黒衣の花嫁 |
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作家 | コーネル・ウールリッチ |
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出版日 | 1953年09月 |
平均点 | 6.70点 |
書評数 | 10人 |
No.10 | 8点 | 測量ボ-イ | |
(2022/08/28 15:22登録) う-ん、この作品もウ-ルリッチ節は健在です。 プロットが魅力的なので、最後まで飽きずに読めます。 最後の皮肉な結末は絶妙。 他の方の感想で、ウ-ルリッチ(アイリッシュ)の作品は、 ツッコミどころもあるが、そのような目線は不要ではと いうコメントありましたが、同意見です。 採点は 7点(基礎点)+1点(ウ-ルリッチ効果) |
No.9 | 6点 | クリスティ再読 | |
(2022/07/26 13:15登録) 本当は映画を観たかったのだが、今簡単に見るのは難しいようだ。トリュフォーなんだけどもねえ。昔ゴダールやルイ・マルは熱心に観たけど、トリュフォーって肌が合わなくてね。まあそれでもYouTubeに上がっている予告編とかは鑑賞。脚フェチ映画。英語版予告編は動機が最初からネタバレしている。 小説はもちろん読みやすく、スタイリッシュな構成が光る作品。 で、なんだけども、評者は本作は淡白だと思う。同工異曲の「喪服」がこってりしたウールリッチ節を聞かせるのに対して、こっちはミステリ処女作。まだ「泣き」が全開じゃない。ひねりがない「喪服」に対して、こっちはひねりがあるわけで、「喪服」よりこっちがミステリファン受けがいいと思うんだが、どうだろうか。 要するに評者、ひねりが気にいってない。復讐というものの燃焼感がはぐらかされたような印象。「喪服」はこれでもか!なウールリッチ節でそれがうっとおしいことが多いのだけども、本作は無難な線でまとめたような印象。ウールリッチに伏線の整合性とかあまり求めちゃいけないけどもね(「幻の女」だって無理筋だと思うよ)。 というかさあ、やはり事件を追う刑事と犯人との間での心情的な交流(というか恋愛感情の一種)、というあたりがあれば泣かされるのだが、そういうのも目立たないし、ひねりのせいでこれが実現しづらい。 そんな印象。ウールリッチってどの作品もそれなりに傷があるからね。 |
No.8 | 7点 | Tetchy | |
(2021/03/15 23:32登録) ウールリッチお得意のファム・ファタール物のサスペンス。謎の美女による連続殺人事件を描いた作品だ。 被害者はそれぞれ株式仲買人に年金暮らしのホテル住まいの男、そして普通の会社員、画家に作家とそれぞれバラバラだが、殺人犯のジュリーとだけ名前の判明した女性には彼らが持つある共通項に基づいて殺害を行っている。 それぞれの被害者と謎めいた女性殺人者ジュリーとのエピソードはまさにそれ自体が短編のような読み応えで、これぞまさにウールリッチ・タッチだと存分に堪能した。 ある時は金髪の黒衣の女性、またある時は赤毛の理想の美人、またある時は赤みがかった金髪の化粧っ気のない幼稚園の先生、またある時は黒髪の画家のモデル、そしてある時は白髪交じりの髪をした中年の婦人に扮して標的となる男たちの前に姿を現す美と知性と度胸を兼ね備えた稀代の悪女ジュリー。 しかし彼女は決して自分の復讐に他者を巻き込ませようとしない。 自分の殺人に責任をもって行っている、気高さすら感じる公平さを持っている。 ジュリーの行った復讐は全く関係のないものだったことが最後に判明する。 愛する男のために姿を変え、危険を承知で近づき、そして復讐を果たす。しかし決して被害者周囲の関係のない者達には迷惑を掛けずに、時に自分が殺人を犯したことさえ話して現場から追い払い、または冤罪を掛けられそうになった者を救うために匿名で電話さえもする。 そこまで自分を律し、2年もかけた復讐が無意味なものになった時、女は、ジュリーは何を思ったのか? 