home

ミステリの祭典

login
まさむねさんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:1230件

プロフィール| 書評

No.810 6点 我が家の問題
奥田英朗
(2019/02/23 18:18登録)
 筆達者な作者さんだよなぁ、と改めて感心いたしました。「家族」について考えさせられつつ、ほんわかと温かい気持ちになります。ミステリーとは言い難いのでこのサイトでの採点は控え目にしますが、純粋に楽しめましたね。
 マイベスト短編は「妻とマラソン」で、ラストは目が潤みそうになりました。そして、マイベスト台詞は、「夫とUFO」で妻が発する「これからおとうさんを救出してきます」。家族って、やっぱりいいな。


No.809 6点 千年図書館
北山猛邦
(2019/02/17 22:35登録)
 5篇で構成される短編集で、雰囲気は「私たちが正座を盗んだ理由」に似ています。
 マイベストは一話目の「見返り谷から呼ぶ声」。いやはや、最後にやられました。根幹は、よく見かける「アレ」であって新味はないのでしょうが、見せ方が巧く、綺麗。恥かしながら(?)完全に嵌ってました。
 一方で、表題作「千年図書館」は、前半で肝に気付いてしまったことから、その後は「正解の確認」を目的とした読書になっちゃいましたねぇ。そして最後に「蘇部健一かよ!」と突っ込む自分がいましたね。いや、テーマとしてはズシリと響く、重いものであることは間違いないのですが。


No.808 6点 船上にて
若竹七海
(2019/02/16 18:43登録)
 ノンシリーズの短編集。各短編の初出が1992年から1996年なので、作者にとっては比較的初期の短編集と言えそうです。若さの影響もあるのでしょうか、彼女の十八番である「苦み」も含めて、多少角が立っているような印象を受けました。決して嫌な「角」ではなく、むしろ楽しめたという側面もあるのですがね。マイベストは、ほっこりブラックユーモア系の「優しい水」でしょうか。


No.807 7点 叙述トリック短編集
似鳥鶏
(2019/02/12 21:57登録)
 何とも挑戦的なタイトルであります。「最初から宣言してますから、アンフェアではないですよね。で、どうです、読んでみます?」という、作者の挑戦心を感じますよね。私の琴線に触れまくるタイトルです。
 で、読後の感想としては、純粋に面白かったですね。嗚呼、俺ってやっぱり騙されるのが好きなんだよなぁ、と再認識。作者の、計算しつつの遊び心を楽しませていただきました。作者の筆致は元々好きでしたし。
 内容としても素敵だった「背中合わせの恋人」、ある意味で社会派の「ニッポンを背負うこけし」が(叙述トリックの出来は別として)印象的だったかな。叙述トリック的なベスト短編は…いや、敢えて申しますまい。
 こういった趣向を好まない方も多いかと思うのですが、まぁ、好き嫌いが分かれる作品というのも貴重だと思うので、できるだけ多くの方々の書評を拝見したいところではあります。


No.806 6点 ラブ・ケミストリー
喜多喜久
(2019/02/10 21:32登録)
 第9回「このミステリーがすごい!」大賞の優秀賞受賞作。当時結構売れていたので購入したものの、長い間我が家で積ん読状態にございました。
 正直、ミステリーとしては相当に弱いです。唯一のミステリーとしての側面も、序盤(読了率10%未満)で容易に察しがつきます。まさか、ホントにコレやるの?って感じで読み進めることになります。
 とはいえ、東大農学部を舞台としたラブコメっぷりは、なかなか楽しかったですね。構成自体がシンプルなことも良かったのだと思うのですが、最終的には真下さんってどうなの?ってことが気になりましたね。


No.805 5点 届かぬ想い
蘇部健一
(2019/02/03 22:20登録)
 「『ダメさを突き抜けると傑作になる』という価値転倒で人気を集める稀有な作家」である蘇部健一氏の作品としては、相当にまともなタイムトラベル系SF作品。
 前述の括弧書き部分は、大森望氏よる文庫版解説からの引用なのですが、個人的には激しく同意。なので、まともに書こうとした本作は、突き抜けてはおらず、傑作でもない…という結果になる。
 いや、工夫は真っ当だし、意図もよく分かります。ただし、文章の拙さは相変わらずで、物凄くチグハグな印象を受けます。巧い書き手さんが同じテーマで書いたら、ぜーんぜん違う感じになるでしょうねぇ。やろうとしたことは嫌いではないのですが。


