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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.86点 書評数:1195件

プロフィール| 書評

No.395 5点 ぐるぐる猿と歌う鳥
加納朋子
(2013/06/23 21:40登録)
 正統派のミステリーランド作品と言えましょう。
 かなり非現実的な設定もあって,おじさん的にはピンとこないところも正直あったのだけれども,ミステリーランド的には野暮なのかな。ミステリとしての面白さは伝えられているし,個人的に懐かしい気分になれたので,まぁ良かったのかな。


No.394 6点 名探偵 木更津悠也
麻耶雄嵩
(2013/06/22 14:27登録)
 オーソドックスな本格短編集。
 ちょっと読みづらい面もありましたが,内容はどの短編も水準以上。
 ちなみにワトソン役の香月については,ワトソン像の新類型としては面白い設定だと思うのですが,香月のキャラ自体はあまり好きになれなかったな。


No.393 7点 金雀枝荘の殺人
今邑彩
(2013/06/09 21:38登録)
 密室あり,見立てありの屋敷モノ…という,何とも豪勢な演出。「ネバーエンディングストーリー」というのは言い過ぎかなと思いますが,序章(終章?)の構成は好きです。序章としては一定の期待を抱かせ,終章としては十分な余韻を残してますね。時間軸が行ったり来たりしますが,決して混乱させることなく,非常に効果的に作用しています。サスペンス的要素も相まって,ほぼ一気読みでした。
 作者の代表作の一つと言えましょう。

 最後に,57歳という若さでお亡くなりになられたことが本当に惜しい。骨太の本格を書かれる女流作者としては,頭数個分抜きん出ているなぁ…,と常に感じておりました。
 今後,改めて作品を読ませていただきたいと思います。合掌。


No.392 5点 残り全部バケーション
伊坂幸太郎
(2013/06/07 22:37登録)
 作者お得意の“いい人系アウトロー”達が活躍する連作短編。
 登場人物がなかなか魅力的ですし,リーダビリティも高いのですが,あまり記憶には留まりそうにないなぁ…。もう一味欲しかった気がします。ちょっと先が読めてしまう面もありましたしねぇ。
 とはいえ,サクサクした読書にはピッタリで,楽しめるとは思います。


No.391 7点 今はもうない
森博嗣
(2013/06/02 21:35登録)
 率直に言って,楽しめました。でも評価はなかなか難しいなぁ。
 まず,W密室については,謎の提示や仮説の検証過程など,期待が相当に高まった割りに,真実が何とも微妙。決してアンフェアではないのですが…モヤモヤしますね。
 一方,メイントリック(?)については,完全にしてやられました。一人称部分など匂いがプンプンで,様々想定しながら読んでいたのですが…,そう来ましたか。十分に練られているし,巧いです。
 ただし,シリーズファンではない方,極端に言えば,この作品が初のS&Mシリーズであった方にとってはどうなのだろう?ファンであることを前提とした技巧っていう感じも受けましたね。
 確かに,シリーズの中では,こういったタイプの作品も時に必要だと思いますし,ハマることも多いと思うのですが,えてして「シリーズ・ナンバーワン」とはならないものですよね。


No.390 7点 銀座幽霊
大阪圭吉
(2013/05/31 23:38登録)
 創元推理文庫として復刊された2冊(本書と「とむらい機関車」)を比較すれば,正直後者の方が粒揃いとの印象は否めません。
 とは言え,本書にも多種多彩な作品が並んでいます。その中で最も印象に残ったのは「大百貨注文者」。暗号云々はともかくとして,ユーモアが効いています。ラストの洒落っ気も好み。 他の作品も,多少差はあるものの,引き締まった本格短編として楽しめます。
 しかし,若くして戦地に散ってしまわれたことが,本当に惜しい。もし戦争で無事であったならば,その後どのような活躍をなさったのであろうか…。


No.389 7点 扉守 潮ノ道の旅人
光原百合
(2013/05/29 22:46登録)
 瀬戸内沿岸の街「瀬ノ道」を巡るファンタジー連作短編集。作者自身があとがきで述べていますが,モデルは作者の故郷「尾道」だそうです。ちょっと不思議で,十分に余韻を残してくれる作品が揃っています。
 私事になりますが,8年ほど前に観光で尾道を訪れたことがあります。一日かけて街中を歩き回りまして,海・山・坂道・寺社の雰囲気が素晴らしく,極めて良い印象を抱きました。この作品を読み,また訪問したくなりましたね。


No.388 6点 ガソリン生活
伊坂幸太郎
(2013/05/22 20:10登録)
 語り手が自動車(緑のデミオ)という,いかにも伊坂サンっぽい作品。自動車同士(正確には車輪が付いている車両同士というべきか…)はお互いに会話ができ,人間の会話も理解することができるのですが,人間側は自動車たちの会話を認知できないという設定。これも伊坂サンらしい。
 ユーモアを含めて非常に読みやすく,登場人物のキャラクターも面白く,一定の謎とスリルもあり,爽快感とほっこり感も味わえますので,万人受けする作品と言えましょう。個人的には,更なるハッピーエンドを想定していたのだけれど…それでは「いかにも」過ぎてダメなのかな?


