home

ミステリの祭典

login
まさむねさんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:1230件

プロフィール| 書評

No.570 5点 どんでん返し
笹沢左保
(2016/01/21 23:54登録)
 二者間の会話のみで構成される短編集。3名が発言する短編もありますが、いずれも、それぞれ「二者間」の会話で構成されています。
 軽快で読みやすいのですが、全短編に期待するレベルの反転があるのかと問われれば、ちょっと苦しいかな。まぁ、タイトルが「どんでん返し」っていう時点で、あれこれ想定しながら読んでしまいますし、ハードルも上がってしまうのでしょうが。


No.569 5点 松谷警部と三ノ輪の鏡
平石貴樹
(2016/01/16 23:00登録)
 松谷警部シリーズ第3弾。
 白石イアイ巡査部長(昇進したのですね)による、伏線を丁寧に回収していく解明シーンが読みどころ。真相にも、(現実味は別として)意外性があります。
 一方で、どうしても警察の捜査過程をひたすら読みこむ…という時間帯が長くなり、特に中盤、読み進めるモチベーションの維持に苦労したことも事実。
 堅実かつ高精度の作品であることは確かで、さらに読者を引っ張る吸引力を求めるのは、欲張り過ぎなのかもしれませんが。


No.568 4点 ちょっと今から仕事やめてくる
北川恵海
(2016/01/09 22:13登録)
 まぁ、ミステリー的な側面が無いわけではないのですが、相当に軽め…というか、簡単すぎる。これをエサにして、どんなどんでん返しがあるのか…と、様々想定させておきつつ、捻りなしでそのまま終わらせるという、むしろ相当に高度なテクニックなのかもしれません(嘘)。このサイトでの採点としてはこのあたりか。
 とはいえ、あっという間に読み切れる分量だし、特に若手で企業社会に嫌気が差している方には読んでもらいたいかな。


No.567 6点 さよなら妖精
米澤穂信
(2016/01/09 22:02登録)
 昨年話題の「王とサーカス」、さらに連作短編集「真実の10メートル手前」を読む前に、これらの探偵役らしい「太刀洗万智」に触れておこう…という、ある意味で邪まな動機で手にした次第です。
 ミステリとしてはちょっと弱いというか、多少のこじつけ感もありますねぇ。しかし、印象は決して悪くない。ユーゴスラビアから来日した少女を中心に添えた意義は大きく、ラストは印象に残りそうです。同国についても、随分勉強になりましたしね。
 さて、この作品でも印象的であった「太刀洗万智」のその後について、「王とサーカス」、or「真実の10メートル手前」を読むことが楽しみになってきました。


No.566 6点 静おばあちゃんにおまかせ
中山七里
(2016/01/03 19:07登録)
 文庫版解説で佳多山大地氏も述べているのですが、いやはや、まずはタイトルと表紙に(勝手に)騙されましたね。静おばあちゃんが日常の謎を解く安楽椅子モノと思っていたところ、思いっきり人が死ぬ連作短編でしたね。
 正直、個々のトリックは既視感のあるものばかりでしたが、謎自体は非常に興味深く、本格指向は明確です。法とは何か、人を裁くとは何か等々、社会派的な側面も含めて、個人的には結構好きなタイプでしたね。静おばあちゃん、その孫娘「高遠寺円」、若手刑事「葛城公彦」のキャラも嫌いではなく、連作短編として上手く纏まっていると思います。ただし、ラストに関しては賛否が分かれるかも?


No.565 6点 陽気なギャングの日常と襲撃
伊坂幸太郎
(2015/12/31 15:13登録)
 素直に面白いエンタメ小説。伏線の仕込み&収斂の巧さ、憎めない登場人物と小粋な会話、読後の爽快感などなど、いかにも伊坂さんらしい。陽気なギャングシリーズは、色々考えずに、本に身を委ねてひたすら楽しむべし。
 さて、そのうち第3弾の続編も読んでみよう。


No.564 5点 化石少女
麻耶雄嵩
(2015/12/27 09:15登録)
 最初の30ページくらいまで、「これは、本当に麻耶作品なのか?」と表紙(作者名)を見返した程、いつものテイストとは異なります。
 まぁ、探偵とワトソン役との新機軸(推理はともかく変人扱いされる探偵+外形的に探偵の下僕的役割ながら最終的には探偵を操縦しているワトソン役)を示したあたりは、いかにもこの関係性を追求し続けてきた作者らしいと言えますし、これらの点での新鮮味はあります。
 一方で、各々のトリック自体は微妙な印象。普通、何らかの痕跡があるはずだから、警察も気付くよね、少なくとも調査はするよね…的なネタも多いかな。全体的に、スカッとしたい人には向かないかもしれませんね。