No.804 7点 首無館の殺人
月原渉
(2019/02/02 21:20登録)
 純粋に面白かったですね。クローズドサークルに連続首切り殺人、主人公の令嬢は記憶喪失という、何とも魅力的(?)な設定。展開のテンポもよく、雰囲気もあります。使用人探偵「シズカ」もカッコいい。首を切断する理由が独創的なのですが、個人的には、事件全体の真相の方が記憶に残りそう。無駄に水増しせず、分量をこの程度に抑えたことにも好感。


No.803 5点 友達以上探偵未満
麻耶雄嵩
(2019/01/25 22:02登録)
 3篇から成る短編集。うち2篇は読者への挑戦状付きで、正統派のフーダニット作品と言えましょう。偶然性が強すぎるといった印象も受けつつ、なかなか面白い真相もあって、全体としては嫌いではないです。
 でも、なぜなのだろう。どんどん読み進めようという意欲が、それほど湧かなかったのですよねぇ。女子高生名探偵「桃青コンビ」の設定のせいなのか、私の作者に対する勝手な印象のせいなのか…。


No.802 5点 探偵は教室にいない
川澄浩平
(2019/01/13 23:56登録)
 第28回鮎川哲也賞受賞作。受賞作が堅実な学園モノであったということが、個人的には最大の意外性…といった感じ。
 軽やかな筆致で、読み心地も悪くないのだけれども、如何せん小粒感は否めません。いや、新人賞作品としては確実に小粒でしょうね。前回受賞作「屍人荘の殺人」、前々回受賞作「ジェリーフィッシュは凍らない」と比較してしまうと、ね…。お上手な作品だと思うし、決して作者が悪い訳ではないのでしょうがね。「青春ミステリの新たな書き手の登場に、選考委員が満場一致で推した」という触れ込みだけれども、東京創元社さんは鮎川哲也賞をどのように捉えているのだろう…と気になったりして。ちなみに、このサイトでの書評、私を含めてここまで重複する部分が多いようですねぇ。つまりは、そういうことなのか。


No.801 6点 夏の最後の薔薇
連城三紀彦
(2019/01/12 21:28登録)
 2001年に「夏の最後の薔薇」として刊行された短編集。文庫化に際し「嘘は罪」に改題。私は文庫で読みました。
 12の短編が収録されており、いずれも「浮気」をテーマにしています。いや、正確には「純愛」が根底テーマと言うべきでしょうか。作者らしい反転が楽しめますが、特に前半に収録された作品の方に良作が多いような気がします(中盤以降は似通った構成の作品も…)。1編ごとには簡潔で読みやすいですので、スキマ読書としてもいいかも。


No.800 8点 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件
麻耶雄嵩
(2019/01/07 20:53登録)
 これは、凄いですね。
 バッターが大好きな高めの直球かと思いきや、突然フワッと浮き上がり、フォーク以上にストンと落としながらも、最終的にはアウトコースギリギリに構えたキャッチャーミットに納まっているといった感じ。とは言え、投げっぷりは変化球投手のそれではなく、明らかな剛腕投手タイプなんですよねぇ。(ピッチングに例えるのにはちょっと無理があったかも。ごめんなさい。)
 終盤における木更津の密室謎解きの脱力感には凄まじいものがあったけれども(これ、先の例えだとフォークの部分ね)、いやはや、結局はそういうトコロも含めて楽しめたと言えます。万人受けは難しいかもしれませんが、根強いファンを獲得するにふさわしい剛球であったことは十分に理解できました。個人的には、好きです。


No.799 5点 皇帝と拳銃と
倉知淳
(2019/01/02 12:48登録)
 作者初の倒叙形式の短編集(だと思う)。
 個人的に倒叙モノはあまり好みではないということもあるのだけれども、印象としては、よく言えば手堅い、一般的に言えば普通の短編集といったところかな。死神を彷彿させる風貌の警部とイケメン刑事というコンビの設定が効果的であったかも微妙。同時期の作者の短編集であれば「ドッペルゲンガーの銃」の方が好き。
 好みの作者さんだけにちょっと厳し目の書きぶりになってしまいましたが、水準以上には楽しめましたよ。


No.798 5点 回想のぬいぐるみ警部
西澤保彦
(2018/12/29 23:36登録)
 ぬいぐるみ警部シリーズ第二弾。
 いくらなんでも偶然性が強すぎるのでは?とか、とある準レギュラーのキャラ立ちがすごいけど、シリーズ主役の立場は大丈夫なのか?とか、種々突っ込みどころはあるにせよ、それはそれとして楽しめた ことも事実。全ての短編にぬいぐるみを関連付けるのも大変だと思うのだけれども、西澤さんって、ぬいぐるみ好きなの?


