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ミステリの祭典

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人影花

作家 今邑彩
出版日2014年09月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 7点 虫暮部
(2023/10/12 12:54登録)
 厳選したと言うだけあって、“没後の落穂拾い” と言うエクスキューズは不要な高品質作品集(そういうのって玉石混交になりがちじゃない?)。どれも良くありそうなパターンながら、上手く料理している。他愛のないショートショートで一息つくことさえ必然的な流れに思えたりする。

 「疵」にはすっかり騙された。“目の前のビルと互いに丸見え” と言うのが伏線になるかと思ったけど……。
 「いつまで」は予想を微妙に裏切り続けて、“可愛いという気持ちさえも~” に辿り着く展開に共感。ストレートに感動してしまった。

No.3 7点 E-BANKER
(2016/08/14 10:42登録)
2014年、作者の死後に発表された短編集。
これまでどの作品集にも収録されたことのないものを集めた記念碑的作品。

①「私に似た人」=“間違い電話”をプロットの軸に置いた作品はたまに見かけるが、その中でも出来の良い方だと思う。ほんのちょっとした出来心が思わぬ方向に・・・だけで終われば普通の作品だが、ラストは作者らしいオチに。
②「神の目」=いわゆるストーカー犯罪がプロットになった一編。ごく普通に終わるかと思われた矢先に示されるサプライズ・・・まさに短編の見本というやつだ。登場する探偵コンビもなかなかいい味出してる。
③「疵」=これも一見して軽いホラーかと思いきや、ラストは見事な反転にヤラレタ・・・っていう感じになる作品。まぁ作者の作品を読みなれていれば大凡の予想はつくかもしれないが・・・
④「人影花」=タイトルは「椿」の別名のこと。椿という花はそこにいる人の数だけ花を咲かせるという言い伝えがあるという・・・。妹夫婦の仲に危険の萌芽を感じた兄が恐ろしい予感にかられたとき・・・
⑤「ペシミスト」=気の利いたショート・ショート。
⑥「もういいかい・・・」=気の利いたショート・ショートその2。でもこちらはホラー風味。
⑦「鳥の巣」=これは実に作者っぽい一編。鳥の化身とも思える女の姿にゾッーと思ってるうちに、更なるサプライズなラストを迎える・・・(こういうオチなのね)
⑧「返してください」=これも反転の効いた作品なのだが、ちょっとパンチ不足気味。
⑨「いつまで」=ホラー版「ちょっといい話」・・・っていう感じ。

以上9編。
実に達者だ。前述したとおりだけど、作者らしさが良く出た作品集。
ホラーという調味料をうまい具合に絡ませながら、サプライズ&反転というパンチの効いた後味を出す・・・
料理で表現すればまさにそんな感じ。

こんな佳作が今まで未収録だったこと自体、作者の力量を表しているのではないか?
返す返すも若くしての逝去が惜しまれる。
まだ多少未読作品が残ってるので、順次手に取っていくつもり。
(ベストは⑦かな。次点が①or②。ショート・ショートの2編も実によい)

No.2 5点 まさむね
(2016/03/19 22:03登録)
 これまで作者の個人短編集に収録されたことのない作品をまとめた短編集。サスペンス溢れる展開の中、ホラーとして着地するのか、反転があるのか…と、ついつい読み進めさせるあたりは流石です。
 「疵」、「鳥の巣」、「神の目」の3短編が好み。他の作品のレベルはまちまちといった印象ですが、氏らしさを感じることのできる短編集と言えましょう。

No.1 6点 kanamori
(2014/11/06 18:35登録)
昨年亡くなった作者の、個人短編集に未収録だった作品を集めた文庫オリジナル短編集。
ホラーっぽい謎解きミステリから、サイコサスペンス風のもの、サプライズ系のホラー、しゃれたオチのあるショートショートまで、充実した良質な作品が揃っており、落穂ひろい的なものではない。

収録作のなかでは、間違い電話の相手との通話が予想外の展開を見せる「私に似た人」と、婚約者が変死した札幌のホテルを訪れた女性が知る意外な真相の「疵」、山中湖の保養所で女性が遭遇する悪夢「鳥の巣」の3編が特に印象に残る。
また「神の目」は、謎のストーカーの意外性と不可能興味で読ませるが、長編『大蛇伝説殺人事件』の男女私立探偵コンビが再登場、このコンビのやり取りも楽しい。
謎解きミステリがどんでん返しで着地するのは当然ですが、ホラーやサスペンスものでも最後にサプライズを仕掛けてくる今邑作品の面白さを再認識できるハイレベルな短編集になっていると思う。

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