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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:1269件

プロフィール| 書評

No.49 6点 インシテミル
米澤穂信
(2010/06/19 09:32登録)
いろんな作家が悩んできたであろうクローズド・サークルの条件設定やリアリティを,「アルバイト」で一気に片付けてしまう,その割り切りに,一種の爽快感を覚えた。確かに,この作品は,そうあるべきでしょうね。
後半部はもうワンパンチ欲しかった気もしましたが,軽快に読み進めやすく,「本格ミステリ」として楽しめました。


No.48 7点 生首に聞いてみろ
法月綸太郎
(2010/06/14 21:09登録)
非常に丁寧に計算された作品であると思います。後半の紐解かれ具合は,結構好きですね。
・・・が,複数の局面で「偶然性」が強く出すぎているような気が。ご都合主義とまでは言いませんが,「読者サイドからすれば不親切」と思う点は正直ありましたね。
私は,皆様の「このミス1位に期待しすぎた」コメントを読んでいたのでよいのですが,期待感満々で読んだら-1点だったかもしれませんね。


No.47 10点 イニシエーションラブ
乾くるみ
(2010/06/09 22:56登録)
(ネタバレ注意)
⇒side-Bの「もやもやした違和感」が,ラスト2ページで「明確な違和感」に!
⇒あれ?しばし本を閉じて考える。「秋物語…」
⇒そういうことか?もしかして…
⇒両sideを読み比べてみる。(頭に時系列表を描きながら)
⇒なるほど「日焼け」「指輪」「イブのホテル予約」「アインシュタイン」「便秘」「木曜日に変更」…(その他諸々)ね…。
という訳で,極めて楽しめました。
すり替え具合,暗示の具合が絶妙。2回目の読書がこれまた楽しい。こういうミステリもアリですね。
叙述トリック系の傑作と評価いたします。

なお,トリックによって,あの世代特有の男女のかけひき(?)の連綿性まで表現できていると思う。恋愛モノとしてのチープさ(確信犯だろうが)がいい味を出している。スイカに塩的な感じ。
昭和30年代~40年代生まれの方は,さらに楽しめるのではないでしょうか?学生時代に気分が戻るかもしれません。


No.46 5点 骸の爪
道尾秀介
(2010/06/07 20:52登録)
伏線は回収しているし,まとまった作品であると思うが,特筆すべき「驚き」があるとは言えない。
理論的な「犯人当て」ができるだけの手がかりがある訳でもないし…。「なぜ?」の部分は結構理論的だと思いますが。
まあ,全体的には楽しめました。


No.45 9点 首無の如き祟るもの
三津田信三
(2010/06/03 22:02登録)
(一部ネタバレ注意)
皆様の評判のよさに刺激され,図書館で借りました。
ホラー的要素が効果的に働いていることは間違いないですが,その根幹となるトリック構成にはとても感動しました。
古典的ともいえる「顔のない死体」&「人物入替」を重層的に,拘りぬいて使ってますよね。一本の結び目を紐解くと,あれよあれよと解明していく様も見事。伏線も見事。(叙述的ミスリードも,ある意味見事。)
結末のどんでん返し連発(返して一部戻してと言った方がより正確?)も,息つく暇なく良かったですね。
最後に「1ページ目」を読み返さざるを得なくなったのも,私好み。
これは高評価にならざるを得ません。
※漢字の多さに馴染めなかったこと(それはそれで雰囲気醸成に重要なのだろうが)+前半,状況把握&伏線認識のみに特化せざるを得なかったことが「10点」をためらった理由


No.44 7点 悪意
東野圭吾
(2010/05/23 21:11登録)
この作品の本質は「・・・ダニット」なのだというような情報を一切与えられずに読むべき作品。
私は,様々に想像力を刺激されながら,しかもストレスなく読み進めることができ,相当に楽しめた。(結末は想定内であるが,過程が楽しめる。)
良作!


No.43 5点 完黙
永瀬隼介
(2010/05/17 23:16登録)
警察官を主人公とした5作品で構成される短編集。(私の価値基準では広義のミステリーにかろうじて入る。)
横山秀夫氏の警官モノ短編集の「ライト版」といった印象。
もうワン・パンチ又は一捻りほしい気もしますが,前向きな結末が多く,読後感は良い。
横山秀夫氏の短編が好きな方は,一読の上,比較検討するのもよいかもしれません。


No.42 5点 ジェネラル・ルージュの伝説
海堂尊
(2010/05/10 23:02登録)
表紙に「海堂尊ワールドのすべて」とあるとおり,海堂ワールドを振り返りたい(又は知ってみたい)方にはお薦めですね。
特に「作者の歴史(の前半)」と「自作解説」が面白い。「心に響く名ゼリフ」も,ちと笑いを誘って(?)何気に良かった。
なお,収録中編「ジェネラル・ルージュの伝説」は,速水ファンには楽しめると思う。もっとも,ミステリーではないですけど…。


No.41 6点 列車消失
阿井渉介
(2010/05/08 22:05登録)
「列車消失モノ」結構好きなんですよね~。
終着駅に着いてみたら,車両が乗客もろとも1両消えていた!
犯人は,身代金の受け渡しに寝台特急を指定!
その寝台特急の中で…
いやぁ,弱いんですよね~。この設定ってば!
(以上,中盤までの感想。以下,読後の感想。)
トリックの評価は,なんといいますか「微妙…」。
「本格」好きの方からは厳しい意見もありそう。
社会派テーマも,好き嫌いありそう。(嵌らないひとはとことん嵌らないと思う。)
舞台設定に関する個人的な「弱いんですよね~」があったからこその,この点数ということでご理解ください。


