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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:1196件

プロフィール| 書評

No.256 6点 グッバイ・ヒーロー
横関大
(2012/01/09 21:09登録)
 乱歩賞受賞第一作ですね。
 音楽を愛するピザ配達人「亮太」と、立てこもり事件で出会った「おっさん」が織り成す,謎と絆の物語。
 特筆すべきは,リーダビリティの高さ。素晴らしい。本格色はないものの,断続的反転はなかなか楽しめました。ハードボイルド的趣向も効いています。読後感も良し。(ちなみに某作家のタッチに似ているような気も・・)
 乱歩賞受賞作(「再会」)で個人的に注目していましたが,受賞第一作は期待以上の出来栄え。早速,次回作も読んでみます。


No.255 6点 水の柩
道尾秀介
(2012/01/08 16:00登録)
 自分が「普通」で退屈なことを嘆く少年は,イジメを受け「普通」を欲する少女や長年の秘密を抱える家族のために何ができるのか?

 道尾ファンとしては,どうしても作者の「騙しの技巧」に期待してしまいます。本作品は,騙しの要素が皆無とは言えませんが,決してそれがメインではなく,限りなく文学作品寄り。よって,ミステリ的側面のみを期待している方にとっては肩透しでしょう。
 私も「道尾ミステリ」に期待して本作品を手に取ったわけです(事前調査なしで読みましたので…)。で,その結果文学寄りだったと。しかし,なかなか沁みる読後感でして,がっかりはしませんでしたね。情景描写なども美しいですし,作者の奥深さは感じました。道尾ミステリの楽しみは,次回作以降に取って置きましょう。


No.254 5点 名探偵水乃サトルの大冒険
二階堂黎人
(2012/01/06 21:27登録)
サクサク読めてしまう,軽い短編集。作品ごとに短評を。
①ビールの家の冒険:私が犯人なら,そんな面倒なことはしないなぁ。
②ヘルマフロディトス:私が犯人なら,日記を燃やすなぁ。その不合理性を「精神的に子供」で済ませていいものか?
③『本陣殺人事件』の殺人:本家への新解釈は確かに興味深かったけれども,私が犯人なら,倣う必要性を感じない。
④空より来たる怪物:これぞバカミス。嫌いではない。

 総合的には,犯人の心理を度外視しすぎで,トリックのためのトリックって印象。一方で,「それを言っちゃあ…」と自分に突っ込んだりも。まぁ,作者は敢えてやっているのでしょうし。
 ちなみに,水乃サトルは,軽い短編集に丁度いいキャラですねぇ。ギリギリこの点数かなぁ。


No.253 6点 ロートケプシェン、こっちにおいで
相沢沙呼
(2012/01/01 16:51登録)
 高校生マジシャン・酉乃初&純な高校生・須川の事件簿第2弾。「午前零時のサンドリヨン」の続編って位置づけですので,前作を読んでからの方が楽しめると思います。
 構成としては,日常の謎解明ゾーンと,某少女の独白ゾーンを,連作短編中に交互に積み上げながら加速していく感じ。両ゾーンに巡らされた伏線も巧妙で,思いっきりやられましたねぇ。爽快にやられましたです。
 なお,作品中の一短編は,アンソロジー「放課後探偵団」が初出。単独で読んだ際にも十分に楽しめたのですが,連作短編の一部として読むと,また違う味わいがありましたよ。
 ちなみに,「ロートケプシェン」とは,ドイツ語で「赤ずきんちゃん」という意味。


No.252 6点 きみにしか聞こえない
乙一
(2011/12/31 11:56登録)
 個人的には手を出しづらい「角川スニーカー文庫」ですが,結論から言えば,3短編ともなかなかの収穫。「青臭さ」が妙に心地よかった。
 この激動の年の読書を締めくくるにふさわしい作品でしたね。


No.251 3点 11 eleven
津原泰水
(2011/12/30 09:07登録)
 なぜ手にしたのかと言えば,「このミスで評価されていたから」。主体性のない選書で申し訳ございません。
 で,読後の感想としては「難しすぎてよく分からない」。咀嚼できたのか,自分でもよく分からん。さらに,これってミステリーなの?それもよく分からない。
 それもこれも,多分私の読解力が不足しているからなのでしょう。重ね重ね申し訳ございません。
 一方,記憶にはガツンと残りましたね。理性ではなく,感性で読めということか。うーん,私には合わない。
 最後に,個人的には,読了するのに一定の精神力を消費しましたので,ココロに余裕のある時に読まれることをお勧めします。