No.563 7点 赤い博物館
大山誠一郎
(2015/12/20 23:40登録)
 閑職である「警視庁付属犯罪資料館」の館長を務める美人キャリアと、凡ミスから捜査一課を追い出された巡査部長。このコンビが次々と過去の事件の真相を解明していく…と、超要約してしまえば、警察小説と言えなくもないのですが、中身は完全な本格ミステリ。どの作品も想定以上の着地を見せてくれましたし、ロジックも良。高水準な短編集と言えましょう。マイベストは、作中作の使い方が光る「復讐日記」か。


No.562 5点 舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵
歌野晶午
(2015/12/13 22:46登録)
 14歳になった舞田ひとみ。今回は探偵役なのだけれども、相変わらずすっ呆けた言動が楽しい。でも、ミステリとしては緩いなぁ。イマイチな短編もあったなぁ。(そもそも暗号モノが好きではないのでね。)


No.561 5点 中野のお父さん
北村薫
(2015/12/08 22:48登録)
 出版社(文芸部)に勤務する体育会系女性編集者が出会った日常の謎を,定年間近の教師である父(中野在住)に相談してみると見事解決!…という、安楽椅子モノの連作短編集。探偵役が教師ってあたりは、作者自身をモチーフにしているのかな。8つの短編とも、分量は少なめなので、あっという間に読了できます。
 非常に読みやすいタッチで読み心地が良いです。出版社の楽屋ネタ?や、文芸・落語に関する薀蓄も楽しく、女性編集者にも好感が持てます。ただし、ミステリとしても軽めのタッチなので、多少物足りなかった印象も否定できないかな。


No.560 5点 舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵
歌野晶午
(2015/12/05 18:05登録)
 ノベルス版の「著者のことば」で、「本書を一言であらわすなら、『ゆるミス』、『やわらか本格』―まあそんなところです。」とありますが、まさにそんな感じ。人はガンガン死ぬのですが、何故かほのぼのとしています。これは舞田ひとみ(11歳)のキャラによるところ大なのですが、予想に反して探偵役ではないのですねぇ。勝手に女子版コナンかと思っていたのですが…。出番も叔父の歳三氏の方が圧倒的に多いですね。
 作者にしては変化級が少なく,ストレート中心のピッチングといった印象ですが,水準級には楽しめたかな。


No.559 5点 パティシエの秘密推理 お召し上がりは容疑者から
似鳥鶏
(2015/11/30 19:17登録)
 ストーリーとして敢えてスイーツにこじつける意義が少ないような気がするなぁ…、そもそも喫茶店・珈琲店・ビストロ系ミステリ(勝手に括ってみた)は食傷気味なんだよなぁ…ってのが、正直な感想。
 一方で、第3話「星空と死者と桃のタルト」における“放射線おばちゃん”の描き方など、「そうそう、いるいる!こういうタイプ!」と膝を打つ場面もございました(ミステリとしては直接関係ないですけどね…)。各短編自体は悪くなく、連作モノとしても無難にまとめていると思います。


No.558 10点 折れた竜骨
米澤穂信
(2015/11/28 20:52登録)
 当時、各種ミステリランキングで相当に評価が高かったことは、知っていたのです。しかし、表面だけで判断しがちな私は、「はぁ、剣と魔法の世界って言われましてもねぇ。しかも舞台は中世ヨーロッパときましたか。はぁ。」といった心の声に従い、決して手にしなかった訳であります。
 嗚呼、なんと浅はかだったのでしょう!ファンタジーとミステリの見事な融合。解決シーンは圧巻で、まさに本格の王道路線。(消去法による解決手法はベタすぎるとの意見もありましょうが、この手法もまた王道の一つと言えましょう。)伏線の配置と回収もお見事。さらに、登場人物の一人ひとりが実に魅力的で、ストーリーとしても美しい。
 特殊設定系ミステリの新たな可能性を体感させていただいたことに感謝申し上げ、思い切ってこの点数に。


