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ミステリの祭典

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アガサ・クリスティー賞殺人事件

作家 三沢陽一
出版日2014年09月
平均点5.00点
書評数4人

No.4 6点 名探偵ジャパン
(2017/09/29 17:21登録)
実に興味をそそられるタイトルです。
が、これは連作短編集で、その中の最終作をメインタイトルにしたもので、ページを開いてちょっと拍子抜けしてしまいました。
作家になることを諦めて死ぬつもりで旅に出た主人公が、行く先々で奇妙な事件に巻き込まれるというスタイルで、最終一作前で、自作が「アガサ・クリスティー賞」を受賞したことを知ります。いや、結果確認してから死のうとしろよ。

短編向きのトリックをうまくまとめた小気味の良い作品が続き、いよいよ迎える表題作。これはタイトル以上に中身に拍子抜けしてしまいました。そこまでに至る事件が、実にいい感じで進んでいたために、余計にこれは……という感じです。
容疑者たちが、取り調べで次々に有栖川作品の素晴らしさを語る「異様な有栖川推し」も、書き手が受賞二作目の新人だから、というフィルターがかかっているせいかもしれませんが、ただのおべんちゃらにしか聞こえません(これを綾辻あたりが書いたなら、ジョークとして流されて、読者も居たたまれない思いをしなくて済んだでしょう)。
「終わりよければすべてよし」を逆に行ってしまったような気がしました。

最終作を取っ払って、「死ぬ死ぬ」言いながらも元気に日本全国を旅し続ける作家崩れの事件集。みたいな構成にしたほうが面白かったかもです。

No.3 4点 アイス・コーヒー
(2014/12/15 19:53登録)
放浪する作家志望の青年が各地で出会う奇妙な事件の数々と、アガサ・クリスティー賞授賞式で起こった惨劇を描く連作短編集。

「首無し地蔵と首無し死体」で登場する首切りのホワイダニットだったり、「柔らかな密室」のテントを使った密室トリックなどまずまずのネタはあるものの定番のパターンが多く捻りが足りないように感じた。ストーリーも目新しい設定や魅力的な部分は感じられず、正直面白くない。
一方表題作の「アガサ・クリスティー賞殺人事件」は前四作とは打って変わった方向性の内容になっているが、この真相はある程度予測できたものだし、それにあまりにも唐突すぎて納得がいかない。せめて連作らしく伏線の張り方を工夫すればよかったものを…と思ってしまう。
全体的にトリックにもストーリーにも斬新さが欠けていて、もう少し著者の特色を出してほしかった。センスは悪くないが、もう少し工夫を凝らしてほしいと思う。

No.2 6点 虫暮部
(2014/10/28 12:47登録)
 「柔らかな密室」のトリックに拍手。
 「アガサ・クリスティー賞殺人事件」に唖然(泡坂妻夫へのオマージュ?)。
 しかし何より、「蛇と雪」の心理的凶器が印象的。

No.1 4点 まさむね
(2014/10/23 23:27登録)
 「致死量未満の殺人」で第3回アガサ・クリスティー賞を受賞した作家による,受賞後第一作品。そしてこの表題作ときた。分かり易いですねぇ。
 さて,前作「致死量未満の殺人」は,文章力にやや難があり,派手さもなかったものの,プロット自体は極めて堅実で,むしろ好印象を抱きました。
 で,本作品は5編で構成される連作短編集。個人的には,前作での好印象に加え,「作家や評論家が実名で登場。さらに被害者は有栖川有栖」という謳い文句に惹かれて手にしたわけですが,実質的にその謳い文句が活かされるのは,最終話となる表題作にたどり着いてから。
 最終話までの4作品は東北の各地を舞台にしたもので,堅実とも言えるし,無難すぎるとも言える内容。決して嫌いではない部類(特に「柔らかな密室」は何気に好きなタイプ)なのですが,何と言いますか,表現も含めて「新しさ」は感じ得ないかなぁ…と。
 最終話については,相当な肩すかし感を抱きました。トリックも薄目だし,動機も強引すぎる。前4話の存在意義もよく分からず,連作短編集としてちぐはぐ。残念。
 それと,有栖川ファンの私にとっても,最終話での「有栖川押し」の強さにはちょっと引き気味になりましたねぇ。これも如何なものかなぁ…と。

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