No.250 5点 謎解きはディナーのあとで 2
東川篤哉
(2011/12/27 23:15登録)
 作者の大出世作品の続編。前作の大ヒットについては,従前からのファンとして「もっと良作があるよ」とアピールしたくなる面もありますが,まぁ,苦労人ですし,良かったなぁ…と。
 で,この作者の魅力は,何と言っても本格とユーモアとの融合。この作品でもその辺りを十分意識していると思うのですが,「本格」部分には,やや強引な点も見受けられました。とは言え,マンネリ化と戦いつつキャラを立て,最低限の本格ルールを守っている点は評価。
 どこに主眼を置くかによって採点には相当のバラツキがあると想像しますが,私としてはそれなりに楽しめたので,この点数に。


No.249 5点 詩的私的ジャック
森博嗣
(2011/12/24 21:28登録)
 動機の件を敢えて無視すれば,水準以上には楽しめましたよ。当初の密室を事務的に(いや技術的にと言うべきか?),アッサリと明かす姿勢も嫌いではないです。
 でもなぁ,動機の違和感以外には記憶に残りそうにないなぁ…。


No.248 5点 火村英生に捧げる犯罪
有栖川有栖
(2011/12/19 21:31登録)
4つの短編+4つの掌編で構成。
良くも悪くも「無難だなぁ…」という作品が多かったです。その中でも最も印象に残った作品はと問われれば,メタ的要素もあった「あるいは四風荘殺人事件」でしょうか。


No.247 2点 この島でいちばん高いところ
近藤史恵
(2011/12/17 18:43登録)
正直,「良い点」を見出すことができませんでした。
作者は一体何をしたかったのだろう?これが最大のミステリ。


No.246 4点 壁抜け男の謎
有栖川有栖
(2011/12/17 18:40登録)
 10年間で溜まった掌編・短編を集めたノンシリーズの作品集。良く言えば「バラエティに富んだ作品集」であり,悪く言えば「寄せ集め感溢れる作品集」。
 読者挑戦モノや名作のオマージュの中には「悪くはない」作品もありましたが,全体からすればごくごく一部。その他の作品は,統一感がないというか,中途半端というか・・・。まぁ,各誌からの依頼(制限)に基づいて各々書かれたのでしょうから,致し方ない面もあるのでしょうけれども。


No.245 6点 放課後探偵団
アンソロジー(出版社編)
(2011/12/17 18:35登録)
 1980年代生まれの新進気鋭の作家たちの競演。梓崎優&相沢沙呼(個人的にも注目している2名)に魅かれて手にしたのですが,他の作家のレベルも高かったですね。初めての作家に触れる機会が得られた面でも良かった。
 どの作家も力を入れており,駄作はないです。ロジカルな学園ミステリの揃い踏み。惜しむべきは,表紙がおじさん向きではないところでしょうか(笑)。
 個人的に大注目の作家の作品に絞って感想を。
 相沢沙呼の作品は,ホワイダニットとして面白い。学園モノの特性を最大限に活用していて好感。
 梓崎優の作品は,終盤で「そう来たか」といった軽い驚き。氏らしいなぁ。このアンソロジーの最後に配置したのは正解。


No.244 7点 傍聞き(かたえぎき)
長岡弘樹
(2011/12/10 17:53登録)
 4話で構成される,人情ミステリ短編集。どの短編も,軽快で切れ味のあるプロットで,余韻を残す温かな結末も素晴らしい。「短編の良さ」を堪能できる作品が揃っています。
 中でも,日本推理作家協会賞(短編部門)受賞作である「傍聞き」は秀逸。「色々な意味で厚みのある短編」とだけ述べておきましょう。しかも良質。お見事。
 人に薦めたくなる短編集です。


No.243 5点 押入れのちよ
荻原浩
(2011/12/09 21:33登録)
 全9話で構成される短編集。
 最初の3話あたりまでは「この短編集は当たりかもしれない」という好感触だったのです。特に2話目の「コール」における技巧は,ありがちとはいえ大好物。3話目の「押入れとちよ」も,哀しくも癒されましたね。
 しかし,4話目「老猫」で大失速。その後もピンときた作品はなかったなぁ…。いかにもなプロットが多かったですしね。


