましい。超能力を発揮しようと取り組んでいる姿が楽しく、特にアロエの鉢植えとの格闘?は絶品。ミステリマニア・イッカクの的外れな推理も捨てがたい魅力があるし、何気に本格ミステリに対するパロディとしても機能しています。二人を眺めるシュンペイの突っ込みも悪くない。
 一方で、同じパターンの短編が続くことのデメリットも否定できず。現に、最も印象深かった短編が、ヨーノスケの超能力が、唯一直接的に人の役に立った作品でありました。そういった側面はありつつも、安心感をもって読み進められたことは評価したいと思います。


No.1070 6点 ノッキンオン・ロックドドア2
青崎有吾
(2023/04/17 20:24登録)
 シリーズ第2弾。前作は7年も前に読んだので、詳細までは思い出せないものの、連作短編としての意義は本作の方が上(のはず)。連作短編集としての評価は別として、個々の短編はなかなか面白かったですね。個人的ベストは「消える少女追う少女」。極めて基本的なネタではあるけれど、はっとさせられました。
 で、連作短編の肝となる最終話「ドアの鍵を開けるとき」については、シリーズとしての驚きは確かにあったけれども、トリック自体は薄味であるし、犯人の行動に対する違和感が凄い。動機と行動が繋がらないというか…。普通そこまでやるかね?そして現在に至るまでさ…。いや、これ以上はやめておきましょう。


No.1069 9点 方舟
夕木春央
(2023/04/14 23:21登録)
 謎の地下建築物内のクローズドサークルでの連続殺人。ほほう。方舟内部からの浸水。タイムリミットがある中でのロジカルな犯人特定。いいね。先進性云々はともかく、この時点で7点がちらつくワタクシ。
 でも最大のポイントは最終盤。「反転」とは、まさにこういったことを指すのであろう、と感心しました。最後の二人の会話も印象的。語弊を恐れずに言いますと、ブラック感は勿論ありながらも、一方である意味での清々しさを感じた自分も否定できないし、「方舟」というタイトルも趣深い。プラス2点で。
 各種ランキングでの評価が高かった理由はよく分かります。一読の価値あり。


No.1068 5点 巨鳥の影
長岡弘樹
(2023/04/09 15:58登録)
 短編集。動物や昆虫などの「生物」を多く扱おうとしたのかな?各短編は短めで、サクサク読めます。
 評価としては、うむむ…といった感じ。専門知識を仕入れて安易に使ってないかとか、使うにしてもこじつけ感が目立つぞとか、伏線が正直過ぎはしないかとか…まぁ、他の短編集と同様の印象を抱いた次第。捻りがあって悪くない短編もあったのですがねぇ。
 ギリギリこの採点としますが、モチーフが初とかいうレベルではなくて、スパッとした作者の新たな一面も見てみたいところです。


No.1067 6点 パラダイス・ロスト
柳広司
(2023/04/08 23:14登録)
 シリーズ第3弾。前2作と比べて短編として小粒、という印象も無くはないですが、やっぱりこのシリーズは安定した面白さがあります。マイベストは、日本駐在の英国人記者が結城中佐の正体を追う「追跡」です。


No.1066 5点 古い腕時計 きのう逢えたら・・・
蘇部健一
(2023/04/01 17:12登録)
 1日前に遡る、タイムリープ系連作短編。ありがちな設定とはいえ、結末はマチマチなので、ページはめくらされます。でも、中途半端で薄っぺらい印象は否定できない。工夫は一定認めるのだけれど。
 作者のこういった系統の作品は以前にも読んだことがあるのだけれども、私としては、蘇部健一作品といえば、「六とん」系のいろんな意味でのハラハラ感?を味わう方が好きかな。


No.1065 5点 剣持麗子のワンナイト推理
新川帆立
(2023/03/30 22:28登録)
 シリーズ三作目にして初の連作短編。
 各々の短編において放りっぱなしの中途半端感が残り、さてさて、これが最終話で…と期待したものの、かなりモヤモヤした終わり方でした。続編を予定しているのかなぁ。いずれにしても中途半端な印象。サクサク読めたのは良かったのだけれど。
 ちなみに、剣持さん徹夜しすぎ。私は毎日7時間眠りたい人間なので、絶対に真似できない。「眠いだろうなぁ」とか「翌日大丈夫?」とか、こちらまで体が辛くなってきた。


No.1064 8点 ずうのめ人形
澤村伊智
(2023/03/26 20:20登録)
 ホラーながらミステリとしても面白いという、巷の評判どおり。やられたなぁ。前作「ぼぎわんが、来る」もよかったのですが、ミステリとしての側面では本作の方が上位。どんどん近づいてくる怖さもあります。個人的にホラーは得意ではないのだけれど、この作家さんの作品はもう少し読んでみようかな。


