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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:1279件

プロフィール| 書評

No.619 5点 北乃杜高校探偵部
乾くるみ
(2016/10/13 22:58登録)
 京都府宇治市にある名門高校を舞台とした連作短編集。タイトルどおり、5人(男子3+女子2)の仲間たちが「探偵」として謎解きをする…という、極めて典型的な学園青春ミステリー。
 作者らしくなく(?)サラッとしているというか何というか、まぁ、良く言えば爽やかだし、別の言い方をすれば当たり障りがなさ過ぎるかな…という印象。ミステリー度もそんなに高くないですし,肩透かし感が残る短編も正直あります。
 とはいえ、自分の高校時代にシンクロするところもあり、読み心地も悪くなかったので、この点数にしておきましょう。


No.618 6点 言霊たちの夜
深水黎一郎
(2016/10/12 20:35登録)
 4編で構成される、「日本語」をテーマにした短編集。全てとある一夜の出来事で、各話に緩やかな繋がりを持たせています。
 まず、第一話「漢は黙って勘違い」が笑えます。アンジャッシュのコント的な面白さも。
 第二話「ビバ日本語!」は、笑わせてもらいながら、結構他言語の勉強にもなったりして興味深い。
 第三話「鬼八先生のワープロ」は、もう、バカバカしさ全開。でも嫌いじゃない。
 最終話「情緒過多涙腺刺激性言語免疫不全症候群」は、主人公の主張自体はよく分かるので、結末としては可哀想だったかな。
 いずれの作品もミステリとは言い難いのでこの点数にしますが、笑いの中にも、言語に対する作者の造詣の深さが垣間見えますし、結構読み得な印象を受けましたね。


No.617 4点 裁く眼
我孫子武丸
(2016/10/08 12:05登録)
 「法廷画家」を主人公に据えた点が、まずは新鮮。そして、連続殺人疑惑がかかる美人被告等の法廷内のストーリー、さらに自分も含めた法廷画家への殺傷事件等々の法廷外のストーリーが組み合わさった上で次々と展開され、終盤前まで期待感が相当に高まったわけです。姪っ子の蘭花ちゃんをはじめとした、主人公の周辺人物のキャラも魅力的ですし、読み心地も良いです。裁判員裁判の勉強にもなります。
 しかしながら、結論としてはいかがなものかと。結構な肩透かし感でしたねぇ。何か、凄く勿体ないような気がしましたねぇ。


No.616 5点 挑戦者たち
法月綸太郎
(2016/10/08 10:22登録)
 皆様大好き(?)な、「読者への挑戦」が99連発掲載されています。
 「こんな『読者への挑戦』はイヤだ!」をはじめ、楽しいといえば楽しい(ものもある)のですが、どうなんだろう、遊び心あり過ぎじゃないのか?という気がしないでもありません。まぁ、これはこれで良しとしても、そろそろど真ん中のパスラーを書いてほしいなぁ。


No.615 5点 メビウスの殺人
我孫子武丸
(2016/10/01 19:03登録)
 シリーズ第3弾。
 「8」、「0」とそれぞれの面白さがあったのですが、この作品はちょっと微妙な印象。本作執筆中に 「殺戮にいたる病」 のプロットが浮かんだとのことで、確かに、背景自体は三作品中最大と言えるのかもしれませんが、活かし方が中途半端といった印象を受けました。とても読みやすい作品ではあるのですが。
 三兄妹や木下刑事のキャラに加え、鬼島麗子刑事の登場による展開も使えそうなので、是非続編を読みたいのだけれど、可能性はないのかなぁ。


No.614 5点 四季 春
森博嗣
(2016/09/29 20:21登録)
 幼少期の真賀田四季が描かれております。タイトルからして想像がつきますが、四季押しがスゴイ。こんな5歳児いるか?…等々、もはやSFと分類したいくらいで、個人的には結構引き気味でしたね。ミステリとしての味付けはあるけれども、S&Mシリーズ及びVシリーズの読者限定の作品と言ってもいいんじゃないかな。作者の作品世界への嗜好度によって、評価は大きく変わりそうです。


