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ミステリの祭典

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りゅうさんの登録情報
平均点:6.53点 書評数:163件

プロフィール| 書評

No.83 7点 白昼の悪魔
アガサ・クリスティー
(2011/03/26 07:42登録)
 謎解き重視の作品で個人的には好みなのですが、この真相を見抜くには飛躍した推理が必要で、ポアロの推理にはなるほどと思う反面、必然性に欠けているようにも感じます。大技トリックはありませんが、複数トリックの組み合わせは中々のものだと思います。作中で、ポアロがこの事件の断片をジグソーパズルのピースに例えているように、複数の謎が絡まっていて、真相部分が見えにくくなっています。ピクシー湾で発見された物品、暖炉から発見された燃えかす、洞窟で発見された麻薬、風呂を使用した人物とその理由、窓から投げられた瓶など様々な謎が提示されますが、読者がこのピースをはめこんで、パズルを完成させるのは困難です。


(若干のネタバレをしています。)
 ポアロは、本当の真相を告げる前に、エセ真相ともいうべきことを語っています。ある意味、この可能性もありうるわけで、真相の必然性が感じられなくなっています。
 ポアロは、暖炉に残った燃えかすとリンダの部屋にあった本の内容から、リンダのやったあることを推理していますが、英国人の読者ならこれは推理可能なのでしょうか。日本人には到底無理ですね(作品中では、本の内容にも触れていませんし)。


No.82 7点 無実はさいなむ
アガサ・クリスティー
(2011/03/22 21:15登録)
 読者に提供された手掛かりが不足気味で、謎解きとしては不十分に感じられますが、クリスティーらしい技巧に富んだ佳作です。犯人が巧妙なトリックを仕掛けたというのではなく、物語の進行そのものがトリックになっているところが面白いと思いました。養子5人の特異な家族関係、母親殺しの罪で逮捕された容疑者が無実を主張したまま獄中死、2年後に冤罪を証明する人物が突如出現、それによって引き起こされた関係者間の疑心暗鬼、新たな殺人と殺人未遂の発生、というストーリーも読ませます。端役で登場するある人物が、謎の成立に重要な役割を持っていたことが後でわかります。また、登場人物の性格や考え方のクセといったものが、真相を示唆する伏線となっていることにも後で気付かされました。


No.81 6点 忘られぬ死
アガサ・クリスティー
(2011/03/20 17:15登録)
 主人公とも言うべきローズマリーと他の登場人物との間の心理的葛藤が丁寧に描かれていて、物語としての出来が良く、引き込みの強さは私が読んだクリスティー作品の中でも上位だと思います。しかし、ミステリとしての評価は微妙です。読者が犯人を特定するだけの十分な手掛かりが与えられていないと思います。使われているトリックや犯人の設定など、クリスティーらしい作品ではありますが。


(ネタバレをしています。要注意!)
 この作品の中心となる謎は、ジョージがなぜ殺され、青酸カリがいつの時点で盛られたのかという事でしょう。犯人にとっても予想外の偶然の出来事によって、殺人動機に錯乱が生じている事がこの作品の面白い点です。しかし、この偶然によってもたらされた結果(席の入れ替わり)に、パーティーの参加者が誰も気付かなかったという設定は、ちょっと苦しい気がします。また、青酸カリが盛られた時点については、この真相だと、隣のテーブルにいたシャノンが目撃しているはずだと思うのですが(この部分の説明がわかりにくく、私が読み間違えているのかもしれませんが)。


No.80 5点 もの言えぬ証人
アガサ・クリスティー
(2011/03/19 08:37登録)
 題名から、被害者の愛犬ボブが重要な役割を演じるものと思っていましたが、そうでもありませんでした。読者が合理的に犯人を推理できるような作品になっていないのが残念です。殺人に係るトリックには、ある分野の特殊知識が使われています。ポアロの犯人特定手法も、容疑者の性格分析などによるものであり、必然性が感じられません。犯人は、クリスティーの一般的傾向から推測される人物ではなかったのが意外でした。最後にポアロが犯人に対して取った措置は、これで良かったのでしょうか。