No.797 6点 白霧学舎 探偵小説倶楽部
岡田秀文
(2018/12/23 22:58登録)
 ストレートど真ん中の作品。古典的とも言えるプロットで、それほど驚愕の展開がある訳ではないのだけれども、何かいいな。昭和20年という舞台設定と、「探偵小説倶楽部」のメンバーのおかげかな。雰囲気がイイ。
 ちなみに、177ページのとある部分は、確実に誤記ですね。一瞬、これは何かの伏線なのかと色々考えちゃいましたよ(笑)。


No.796 6点 消えた断章
深木章子
(2018/12/17 23:40登録)
 「交換殺人はいかが?」で小学生探偵役を務めた樹来(じゅらい)も大学四年生に。元刑事の祖父「じいじ」も老人ホームで健在。大学生になった妹の麻亜知(まあち)から、「お兄ちゃんに会いたいという子がいる」と同級生の葛木夕夏を紹介され…。
 序盤から引き込まれる展開。中盤あたりまで「あれ?樹来クン大丈夫?キャラ的にも妹にもってかれてない?」といった不安(?)もありましたが、いやいや、しっかりと仕事をしてくれています。真相の一部は察しがつくし、既視感もあるのですが、リーダビリティ―は高く、不満はなかったですね。「そして誰もいなくなった」と「アクロイド殺し」ねぇ…読後にちょっとニヤリとしましたね。
 ちなみに、樹来と中村刑事のコンビで続編が出たりしないのかなぁ。勿論、じいじも登場してね。


No.795 6点 ドッペルゲンガーの銃
倉知淳
(2018/12/14 22:31登録)
 女子高生ミステリ作家の妹とキャリア官僚(捜査一課在籍)の兄というコンビ、そして彼らのご先祖が…という設定については、個人的にはちょっとアレだったのだけれども、内容自体は本格度が高く、良質であると思います。
 第三話の「翼の生えた悪意」はストレートな密室モノで、途中で気付く方も多いような気がしますが、第一話の「文豪の蔵」は同じ密室モノながら捻りがあり、また、第二話(表題作)の謎も興味深かった。第二話までの評価であれば、7点を付けたかも。


No.794 5点 二年半待て
新津きよみ
(2018/12/11 22:19登録)
 徳間文庫大賞受賞作品で、「大人のどんでん返しミステリー」と銘打たれております。その評について、個人的には半分は認める一方で、肩透かし感も半分くらい残るかな。
 どの短編も、就活とか最近はやりの「○活」をテーマにしていて、その一貫性には好感を抱くのですが、各短編の構成までもが似通っているような気がします。途中で察しがつく短編もあるし、察しがつかなくとも、ミステリーとしての「驚き」とはちょっと違う印象。
 とはいえ、全体的な印象は悪くなく、気軽に読みたい気分の大人向けの短編集といったところ。マイベストは、やはりミステリーとしての要素を備えている、最終話の「お片づけ」かな。


No.793 7点 マツリカ・マトリョシカ
相沢沙呼
(2018/12/03 22:11登録)
 このシリーズの第一作目「マツリカ・マジョルカ」を読んだ際には、それほど良いイメージは残らなかったのですが(キャラ設定のみ記憶に残っている)、第三作目にあたる本書の巷での一定の評価から、ずっと気になってはおりました。ようやく、手にする機会を得た次第です。
 で、内容としては、現在と過去の2つの密室を主眼に据えた堂々たる本格路線で、ちょっと驚かされました。コレって、個人的には、完全に好みの範疇に入るぞ。なかなかの収穫で、何か得した気分です。
 柴犬のネガティブ思考には相当イライラさせられつつも、健全な高校男子の思考回路もあって、その辺りには好感。今回のマツリカ様の名探偵ぶりも良かった。続編も読んじゃうような気がします。


No.792 4点 時が見下ろす町
長岡弘樹
(2018/11/29 19:47登録)
 そもそもミステリーの大概は「作り物」なのでしょうが、それにしても、この連作短編の「作り物感」は強すぎます。反転を経て人間の心情を描こうという意図は分らないでもないものの、どの短編でも「いやいや、そんなことはやらないでしょ、普通は」といった面が否定できません。さすがに狙い過ぎでしょう。それに、連作短編の形態を採った意義も感じられません。読みやすいことは評価するのですが…。


No.791 5点 豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件
倉知淳
(2018/11/25 22:03登録)
 短編集で、うち1編に猫丸先輩が登場。
 全般的に読みやすく、いかにも作者らしい短編集と言えるのですが、脱力感はやや強めで、どの短編も真相自体は想定の範囲内。でも、それぞれの作品でちょっとした”良さ”を感じることができる、その按配は悪くないと思います。個人的には表題作のバカバカしさが好きかな。

1230中の書評を表示しています 421 - 440