No.613 7点 何もかも憂鬱な夜に
中村文則
(2016/09/25 11:40登録)
 正直、ミステリーではありません。
 ミステリー的な謎らしき事項、正確に言えば、ミステリーであれば何らかの解明を期待するであろう事項は、複数提示されるのですが、最後まで特段明かされることはなく、読者の解釈に委ねられています。と、いうか、ミステリーとして読もうとした自分がちょっとおバカってことですね。
 よって、このサイトに書き込むべきか否か迷ったのですが、現にミステリーに属すべき作品も書いている作家で今後の期待も大きいし、何よりもこの作品が心に響いたので、皆様の参考のためにも、思い切って投稿いたします。


No.612 7点 鬼畜の家
深木章子
(2016/09/24 12:25登録)
 法律知識に裏打ちされた安定感、そして人生経験の豊富さを感じずにはいられない人物描写。長年弁護士を務められた作者ならではと言えるのですが、決して法律的なガチガチ文体ではなく、リーダビリティも高いです。60歳を超えたデビュー作ですので、単なる「デビュー作」ということで比較してよいものか、迷うところではありますが、若手には難しいであろう、青春小説では表しようのない人間の感情が滲み出ていて、この点では段違いの感があります。
 全体構成や仕掛け自体は、決して目新しいものではないのですが、潜在能力の高さを感じることができます。(60歳を超えた人生の先輩に対して大変僭越な言い回しですが。)島田荘司氏も解説で述べておりましたが、法曹界など、社会の役割を勤勉に支え続けてこられた方々が、退職後にミステリー界でもう一役担う時代になっているのかもしれません。


No.611 5点 作家小説
有栖川有栖
(2016/09/19 00:11登録)
 このサイトで採点するとなると、なかなかに微妙なのですが、ファンとしては悪くないかな。正直、文庫版解説にある「奇妙な味」とまで評せるかは別として、第一話の「書く機械」と最終話の「夢物語」は印象に残ったかな。


No.610 3点 101号室の女
折原一
(2016/09/10 21:24登録)
 9篇からなる、ノンシリーズ短編集。
 うーん、ちょっと自分とは合わなかったかな。伏線が判りやす過ぎ、又はこねくり回し過ぎ、いずれにしても興ざめなタイプの作品が多いなぁ…といった印象。同パターンを並べられるのも辛い。私が捻くれているからなのかなぁ?


No.609 5点 正三角形は存在しない 霊能数学者・鳴神佐久に関するノート
二宮敦人
(2016/09/10 21:12登録)
 イマイチ馴染めないなぁ…というのが、前半の正直な印象だったのですが、第三章以降はグイッと盛り上がり、巧く収束させています。個人的には不得手な雰囲気の作品だけれども、終盤の展開は結構好きかな。


No.608 6点 0の殺人
我孫子武丸
(2016/08/31 22:44登録)
 速水三兄弟妹シリーズ第2弾ですね。
 全体像としては、相当に偶然性に頼った展開と言わざるを得ないものの、最終的に巧く纏めていると思います。個別に見れば小技の範疇でも、組み合わせによって面白味がアップできるという典型ですね。無駄にダラダラ長くせず、コンパクトに収めたことも好印象。個人的には「8の殺人」よりもこの作品の方が好み。


No.607 4点 紙魚家崩壊 九つの謎
北村薫
(2016/08/27 12:15登録)
 9編の短編&掌編で構成。
 最終話「新釈おとぎばなし」は楽しめたけれど、他の作品の中には、ちょっとピンとこないものもあったかな。


No.606 6点 被害者は誰?
貫井徳郎
(2016/08/20 10:35登録)
 4短編のタイトル「被害者は誰?」「目撃者は誰?」「探偵は誰?」「名探偵は誰?」のとおり、広く解釈すればフーダニットと言えなくはないのですが、厳密なフーダニットではないところがミソ。貫井作品には珍しい(?)軽妙なタッチの中に、巧みな仕掛けが施されています。
 個人的には、仕掛け自体は極めて典型的ながら、あっさりと嵌ってしまった表題作「被害者は誰?」が良かった。「探偵は誰?」の、作中作の登場人物から作者を捜すという趣向も面白かったかな。