No.79 7点 パーカー・パイン登場
アガサ・クリスティー
(2011/03/08 19:01登録)
 私も初めて読んだクリスティー作品はこの作品でした。久しぶりに再読しました。軽い文体の短編集で、いずれもひねりのある結末になっています。パーカー・パイン氏が新聞に掲載した広告記事の文章が印象的です。パイン氏は統計的知識を活用し、前半6作の人生相談ものではスタッフを使った大芝居を打って、相談者の問題を解決します。個人的ベスト作品は「デルファイの神託」、次点が「悩める淑女の事件」です。
「悩める淑女の事件」
 パイン氏はある人物の策略を見抜き、肩透かしを食わせます。
「金持の夫人の事件」
 パイン氏の大掛かりな演出によって、夫人は本当の幸福を見出します。
「ほしいものは全部手に入れましたか?」
 相談者の夫が残した奇妙な手紙から、パイン氏は宝石盗難事件の真相を見抜きます。
「デルファイの神託」
 見事なミスディレクションで、結末ではあっと驚かされます。


No.78 5点 葬儀を終えて
アガサ・クリスティー
(2011/03/07 18:44登録)
 クリスティー・ファンクラブが第9位に選んでいる作品ですが、個人的にはあまり評価できません。私はこの真相が見抜けませんでしたが、かなりアンフェアな作品だと思います。


(完全にネタバレをしています。注意!)

 ギルクリストはコーラに成りすましてリチャードの葬式に参列した後、本来のギルクリストに戻って、スーザンやモードに会い、さらにエンダビーを再訪問して、関係者ほぼ全員と会っています。ここまでやって、「葬式に参列したコーラ」とギルクリストが同一人物であることに誰も気付かないという設定は乱暴でしょう(しかも、ギルクリストは大胆にもわざわざ希望して、エンダビーを再訪問している)。私でも、「葬儀に参列したコーラ」がギルクリストの成りすましである可能性は一応考えましたが、矛盾があるため、却下しました。犯人の動機も後出し気味だし、この動機でこんな面倒な犯罪計画を立てるとは考えられません(目的の絵画をレプリカと入れ替えて入手し、仕事を辞めるだけで良かったのでは)。鏡の左右反転からのポアロの推理もぱっとしません。ギルクリストが「あの造花とテーブル、ほんとうにぴったりですわ」と言った一言が、犯人を特定する唯一の決め手となっているのですが、読者がこの一言を見逃さないためには相当の注意力が必要でしょう。


No.77 9点 首無の如き祟るもの
三津田信三
(2011/03/03 19:53登録)
 このサイトでの高評価に納得です。本格ミステリの王道を行く傑作と言っても過言ではないでしょう。真相説明において、ある人物が「たった一つのある事実」の気付きから推理を展開しますが、これはちょっとアンフェアではと思いました。その事実は、〇〇が当然気付くはずだと思ったからです。しかし、その事実から導き出された、第2・第3の事件のトリックには驚かされました。生涯忘れないだろうと思うくらいのインパクトがありました(犯人はとっさの思い付きでやっているのですが)。細かい伏線が次々と回収されていく設定上の工夫も見事です。最後の二転三転するどんでん返しは、なくても良かったかなと。最初の説明で謎が合理的に解明されているので、それをわざわざひっくり返すこともなかったのではと思いました(このどんでん返し自体も非常に面白いのですが)。


(追記 完全にネタバレをしています。注意!)
 第3の事件の動機に関しては、疑問に感じます。第2の事件は事故死(あるいは過失致死)にすぎないのに、それを隠蔽するためにさらにもう一人殺害し、首まで切るというのは常識的には考えられないことです。