No.387 5点 私の嫌いな探偵
東川篤哉
(2013/05/16 21:59登録)
 烏賊川市シリーズの短編集第2弾。いつもどおり本格としての体裁は堅持しているのですが,内容としては相当に軽めで小粒。正直,全体の出来栄えとしては,第1弾短編集「はやく名探偵になりたい」の方に軍配。
 とは言え,個人的にギャグ要素は嫌いではないし(合わない方にはとことん合わないと思いますが・・・),気軽にサクサク読みたい気分の場合には良いかも。
 それと,ある短編に登場する,「ゆるキャラ探偵(しかも烏賊がモチーフ!)」が結構ツボにはまりました。次作以降でも是非とも活用いただきたいなぁ…と,どなたか作者又は関係者の方に伝えてください(笑)。
 ちなみに,助手の流平クンの出番は少なめ。代わりに(?)朱美サンの出番が増大しています。


No.386 6点 夏のレプリカ
森博嗣
(2013/05/12 18:32登録)
 萌絵の高校以来の友人「簑沢杜萌」を中心とした事件を描いた作品。
 前作『幻惑の死と使途』と同時期に起きたという設定でして,前作には奇数章しかなく、本作には偶数章しかないという凝った構成になっているのですが,同時並行で読まないと真実が分からないというような設定には(多分)なっていません。お好きな方はシンクロ感を楽しんでみては?といった程度でしょうか。
 内容としては,本書の登場人物自身が語っているとおり,前作の事件ほどの派手さ,不可解さはありません。でも,個人的にはこちらも嫌いではない系統。このシリーズでは珍しいタッチでしたし,結構驚かされました。萌絵嬢が真実に気付くシーンも美しく,記憶に残りそうです。
 ちなみに,萌絵嬢や犀川センセの出番の少なさについては,私にはむしろ心地よかった(笑)。これくらいで丁度いい。


No.385 7点 幻惑の死と使途
森博嗣
(2013/05/06 22:19登録)
 フー・ハウ・ホワイ全ての要素が織り込まれている上質なミステリだと思います。綺麗です。S&Mシリーズは「封印再度」以降読んでいませんでしたが,想像以上に盛り返してくれました。
 マジック(マジシャン)を絡めた設定がまず心憎い。その設定での,あのトリック…感服いたしました。見せ方っていうのは重要だなぁ…と再認識させていただいた次第です。
 作品としてはかなり評価したいのですが,実は前々から萌絵嬢の思考,言動等が苦手でして,本作においても印象が好転することはございませんでしたので,評価と結びつけるべきではない事項かもしれませんが,気持ち減点いたします。


No.384 6点 塔の断章
乾くるみ
(2013/05/04 22:00登録)
 何とも巧妙な作品です。ワタクシと同様に「イニシエーションラブ」が楽しめた皆様には,読んで損はないような気もします(出版順は逆だけど)。「アノためにソコまでやりますか~」という溜息だけで終わってしまう可能性も否定できないのですが…。
 ちなみに,私はミスディレクションに完全にしてやられました。一死満塁で,バッテリーの思惑どおり,4-6-3のダブルプレーに打ち取られた気分。でも,コレがあるから野球は面白いんだよなぁ…ってところでしょうか。


No.383 7点 アルキメデスは手を汚さない
小峰元
(2013/04/30 22:21登録)
 第19回江戸川乱歩賞(昭和48年度)受賞作品。
 「自分が生まれた頃のベストセラーを読んでみたい」という想いがありながらも,長らく我が家で積読状態になっていました。「東野圭吾氏が小説を志すきっかけとなった作品」という情報も後押しして,この度ようやく読了した次第です。
 純粋にミステリとして見れば,皆様の書評のとおり,驚くべきトリックが仕込まれている訳ではなく,そもそも謎解きを楽しむ構成でもないため,決して高い評価にはならないものと思われます。
 しかし,スピーディーな展開に(当時としての)イマドキの若者像が相まって,結構楽しい読書時間を与えていただきました。個人的には,どうしても近年の「青春モノ」と比較してしまうのですが,そのこと自体がなかなかに興味深い。出版から約40年を経てるのかぁ,その当時の主人公たちは,間もなく還暦ってことか…という視点で読むのもまた一興。
 様々な面に敬意を表して,この採点といたします。