No.242 7点 マスカレード・ホテル
東野圭吾
(2011/12/05 22:50登録)
 「4件目の連続殺人は某一流ホテルで発生する可能性が高い」との分析に基づき,刑事がホテルマンとして乗り込みます。刑事とホテルウーマンの衝突と理解,登場人物や宿泊客らの人間ドラマなどなど,事件の真相以外にも,多種多様な「読みどころ」を配置しています。サスペンス的要素もあり,一切飽きることなく読みきりました。
 読者として謎解きできるスタイルではないため,純粋に作者のストーリーテラーぶりを堪能するのがベスト。一点だけ気になる点を述べるとすれば,「手口が凝り過ぎている・・・」


No.241 6点 笑わない数学者
森博嗣
(2011/12/03 21:27登録)
 「オリオン像消失トリック」が簡単すぎるなぁ,伏線も分かりやすいしなぁ~と思っていたら,意図的にそうしていたのですか。ははぁ,私はまんまと「逆トリック」とやらに嵌った訳ですね。(なんて言いながら,「逆トリック」の概念ってイマイチ理解できないのですが・・)
 色んな意味で,難しい作品ですねぇ。よって,評価も難しい。


No.240 5点 鬼蟻村マジック
二階堂黎人
(2011/12/03 10:39登録)
 山村の名家,鬼伝説,跡目争い・・・などなど,横溝(最近で言えば三津田信三)的な雰囲気を備えたミステリ。この雰囲気に水乃サトルはふさわしいのか?という疑念もありましょうが,本作品でのキャラは抑え気味でして,結構まともな探偵役を務めています。このことが良いのか悪いのか・・・好みによるでしょうねぇ。
 なお,本格ミステリとしての評価ですが,個人的には「水準以上」と言ってよいと思います。でも,特筆すべき点があるかと問われると,あまり思いつかなかったりして・・・。まぁ,堅実な作品って感じでしょうか。


No.239 6点 犯人のいない殺人の夜
東野圭吾
(2011/11/29 20:52登録)
 ノンシリーズの短編集。駄作がなく,上質な作品が揃っています。一方で,本格色やインパクトは弱め。軽く楽しみたい方にオススメです。
 その中でも記憶に残ったのが表題作。東野氏にしては珍しい仕掛けでしたね。次点が「さよならコーチ」。こちらは,いかにも東野氏らしい作風です。


No.238 5点 諏訪湖マジック
二階堂黎人
(2011/11/27 22:01登録)
 正統派のアリバイ・トリックです。確かにトリックの一部は「人形は~」の派生版ですが,工夫が結構趣深い(?)ですし,終盤のどんでん返し含め,良く練られています。
 ただし,ちょっと長すぎますなぁ。無駄な部分が多いんですよねぇ。相当な中だるみ感を抱きました。トリック自体は悪くないだけに,もっとシンプルでトリックに特化する構成の方がよかったのではないでしょうか。


No.237 7点 放課後はミステリーとともに
東川篤哉
(2011/11/24 21:14登録)
 鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ…ってことになるのでしょうねぇ。とは言え,探偵部長をはじめとする3馬鹿トリオは登場せず,副部長「霧ヶ峰涼」を主人公とした短編集です。
 7年間にわたって書き溜めたらしいですが,確かに,初期の作品ほど出来がよいです。第1話「~の屈辱」は,野球を絡めたのがミソ(ある部分の伏線は欲しかったけれど)。第2話「~の逆襲」は,あの分量での連続反転が見事。短編ミステリとして高水準。他の作品も悪くはないですが,インパクトは落ちます。
 ちなみに,ギャグとしても野球ネタをふんだんに使用していますので,真に楽しむには「野球好き」が条件になるかもしれません。ミステリとは違う視点で「読者を選ぶ」かも(笑)。
 作者は,大ヒット「謎解きは~シリーズ」や「烏賊川市シリーズ」の短編集も発表していますが,個人的にはこの短編集が最もしっくりきましたね。単に私が野球好きだからかもしれませんが…っていう個人的嗜好も含んでこの点数に。

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