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ミステリの祭典

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恋文

作家 連城三紀彦
出版日1984年05月
平均点6.38点
書評数8人

No.8 8点 斎藤警部
(2026/06/08 03:03登録)
ああ、これはいいですね。 とてもいい。

恋文  
待ってくれないか ・・・ 少し待ってくれないか ・・  反則密会に、秘密といくつかの告白。 妙に幼さの残る夫を逆頂点に置いての切実な三角関係と、風変りな隣人愛または友情。 人間、◯が懸かるとこれほどまでに大胆な日常オデッセイを演出できるという事か。 どこか微妙にトンチキな空気を醸しつつ、泣かせる言葉の最適所配置は本当にずるい。 循環小数。 18円の思い。 絵が上手い。 幼いキーパーソンが冷静に見守る中で、何なんだこの人たちは本当に。 ファンタジーのようで、寓話のようで、人間派ミステリのようで、捻り過ぎた恋愛ミステリのようでそれとは違うようで、わかりません。 結末は最高に熱い。 余白ありつつ早足の展開は本当に泣ける。 ラストシーン、最後の台詞+ラストセンテンスと急カーブが続いて最後まで揺さぶられた。 「一日一日を大事にしてください」    8点

紅き唇  
「アレ、やってたんだ」 「アレ?」   それは恋そのものではない。 だからこそ未来にあかりが灯っている。 肝腎な点である。 男は早くに妻を失い、義母は腕力と気が強くガサツなトラブルメイカー。 目下再婚前提で交際中の女性と早くも諍いを起こしている。 実の長女とも折り合いが悪くさびしい老後の義母だが、愛着ある亡き次女と連れ添った義息とはウマが合い、一緒にパチンコを打ちに行ったり、時には戦中の泣かせる話を聞かせてくれたりする(いいじゃないの)。 そんな中に浮かび上がる玄妙な四角関係+普通の(?)三角関係。 さり気ない “日常のトリック” とその◯◯には泣かされた。 ミステリ的にも熱かった。 印象的な “蛍” のシーン、殊にその真意真相が分かってみると、また違った感慨に襲われる。 リドルっぽい “焼け残った写真” の件もあれこれ想像して気が遠くなる。 結末はじんわり。 繰り返しになるが、それは恋 “そのもの” ではない。 この感覚を熱く描ける連城は凄い。   8点

十三年目の子守唄
もうタイトルからして泣ける。 出だしからして複雑な家族関係を晒している。 おっとその複雑さは予想以上だ。 しばらくツンデレ落語のスクリューボールかと思わせといて、結局何処に収束させるつもりやら。 主人公の母親は料亭の女将。 旅行先で捕まえて来た、息子の自分よりも若い身元不詳の男を再婚相手に迎えると言う。 彼は抜群な人たらしの才で職人たちや周りの者たちを惹き付けて行く。 主人公は断固として彼を父親と認めないが、年の離れた(複雑な関係の)弟は年が離れているだけにややもすると彼を新しい父親として迎え入れてしまいそうだ。 「友達かなんか?」 「他人だよ、赤の、真っ赤の他人!」 本作には、言葉そのものというより、言葉のパケットの捌き方に独特なポップさを見せる峠の茶屋が数カ所あり、文体に強い魅力を注入している。 物語はやがて多重層の真相暴露を踏み台にして、更に最強反転の領域に解き放たれる。 まさかこれほどまでの人情最強特殊部隊が襲い掛かる結末とは、鼻先にかすりもしなかったワケである。 終盤はもう SUPER BEAVER “人として” が流れて止まらないのである。 ラストパラグラフが最高じゃないか。 “本当はこれで終わりにしたいんだけど、もう一つ話しておかなきゃならないことがあるんだ。”   9点

ピエロ
あからさまな伏線に見え透いた反転、だが感動的な奥深さがあるから問題無し、と気を抜いた途端に、これですよ! どこまでもオープンな、真相は朝靄の中エンディングは、その美しさとも相俟ってチョット多摩蘭のです。 妙に物分かりのいい、呑み込みのいい、優しすぎる亭主と、浮気に踏み切れないその妻。 美容師である妻が髪の毛を切るシーンの象徴性に泣かされました。  「◯◯るよ、俺」 やたら映像的で象徴的意味合いを背負わされた交通事故のシーンはちょっと浮いているかな。 でもいいさ。 それより、当初、轢かれたのは別な人物にするつもりで、やっぱりやめたってことはないのかな。(なんと残酷な!)  8点

私の叔父さん
冒頭の衝撃的台詞。 次いでいきなり “本当は◯◯ではない” との明言。 ところが、このあたりが、何気に化けるわけです。 少し読んだだけで、巨大な切なさ襲来への予感に俺は耐えられるか、と怖れてしまうわけです。 名の知れたフォトグラファーである男と、その親戚である若い女の子の話です。 本当は、名の知れたフォトグラファーである男と、その親戚である若い女の子◯◯の話です。 こんな気持ち悪い設定の話をまんまと日常の謎ファンタジーに仕立ててしまう連城はやばい奴です。 「女誑しの面目躍如だもんな」 まさか、アッチ(とソッチ)は巧妙なダミーで、まさか本当のアレはあの人だったりして、なんて、それはそれでおぞましい仮説も立ててみました。 まさか “不可能妊娠トリック” なんてものが .. なんて夢も見ました。 例のアレ、法的には問題無いって、そうなのか、盲点でした。 ドリームズカムなんとかの代表曲二つに共通で出て来る有名なフレーズを連想させるシーンにはちょっと笑いました。 でも、とてつもなく重みのあるシーンなんですよね、ソコ。 まして、一人じゃないわけでしょう。。 「だったら俺のこと一生忘れるな……」 ああ、時の流れと、時の流れずと。。。。 ラストシーン、まさかそこで、××同士のサドゥンオープンエンドとはなあ。 残響グワーーーーンですよ。 よしておくれよ たまらない  8点強