No.382 5点 ビブリア古書堂の事件手帖4
三上延
(2013/04/27 18:59登録)
 人間関係の進展もあり,シリーズファンには楽しめると思います。今回は江戸川乱歩作品が主軸となっているので,乱歩ファンはさらにオススメなのかな。読み心地は相変わらず良いのですが,シリーズファン以外には,単に「宝探し+αのお話」って印象しか与えないような気もするなぁ…と。


No.381 5点 山伏地蔵坊の放浪
有栖川有栖
(2013/04/24 22:25登録)
 作者にとって比較的初期の短編集。ワン・トリックものの端正な短編が揃っており,個人的には好きなタイプですね。
 しかし,山伏のキャラが,その存在意義も含めて何とも中途半端。ちょっともったいない気がしましたね…ってことで1点減点かな。


No.380 6点 美人薄命
深水黎一郎
(2013/04/21 21:42登録)
 進級のためのボランティアをせざるを得なくなった大学生「総司」と,片目の視力を失い,貧しい生活を送る老婆との温かい交流が物語の中心。老婆の過去のストーリーに総司の成長も相まって,青春物語としての良さもありましたね。
 で,読ませるのだけれども,どの辺りがミステリなのかなぁ…と気になりだした頃に,しっかりと用意されていました。
 切ないけれども,何か前向きになれる,そして考えさせられる,そんな作品ですね。


No.379 6点 黄色い水着の謎
奥泉光
(2013/04/18 23:46登録)
 中編2本で構成されています。
 ミステリ的な側面だけで判断すれば,正直,特筆すべきものはございません。むしろ,あらら?といった感じ。
 しかし,ユーモアの観点では,個人的にど真ん中。端麗な文章で綴られる主人公クワコー准教授の心情といったら,笑えるというか泣けてくるというか…。心情描写は,自虐ネタの枠を超えて,実は人間の相当深いトコロを突いている印象すら受けます(笑)。現に,クワコーに対し,同情というよりも,共感を覚える局面も多々ありました(涙)。
 好きなんですよねぇ,こういうタッチの作品って。


No.378 8点 ナミヤ雑貨店の奇蹟
東野圭吾
(2013/04/13 16:12登録)
 郵便口や牛乳箱を使い,様々な悩み相談に乗っている「ナミヤ雑貨店」を舞台とした,奇蹟と感動の物語。(タイトルそのままで,あまり紹介になってないか…)
 分類するとすればファンタジーってことになるのでしょう。個人的には好んで読む分野ではないのですが,この作品については,純粋に「読んでよかった」と感じましたね。リーダビリティーの高さ,全体の構成力…って東野サンだけに,言わずもがなでしょうか。とにかく巧いし,間口の広い方だなぁ…と改めて感じ入りました。
 登場人物のそれぞれの優しさに,プラス1点です。


No.377 6点 サファイア
湊かなえ
(2013/04/09 16:18登録)
 7編からなる短編集。タイトルはすべて宝石の名が付されており,ラスト2編を除き,単独読み切りの短編となっています。
 唯一の連作となっているラスト2編は,ちょっと中途半端だったかな。一方,単独読見切りの5編は,個人的には結構好きなタイプ。特に以下の2作が好み。
「ムーンストーン」 
 ドロドロしそうな中での温かみが印象に残りそうですが,後半のちょっとした仕掛けの効果も大きいです。
「ルビー」
 予定調和と言うなかれ。こういう「ほっこり系」には弱いのです。


No.376 5点 ローカル線で行こう!
真保裕一
(2013/04/05 23:35登録)
 「デパートへ行こう!」に続く,「~行こう!」シリーズ第2弾。今回の舞台は,宮城県にあるという赤字の三セク鉄道会社,その名も「もりはら鉄道」。平成19年に廃止となったくりはら田園鉄道(通称:くりでん)がモチーフになっているものと思われます。(終点に鉱山跡地がある点とか…)
 廃線もささやかれる「もりはら鉄道」の新社長に就任したのは,地元出身であり,新幹線のカリスマ・アテンダントであった独身女性(31歳)。副社長は,県庁から送り込まれた役人気質満点の同年代男性。立ちはだかる経営幹部や社員たち。それでも,社長の奮闘で社員や沿線地域が一体となる中,不穏な事件が続発し…という展開。
 ミステリー的な味付けも多少はありましたが,「味付け」と述べていいのかすら迷う程度のもの。あくまでもエンタメ小説として楽しむべきでしょう。真相のひとつは結構想像しやかったものの,「読み物」としてはそれなりに楽しめましたよ。

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