No.557 7点 その時の教室
谷原秋桜子
(2015/11/20 21:22登録)
 構成としては、教諭を中心に据え、学校を舞台とした4つの短編に、その短編間に挿入されている幕間を繋ぎ合せて、プラス1短編といった構成。
 短編のうち、「その時」のラスト1行が心に突き刺ささりました。ミステリ云々という視点は別として、これまでに経験のない読後感。私の個人的な体験が深くかかわっていることは間違いないですが、かなり響きました。
 また、「幕間つなぎ短編」については、あざとすぎる面は否めないものの、最終的には、そのような視点では読んでいないし、前向きで巧くまとめてくれたな…という印象。私にとっては、相当に印象に残る読書となりました。


No.556 7点 ミステリー・アリーナ
深水黎一郎
(2015/11/15 19:10登録)
 叙述を重ねに重ねて、なお成り立たせる構成力に、まずは魅かれました。
 さらに、その前提として、よくもまあこれだけの伏線(正確には伏線のための伏線って感じか)を仕込んだものだなぁ…と、その努力にも感心。「はいはい、ここ注目ですよ~」といった判りやすいものから、「そこまでやっちまうのかい!」と突っ込みたくなるものもあって、なかなかに楽しめましたねぇ。
 作者の遊び心を楽しみつつ、読後には結構考えさせられる同志もいらっしゃるであろう、精緻な作品という印象かな。


No.555 6点 ジャイロスコープ
伊坂幸太郎
(2015/11/08 18:43登録)
 アンソロジーや雑誌に掲載された短編に書き下ろし短編を加えた、作者初の文庫オリジナル短編集。
 ミステリーとは言い難い短編が多くを占めますが、逆に作者の良さを詰め込んだバラエティに富んだ短編集と言えるのかもしれません。
 好きなのは、「浜田青年ホントスカ」、「一人では無理がある」、「彗星さんたち」かな。「if」も掌編として、なかなか面白い。すべての短編の受け皿として書き下ろされたであろう、最終話「後ろの声がうるさい」は、いかにも作者らしい。一方で、「ギア」と「二月下旬から三月上旬」は、個人的に合わなかったかな。
 個人的に、伊坂サンの作品は長編よりも短編の方が好みなのですが、その辺りが巻末のインタビューで語られていて興味深かったですね。


No.554 5点 東京結合人間
白井智之
(2015/11/07 21:57登録)
 うーん、「結合人間」という特殊設定を活かしたと言ってよいものかどうか、微妙です。序盤のグロさに嫌悪感を持つ方もいらっしゃるでしょう。最終的に本格度は高いと思うのですが、終盤の捻りも含めて、何かスカッとしない。
 作者のデビュー作「人間の顔は食べづらい」を超えることはなかったなぁ…という印象かな。


No.553 5点 この国。
石持浅海
(2015/11/03 18:36登録)
 一党独裁の管理国家。しかし戦争を放棄した平和国家であり、治安がよく、経済も発展していて、国民の満足度は高い。そんなパラレルワールドの日本(決して作者は日本とは断言していないが)を舞台とした連作短編集。
 そんな国では、小学校卒業時に児童の将来が決められ、国防軍は名ばかりのものとなり、多くの女性が国外から売春婦としておとずれ、「カワイイ」文化を愛する…。
 この設定自体は、かなり興味深いと思うのです。柔軟問わず、様々な切り口での作品が出来上がりそう。でも、活かしきれていないなぁ…と。サクサク読み進められる展開も、番匠中佐のキャラも嫌いじゃないのだけれど、個人的には、もの凄く勿体ない印象を受けました。もっとこの舞台を縦横無尽に活用してほしかったなぁ。


No.552 8点 宵待草夜情
連城三紀彦
(2015/10/30 22:27登録)
 マイベストは、「花虐の賦」。反転が実にお見事で美しい。傑作です。
 表題作「宵待草夜情」の全体を包み込む儚い空気感も素晴らしい。
 とにかく短編集全体が、大正ロマン溢れる筆致で男女の情愛を描いており、今の時代だからこそ、この雰囲気が活きてくるような気もします。
 「戻り川心中」や「夜よ鼠たちのために」とともに、これぞ連城!というべき短編集ではないでしょうか。


No.551 5点 公開処刑人 森のくまさん
堀内公太郎
(2015/10/24 19:45登録)
 導入部からテンポが良く、ストレスなく読み進められます。(後半はちょっとクドイ印象もありますが。)
 でも、犯人は分かりやす過ぎたなぁ。逆に何かあるに違いないと疑いたくなるような展開。きっと、多くの方が「そのままかい!」と突っ込むことになるでしょう。
 ソコも含めて、楽しめはしたのですが。

1230中の書評を表示しています 661 - 680