いつもながら連城本人のあとがきはどういうわけだか本当に泣かせます。
本作へのあとがきは、収録作のインスパイア元になった実体験なども記されており興味津々なのですが、特に自らの母親や父親とのエピソードには不思議と感動させられます。 それにしても自分のお母さまをまさかあのような人物のモデルにするとは、ちょっと笑いました。 

No.7 5点 ボナンザ
(2021/11/19 22:22登録)
直木賞受賞というのも頷けるしんみり沁みる短編集。

No.6 8点 じきる
(2021/06/20 00:48登録)
直木賞受賞作。五木寛之氏の選評での「造花の美が時には現実の花よりリアリティを感じさせることがある」という言葉が、この作品を言い表していると思います。作り物のお話なのに、感情だけでなく五感にまで迫ってくるような素敵な味わいでした。
ミステリの要素は薄いですが、私は大いに支持します。

No.5 8点 take5
(2017/08/10 19:34登録)
後から真相が明らかになるものあり、
真相は藪の中のままのものあり、
人の心や生き様がミステリーなのだから、
これは下手なトリックを読むよりも、
ずっとずっとミステリーの採点が高くて当然かと思います。
主観ですが。

No.4 5点 ALFA
(2017/03/06 10:17登録)
連城三紀彦「恋文」・・・字面を見るといささか気恥ずかしいが、中身は上質でやや薄味の人情噺5編。ミステリではない。
評点は「恋文」5、「紅き唇」6、「十三年目の子守唄」4、「ピエロ」5、「私の叔父さん」5
フェイバリットは「紅き唇」。謎解き(らしきもの)もあって後味はいい。
いずれにも読み手の予想を超えた「無私」の人物が登場する。
世の中に100%「無私で善意の塊」という人間はいないのだから、彼、彼女らを「無私」たらしめている「何か」がキモになると思うのだが、「紅き唇」以外はそれが希薄であるか、または無理がある。
「ピエロ」に至ってはそれが全く描かれていない。したがって読後はただむなしさだけが残る。
その「何か」が描かれれば深い話になると思うのだが。
ピエロもメイクを落とせば生身の人間になるはずだから。

No.3 6点
(2016/12/07 14:14登録)
歪んだ情愛系・ミステリーもどき作品集。

『恋文』タイトルだけがミステリーか?ごくフツーの出来だった。
『紅き唇』ちょっと良い話。ちょっとミステリー。悪くはない。
『十三年目の子守唄』愚痴っぽい独白スタイルが利いている。連城らしくない感もあるが、反転は連城らしい。これがベストだが本編だけが浮いている。
『ピエロ』こういう夫婦がいてもいいが、それがどうしたという感じ。そもそも共感できない。もっと強烈なオチをつけてくれればいいのだが。
『私の叔父さん』大叔父と姪孫(まためい)の関係だけでも興味深いのに、さらにちょっとした背景があるから、なおおもしろい。締めくくり方はすこし透け気味。話としては好みだが、後半がクサい。それに最後の数行は俗っぽくて好みではない。

以上、短編らしい短編、5編。
切れ味するどいとまではいかないが、十分に楽しめた。著者の数々のミステリー名編とくらべて遜色なし。ミステリー性が低くても問題ない。
が、得られる喜びは刹那的で、読後何も残らない。話の筋は読後10分で忘れてしまいそう。

No.2 5点 まさむね
(2016/03/12 18:22登録)
 昭和59年の直木賞受賞作品。ミステリーというよりも、そういった味付けも一部ある恋愛小説といったところでしょうか。
①恋文:正直、男の心情も女の心情もよくわからない。私が未だにお子ちゃまだからなのだろうか。ともに身勝手なような気がするのだが。
②紅き唇:なかなか沁みます。何年か前の某作家の作品って、この作品にインスパイアされたのかな?
③十三年目の子守唄:個人的に最も作者らしさを感じた短編。反転の妙ですね。
④ピエロ:女性登場人物の心理が分かるようで、よく分からない。身勝手なような気がするなぁ。ひたすら、哀しいなぁ。
⑤私の叔父さん:うーん、よく分からない。結論はこれでいいのだろうか?男も女も身勝手すぎると思うのだが…。

 ③と②は良かったかな。他の3編は、なんだか、難しくてよく分からん。身勝手なような気がするのですがねぇ。

No.1 6点 isurrender
(2010/09/19 02:38登録)
推理小説ではないです
でも、さすが推理作家というべきか随所にミステリ的要素を含んでいます
小説として大満足の一冊でした

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