No.40 5点 Pの密室
島田荘司
(2010/05/05 18:49登録)
個人的には「鈴蘭事件」の方が良かったですかね。サラッと楽しめましたから。幼稚園児って設定は…まあ面白かったから良しということで。
表題の方ですが,建物見取図が「一部ずつ」開示されている時点で…。小学校低学年の御手洗が「占星術」時代よりも圧倒的に「オトナ」であったところが見どころでしょうか…。ちなみに,私は,人間味のある占星術時代の御手洗の方がいいなぁ。


No.39 5点 疑惑
折原一
(2010/05/04 23:59登録)
軽いタッチで読み進めやすい短編集。
現実的にどうかとか,そんなことを考えず読み進めていくのが良いかしれませんね,この作品は。


No.38 5点 上高地の切り裂きジャック
島田荘司
(2010/05/01 22:55登録)
中編2本で構成。
いすれの事件も「謎の不可解レベル」は申し分なし。
(以下,ネタバレ含む。)
ただし,「上高地の~」については偶然性があまりに強すぎる感が(しかも何となく2時間ドラマっぽい),「山手の~」は強引すぎる感が(隠し通路って…),それぞれ否めないような気がします。


No.37 5点 絶叫城殺人事件
有栖川有栖
(2010/04/29 09:16登録)
6つの短編集。すべての短編名が,「『建物名』殺人事件」で統一されています。
ちなみに,建物名が付されているからといって,「密室モノ」に特化しているわけではありません。
一番よかったのは,表題にもなっている「絶叫城殺人事件」。
トリック云々でなく,雰囲気としては「黒鳥亭殺人事件」も好きですね。
その他の短編は…標準レベルでしょうか。


No.36 10点 占星術殺人事件
島田荘司
(2010/04/18 18:11登録)
その後の作家に与えた影響も考えると,日本ミステリ界の至宝といってよい作品。
しかし,改めて某少年漫画の罪深さを感じる…


No.35 6点 むかし僕が死んだ家
東野圭吾
(2010/04/16 22:14登録)
舞台移転が基本的になし,登場人物2名のみ,あとは日記と手紙…。この限定的な状況下で読ませてしまうのは,さすがとしか言いようがありません。
(以下ネタバレあり)
ただし,当初から「出生(というか幼年期の)失われた記憶探し」という,結末が一定程度想像しやすい謎であるせいなのか,はたまた「猫」や「玄関脇の絵画」等の伏線が分かりやすすぎるせいなのか,それとも日記や手記の記述がいかにも“叙述トリックですか~”のせいなのか,いずれにしても驚愕の結末ではなかった。むしろ,「彼は結局のところ無関係なわけね。ある種騙された!」
でも面白かったですよ。


No.34 8点 秘密
東野圭吾
(2010/04/11 17:49登録)
純粋なミステリではないので,この点数にしましたが,小説として見れば秀逸。素晴らしい。
切ないし,泣ける。
主人公も妻も娘も,結婚相手も,みーんな切ないなぁ。読み終えた後,「秘密」の真意を噛み締め,しばしため息が…。ホントにこれで良かったのかな~などなど考えながら…


No.33 7点 赤い指
東野圭吾
(2010/04/10 21:42登録)
ミステリ要素云々は置いておきまして,純粋に良作。
教育・介護・家族…考えさせられますね。本当に東野さんは,うまい。
加賀恭一郎もピタリはまってますしね。いとこの松宮も良い。
後半はページをめくる手が止まりませんでしたが,ミステリ性を期待していた人はどうなんだろう?人間ドラマとして読んだほうが楽しめるかもしれません。
しかし,馬鹿餓鬼とその母には相当ムカムカしますよ。ご覚悟を。


No.32 5点 笑う警官
佐々木譲
(2010/04/10 21:25登録)
テンポがよく,楽しめました。
ただ,実際の事件をヒントにしている割には,現実感がない。警察の隠蔽体質はそのとおりなのだろうが,百条委員会への証人出席阻止のために「射殺命令」を出しますかね。近未来国家が舞台ならいいのですが…完全に現在を舞台にしてるしなぁ。
それと,「うたう警官」から「笑う警官」と改題したことについては,他の方と同様に意味不明です。絶対に「うたう」の方がしっくりくる。あとがきに,角川春樹顧問から改題の打診を受けたと書いていますが,言い訳でしょうか?組織内(?)力学に弱いとすれば,作風と相当に違うような気が…ああ!むしろ弱いからこその,この作風なのか!
なんてことまで考えてしまいました。


No.31 8点 水車館の殺人
綾辻行人
(2010/04/03 17:35登録)
全体の雰囲気は,大変素晴らしい。
まあ,主人が仮面をかぶっているあたりとか,死体がバラされているあたりとか,すべて「想定内」のトリックではありますが,その散らし具合、パズルのピースを丁寧に当てはめていくような解決までの構成力は,改めて評価されてもよいと思う。
現在と過去が交互に語られる構成も,私は好きです。


No.30 7点 背の眼
道尾秀介
(2010/03/24 23:13登録)
「ホラーサスペンス大賞特別賞」受賞作品であるが,作品構成は,ホラーサスペンスというよりも「本格ミステリ」と言っても決して過言ではない。冒頭からのいくつもの謎,慎重な(むしろ慎重すぎるかな…)伏線,そしてそれらの謎と伏線を不足なく回収した上での理論的な解明。デビュー作品としては,特に構成力という面において,相当良質な作品であると思う。
無論,全体的に冗長すぎるし,表現の拙さも多々ある。さらには,某作家の某シリーズとの露骨ともいえる類似性など,否定的な視点で見れば,色々と意見はあるかと思う。
しかし,そこを敢えて脇においてこの作品を読んでみたい。この作家のその後の評価・活躍を十分に予測させる潜在能力を感じたのは私だけでしょうか。

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