正直事の真相を知ると、ジュリーを取り巻く人間関係が狭すぎ、そして状況は偶然すぎるように思えるだろう。 そして現在社会ではこのジュリーの犯行は計画的に見えてかなり危ない橋を渡ったもので、顔も隠していないどころか複数の目撃者もおり、逮捕されるのも時間の問題のように思えてならないだろう。 しかしウールリッチの抒情的かつ幻想的な語り口がそんな偶然性、現実性を霧散させ、まるで復讐を遂げようとするか弱き美女の死の魔法が成功する様を酔うが如く堪能するような作りになっている。 愛ゆえの女性の復讐譚である本書が女性がまだ男から軽んじられている時代に書かれたことを我々は知らなければならない。 作中でもプレイボーイの男がジュリーにあしらわれたのを根に持ち、憤慨する様に刑事は同情し、好感さえ覚える、そんな時代だ。 そんな時代に女性の強さを強調した本書は母親と一緒に暮らしていた作者だからこそ書けたのだろう。それでもこの徒労感漂わせる結末は何とも遣る瀬無い。冬の寒さが身に染みる夜だけにこの女性の虚しさが一層胸に迫った。 |
No.7 | 6点 | E-BANKER | |
(2017/05/03 22:55登録) 早川文庫版の訳者あとがきによると、「幻の女」「暁の死線」と並ぶ、アイリッシュ=ウールリッチの三大傑作のひとつ・・・とのこと。 1940年の発表。 原題は“The Bride Wore Black”で、いわゆる作者の「黒」シリーズの第一作目。 ~ジュリーと呼ばれた女は、見送りの友人にシカゴへ行くと言いながら、途中で列車を降りてニューヨークへ舞い戻った。そして、ホテルに着くと自分の持ち物からイニシャルをすべて消していった。ジュリーはこの世から姿を消し、新しい女が生まれたのだ・・・。やがて、彼女はつぎつぎと五人の男の花嫁になった・・・。結婚式も挙げぬうちに喪服に身を包む冷酷な殺人鬼! 黒衣の花嫁。巨匠ウールリッチの黒のシリーズ冒頭を飾る名作~ 独特のいい雰囲気を持つ作品。 時代性を勘案すれば、このプロットは斬新だし、当時の読者の心を惹きつけたに違いない。 五人の男が、黒の衣装をまとった謎の女に殺害されていく。ひとり、またひとりと・・・ なぜ、女は男たちを殺していくのか? 単なる殺人鬼なのか? それとも? というわけで、一種のミッシング・リンクをテーマとした作品ともなっている本作。 第四部(四人目の男)=ファーガスンの章で、大凡の筋道は見えてくるのだが、このまま終了すると思いきや、ラストではなかなかの捻りが待ち構えている。 ここら辺は、ウールリッチ(アイリッシュ)らしいところなのだろう。 実に皮肉っていうか、悲劇的っていうか、因果応報っていうか・・・ 結局、作者はこれが書きたかったのかな? 確かに、そのまま終わってたら、「結構単調だったなぁー」っていう感想になったと思う。 ただ、「幻の女」や「暁の死線」にしても、本作にしても、21世紀の現在からすると、「もうワンパンチあればなあー」っていう印象にはなるんだよねぇ。 もちろんオリジナルとしての希少性はあるにしても、どうしても「高すぎる」評価に対しては違和感を覚えてしまう。 あまり要領を得てないですが、作者の作品に対してはいつもそんな感じになる。 |
No.6 | 6点 | ボナンザ | |
(2014/04/13 01:26登録) ウールリッチ名義の最高傑作であろう。 幻の女や暁の死線とは違った趣で楽しめる。 個人的にはこれら二作よりも好きだ。 |
No.5 | 6点 | 蟷螂の斧 | |
(2013/06/11 10:07登録) ハヤカワミステリーの裏表紙「彼女は、つぎつぎと、五人の男の花嫁になったのだ-結婚式もあげぬうちに喪服に身を包む冷酷な殺人鬼-黒衣の花嫁に。」→物語の内容との不一致(拡大解釈を遥かに越える?)が、はなはだしいですね。五人の男性の物語は、それぞれ独立していて楽しめました。文章は、読みやすいし独特の雰囲気があります。最後の一捻り(結構好きなタイプの一捻り)があったのですが、その時の花嫁の心情がいま一つ伝わってこなかったのが残念な点です・・・。 |