No.605 6点 股旅探偵 上州呪い村
幡大介
(2016/08/14 20:05登録)
 本格時代小説(メタ)ミステリとでも呼びたくなる「猫間地獄のわらべ歌」が、個人的にツボだったため、早速続編も手にした次第。(舞台や登場人物は全く異なるので、「続編」というのは語弊があるかもしれませんが)
 前作同様、時代小説らしい書きぶりからの突然のメタ転換が楽しい。「時代劇」という言葉が定着しているとおり、読者としては舞台が江戸時代というだけで、登場人物の「役者化」を自然に受け入れてしまう訳で、その結果、突如として現れるメタ展開も違和感なく楽しめるのだと思います。時代小説とメタ・ミステリ、実は親和性が極めて高いような気がします。
 あの手この手で攻めに攻めた前作に比してインパクトは落ちるかもしれませんが、横溝ワールド全開の舞台設定、そして探偵役は「木枯し紋次郎」もどきの渡世人、その状況で時折見せるメタ展開とくれば、楽しめる方も多いと思うなぁ。(合わない方はとことん合わない気もしますが。)
 個人的には、第3弾があれば、是非読んでみたいですね。


No.604 6点 8の殺人
我孫子武丸
(2016/08/10 20:05登録)
 評価は分かれそうですが、私は結構好きなタイプの作品。確かにトリックの一つは分かりやすいのだけれども、綺麗にまとめていると思います。何気に、第二の殺人の方が、バカミスとしての面白味も含めて好きだったりします。木下刑事の存在も、個人的には嫌いになれない。
 文庫版に収録されている島田荘司氏の「本格ミステリー宣言」も、その主張の全てに賛同できるかは別として、かなり興味深かったですね。


No.603 7点 猫間地獄のわらべ歌
幡大介
(2016/08/06 20:11登録)
 時代小説と本格ミステリが絶妙に融合した怪作。
 しかし、詰め込みますねぇ。密室、首なし殺人に見立て殺人、アリバイ崩し、館モノならぬ屋形船モノ…などなど、あまり多く書くのもアレなので控えますが、何よりも作者が楽しみながら書いたのだろうなぁ…という印象。
 時代劇的シーンからの突然のメタ化ですとか、脱力系「読者への挑戦状」等、結構笑える要素も多く、個人的にはかなり好きなタイプの作品。


No.602 6点 ノエル: -a story of stories-
道尾秀介
(2016/08/03 23:01登録)
 3編から成る連作短編集…と言うべきでしょうねぇ。
 最初の「光の箱」は、結構イイ。作者の企みに見事にハマった訳ですが、読後笑顔で「ちくしょう、やられたよ」って呟いてしまうタイプの作品。(逆にこのタイプが好きではない方もいらっしゃると思いますが。)これ単体であれば、もっと高得点。
 で、他の2作品ですが、最初の作品から概ねパターンが想像できてしまうこともあり、インパクトは相当に落ちます。勿論、各話とも、また各話を繋ぐ全体構成としても、綺麗に収束させているのですが、優等生的すぎて、イマイチ引っかからない印象もありました。
 「光の箱」は好きなんだけどなぁ…。


No.601 6点 幽霊列車
赤川次郎
(2016/08/03 22:39登録)
 随分前に読んだような気もするが、全く記憶がないし、是非改めて読んでみたいものだなぁ…と思っていたのですが、今年新装版が出ていたのですねぇ。今年は作家デビュー40周年、その間の著作数は580冊超だそうでございます。
 で、この短編集の表題作「幽霊列車」は、氏の処女作品。女子大生・永井夕子と宇野警部の名コンビ誕生の作品でもあります。走行中の列車から乗客が消失するという謎が魅力的。
 二作目「裏切られた誘拐」、三作目「凍りついた太陽」、四作目「ところにより、雨」も、興味深い謎や終盤の捻り、そしてストレスのない軽妙な語り口で楽しめました。最終話「善人村の村祭り」については、何となく量産体制に移行しつつあるなぁ…といった印象も。
 肩ひじ張らずに、気軽に読みたい気分の時には、丁度良い短編集だと思いますね。


No.600 8点 11枚のとらんぷ
泡坂妻夫
(2016/07/24 19:02登録)
 第一部は、マジック愛好グループの発表会が舞台。ここで事件が発生。第二部は、マジックに関する11の掌編で構成される作中作。第三部は、世界国際奇術家会議が舞台で、犯人を含め、種々の謎が解明されていきます。
 まずは、構成がお見事。第二部の作中作だけでもなかなか楽しめるのですが、当然、ストーリー全体に重要な意味を持たせています。捻りも効いていて、ラスト直前まで目が離せません。泡坂マジックを堪能させていただきました。
 犯人が行なった現場への細工については、合理的に考えればリスクが大きすぎてやらないのではないか…といった疑問もないではないのですが、それは野暮な感想なのかもしれません。
 個人的には、乱れからくりよりも好印象。

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