No.76 6点 メルカトルと美袋のための殺人
麻耶雄嵩
(2011/02/27 07:38登録)
 人を人とも思わぬ、傲岸不遜な銘探偵メルカトル鮎と、メルカトルに翻弄される推理作家美袋の物語。メルカトルの推理は、薄弱な根拠に基づいて組み立てられた唐突なもので、説明を聞いてもなるほどと思うところはほとんどありません(笑)。この作品は、謎解きよりもメルカトルの非常識な言動を楽しむものなのでしょう。意外性は、真相よりもメルカトルの行為の方にあります。説明不足なところが多々ありますが、辻褄を合わせることなんて、作者はさらさら考えていないのでしょう。
「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」
 メルカトルはどうやって竜神像の場所を知ったのでしょうか。
「化粧した男の冒険」
 メルカトルはどうやって犯人のルージュを手に入れたのでしょうか。
「ノスタルジア」
 メルカトルが推理小説を書き、美袋に謎解きを求めます。2つの密室で構成されており、犯人の捻りもある真っ当なミステリなのですが、美袋は作中で「ふざけた原稿」だと言っています。まさにそのとおりでしょう。
「彷徨える美袋」
 メルカトルはどうして将来に起こることが神のようにわかるのでしょうか。
「シベリア急行西へ」
 珍しく、クイーンばりのロジックを前面に出した作品です。被害者のある特徴を推理し、それから犯人を特定するロジックはなかなかのものです。メルカトルは犯行時刻を1時間の幅で特定していますが、どうしてそんなことが出来たのでしょうか。


No.75 7点 亜愛一郎の狼狽
泡坂妻夫
(2011/02/24 19:49登録)
 最初の「DL2号機事件」を読んで、その推理の馬鹿馬鹿しさに放り出し、しばらく積読状態になっていました。再度取り出して読んでみると、それなりに楽しめました。亜愛一郎の推理の特徴は、「直感的で飛躍しすぎている」ということでしょうか。全般的に、文章が脈絡に欠けていて、読みにくい印象を受けました。個人的ベスト作品は「曲がった部屋」、次点が「黒い霧」です。
「曲がった部屋」
 伏線らしきものがいくつか出てくるのですが、その意味するものに見当がつかず、真相を読んでなるほどと感心しました。勘の良い人なら気付くかもしれませんね。
「掘り出された童話」
 暗号ネタですが、読者が簡単に解読できるような単純なものではありません。この暗号のアルゴリズムに合わせて童話を創作した、作者の労力の方に感心しました。
「ホロボの島」
 印象的なストーリーで、小説としての出来映えなら、この作品集の中でも一番でしょう。
「黒い霧」
 カーボンばらまき事件から導き出される、亜愛一郎の無理やりな推理に唖然。それでも、冒頭のエピソードが伏線としてうまく収束していく様はマジックを見ているようで面白かったです。


No.74 8点 戌神はなにを見たか
鮎川哲也
(2011/02/20 17:45登録)
 隠れた名作だと思います。個人的には、三重県の太郎生や湯の山温泉、岐阜県の石徹白と、登山で訪れたことのある場所が舞台となっており、興味を惹かれました。地道な捜査過程が丁寧に描かれており、引き込みも十分です。鮎川作品らしく、複雑系でやや難解な作品です。私は途中で少し混乱しました(今も混乱しているかもしれません)。


(ネタバレをしています。注意!)
 犯人は、犯行動機の錯誤と犯行場所の錯誤という2つの錯誤を企てて、捜査を混乱させています。犯行動機の錯誤については、ここまでやるかなとは思いますが、それを自然に見せる犯人の設定がなされています。犯行場所の錯誤については、〇〇の移動ではなく、△△の移動とするアイデアがすばらしいと思います。他にも、瓦煎餅のトリック、酒屋殺しのトリックなど盛り沢山です。


No.73 8点 ホッグ連続殺人
ウィリアム・L・デアンドリア
(2011/02/15 19:19登録)
 このサイトでは厳しい評価が多いですが、個人的には高く評価できる作品です。ユニークなアイデアを含んでおり、謎解きとして十分に楽しめました。トリックがわかったと書かれている人が多いのですが、私は確信が持てず、正解ではありませんでした。また、トリックがわかりやすい(私はそうは思いませんが)と言うだけで切り捨てるような作品ではありません。この作品は最後の1行が優れものです。犯人は新聞記者に挑戦状を送り、その中で「HOG」と名乗っているのですが、探偵役ベイネデイッティがその文字に秘められた意味を最後1行で示します。これが機知に富んだ、事件の核心を突く決め台詞なのです。また、「凍死者がなぜヒーターを使わなかったのか」という謎の答えも秀逸です(その前提となるある事柄が、伏線は張られているものの読者にはわかりにくいのですが)。ストーリーテリングにやや難があり、犯行動機を説明している箇所などでわかりにくいところがあります。