No.4 | 7点 | りゅう | |
(2011/02/12 15:05登録) 一見、別個に見える4つの事件、その背後に存在する謎の女....。個人的にはサスペンス性十分な作品でした。犯人のターゲットへの接近や犯行過程の描写に引き付けられました。特に、第3の事件がツボでした。最後にそれぞれの事件をつなぐ糸が見つかり、犯人は逮捕されますが、犯人・被害者双方にとって皮肉な真相が明らかとなるラストは、ひねりがあって絶妙です。ただし、細かい突っ込み所が何箇所かあります。 |
No.3 | 7点 | 臣 | |
(2010/09/28 09:58登録) 若い女が男たちを次々と殺害する怖い話です。被害者がわの視点で描かれているので、サスペンスたっぷりの作品となっています。特に第三部の「モーラン」はどんなタイミングでどんな殺られ方をするのか、背筋を震わせながら読みました。 動機ネタは知っていましたが、にもかかわらずサスペンスと、ひねりのあるラストで最後まで飽きることなく十分に楽しめました。しかも被害者ごとの各部は独立感があるものの、作りがパターン化しないよう工夫されており、各部ごとにも、もちろん長編としても楽しめる充実した作品となっています。いろいろと稚拙に感じる箇所もありますが、みな許せる範囲です。 山本周五郎が本書をもとにして書いたのが『五瓣の椿』です。筋を忘れてしまっているので比較はできませんが、こちらも秀逸な異色時代サスペンス作品でした。 |
No.2 | 7点 | mini | |
(2008/10/12 09:58登録) 「喪服のランデヴー」と対になるが、「喪服」を先に読んだ人が圧倒的に多い気がする これは「黒衣の花嫁」の文庫版が暫く絶版だった時期があり、その頃「喪服」は普通に新刊で入手可能だったのが原因だろう こういう場合はどちらを先に読んだかで印象が変わる 私は「黒衣」を先に読み、年月を経て最近になって「喪服」を読んだから、どうしても「黒衣」の方が断然印象が良いし、「喪服」の方こそ二番煎じに思えてしまう と言うか、そもそも原作の順序も「黒衣」が先で「喪服」の方が後から書かれているのだ ウールリッチ名義の作には原題に”BLACK”が付くブラックシリーズと呼ばれる一連の作品群があって、「黒衣」がシリーズ第1作目、「喪服」は第6作目でシリーズ最終作だ それどころかアイリッシュ名義をも含めても長編では作者のデビュー作が「黒衣の花嫁」なのである 「喪服」→「黒衣」という読む順番は悪い意味で逆転してる 「黒衣」は詩情があり主人公の女性に感情移入出来るし、変に盛り上げようとしない冷静な筆致が心地良い 終盤の一捻りも私は成功してると思うし、それを言うなら「喪服」のラストの方が何の捻りも無さ過ぎだろ 私はこの2作の評価については確固たる信念があり、世に多い評価は「喪服」に対しては過大評価で、「黒衣」は不当に過小評価されていると思う 結局アイリッシュ名義作も含めて、「喪服」はかなり早い時期に読むのに、「黒衣」は作者に充分に慣れた段階で読む読者が多いという悪しき風潮が全ての原因だと思う くどいようだけど原作の発表順は全く逆なのだ |
No.1 | 7点 | こう | |
(2008/08/27 02:46登録) 喪服のランデヴー の女性版です。プロローグでジュリーという女が友人と別れ別の名前でアパートを借りる所までが数ページで描かれ、次から男が次々に死んでゆきその周囲に謎の女が浮かんでくるが、被害者との接点もなく捜査は難航して、というストーリーが進んでゆきます。 終盤被害者のつながりが少しずつあきらかにされ、最後に動機が明らかにされますがサスペンスの盛り上がりが今一つの感じでした。少しつながりがわかってからが長い気がしました。 事件は皮肉な結末を用意していますがそこの部分がなくてもストーリーが成り立つ気もします。 また作品そのものの問題ではないのですが「喪服のランデヴー 」と両方読むと2冊目はそれほど楽しめないかもしれません。アレンジはしてありますがどうしても以前に読んだ感覚を覚えてしまうと思います。 |