No.1063 5点 夜が待っている
西村京太郎
(2023/03/21 21:50登録)
 昭和39年から翌年にかけて発表された6作品を収録した短編集。「天使の傷痕」で江戸川乱歩賞を受賞したのが昭和40年ですので、作者初期の筆致に興味のある方はどうぞ。ちなみに、ミステリ度は低いです。また、この頃からすでに読点が多すぎて読みにくいです。何とかならないものか、とは思いました。
①女をさがせ:元プロボクサーが真相を探るハードボイルド・タッチ。平板か。
②夜が待っている:これもハードボイルド・タッチ。殺された恋人の復讐譚だが、平板。
③赤いハトが死んだ:昭和14年の上海が舞台。暗殺任務を負った女性の運命は。
④愛の詩集:十和田湖が舞台で旅情もある作品。しみじみ。
⑤死の予告:予知夢の能力のある青年の苦悩。
⑥夜の秘密:「天使の傷痕」に通じる社会派作品。


No.1062 5点 救済 SAVE
長岡弘樹
(2023/03/18 21:55登録)
 ノンシリーズの短編集。文庫化に際して改題されています。
 6短編が収録されていて、いずれも誰かを救う物語。それはいいのだけれど、どうにも回りくどいというか、「そこまでやらないでしょ」とか、違和感のある行動が多いのですよね。ネタを使いたさすぎというか、何というか。まぁ、作者らしいと言えばそうなのかもしれないけど。
 ベストは、そういった作品が多い中でストレートに読了できて沁みた「空目虫」か。


No.1061 6点 中野のお父さんは謎を解くか
北村薫
(2023/03/13 23:29登録)
 シリーズ第2弾。文学ミステリとでもいうべき短編が中心ですが、その中でも「水源地はどこか」がピカイチ。
 松本清張の短編集「隠花の飾り」に収録されている「再春」が発端。この作品は自分も既読で記憶にも残っているのですが、その根底に作者自身の過去の盗用疑惑があったとは知りませんでした。時を経て、その疑惑を見事に物語に仕立て上げた清張の力にも感嘆。さらに、それこそ全体の「水源地」を探ろうとする推理(調査?)の結果が、これまたお見事。
 この短編だけで評価すれば8点。でも、収録短編ごとに個人的評価はマチマチなので、総合的にこの採点で。


No.1060 7点 逆転美人
藤崎翔
(2023/03/07 21:52登録)
 採点も含めて書評が難しい作品。余計な事前知識なく、素直に読み進めた方が楽しめる作品であることは間違いないでしょう。

【以下、余計な事前知識となる可能性があるのでご注意ください】
 肝となる点については、確かに先例というべき複数の作品が思い浮かびますし、「史上初の伝説級のトリック」なのかと問われれば、消極的な評価。一方で、ソレを施した必要性をストーリーとして巧く結びつけた点については評価したいと思います。一捻りした後の肝突入、という展開も嫌いじゃない。こういった系統を読むのも久方ぶりで、刺激に?なりました。評価は分かれると思いますが、記憶には残りそうな作品です。


No.1059 8点 仕掛島
東川篤哉
(2023/03/02 22:23登録)
 ド直球の本格作品と言ってよいと思いますし、愛すべきバカミス系でもあります。斬新なトリックが…という訳ではないものの、過去の事件との関係も含めてしっかりと練られていて、最後まで楽しく読ませていただきました。新鮮味というよりも、安定感で勝負といったところか。個人的には、結構好きなタイプの作品。
 ちなみに、ユーモア度については、作者の他作品と比べれば低めかも。でも、内容的にもこの辺りが丁度いいような気がしますね。読み心地は大変に良かったです。


No.1058 5点 化学探偵Mrキュリー9
喜多喜久
(2023/02/23 23:29登録)
 シリーズ9作目。続いてますねぇ。
 大学庶務課職員・七瀬舞衣とMr.キュリーこと沖野准教授のコンビも、2年4ヵ月という設定らしい。二人の雰囲気はもとより、七瀬の社会人としての成長が垣間見えて微笑ましい。
 ミステリとしては総じて薄味ながら、三話目の「化学探偵とフィクションの罠」はちょっとした捻りもあって良かったかな。


No.1057 5点 珈琲店タレーランの事件簿8
岡崎琢磨
(2023/02/13 23:37登録)
 京都市内で新たなコーヒーの飲み比べイベントが開催されるとのことで、珈琲店「タレーラン」にも出店依頼が。過去の関西バリスタ大会での事件も頭をよぎる中、2日連続で妨害事件が発生して…という展開。
 ミステリとしては薄味。シリーズものとして捉えたとしても、バリスタ兼店長の切間美星とアオヤマの関係を含めて、どうにも面倒な人たちが揃っているなぁ…という印象。
 このシリーズも10周年とのことで、新展開を期待したのだけれども、結果としては少し残念。読み心地は悪くなかったのですが。


No.1056 7点 私の頭が正常であったなら
山白朝子
(2023/02/10 21:12登録)
 このサイトでの評判が良かったことから手にしてみたのですが、読んで正解でした。主人公の多くは大切な何かを失った方でしたが、救いのようなものも感じることができて、結構沁みましたね。マイベストは「首なし鶏、夜をゆく」ですが、他の短編もイイです。

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