(以下、完全にネタバレをしています。注意!)
 「事故を殺人事件と見せかけつつ、クリスティの某作品と同じ手法による殺人」というのは私も可能性としては考えました。しかし、どれが事故で、どれが殺人なのかを見極めるのは難しいのではないでしょうか(第5の事件は当然殺人であり、第1の事件も殺人事件と見るには不確実性が大きすぎるとは思いましたが)。第4の事件(ビッケルの事件)が完全に目くらましになっていると思います。
 第1の事件で、標示板の留め金の折れた部分に関する描写に曖昧なところがあるのが不満です。真相を読んでわかったのですが、カッターで切られた痕があるのは落ちた方の留め金だけであり、鉄柱に残っている方の留め金は警察では調べていなかった。それが文章を読むだけではわかりにくく、両方ともにカッターで切られた痕があるものと思い、共犯説を考えていました。


No.72 7点 黒衣の花嫁
コーネル・ウールリッチ
(2011/02/12 15:05登録)
 一見、別個に見える4つの事件、その背後に存在する謎の女....。個人的にはサスペンス性十分な作品でした。犯人のターゲットへの接近や犯行過程の描写に引き付けられました。特に、第3の事件がツボでした。最後にそれぞれの事件をつなぐ糸が見つかり、犯人は逮捕されますが、犯人・被害者双方にとって皮肉な真相が明らかとなるラストは、ひねりがあって絶妙です。ただし、細かい突っ込み所が何箇所かあります。


No.71 7点 死の接吻
アイラ・レヴィン
(2011/02/08 20:56登録)
 3部構成で視点をそれぞれ変えた構成のアイデアは、素晴らしいと思います。第1部は犯人視点の倒叙形式で進み、女子学生(3女)が殺害されますが、犯人は「彼」としか表記されず、名前が明かされません。第2部は、自殺説に疑いを持った被害者の姉(次女)の視点で進み、疑わしい人物に接近して追い詰めます。第2部に至って、第1部で犯人の名前が明示されなかった理由がわかり、なるほどと思わせます。第3部は視点が複数の人物に分散されますが、ラストの銅精錬所での状況描写がわかりにくく、犯人の名前が既に明かされていることもあって、盛り上がりに欠けます。犯人が3女を殺害する場面や、次女が疑わしい人物を追い詰める場面は、サスペンス性十分です。


No.70 9点
F・W・クロフツ
(2011/02/05 13:10登録)
 ミステリの古典的名作として、大学生の時に初めて読み、結構面白かった記憶があります。久しぶりに再読しました。確かに今読むと、アリバイトリック自体は平凡だと思います。しかしながら、樽の移動を含む全体の謎は複雑で、謎解きとして十分に楽しめる作品ではないでしょうか。刑事や探偵の地道な捜査につきあいながら、刑事や探偵とともに考える要素が盛り込まれています。場所・時間の移動が激しく、プロットがかなり複雑なので、メモを取りながら読むことをお薦めします。


No.69 6点 マジックミラー
有栖川有栖
(2011/01/30 21:23登録)
 悪い作品ではないのですが、ちょっと地味な印象。作中で使われている2つのアリバイトリックはどちらも手間がかかるもので、失敗の可能性が高いような気がします。「アリバイ講義」は興味深い内容でした。これだけでも読む価値があると思います。


No.68 3点 夏と冬の奏鳴曲
麻耶雄嵩
(2011/01/28 21:32登録)
(ネタバレをしています。注意!)
 文庫本で700ページもの分量を読ませた挙句にこのラストとは・・・・・・。アンチミステリというよりはナットミステリ作品ではないでしょうか。明らかになる真相は、読者が推理によってたどり着けるようなフェアなものではありません。雪密室の真相にいたっては超自然現象でしたというお粗末さ。なぜ烏有の過去と同じものが映画化されていたのか、2人の桐璃のもう1人は誰だったのか、といった説明できない謎は放置したままで、読者の想像力に任せるという手法は最低だと思います。青春小説として見ればそれなりに面白いと思いますが、ミステリとしては全く評価に値しません。

(2011.1.30 追記 ネタバレをしていますので注意!)
 作者が放置したままの謎について、ネット上で解析しているサイトをいくつか見ました。そこでの解析内容にも疑問があります。「映画のシナリオが烏有の体験を予言したのではなくて、烏有がシナリオにたまたま合致した体験者だったからこの事件に巻き込まれ、映画に合わせて出会いが演出された」との書き込みがありました。しかし、この映画の内容は、心情部分も含めて烏有の人生と寸分違わず一致しており、現実的にこんなことが起こりうるわけがありません。この作品は、「世にも奇妙な物語」と同じで、合理的に説明できない部分を含んでおり、ミステリとしては破綻していると思います(この作者なので、「ミステリとして破綻した作品」を意図して書いたのかもしれませんが)。


No.67 7点 Yの悲劇
エラリイ・クイーン
(2011/01/23 20:53登録)
 ネタバレ本で犯人を知っていたため、これまで未読だった作品。意外な犯人で知られている作品ですが、論理的な推理が展開され、犯人以外での意外性もあり、犯人を知った上でも十分に楽しむことが出来ました。ヘレン・ケラーのような三重苦を背負ったルイザという女性が登場し、謎の設定にうまく活かされています。途中で披露されるロジック(ハッター夫人を殺害した人物と毒の梨を果物かごに入れた人物が同一であることや、犯人の目的が夫人の殺害であってルイザの毒殺でないことを証明するもの)はなるほどと思いました。しかし、ルイザの証言から犯人の〇〇を推理して、犯人を特定するロジックは、こじつけとしか思えません。


No.66 6点 法月綸太郎の功績
法月綸太郎
(2011/01/18 19:56登録)
「イコールYの悲劇」
 東郷ゆかりを殺害しようとした犯人の思考経路が理解できません。「イコールY」の文字痕と東郷ゆかりの伝言内容から真相が発覚することを危惧するなんて、考え方が飛躍しすぎていて無理があります。
「中国蝸牛の謎」
 バカミスですが、作品のテーマである蝸牛に関連するトリックが使用されており、「チャイナ橙の謎」のオマージュにもなっていて、上手いと思いました。
「都市伝説パズル」
 ロジカルに犯人を推理する過程が楽しめました。私もこのロジックは見抜くことができました。
「ABCD包囲網」
 こんな回りくどい犯行計画を立てる人間が存在するとは思えません。この真相で、AとBの事件がこんなに短い間隔で起こるという設定にも無理があります。
「縊心伝心」
 ホームズばりの推理ですね。現場に〇〇があったことに読者が気付くのは難しいと思います。

やはり、「都市伝説パズル」が一番優れていると思います。


No.65 7点 乱れからくり
泡坂妻夫
(2011/01/16 21:42登録)
 登場人物が次々と死んでゆき、真棹に容疑が向けられた時、まさかこのままで終わるわけないよねとは思いましたが、どういう結末を迎えるのか全く予測できませんでした。この犯人の設定は斬新ですね。伏線はあちこちに張られていますが、さりげなさすぎてその意味に気付きにくいです。4つの殺人いずれにも「からくり」が使われていますが、その手法を推測することは難しい。特に最後の殺人の手法は引っかけみたいなもので、わかるわけがありません。作品のテーマである「からくり」が、うまく真相に結びついているのはお見事です。


No.64 9点 七回死んだ男
西澤保彦
(2011/01/10 16:27登録)
 同じ日が9回繰り返される「反復落とし穴」という体質を持ったキュータローを主人公とした物語。SF設定で、本格ミステリとは思いませんが、優れたアイデアの作品です。「反復落とし穴」の繰り返しの中で、キュータローが次にどうやって殺人を回避しようとするのかを考えながら読むと楽しめます。真相には意表を突かれました。ラストのキュータローと友理さんとの対話の中で、すべて辻褄が合っていることが確認できます。キュータローが最後に抱いた大きな疑問も(私も疑問に思いましたが)、友理さんが見事に解き明かしてくれました。ユーモアにあふれた表現で、読んでいて楽しい作品です。

(追記 完全にネタバレをしています。 注意!)
 よく考えてみたら、おかしいと思いました。
 主人公が死んでしまったら、リセットされずにそれで終わりではないでしょうか(SF設定だから、この真相でもありなのかもしれませんが)。「死んだ」ではなく、「気絶した」の方が良かったと思います。

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